ニュースレターNo.58/2014年11月発行
第40回ICANN報告会レポート
ICANNロンドン会議の開催を受け、恒例となっているICANN報告会をIAjapanとの共催で開催しましたので、簡単にご報告します。
今回の報告会では、シンガポールにあるICANNのアジア拠点から来日中の、Kelvin Wong氏にご登壇いただき、ICANNスタッフと日本のユーザーが直接意見を交換する、貴重な機会ともなりました。最近注目度を増しているインターネットガバナンスに関する話題については、直後に同じ場所で開催した第2回日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)においても報告・議論されたため、ICANN報告会はいつもよりコンパクトなものとなりました。
- 日時:2014年8月19日(火) 16:00〜17:30
- 会場:シスコシステムズ合同会社 東京本社会議室
プログラム: (話者 敬称略)
ICANNロンドン会議概要報告
JPNIC 奥谷 泉
ICANN国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 高松 百合
ICANNルートサーバー諮問委員会(RSSAC)関連報告
株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 堀田 博文
ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 山口 修治
名前衝突関連報告
JPNIC 小山 祐司
ATLAS II (第2回At-Largeサミット)関連報告
インターネットソサエティ日本支部(ISOC-JP) 北村 泰一
アジア太平洋地域におけるICANNの公共責任
The Internet Corporation for Assigned Names aand Numbers (ICANN) Kelvin Wong
全体概要
JPNICの奥谷より、IANA監督権限の移管、ICANNの説明責任、新gTLD関連動向、gTLD WHOISの見直しについて主に報告しました。内容については、前半の「ICANNロンドン会議報告」で既にご紹介していますので、ここでは省略します。
国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
ccNSO関連報告では、JPRSの高松氏より、主にIANA機能の監督権限移管に関する調整グループ(Coordination Group)に参加するメンバーの検討状況(ICANN会議後決定)についてご紹介をいただきました。
ルートサーバー諮問委員会(RSSAC)関連報告
JPRSの堀田氏より、RSSACの近況についてご報告いただきました。前回RSSACに関して報告いただいたのは2013年8月の第37回ICANN報告会のため、約1年ぶりということです。RSSACとは何かということから説明いただき、自身の構造改革完了後のメンバー、直近の活動として「ルートサーバーサービスの基準の想定」と「ルートサーバーの挙動等に関する計測の手引き」という文書2点についてドラフト発行後推敲中であることについてもお話しいただきました。
政府諮問委員会(GAC)報告
GAC報告では、総務省の山口氏より主に以下の点についてご報告いただきました。
- ハイレベル政府会合
- 新gTLD関連のGAC勧告の状況
- IANA機能監督権限の移管およびインターネットガバナンスの今後の展開
ハイレベル政府会合では、IANA機能の監督権限移管について、GACの業績およびICANNにおける政府の役割強化、NETmundial成果の見直しなどについて議論があったことが報告されました。日本政府からも、
- インターネットガバナンスにおける情報の自由な流通の確保
- マルチステークホルダーアプローチの重要性を強調し、IANA機能移管に向けて政府も、その一員として役割を果たすべき
- しかし、行き過ぎたガバナンスとならないよう留意が必要なこと
- 移管後のメカニズムにおける政府の役割とGAC機能のレビューを一体的に捉える必要があること
などを指摘したとのことです。
新gTLDについては、
- セーフガード助言に関するもの
- .wineおよび.vinについてロンドン会合でも合意できなかったこと
- 政府間機関(IGO)の名称保護について、理事会新gTLDプログラム委員会(NGPC)はGACと意見の異なるGNSOの勧告を採用したため、GNSOとの調整を続けることで合意したこと
- 赤十字・赤新月について、各国での関連名称について恒久的な保護の必要性を助言したこと
などが挙げられました。
名前衝突関連報告
JPNICの小山より名前衝突関連報告として、「既存のgTLDに存在しないから問題無い」として組織内ネットワークなどで利用されていたドメイン名が、新しくgTLDとして追加されたドメイン名と衝突してしまう問題である名前衝突発生時の対策についての枠組み(Name Collision Occurrence Management Framework)について話がありました。特にレジストリが実施する対策である、Controlled Interruption(委任を一時的に中断する方策)について主に報告しました。これは委任の停止を90日間実施するとともに、当該TLDへの問い合わせに対して、ループバックアドレス「127.0.53.53」を応答するというものです。
◆ ATLAS II関連報告
ISOC-JPの北村氏からは、第2回At-Largeサミット(ATLAS II)についてご報告いただきました。以下五つの主要テーマごとにグループ分けされ討論を行い、各グループには質問が与えられ回答を提出し、それらをまとめて宣言(Declaration)として理事会に提出したとのことです。
- マルチステークホルダー指向の未来
(The future of multistakeholderism) - ICANNのグローバル化(The globalization of ICANN)
- グローバルインターネット:ユーザーの視点から
(Global Internet: The User Perspective) - ICANNの透明性と説明責任(ICANN Transparency and Accountability)
- ICANNにおけるAt-largeコミュニティとの関与
(At-Large Community Engagement in ICANN)
アジア太平洋地域におけるICANNの公共責任
ICANNのKelvin Wong氏からは、ICANNアジア拠点の状況、公共性への責任に関する部署(Development and Public Responsibility Department: DPRD)がICANN事務局に設立されることが発表され、重点活動項目として「教育」「ローカライゼーション」「次世代の教育」「発展途上国の参加」が提案されたとのことです。ローカライゼーションについては、韓国インターネット振興院(KISA)と共同でツールキットを開発したことで、ICANNのWeb情報をローカライズしやすくなることが紹介されました。
あとがき
今回は、インターネットガバナンスを議論する場であるIGCJ会合を本報告会に引き続き開催したため、ICANNでも昨今話題の中心となっているインターネットガバナンス関連の報告は、ICANN報告会では控えめとなりました。ただ、IGCJ会合とのシナジー効果が発揮されたようで、通常より多くの方にご参加いただけたように思います。最後に、会場を提供していただいたシスコシステムズ合同会社の皆様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
JPNICのWebサイトに、報告会の資料および動画を掲載していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
□第40回ICANN報告会
https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20140819-ICANN/
(JPNIC インターネット推進部 山崎信)