ニュースレターNo.63/2016年7月発行
JPNIC会員企業紹介
「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。
今回は、1986年6月に設立され、今年30周年を迎えた中部テレコミュニケーション株式会社を訪問しました。中部地域では、オレンジ色と黄色のカラフルなパンダのキャラクター「ワイファイ」、アイドルグループ「BELLYBUTTON (ベリーボタン)」、名古屋で活動する男性グループ「BOYS AND MEN (通称ボイメン)」が登場するコマーシャルなどでご存じの方も多いのではないでしょうか。
顧客の利便性を第一に考えたサービスを提供することに対して、ひたむきな努力を重ねる当社の姿勢は、徹底的に不具合を取り去った上でお客さまに機器を提供しようとする取り組みや、IPv6といった新技術への早期対応などに見て取れます。サービス内容は、先進的でありながらも「シンプルであること」をモットーにしており、その客観的な評価は、第三者によるお客さま満足度調査にて10年連続でNo.1の評価を受賞していることなどが物語っています。
社員が共有すべき価値観やあるべき姿を明文化した「ctc -WAY」を毎月確認する時間を設けたり、社内運動会を行ったりして連帯感を高め、何事にも全社一丸となって体当たりで取り組む姿勢が、とても印象的なインタビューとなりました。
中部テレコミュニケーション株式会社 | |
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住所: | 〒460-0003 名古屋市中区錦一丁目8番8号 |
設立: | 1986年 (昭和61年) 6月3日 |
資本金: | 388億1648万円 |
代表者: | 代表取締役社長 竹山 博邦 |
URL: | https://www.ctc.co.jp/ |
事業内容: | https://www.ctc.co.jp/information/
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従業員数: | 695名(2015年4月現在) |
地域に根ざした事業展開
―まずは、貴社の事業内容や事業展開の状況について教えてください。
若狭:1986年6月に、中部電力株式会社が中心となり「中部テレコム・コンサルティング株式会社」として設立され、1987年10月に「中部テレコミュニケーション株式会社(ctc)」となりました。今回は、設立から30周年となる記念の年にご訪問いただきました。
最初は法人向け光ネットサービスを主体とし、その後データセンター事業にも着手して事業を拡充してきました。2002年には個人向けFTTHサービス「コミュファ光」を開始し、今では法人顧客は1万社を超え、コミュファ光の契約者数も70万件を突破して74万件となりました。中部地域のお客さまに支えていただき、データセンターなども展開するようになりました。
―会社の今までの歩みと、KDDIグループとしての利点などがあれば教えてください。
小川:1999年11月には、弊社を含む電力系通信事業者3社で株式会社パワードコム(現KDDI株式会社)を設立し、2001年10月にはパワードコム社に企業向けデータ通信サービスを分割営業譲渡しました。2006年1月に当時の親会社であった中部電力株式会社からコミュファ光を事業継承し、2008年4月には筆頭株主が異動してKDDI株式会社の子会社になるという変遷があります。企業としてどちらの方向に舵を切るのか、というステップが何回かあったのは、珍しかったように思います。
パワードコム時代には東京で勤務していましたので、その時の人脈は今でも続いています。当時は、日本の取り組みが先進的だったメトロイーサネットの知見を共有したりしていました。
会社としては、中部電力の電線や光ファイバーなどのインフラ技術力に加え、KDDIの通信事業の技術力が加わり、双方の強みが相乗効果を生み出していると思います。細かい点では、トラブル発生時などは、KDDI側の技術者に聞けばアドバイスがもらえたり、中部電力から光ファイバーケーブルを引いていただいたりするのが強みですね。
―中部地域における、他社とのシェアやすみ分けはどのような状況でしょうか。
小川:NTT社は西日本というエリアで中部地域を管轄していますし、弊社は中部地域すべてをカバーしているということでもないので、管轄エリアが異なる以上、中部地域の中でどの事業者が強いかは、一概には言えないかもしれません。シェアということで言うと、FTTH戸建てエリア内では、40%強と思います。
