ニュースレターNo.58/2014年11月発行
総務省による「IPv6対応ガイドライン」の公開と、IPv6早わかりセミナーのご紹介
2014年2月20日発行のJPNIC News & Views vol.1170でもお伝えいたしましたが、総務省では、IPv6の速やかな普及を促進すべく、「インターネット利用環境の変化に伴う情報セキュリティ対応推進事業」として、通信事業者や一般企業などに向けた「IPv6対応ガイドライン」と「IPv6対応調達仕様書モデル」の案を作成していました。その内容を中心に、IPv6の普及に向けた内容も折り込み、株式会社インテックが中心となり「IPv6早わかりセミナー」を開催し、普及啓発活動を行ってきました。JPNICも2013年度の活動として、これに協力いたしました。
「IPv6早わかりセミナー」については、2014年3月20日の東京開催をもって、すべてのセミナーが終了しましたが、これらのセミナーでの意見等も受けて、2014年7月7日には、セミナーで紹介していた「IPv6対応ガイドライン」と「IPv6対応調達仕様書モデル」の「中小通信事業者編(ガイドラインのみ)」「企業編」「地方自治体編」とが、総務省のWebサイトで公開されましたので、お知らせします。
- IPv6対応ガイドライン(中小通信事業者編)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000301462.pdf - IPv6対応ガイドライン(企業編)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000301464.pdf - IPv6対応調達仕様書モデル(企業編)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000301466.pdf - IPv6対応ガイドライン(地方自治体編)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000301465.pdf - IPv6対応調達仕様書モデル(地方自治体編)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000301467.pdf
本稿では、「IPv6早わかりセミナー」においてどのようなプログラムを行っていたのかも含め、この「IPv6対応ガイドライン」について簡単にご紹介します。
セミナーの概要について
「IPv6早わかりセミナー」は、2014年1月17日の高松開催を皮切りに、全国11ヶ所で合計12回開催され、合計で1,100名を超える方々にご参加いただきました。
企業や自治体の情報システムを担当されている方を対象としたセミナーで、多くは企業からの参加申し込みでしたが、開催場所によっては3割程度が自治体からというところもあり、地方自治体においてもIPv6導入に関する関心が高まりつつあることを実感しました。
開催都市 | 開催日 | 会場 | 参加者数 |
---|---|---|---|
高松 | 1月17日(金) | 高松センタービル | 71名 |
広島 | 1月24日(金) | 広島国際会議場 | 112名 |
名古屋 | 1月28日(火) | TKP名古屋栄カンファレンスセンター | 150名 |
大阪 | 2月 4日(火) | 大阪アカデミア | 160名 |
那覇 | 2月 7日(金) | ホテルオーシャン | 72名 |
福岡 | 2月14日(金) | 九州ビル | 116名 |
仙台 | 2月17日(月) | TKPガーデンシティ仙台 | 85名 |
長野 | 2月25日(火) | JA長野県ビル | 32名 |
金沢 | 3月 4日(火) | TKP金沢ビジネスセンター | 84名 |
札幌 | 3月 7日(金) | TKPガーデンシティアパホテル | 48名 |
東京 | 3月14日(金) | AP東京八重洲通り | 141名 |
東京 | 3月20日(木) | TKP御茶ノ水会議室 | 103名 |
講演プログラム
各回ともプログラムは大きく3部構成で、第1部は主にJPNICが、第2部は株式会社三菱総合研究所が、そして第3部はインテックが担当しました。第3部はいずれの会場でもIPv6導入ガイドラインと調達仕様書モデルの解説でしたが、第1部と第2部はおおよそ3種類の講演内容を、会場ごとに変えていました。
JPNICからは、下記の三つのタイトルと内容で講演を行いました。
(1)IPv4アドレス枯渇とIPv6インターネット
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/jpnic2.pdf
IPv4アドレスの枯渇状況と、枯渇後のIPv4アドレス入手方法、
