ニュースレターNo.60/2015年7月発行
2014年度IPv6対応状況に関するアンケート結果について
JPNICでは、2015年1月21日(水)〜2月20日(金)の1ヶ月間、IPアドレス管理指定事業者(以下、指定事業者)およびプロバイダ非依存アドレス割り当て先組織(PI割り当て先組織)を対象に、IPv6の対応状況および利用状況、またJPNICが行うIPv6普及促進活動に対する意向をうかがうアンケート調査を実施しました。
このアンケートは、IPv4アドレス在庫枯渇後の日本の事業者、およびユーザー組織におけるIPv6の対応状況または利用状況について、定期的に調査を行い、その進捗状況を観測することを目的としたものです。本稿では、このアンケート結果の概要についてご報告いたします。
調査方式と回答数
今回のアンケートは、指定事業者およびPI割り当て先組織の合計およそ2,000件を対象に、Webアンケートシステムを利用した無記名回答方式で調査を実施しました。調査対象の約1割にあたる204件の回答を得ることができ、回答者の内訳としては、指定事業者が47件、PI割り当て先組織が157件となりました。指定事業者については全404事業者中、12%に回答いただいたことになります。
指定事業者の対応状況
指定事業者に対しては、サービス提供者の立場として、自社のサービスやネットワークのIPv6対応をどの程度進めているかを確認しました。回答結果は次の通りです。
指定事業者のIPv6対応状況
回答者の半数以上が全部、あるいは一部のサービスにおいてIPv6対応が完了しています。一方、対応予定のない事業者も8組織存在し、主な理由として必要性がない、あるいは顧客需要がないことをあげています。
サービス種別ごとに見た場合、一般ISPの対応が最も進んでいます。3割以上が「サービスおよび社内インフラを含め、すべてのネットワークにおいてIPv6対応が完了している」と回答しており、ユーザーが希望すればIPv6によるインターネット接続サービスを利用できる環境が進みつつあるのではないかと思われます。またASP/コンテンツプロバイダで対応している割合が多くなっていて、事前の予想と異なる結果となりました。その他のサービス種別については、対応完了しているのは2割に満たない状況ですが、対応作業中や計画検討中といった、IPv6に対して前向きに取り組んでいる状況がうかがえます。
PIアドレス割り当て先組織の対応状況
指定事業者以外の、ユーザーの立場であるPIアドレス割り当て先組織のIPv6利用状況を確認すると、全体として見た場合、IPv6接続サービスを利用している割合は23%となっていました。
IP指定事業者以外のIPv6利用状況
回答者組織種別は、一般企業40%、学校/研究機関が60%弱です。組織の種別ごとに見ていくと、学校、研究機関の3割以上が既にIPv6接続サービスを利用しています。「今後予定がある」も含めると、5割以上がIPv6の利用意向があるようです。おそらく、SINET接続組織の状況が反映されているのでは、と推測できます。また、公共団体、非営利組織についても、現状で利用しているという組織はないものの、今後予定しているという割合が6割を占めています。
一方で、一般企業については、既に利用している割合が1割以上ですが、「利用予定なし」という回答が8割近くありました。恐らく、現状のIPv4によるネットワークで特段の支障がなく、新たにIPv6利用のための投資等を行う必要がないという判断によるものと思われます。IPv6の必要性、あるいはサービス提供の現状などをさらに周知する必要があると思われます。今後、一般ユーザーやコンテンツ側の対応が進んでいく中で、この割合がどのように変化していくかに注目していきたいと思います。
情報提供に関する要望
「JPNICからIPv6に関するどのような情報提供を望むか」というニーズについて確認したところ、「日本国内のIPv6対応状況、動向」について望む声が、最も多い結果となりました。
IPv6に関する情報提供のニーズ
IPv6に関する最新の技術情報 | 115 |
IPv6対応製品に関する情報 | 76 |
IPv6のセキュリティインシデントに関する情報 |
104 |
自社の対応に関する具体的な助言、アドバイス | 59 |
他事業者のIPv6対応事例 | 81 |
国内のIPv6対応状況、動向 | 148 |
海外のIPv6対応状況、動向 | 67 |
IETFの標準化動向 | 37 |
その他 | 10 |
合計 | 697 |
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以前から事業者の方からは、IPv6の対応に関しては、「早すぎると回収の見込みが立たないうちに投資を行うことになり、遅すぎると他社に顧客を奪われる原因になるため、ちょうどよいタイミングを見極める必要がある」という声をいただいておりました。そのため、他事業者や国内全体の動向について知りたいというニーズが多いのではないかと思われます。
また、IPv6に関する情報提供のニーズに関連して、IPv4の状況についても情報提供を望む意見もありました。さらに、IPv6普及をもっと積極的に進めることを望む意見も寄せられています。
その他、技術情報やセキュリティに関する情報の提供を望む声も多く、前述のセミナー等も含めた情報提供活動に活かしていきたいと思います。
セミナーへの要望
JPNICでは、ネットワーク管理者およびサーバ管理者向けのIPv6ハンズオンセミナーを有償で開催し、IPv6ネットワークやサーバの構築、運用に関わる技術者養成に努めています。
- JPNIC技術セミナー
- https://www.nic.ad.jp/ja/tech/seminar/
本アンケートでは、今後のセミナー開催計画検討にあたり、受講状況や今後の受講意向についても確認しました。
IPv6ハンズオンセミナーの利用意向
受講したことがある | 9 (4.4%) |
受講予定(申込済み) |
1 (0.5%) |
現在開催が予定されている日程で受講してみたい |
0 (0.0%) |
日程あるいは開催場所が合えば受講してみたい | 128 (62.7%) |
受講するつもりはない | 66 (32.4%) |
その結果、受講経験者はまだ回答者の1割以下でしたが、6割以上の方が今後の受講意向を示す結果となりました。特にIP指定事業者以外への案内がこれまで積極的に行えてなかったことを考えると、継続的に開催する価値があると思われます。
セミナープログラムに対する具体的な要望では、IPv6ネットワークの構築や運用の実践的な手法、コスト面なども含めた事例の紹介を希望する意見が多くありました。一方で、マネジメント、技術営業、アドレス管理者など技術者向けに限らない内容を希望する意見もありました。また、セミナーの内容とは別に、地方開催、受講料の低減、オンラインでの受講などの要望もあがっています。
JPNICとしては、アンケート結果および記述いただいた意見をもとに、今後のセミナー運営の参考にしていきたいと考えています。
最後に
冒頭にも記載したとおり、本アンケートは定期的に、最低でも年1回程度の頻度で継続して実施し、日本におけるIPv6対応の進捗度合いを観測できるようにしていく予定です。
これによって、IPv6普及が進んでいるヨーロッパ地域や、IPv4アドレスの確保が困難になっている他のアジア地域との比較等ができるようにし、事業者や、ユーザーの参考になるようにしていきたいと思っていますので、ご協力をお願いいたします。
なお本稿では、アンケート結果の概要についてご報告しましたが、結果の詳細については次のURLで公開しておりますので、あわせてご覧ください。
- 2014年度「IPv6対応状況に関するアンケート」結果
- https://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv6/enq/2014.html
また、このアンケートを含め、次のURLでIPv6関連情報を積極的に提供していきますので、こちらについてもご要望等があれば逐次いただけると幸いです。
- IPv6関連情報
- https://www.nic.ad.jp/ja/ip/ipv6/
最後になりましたが、ご多忙の中アンケート調査にご協力いただき、ご回答いただいた方に感謝いたします。ありがとうございました。
(JPNIC IP事業部 佐藤晋)