「常にお客さま目線で」―最近の注目事業
―国内初となる、迷惑電話フィルタ機能をホームゲートウェイに内蔵した迷惑電話ブロックサービス「あんしん電話着信サービス」を提供されていますが、どのようなものでしょうか。
若狭:これは、迷惑電話番号データベースに登録された相手からの着信を、宅内に専用装置を増設することなく自動で拒否できるサービスです。この迷惑電話番号データベースには25,000以上の番号が登録されており、随時更新されています。
弊社のサービスでは、ホームゲートウェイを弊社から提供していることもあり、その中にさまざまな機能を組み込んでしまおうという発想でサービスが組み立てられています。お客さまの声でも「いろいろ装置が増えるのは煩わしい」というご意見が多く、そういったお客さまの声に応え、装置に関しても手順に関しても「なるべくシンプルに」を心掛けました。そうしたシンプルさを追求した結果、お客さまは申し込みさえすればあとは何もせずに、弊社側の設定変更だけとなります。また、お客さま専用Webサイトから迷惑電話番号のデータベースに無い番号(拒否したい相手)も簡単に設定できるようにしています。こうした手軽さからか、予想よりも多くのお客さまにご利用いただいており、提供側としても満足のいくものになったと感じています。
―こうしたサービスを提供する際に、気をつけていることはありますか。
小川:お客さまにとって分かりやすくシンプルに、ですね。事業者側視点で考えてしまうと、ホームゲートウェイに組み込まず、個別に装置をつけたほうが分かりやすくシンプルです。お客さま視点に立って開発することを、徹底させています。
「光だから、できること。」-光でコミュニケーションを豊かに
―株式会社J.D.パワーアジア・パシフィック社による顧客満足度調査でSMB (中堅・中小企業)市場セグメントにおける「お客さま満足度10年連続No.1」となったり、オリコン株式会社が実施した「2015年オリコン日本顧客満足度ランキング「プロバイダ(中部・北陸)」戸建て部門」において第1位を受賞されたりしています。お客さま満足度10年連続No.1受賞とは、生半可な努力では達成できないと察しますが、常に心掛けていることなどはありますか。
若狭:小回りの利く規模なので、お客さまの声をすぐに技術面に反映できるということが弊社の特徴として挙げられます。営業から技術サイドへの、社内の横連携も強いですね。技術担当も営業担当も一体感を持って取り組んでおり、特にお客さまのご要望が、営業などのフロントだけではなく技術側も見えているということが大きいのではないでしょうか。
小川:社内でも、積極的に顧客満足(CS)の向上に取り組んでいます。このように、「No.1」などと細かいデータが出てくると、他社と比較することができるし、劣っているのは何なのか、優れていることはより伸ばそうといった意識が高まりますね。弊社の規模を考えますと、サービスで圧倒的な差別化をしておく必要がありますから、地域密着の差別化サービスに取り組んでいこうと思います。小回りが利くというところに、ctcの良さがあると思っています。
―コーポレートスローガン「光だから、できること。」では、光をフィーチャーされていますね。そこに込める想いなどを教えてください。
若狭:光ファイバーで中部地域のコミュニケーションを豊かにしていこう、と考えています。せっかく光を張り巡らせているので、それで届けられる「想い」を届けようという気持ちがあります。単なる土管屋と思われてしまうと、それはそれで寂しいもの。そういった印象をどうにか取り去り、どれぐらい違うようにイメージしてもらえるかという観点もありますね。
光だからこそいろいろとできるのではないか、と社員でも話をして、探っているところです。
―社員でそういう話ができるというのは、実に素晴らしいですね。社内の風通しが良い証拠ですね。皆さんが仲良く、フランクに話せる環境があるのでしょうね。
若狭:社内コミュニケーションの活性化という意味では、2011年に社内運動会をはじめて今年で6年目になります。普段メール・電話でのコミュニケーションが多いですが、時には直接的に親睦を深めようというのがコンセプトです。毎回600人くらい集まりますよ。
企画などは入社2年目の社員がまとめます。地方から参加する社員らの段取りなども含めて、いろいろと準備します。これにより、同期の連帯感が醸成されるだけでなく、大きな仕事をどう回していくのかということを覚えさせる狙いもあります。また、家族ぐるみの参加ですから、普段は厳しい上司も、お子さんたちと一緒にいると普段は見せない優しい顔になる、そういう気付きも狙いの一つです。
