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ニュースレターNo.58/2014年11月発行

ICANNロンドン会議報告および第40回ICANN報告会開催報告

2014年6月22日(日)から26日(木)にイギリスのロンドンで第50回ICANN会議が開催され、本会議の報告会を8月19日(火)にJPNICと一般財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催にて開催しました。本稿では、ロンドン会議の概要を中心に、報告会の様子も併せてご紹介します。

ロンドン会議の全体概要

ICANNロンドン会議は、Hyde ParkとRegent Parkという二つの公園の間に立地する、Hilton London Metropole Hotelで開催されました。

今回のICANN会議は、各国政府高官でインターネットガバナンスについて議論するハイレベル会合と、各国のAt-Large(個人のインターネットユーザーによるコミュニティ)が集結するAt-Large Summitが併せて開催されたこともあり、3,300名を超える参加者を記録したことがオープニングセレモニーで発表されました。ハイレベル会合は、75ヶ国の政府関係者と11の政府間組織から、合計110名が参加を表明したということです。

今回の特徴は、IANA機能の監督権限移管と、それを取り巻くガバナンスに関する議論に参加者の関心が集中したことです。これは前回会議の流れをくみ、その後も検討体制案がICANNから発表されたため、開催前の予測通りでした。これらのテーマは、それぞれのテーマに特化したセッションに加え、ハイレベル会合やccNSO(国コードドメイン名支持組織)の会議でも議題として取り上げられていました。一部のハイレベル会合は傍聴可能であり、IANA機能の監督権限などに対する各国政府の見解を聞く、よい機会だったと言えます。

写真:スピーチを行うICANN理事会議長のSteve Crocker氏
● スピーチを行うICANN理事会議長のSteve Crocker氏

新gTLD追加の動向については、政府諮問委員会(GAC)の勧告で指摘されている文字列など、一部継続課題となっている文字列はあるものの、新gTLDの利用事例を紹介するセッションなど、実際の利用を見据えた情報交換が見受けられました。また分野別ドメイン名支持組織(GNSO)評議会では、今回の新gTLD追加のラウンドを検証し、次のラウンドに備えておこうという決議も行われました。このように、新gTLDの今回のラウンドを振り返り、今後のあり方を検討しようという動きも出てきています。

「IANA機能の監督権限移管」と「ICANNの説明責任」の関係

前回のICANNシンガポール会議では、米国商務省電気通信情報局(NTIA)による、IANA機能の監督権限移管に関する発表直後のタイミングであったため、IANA機能の管理とNTIAの関わりの総括がありました。前回までの議論は、JPNIC News & Views vol.1195をご覧ください。

その後、ICANNにより移管に向けた検討体制と進め方の案が、コミュニティの意見を取りまとめた形で提示※1されました。それを受けて、今回の会議では、IANA機能の監督権限移管と、ICANNの説明責任との関係性の整理が大きな焦点でした。

IANA機能の今後を取り巻く議論の中で、米国政府による監督が無くなる状態を踏まえて、ICANN自身が、どの程度信頼に足り得るのかといった懸念は、前回の会議から課題として挙げられています。一部の参加者からは「ICANNの説明責任における対応が明確でないならば、IANA機能の監督権限移管を進めるべきではない」といった意見も表明されています。

そこで、IANA機能の監督権限移管のあり方に加え、ICANNの説明責任についても検討が必要として、前回に引き続き、ロンドン会議でも「ICANNの説明責任」について議論するセッションが別途設けられました。

ICANNの説明責任に関わる議論としては、GNSOは初めて、すべての部会(Constituency)合同で声明を出して、ICANN理事会の判断に対する透明性と再考の仕組みを求めました。また、一部のGACメンバーは、例えばフランス政府はワインを表す.wineおよび.vinの文字列が米国企業により登録されることなどに基づき、ICANNで適切な意思決定プロセスが機能していないといった批判的な意見を表明しています。

しかし、こうした「説明責任」に関して起こる議論は、必ずしもIANA機能に関するものだけではないため、IANA機能の監督権限が今後どのようにあるべきかについての検討がこれらの説明責任全般の議論に引きずられると、移管提案を取りまとめる上での障壁となる可能性も考えられます。

そこで、今回の会議では、「ICANNの説明責任に関する議論のうち、IANA機能に関わるものと、関わらないものに分けて検討を進める」という方向性が示され、参加者に支持されたことで、今後は必要な論点に絞って検討を進めることが確認できたと思います。