そして現在のIPv6サービスの進展状況に関する説明をしました
(2)IPv6時代のインターネットガバナンス
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/jpnic3.pdf
IPv4アドレス枯渇や新gTLDプログラムの導入の説明、
ICANNを中心としたインターネットガバナンス議論についての解説をしました
(3)IPv6のキホン
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/jpnic1.pdf
IPv6プロトコルの基礎的な説明と、
IPv6アドレス取得手続きに関する解説をしました
三菱総合研究所からは、下記の三つの講演がありました。
(1)オープンデータの拓く新たな可能性
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/mri1.pdf
オープンデータの説明と自治体などにおける活用事例の紹介、
IPv6を用いたデータ収集と活用に関する解説がありました
(2)自治体クラウドの新たな展開
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/mri3.pdf
自治体クラウドの導入事例の紹介、番号制度と自治体クラウドの活用、
自治体クラウドにおけるIPv6対応の解説がありました
(3)サイバーセキュリティ最新動向
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/mri2.pdf
サイバー攻撃の手法や最新のインシデントの紹介、
IPv6導入によるセキュリティリスクと対応に関する解説がありました
その他リーフレットや、導入としての「IPv6導入の早わかり〜こうやればできるIPv6導入〜」といった資料についても、インテックのWebサイトで公開されておりますので、ご興味のある方はご参照ください。
ガイドラインと調達仕様書モデル
第3部が本セミナーのメインプログラムである「IPv6導入の早わかり」です。企業や自治体の情報システムやネットワークをIPv6対応させるため、モデルケースを提示しながら、実際にシステムインテグレーターなどに発注する場合の調達仕様書の作成モデルまでを解説していました。
一般企業の場合、調達仕様書という名称には馴染みがないと思われますが、自治体や省庁などで発注を行う際に用いる、一般企業で言うところの提案依頼書(RFP)に近いものだということです。
今般の総務省の事業として作成された「IPv6対応ガイドライン」には、企業や自治体、そして通信事業者に対して調査を行い、それを元に、それぞれの一般的なネットワーク構成や運用体制をモデル化して、それをIPv6対応させていくための確認ポイントを網羅しています。
これを参考にしながら、自社のネットワークや運用体制と照らして、「IPv6対応調達仕様書モデル」で示されている雛形に沿って、項目を取捨選択していくことにより、IPv6対応のための調達仕様書ができ上がる形になっています。ガイドラインの末尾にはチェックシートも添えられており、これを用いることで、導入計画策定から実際の運用開始までの手順について、漏れなく確認しておくことができるようになっています。セミナーでは、架空企業のネットワークをモデルケースとして例示し、その企業のDMZ(DeMilitarized Zone)からインターネットに接続する部分を、IPv6に対応するための調達仕様作りを実際に行うという形で解説していました。
そのため、IPv6対応をどこから進めていけばいいのか、と思い悩みながら、なかなか着手できずにいる場合などは非常に参考になるのではないかと思います。ただし、現在の自社のネットワーク構成や運用がどのようになっているかを正しく把握しておくことが、重要であることも実感しました。
それぞれのガイドラインと調達仕様書モデルは、上記でもリンクを貼りましたが、総務省ページ内の「2.インターネットのIPv6移行の普及促進を図るための実証実験等」に、まとめてPDFファイルがリンクされています。
最後に
おそらく、JPNIC会員やIPアドレス管理指定事業者の方は、調達仕様書を作成する側というよりも、提示される側になると思います。しかし、企業や自治体におけるIPv6対応が今後どんどん進められていく中で、今回提示されたガイドラインと調達仕様書は、あらかじめどういった形式で調達仕様や提案依頼が行われるかを把握しておく上で、事業者側にとっても参考になるのではないでしょうか。
今後ユーザーネットワークのIPv6対応が大きく進展していく上での礎になっていく可能性もありますので、ぜひ一度内容をご確認ください。
(JPNIC IP事業部 佐藤 晋)