体当たりな種目もありますが、特にそういう種目に人気があったりします。私も、昨年はよく走ってボロボロになりましたよ(笑)。
―2014年2月に「ctcデータセンター(DC)名古屋丸の内」が開所して、DCは3拠点となりましたね。
若狭:はい、名古屋市内に3拠点のデータセンターを保有しています。名古屋駅南側、栄、丸の内の3ヶ所で名古屋の重要拠点を押さえており、三つ目の丸の内は中部地域最大級の都市型DCサービスを提供しています。おかげさまで需要は堅調です。
小川:DCは、セキュリティの関係で普通は場所を隠すものですが、日本銀行前の立地ということで、行きやすくハイスペックなものを作ろうと考えました。DCからは名古屋城が見えることもあり、蔵を意識した魅せるDCとしました。
―2016年4月に熊本地震があり、震災対策が再び注目されています。中部地域ということで、東海地震に備えて何か工夫されている点などがあれば教えてください。
小川:もちろん、BCPも東海地震を意識して対策しています。東海地震、南海トラフ地震などに対する備えが必要で、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などの災害を経験している方が実際にいらっしゃるので、体験者のお話を聞きながら対策を万全にしていこうと考えています。また、地域事業者の運用部会というものがあり、災害時には電源車を連携してすぐに出す、などといった取り決めもしています。
―今ほど「連携して」というキーワードがありましたが、この業界は、運用面における同業他社とのノウハウの共有がとても必要となる場面があり、組織を超えた連携を行う文化があって、またそれが大切であると強烈に感じています。貴社はコミュニティ活動に積極的で、継続的に実施されている電力系NCC情報交換会や、JANOG37 (2016年1月)のホストを務められており、経営層からの理解もあるのでは、という印象です。これらのコミュニティ活動に対する組織としてのお考えは、どのようなものでしょうか。
若狭:技術コミュニティの活動として、電力系NCC情報交換会は、組織を挙げてしっかり取り組もうとしています。JANOGのホストは一度きりのものですが、東京ばかりでそういうことが行われるのではなく、名古屋でもネットワークやサーバーの話を盛り上げ、関係者間で連携を深めていこう、とホストしたものです。つながりが感じられて、大変良かったと思います。
業界に先駆けて、IPv6接続を標準で提供
―IPアドレスの管理をしているJPNICから見ると、貴社はIPv6への取り組みが業界の中でも先進的だと思います。「コミュファ光」におけるIPv6対応についての苦労話などあれば教えてください。
若狭:おかげさまで、2012年8月に「コミュファ光」において、無償でIPv6を標準サービスとして提供してから安定して何のトラブルも無くきており、現在約8割のお客さまに提供しています。残り約2割は、IPv6が組み込まれていない古いメニューを継続利用のお客さまで、そこにまだ浸透していないということです。
―約8割のお客さまに提供というのは、高い浸透率だと思います。
小川:FTTHはONU (光回線終端装置)を使いますが、ルーターを他社から買ってきて提供するというのが一般的であるように思います。弊社のサービスでは、この通信に関わるホームゲートウェイまで標準で弊社から提供しているということもあり、「今後IPv6が出てくる。これは決定的な事実なので、今から対応できる形で提供した方が良い」と判断し、その機能も載せる形で提供することにしました。
もちろん、コストを下げるにはIPv4だけにした方が良いのでしょうが、IPv6対応にした方がその後の発展も期待できますし、IPv6を推進していきたいという思いもありました。また、いよいよIPv4が厳しくなった際に、通信がIPv4かIPv6かということをお客さまが意識しない方がいいということで、こういう形式にしており、お客さまはつなげれば知らないうちにセッションが張れているという状態です。これは、ルーターが自前の資産だからできることでもあります。
若狭:そもそも、弊社のネットワークではIPv6-IPv4フォールバックしないし、遅延も起こりません。お客さまが意識しないと使えないようなサービスではダメで、意識させないサービスを提供するのが事業者であると思っていますので、IPv6を意識させない作りになっています。
―それは、すごいですね!!
