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ニュースレターNo.58/2014年11月発行

IGFイスタンブール会合(IGF 2014)報告およびMAGによるプログラム選定について

Internet Governance Forum(IGF)は、インターネットガバナンスに関する対話の場として2006年から毎年開催されている、国際連合主催の会議です。誰でもが自由に参加でき、今年2014年は9月2日(火)から5日(金)の4日間、トルコのイスタンブールにて開催されました。本稿では、前村昌紀からIGFイスタンブール会合の様子をご紹介します。また、会合の報告に先立ち、IGFのプログラムの選考を行うMultistakeholder Advisory Group(MAG)によってどのようにIGFのプログラムが選ばれているのか、2014年のMAGメンバーに選ばれた奥谷泉から、その選考過程についても詳しくご紹介したいと思います。

IGFの特徴とイスタンブール会合のプログラムについて

IGFとは

IGFの正式名称は、Internet Governance Forumです。国際連合主催の会合で、その名の通り、インターネットガバナンスに関する課題について、参加者間で議論を行うカンファレンスです。

大きな特徴は、誰もが自由に参加できることで、IGFは何らかの決定を行う場ではないとし、対話を重視している点です。つまり、インターネットに関与する、異なる立場のステークホルダー(政府関係者、技術者、学者、市民社会、企業など)に対して、相互対話の場を与えるものとして設定し、政策の策定や執行が必要な場合は、IGFでの検討を経た上で、それぞれのステークホルダーの権能に従って行われるものとしています。

2006年の第1回からこれまでに至る、IGFの詳しい経緯に興味のある方は、「インターネットガバナンスとは何か」をご覧ください。

MAGによるプログラムの選考

プログラムの選考は、MAG(Multistakeholder Advisory Group、マルチステークホルダーの立場でアドバイスをするグループ)が行います。MAGは、ステークホルダーグループ(政府、学術、市民社会、企業、技術コミュニティ)や性別、地域などのバランスを考慮して国連事務局により選任され、約50名のメンバーにより構成されています※1。 筆者も、ISOC(Internet Society)の推薦を受け、技術コミュニティーのメンバーとしてこのMAGに参画しています。

MAGの中で、存在感を示しているのは米国です。国別では最多となる7名のメンバーが選出されており、Google社、Microsoft社といった企業や、米国商務省電気通信情報局(NTIA)のベテラン担当官が参加し、官民ともにコミットしていることが感じられます。

今年は合計208件の応募があり、これを約半数までに絞るようMAGメンバーが選考を行いました※2。選定基準は内容だけではなく、途上国からの応募、初応募といった要素も加味された上で採点されます。地域別に見ると、東アジアは相対的に応募数が少ない中、中国が今回積極的に提案を提出し、一部のMAGメンバーの中で着目されていました。

プログラムの検討にあたり、MAGでの議論を知りたい場合、MAGメンバー以外でも状況が追えるようになっています。例えば、対面でのMAG会議では、オンサイト・リモートいずれの方法で誰もが参加し、コメントを行うことが可能です。ただし、プログラムの選定はMAGメンバーのみが行います。また、メーリングリストのアーカイブと会議記録も、誰もが参照できるようにIGFのWebサイトで公開されています。

プログラムの見どころ

セッションの目的に応じて、セッションの検討と選定方法が異なり、内容も多様なセッションが開催されることは、IGFのプログラムの特徴でもあります。

MAGメンバーが、サブテーマに基づき企画するメインセッションは、今年のインターネットガバナンスにおける主な課題と、異なる立場からの意見を確認する上で、お勧めです。前項で紹介した通り、公募に基づき選定されるワークショップは、多くの場合、メインセッションよりも、応募者の視点で個々の課題に踏み込んで議論をするので、特に興味があるトピックスがあれば、議論を聴いたり、意見を述べやすいのではないかと思います。

