ニュースレターNo.57/2014年8月発行
JPNIC第52回・53回総会報告
~平原正樹氏の「インターネットの殿堂」入りも祝われました~
2014年3月14日(金)、第52回JPNIC臨時総会を東京都千代田区のアーバンネット神田カンファレンスにて開催し、2014年度の事業計画案および収支予算案を、会員の皆様にお諮りしました。また2014年6月20日(金)には、第53回JPNIC通常総会を東京千代田区のホテルメトロポリタン エドモントにて開催し、IPアドレスポリシー実装に関する変更等の3件のご報告とともに、2013年度の事業報告、収支決算および役員改選の3議案を、審議事項として上程しました。本稿では、この二つの総会について簡単にご報告します。
第52回JPNIC臨時総会(2014年度事業計画・収支予算)※1
第1号議案:2014年度事業計画案承認の件
2014年度の事業計画について、まず事務局長の林宏信より全体的な説明を行い、続いてIP事業部次長の伊勢禎和およびインターネット推進部部長の前村昌紀から、各事業部の事業計画を説明しました。ここでは、2014年度にJPNICとして注力したいポイントを記載します。
全体 | |
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IPアドレス事業 | インターネット基盤整備事業 |
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第2号議案:2014年度収支予算案承認の件
林事務局長より、第1号議案の事業計画を実行するための予算案について、説明を行いました。2014年度は当面、以下の予算規模で事業が展開されることとなります。
経常収益予算 515,390,000円 (前年度比 +14,889,800円)
経常費用予算 545,920,000円 (前年度比 +11,110,000円)
当期経常増減額 -30,530,000円 (前年度比 +3,779,800円)
正味財産期末残高 1,893,328,287円 (前年度比 -30,770,000円)
これら2議案につき質疑応答が行われ、各議案の賛否を会場にお諮りした結果、原案の通り承認可決されました。
第53回JPNIC通常総会(2013年度事業報告・収支決算、新役員選任)※2
第1号議案:2013年度事業報告案承認の件
2013年度の事業報告について、全体的な説明を林事務局長より行った後、事業部より、各事業部の報告があり、原案の通り承認可決されました。ここでは、2013年度に注力したポイントを記載します。なお、2013年度の事業報告書は従来のテキスト形式ではなく、グラフや写真を織り交ぜるなどした、読み易さを重視した事業報告書としていますので、総会資料をぜひご覧ください。
全体 | |
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IPアドレス事業 | インターネット基盤整備事業 |
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第2号議案:2013年度収支決算案承認の件
事務局長の林より、第1号議案で説明した事業報告に基づく収支を示した各財務諸表について説明を行い、原案の通り承認可決されました。なお、一般社団法人に移行後、決算書については、収支計算書から正味財産増減計算書への決算書の変更等、法令に則り書式が改められています。
経常収益 506,287,271円 (前年度比 -96,171,065円)
経常費用 500,508,580円 (前年度比 +2,959,574円)
計上増減額(評価損益等調整前)5,778,691円 (前年度比 -99,130,639円)
正味財産期末残高 1,967,296,832円 (前年度比 +8,558,745円)
正味財産増減計算書(概要) 2013年4月1日から2014年3月31日まで
(単位:円)
科目 | 当年度 | 前年度 | 増減 |
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経常収益計 |
506,287,271 |
602,458,336 | △96,171,065 |
① 特定資産運用益 |
34,936,963 |
18,467,439 | 16,469,524 |
② 受取会費 |
100,100,000 | 103,400,000 | △3,300,000 |