若狭:そうでしょう!?(笑)でも、「何が良いの?」というのが社内での当初の評価で、その良さを分かってもらうのに苦労したのです。だいぶ汗をかいてこれを実装し、2014年11月のInternet Week 2014の会場にて、「IPv6 Forum Worldwide Deployment AWARD」のIPv6 WORLD LEADER 2014として表彰されて、社内でも「そんなに良かったのね」と分かってもらえました。仕組みができてしまえば、現在のように使っていただいていますが、人に分かってもらうのは難しいですね。
―表彰を受け、かつそれだけのお客さまに提供しているとなると、他社からは「すごい!」と評価されているはずですが、社内ではそうでもなかったというのは意外ですね。ちなみに、IPv6のトラフィックはどのくらいですか。
若狭:IPv6のトラフィックは20%くらいありますね。GoogleやAppleなどが多いでしょうか。
―他に、IPv6対応でご苦労された点などはありますか。
若狭:もちろん、最初は「どの方式を採用すべきだろう」と悩みました。しかし、実際にIPv6を提供してしまえば苦労はありません。ですから、今となっては、他の事業者さんもIPv6を積極的に提供すれば良いのに、と思うぐらいです。
小川:モバイルが対応すると、だいぶ伸びそうですね。ただ、IPv4のトラフィックは無くならないと思います。いずれにしても、それは通信事業者側だけでコントロールできることではないので、コンテンツやサービスがIPv6対応になっていかないといけないという意味で、難しいですね。
ネットワークの機器はほぼIPv6に対応しており、今や、IPv6対応でない機器を探す方が大変な状況です。しかし、コンテンツが対応しないことには、というのもあり、弊社もコンテンツの波が来ることに対し、備えている状況です。
―貴社のデータセンターにおけるIPv6対応は、どのような状況でしょうか。
若狭:データセンターもIPv6の対応は完了しています。利用自体はお客さま次第であり、法人のお客さまの利用はまだそこまで上がっていないというのが実情です。セキュリティが気になっている、というお客さまがまだ多いですね。
World IPv6 Launchのサイト※におけるIPv6実装具合の評価において、弊社が世界で20位以内になっていることは、うれしい反面、まだIPv6は普及していないということなのではないかと感じます。弊社の事業規模からすると、順位は下がっていくと予想していたのに、なかなか下がっておらず、まだ10位台です。ここの順位が高いのは、IPv6の普及という点ではあまり良いことではないですね。今後もどうなるのか、密かに楽しみにしています。
- ※ World IPv6 Launch Measurements
- http://www.worldipv6launch.org/measurements/
妥協せず、最高のサービス提供をめざす
―最近は、「セキュリティ」のような側面がより一層フォーカスされる一方、「AI」や「IoT」といった前向きなキーワードも見られます。貴社では、どういうところに着目していますか。
小川:セキュリティは、この辺りではちょうど伊勢志摩サミットへの対策もありましたので、厳しいなということを実感しています。できればソーシャルメディアサービスやIoTなどの新しい方面に目を向けたい、という思いがありますが、「セキュリティ」は重くのしかかってくると言えますね。
―お二方は、どのような形でインターネットと関わるようになりましたか。そして、「インターネット」とは、どのような存在でしょうか。
小川:私は、インターネットが始まりの頃、企画部門にて、法人向けサービスでインターネットに関わるようになりました。当時インターネットは、オプション的な扱いでしたが、日に日に増して重要になってきたのを実感していました。
若狭:私は入社した時点でインターネットがありましたので、「盛り上げていくぞ!」という意気込みがありましたね。最初は配属が違いましたが、その後、インターネットサービスに関わり、とにかくいろいろなことを手掛けてきました。今は、インターネットは必要不可欠な存在で、取り組み方も変わってきましたね。