メインセッションの中で、特に今年らしいものは、以下の3セッションです。

  • IANA機能の監督権限移管
    • NTIAの発表を受け、IGFでも議論
  • ネットワークの中立性(Network Neutrality)
    • NETmundialでは結論が出ませんでしたが、重要なトピックとしてIGFのメインセッションとして採択
  • インターネットガバナンスの今後のあり方・IGFの役割
    • WSISから10年が経過し、その成果の見直しが進められている中、IGFの継続や改善も含めて、継続課題にどう取り組んでいくべきかを議論

また、今年の新たな試みとして開催される「Best Practices Forum」は、MAGで検討したそれぞれのテーマごとの最適事例を紹介し、文書化するというセッションでした。事前に、テーマごとにメーリングリストで議論をし、関心のあるトピックがあれば、適切な事例が反映されるよう議論に参加することが重要になってきます。トピックスとしては、詳細は次項で説明しますが、ネットワーク運用にも関わりのあるテーマも挙げられました※3

IGFの改善に向けた取り組み:議論の文書化・関係者への配布

IGFの改善に向けたMAGでの議論を踏まえ、議長のJanis Karklins氏が提示した取り組みを、簡単にご紹介します。

Best Practices Forumの開催

次の五つのトピックスにおいて開催、各セッションのまとめを文書化して配布物とし、これにより実践的な参考情報を提供することをめざしました。

  1. マルチステークホルダーによる意義のある参加メカニズムの構築
  2. spam等望まれていない通信への規制や回避策
  3. コンピュータ緊急対応チーム(Computer Emergency Response Team; CERT)の設立と支援
  4. ローカルコンテンツの策定を実現するための環境
  5. オンライン上での児童保護における最適な事例

トピックスごとに最適な事例の公募を経て、IGFでのセッションの議論と併せて、外部の専門家が文書の取りまとめを実施しました。トピックスごとのメーリングリストは、誰でも参加登録が可能であり、IGF開催後も継続して運用されています※4

IGFの有効事例の募集

MAG議長の名の下で、有益な政策や取り組みにつながった事例を募集し、取りまとめた結果がIGFで発表されました。

IGFでの議論結果の取りまとめと改善への取り組み

今回のIGFでは、メインセッションのテーマにおける設問、合意事項、合意されなかった事項をまとめ、結果をより明確な形で提示することになりました。議長より、Way Forwardとして推奨をまとめ、地域や国レベルのrIGFやnational IGFにも参考として共有される予定です。また、地域・国レベルでの取り組みを翌年のグローバルIGFで共有することも検討されています。

議論結果の能動的な共有

イスタンブール会合における議論の結果は、政府間組織(IGO)、非政府間国際機構(INGO)、I*(アイスター)等の技術コミュニティの団体、主な市民社会団体などへ共有されます。そのために、それぞれのコミュニティへの周知を依頼することになりました。

基本的には、主なセッションでの議論を文書に取りまとめ、さまざまな立場の関係機関に配布することで、それぞれの立場から、対策を検討する上での参考としてもらえることを、念頭に置いています。

なお、今回のIGFは終了しましたが、Best Practices Forumについては、引き続き議論のためのメーリングリストが運用されています。アーカイブも参照できますので、興味のあるトピックスがありましたら、ご覧になってみてください。

写真:会場の様子
● IGFイスタンブールにおけるBest Practice Forumの一つ。右から2番目が筆者

(JPNIC インターネット推進部/IP事業部 奥谷泉)


※1 About the MAG
http://www.intgovforum.org/cms/magabout
※2 応募されたセッションと選考結果
http://www.intgovforum.org/cms/147-igf-2014/1851-igf-2014-workshop-status
※3 Draft Programme(執筆時は基本構成のみ公開、公募セッション未掲載)
http://www.igf2014.org.tr/programme.html
※4 IGF2014Best Practices Forums
http://www.intgovforum.org/cms/open-call-to-join-igf-best-practices-forums-preparatory-process

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