③ 事業収益 |
353,804,255 | 463,094,230 | △109,289,975 |
④ 雑収益 | 17,446,053 | 17,496,667 | △50,614 |
経常費用計 |
500,508,580 | 497,549,006 | 2,959,574 |
① 事業費 | 395,274,242 | 405,289,502 | △10,015,260 |
② 管理費 |
105,234,338 | 92,019,984 | 13,214,354 |
③ 特定資産運用損 | 0 | 239,520 | △239,520 |
評価損益等調整前当期経常増減額 | 5,778,691 | 104,909,330 | △99,130,639 |
特定評価損益等 | △8,631,188 | 63,341,506 | △71,972,694 |
当期経常増減額 | △2,852,497 | 168,250,836 | △171,103,333 |
当期経常外増減額 | △118,958 | △6,137,758 | 6,018,800 |
税引前当期一般正味財産増減額 | △2,971,455 | 162,113,078 | △165,084,533 |
法人税、住民税及び事業税 | 70,000 | 11,670,200 | △11,600,200 |
法人税等還付税額 | △11,600,200 | 0 | △11,600,200 |
当期一般正味財産増減額 | 8,558,745 | 150,442,878 | △141,884,133 |
一般正味財産期首残高 | 1,958,738,087 | 1,808,295,209 | 150,442,878 |
一般正味財産期末残高 | 1,967,296,832 | 1,958,738,087 | 8,558,745 |
第3号議案:役員選任の件
今後約2年間JPNICの運営を担うこととなる役員が選任されました。今回の理事候補については、18名の候補者のうち14名が前期理事会からの推薦、また4名がJPNIC会員から推薦された候補者でした。監事候補者3名に関しては、全員理事会からの推薦となりました。候補者数は理事、監事ともに、定款で定める定員(理事20名以内、監事3名以内)であったため、信任の投票を行った結果全候補者が信任され、就任が承諾されました。今回、全21名の役員中、1名が新任の役員です。その後、総会終了後に引き続き理事会が開催され、P.6〜7の「新役員のご紹介」の通り、役員間での役割が決められました。
その他報告事項として、「JPドメイン名登録管理業務移管契約第13条に基づくJPRSの責任事項に関する実績評価結果報告」「IPアドレスポリシー実装に関する報告」「公益目的支出計画実施報告」が行われました。「IPアドレスポリシー実装に関する報告」では、2014年7月より施行予定の、レジストリに返却されたIPv4アドレスの再分配と、AS番号移転を可能とするポリシーについて報告しております。
平原正樹氏の「ISOCインターネットの殿堂」入りを祝して
2014年4月8日、Internet Society(ISOC)は、2014年選出の「インターネットの殿堂(Internet Hall of Fame)」に入るメンバー24名を発表しました。その中の「グローバルコネクター(インターネットのグローバルな成長と利用に著しい貢献をした個人)」部門で、JPNICの前身であるJNICの設立者であり、JPNIC初代運営委員長の平原正樹(ひらばるまさき)氏(故人)が選出されました。「インターネットの殿堂」入りは、日本人では、高橋徹氏(2012年)、石田晴久氏(2013年)、村井純氏(2013年)についで4人目となります。
JPNICでは平原氏の殿堂入りを祝して、第53回総会終了後に「平原正樹氏のISOCインターネットの殿堂入りについて」と題し、常務理事の佐野晋が平原氏の功績を紹介する講演会を実施しました。またその後に「APAN(The Asia Pacific Advanced Network)とは ~平原氏とAPAN、APANの今、APRICOT-APAN 2015開催に向けて~」と題し、独立行政法人 情報通信研究機構の北村泰一氏からもお話をいただきました。
1990年頃、JPドメイン名はjunet-adminと呼ばれるグループによって管理されていました。一方IPアドレスは、The NICによる集中管理が基調でしたが、日本では、世界に先駆けた分散管理のテストケースの一つとして、一定のIPアドレスブロックの委任を受け、「ネットワークアドレス調整委員会」が、管理していました。