小川:今は、インターネットに対する扱いが昔と違うと思います。お客さま、特に企業にとってはインターネットはビジネスに不可欠であり、つながらないということは信じられないことです。当初は、法人向けには専用線でサービスを提供しており、インターネットが出現してきても、そもそも「ベストエフォート」でした。ところが、今はインターネットにも専用線並みのサービスが求められるようになりました。
若狭:インターネットには「自由」と「無秩序」という両面があって、その二つを両輪とはできない点に難しさがあります。企業はセキュリティが無いと潰れてしまいますからね。ですから、セキュリティに対する要請は多いと思います。そこに弊社としてどこまで応えられるのか、どういったポリシーで、どういった製品を提供するのか、それは第三者機関による評価で紋切り型に対応できるものでもないので、そのあんばいには正直悩んでいるところです。
インターネットは、お客さまや弊社のビジネスに必要不可欠なもので、いろんなモノが生み出されますが、激動する生き物という印象もあります。この生き物を用いて、いかに安定した運用を行うかが使命です。お客さまのビジネスを止めないためにも、われわれがどう徹底的に補強していくのかということが課題です。
また、今後のトラフィックが読めないですね。AIで人間がコントロールしないトラフィックが出てくるようになると、安定して提供するのが使命ではあるものの、どう予想してサービス提供していくか、難しい局面を迎えるかもしれません。機器の不備なども徹底的に調査しているので、ベンダーにも協力いただきながら対応しています。
小川:そう、その課題に対応していくのが、われわれのライフワークと言えるのかもしれませんね。トラフィックを見て、Windows Updateやイベントトラフィックに対応して……、そういった対応に大変ながら日々取り組んでいます。
また、機器評価も難しくなっています。短時間だけ止まった時も、原因不明と出たところも、とにかく徹底的に調査しています。いろんな製品を組み合わせてサービスを提供する中で、通信の安定性を保つために、開発するのと同じ心持ちでラボに同じ環境を設けて徹底的に不具合を潰すようにしています。それでも、バグが出る時には出るのですが。こうした弊社の姿勢には、ベンダーも驚いているかもしれませんが、協力いただきながら取り組んでいます。
―社員がベンダーよりも技術に詳しかったり、開発するような規模で機器の不備を最小限にしようとしていたりと、そこまで対応している事業者はなかなかいないように思います。技術者のレベルも高いのではありませんか。
小川:徹底的に不具合を潰し、自分たちで評価させるようにしており、ベンダーが気付かないバグを見つける社員もいますよ。それで育ってきているのかと思います。お客さまにご迷惑をお掛けするようなことは、プライオリティを高く位置付けて対応するようになっていますので、お客さまにご迷惑を掛けた時には、その情報共有は社内でかなりします。そのために結果として、対処については社員一丸となって危機感高く、早急に対応できていると思います。まぁもちろん、そういうことを続けていくと、後々が大変だということも認識しているわけですが(笑)。
―最後に、JPNICに対するご要望があればお聞かせください。
若狭:インターネットガバナンスに関する議論を世界でリードしてほしい、ということですね。そこは、JPNICさんにしかできないと思いますから。ルール作りは、声が大きいことが重要であるので、特にアジア地域では頑張ってほしいです。セキュリティ、DNS、経路ハイジャックなど課題は山積みだと思いますが、期待しています。あわせて、インターネット関連の教育ですね。小学校でもインターネット教育は行われるようになったとは言え、内容も時間数も限られたものですから、リテラシー教育を推進してほしいですね。
小川:教育の話は難しいですね。技術者の要員も足りていない気がしますし、技術者の技術レベルの確認も難しいところです。スキルの高い技術者をどう増やすのか、それが課題だと思います。ネットワーク屋を育てる役割はわれわれにもありますが、どうしても機器に依存する部分もありますので、頭を悩ませるところです。最近の技術者は、少数精鋭でパーツごとの専門に分かれるので、かつてのように全体を見通せる技術者は希有ですね。問題が起きた時に、どうしてそうなったのか、というのを突き詰めるだけでもすごく時間がかかるのです。
―教育に関しては、課題が尽きません。本日のお話を参考とさせていただきながら、JPNICでも検討して積極的に取り組んでいきたいと思います。本日は、誠にありがとうございました。