「IANA機能の監督権限移管」と「ICANNの説明責任」のセッション

「IANA機能の監督権限移管」に関するセッションは、IETFチェア、セキュリティと安定性に関する諮問委員会(Security and Stability Advisory Committee; SSAC)のチェアなど、技術コミュニティのリーダーらが議長役となって議論を引っ張っていたことが印象的です。今後の進め方に関する具体案の例として、IAB(Internet Architecture Board)がまとめた案も紹介されました。議論のサマリーを含めたセッションの様子は、IETFのBlogにも掲載されています。

「ICANNの説明責任」に関するセッションでは、説明責任に関する専門家もパネリストとして登壇し、他の事例を比較するとICANNは説明責任に向けて多くの取り組みを行っていること、説明責任の性質上、常に課題は存在し、全員が満足のいく状態は基本的に確認できないことなどが説明されました。このような議論を経て、前項で記述した通りIANA機能に関わるICANNの説明責任と、IANA機能を除くICANN全般に関する説明責任を分ける方向で「IANA機能の監督権限移管」セッションで議論が行われました。それぞれのセッションの様子を詳しく知りたい方は発言録(Transcript)がWebサイト※2に掲載されています。

IANA機能の監督権限移管に向けた今後の動き

「2015年9月のICANNとNTIAとの契約更新時までに、結論が出なかったらどうなるのか」といった疑問は、今回の会議でも投げかけられました。NTIAの代表者は、納得のいく議論を進めることが重要であり、契約更新時までに結論が出なくとも、NTIAが契約を更新するので焦ることはない、といったメッセージを発していました。一方、参加者の中には、タイミングが重要であり、移管の話について今後先行きが見えなくならないよう、次回の契約更新時までに結論を出すことをめざすべきと主張する方も一定数、確認されています。

本稿執筆時点で、IANA機能の監督権限移管については、異なる立場や優先順位を持つ関係者コミュニティの意見を調整する役割であるCoordination Groupのメンバーが選出され、第1回の会議が2014年7月17〜18日にロンドンで開催されています※3。全体スケジュールを含めて検討の枠組みが確認されていくことで、今後はより具体的な内容に踏み込んだ議論を進める環境が整備されていくのではないかと思います。

写真:ロンドン会議の様子
● ロンドン会議の様子

新gTLDの追加に関する動向について

ICANNのgTLD部門(Global Domain Division)からの報告によると、新gTLD関連業務は順調に進み、新たな課題は浮上しておらず、すべての申請者への委任が完了するのは2017年となる見通しということです。

継続課題としては、GACの一部メンバーにとっての懸案事項であるワインを表す.wineや.vinの文字列の登録、政府間組織(IGO)や非政府間国際機構(INGO)の名称登録における保護が議論されました。後者についてGNSOの議長から、GACの懸念を踏まえて対応を再考する方向で検討していることが書簡で表明されています。

その他継続課題として興味深いものは、2文字のgTLDの利用です。国コードと重なる文字列の利用を認めるべきか、ccNSOで議論されましたが、今回の会議で明確な結論は出なかったとの報告が出ています※4。

また、「TLD Universal Acceptance」や「New gTLD 'Stories' Panel」など、新gTLDの利用に関する情報交換や議論も行われています。「IDN Root Zone LGR Generation Panels Workshop」では、国際化ドメイン名(IDN)における異体字の取り扱いの検討において中国語、韓国語、日本語のパネルについて進捗報告が行われ、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)が日本語パネルの状況を紹介しました。ルートゾーンへのIDNの追加と異体字に関する検討は、今年2014年5月にICANNが国内で開催したイベント※5でも紹介されたものです。

現在委任されている新gTLDの一覧は、ICANNの新gTLDに関するWebサイト(http://newgtlds.icann.org/en/)の「See all delegated strings」へのリンクから確認できます。

名前衝突について

名前衝突問題は、実在しない文字列だから問題無いだろうと組織内などで内部的に使っていた文字列と、新gTLDとして認められた文字列が衝突してしまい、意図した相手と通信ができなくなったり、その逆に意図しない相手と通信してしまったりする問題です。

この問題に関しては、JPNICの専門家チームの報告書※6などをこれまでにも何度かご紹介していますが、その後の進捗としては、この問題へのICANNの対応について、ICANNから委託された第三者の調査機関であるJAS Global Advisorsから理事会に最終報告書※7が提出されました。