これらの活動は、多忙な大学教員によるボランティアであり、インターネットが世界的に劇的な成長を見せ始める中、登録業務が急増し、作業遅延などが深刻な問題となってきました。そのため、JPドメイン名、IPアドレスの管理を行う専任組織として、JNICが設立されることとなり、その中で平原氏は、運営委員会の初代委員長として、組織の立ち上げを先導し、規則や手順の文書化、安定した登録管理に向けた業務機構の設計を行いました。
さらにその後、アジア太平洋地域のすべての国の人々が簡単にIPアドレス資源を得ることを可能とするべく、「APNIC(Asia Pacific Network Infomation Centre)の設立」を提案するとともに、初期メンバーとして業務にあたり、現在の地域インターネットレジストリによるIPアドレス管理体制につながる第一歩を踏み出しました。
平原氏は「インターネットの資源(識別子)の管理」を、小さな研究用コンピュータネットワーク向けにボランティア有志で行うものから、地球上のみんなが使う情報社会基盤を担えるものとする、とても大きな足がかりを築いたと言えます。
講演会、そしてその後に引き続いて行われた懇親会では、平原氏の功績を振り返るとともに、ご冥福があらためて祈られました。
(JPNIC 総務部 手島聖太)
新役員のご紹介
(役職順に50音順、氏名の下は所属、中段 枠内はJPNIC内での分担、下段はインターネットにおける最近の関心事)
理事長(代表理事)
〈理事会推薦〉
後藤 滋樹
早稲田大学 理工学術院
基幹理工学部
情報理工学科 教授
副理事長(代表理事)
〈理事会推薦〉
江崎 浩
東京大学大学院
情報理工学系研究科
教授
〈理事会推薦〉
野村 純一
大明ビジネスメイト株式会社
代表取締役社長
常務理事
〈理事会推薦〉
石田 慶樹
日本インターネットエクスチェンジ株式会社
代表取締役
〈理事会推薦〉
歌代 和正
一般社団法人JPCERT
コーディネーションセンター
代表理事
〈理事会推薦〉
岡田 雅也
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ
株式会社 第五営業本部
第二営業部門 部門長
〈理事会推薦〉
佐野 晋
株式会社日本レジストリサービス
代表取締役副社長
〈理事会推薦〉
藤崎 智宏
日本電信電話株式会社
ネットワーク基盤技術研究所
ネットワーク技術SEプロジェクト 主幹研究員
〈理事会推薦〉
三膳 孝通
株式会社インターネットイニシアティブ
常務取締役
理事
〈理事会推薦〉
伊藤 公祐
株式会社ユビテック
ユビキタス研究所
第三研究室 室長
〈会員推薦〉
宇井 隆晴
株式会社日本レジストリサービス
企画部 部長 兼
広報宣伝室 室長
〈理事会推薦〉
小林 昌宏
KDDI株式会社 理事
商品統括本部プロダクト企画本部長
(兼)日本ネットワークイネイブラー
株式会社 社長
〈理事会推薦〉
曽根 秀昭
東北大学
サイバーサイエンスセンター
教授
〈会員推薦〉
高田 寛
株式会社シーイーシー
クラウドサービス事業部
データセンターサービス部
特別顧問
〈会員推薦〉
辰巳 治之
札幌医科大学 大学院
医学研究科生体情報形態学
教授
〈会員推薦〉
馬場 聡
北海道総合通信網株式会社
ソリューション運用部長
〈理事会推薦〉
山口 英
奈良先端科学技術大学院大学
情報科学研究科 教授
〈理事会推薦〉
山田 茂樹
国立情報学研究所
情報学プリンシプル研究系
研究主幹・教授
監事
〈理事会推薦〉
香川 進吾
富士通株式会社 執行役員
(兼)インテグレーションサービス部門
(兼)グローバルデリバリー推進室員
ネットワークサービス事業本部長
(兼)映像ネットワークサービス事業部長
(兼)サービスマネージメント本部員
〈理事会推薦〉
岸川 徳幸
ビッグローブ株式会社
執行役員CTO
〈理事会推薦〉
成田 伸一
株式会社ASJ
顧問
- ※1 第52回JPNIC臨時総会 資料・議事録
- https://www.nic.ad.jp/ja/materials/general-meeting/20140314/
- ※2 ※2 第53回JPNIC通常総会 資料・議事録
- https://www.nic.ad.jp/ja/materials/general-meeting/20140620/