本報告書では、SLDの登録に対する制限解除の条件、.mailが保留となっていること、名前衝突をしているネットワークへの周知のために、一定期間127.0.53.53のループバックアドレスをDNSに設定することが推奨されていることを含めて、14の勧告が挙げられています。国内でも、新gTLDにおけるセカンドレベルドメイン(SLD)への登録制限については、「ある新gTLDで特定の文字列を登録しようとしたユーザーが、既にほかの誰かに登録されているわけでもないのに、なぜかレジストリから登録を拒否される」として、一部話題になりましたが、報告書では90日の期間終了後、登録制限を解除することが勧告されています。

127.0.53.53に関する勧告は、当該アドレスレンジが特徴的なIPアドレスであるため、このIPアドレスがログに残された場合システム管理者が気付き、状況確認につながりやすいことが理由として挙げられています。一方、SSACからも、JAS報告書に対するコメントをまとめたレポートが出ています。これらを総合的に検討した上で、今後理事会が対応の判断を発表する見込みです。名前衝突問題についてはICANNのWebサイトだけではなく※8、JPNICでも本問題を取りまとめたWebサイトを公開しており、随時国内に向けて必要な情報は更新して参ります。

gTLD WHOISの見直し

gTLD WHOISのあり方について、理事会の指示に基づき設立された専門家グループ(Expert Working Group: EWG)による最終報告書が、理事会に提出されました※9。これまでもご紹介してきた通り、報告書では登録すべき情報と公開情報を一から整理し、適切だと思われるWHOISのモデルを提案しています。

目的に応じて情報の参照権限も管理すること、全gTLDの登録情報を1ヶ所のデータベースにまとめて参照できるWHOISを提供することが、この新たなモデルの特徴として挙げられます。名称もWHOISから「gTLD Directory Services」に改められています。まだ草案の段階ですが、この検討では.comや.netなどの多くのユーザー数を抱える既存のgTLDのWHOISにも適用することが想定されているため、注視していく必要がありそうです。

理事会決議

ICANNロンドン会議期間中の理事会決議の詳細は、JPNICが公開しているICANNトピックス※10をご覧ください。

次回のICANN会議

2014年10月12日〜16日にかけて米国・ロサンゼルスで開催される第51回ICANN会議のレポートは、2015年3月発行予定の次号にてお届けします。

http://la51.icann.org/en/

写真:同時通訳の様子
● 会議では複数の言語による同時通訳が提供されています

(JPNICインターネット推進部/IP事業部 奥谷泉)


※1 NTIA IANA Functions' Stewardship Transition
https://www.icann.org/resources/pages/transition-2014-03-23-en
※2 セッションの発言録
・「ICANNの説明責任」に関するセッション
Enhancing ICANN Accountability
http://london50.icann.org/en/schedule/thu-enhancing-accountability
・「IANA機能の監督権限移管」に関するセッション
Transition of NTIA's Stewardship of the IANA Functions
http://london50.icann.org/en/schedule/thu-iana-stewardship-transition
※3 IANA Stewardship Transition Coordination Group (ICG) Resources
https://www.icann.org/resources/pages/coordination-group-resources-2014-07-18-en
※4 Report on ICANN50 London
https://centr.org/system/files/share/centr-report-icann50-20140627_0.pdf
※5 ICANNによる国際化ドメイン名に関する技術的な説明会
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2014/20140502-01.html
※6 JPNICによる名前衝突問題に関する報告書
・「新gTLD大量導入に伴う名前衝突(Name Collision)問題とその対策について」(報告書)
https://www.nic.ad.jp/ja/dom/new-gtld/name-collision/name-collision-report.pdf
・「『トップレベルドメイン名の大量導入』に伴うリスク検討・対策提言の報告書発表について」
(報告書概要編)
https://www.nic.ad.jp/ja/dom/new-gtld/name-collision/summary.pdf
※7 Mitigating the Risk of DNS Namespace Collisions
https://www.icann.org/en/system/files/files/name-collision-mitigation-study-06jun14-en.pdf
※8 ICANN 50 - Name Collision
http://london50.icann.org/en/schedule/mon-name-collision
※9 Expert Working Group on gTLD Directory Services (EWG) Final Report Overview
http://london50.icann.org/en/schedule/mon-ewg-final-overview
※10 ICANN通常理事会(2014年6月26日開催)決議概要
https://www.nic.ad.jp/ja/icann/topics/2014/20140702-01.html

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