ニュースレターNo.64/2016年11月発行
第46回ICANN報告会開催報告
ICANNヘルシンキ会議を受け、恒例となっているICANN報告会をIAjapanとの共催で開催いたしました。本稿では、この第46回ICANN報告会の様子を簡単にご紹介します。
- 日時:2016年8月4日(木)13:30〜17:00
- 会場:JPNIC会議室
- プログラム:
(話者 敬称略)
1. ICANNヘルシンキ会議概要報告
ICANN Kelvin Wong/大橋 由美
2. 国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
株式会社日本レジストリサービス 高松 百合
3. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省 前 総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課企画官 菅田 洋一
4. GNSOにおけるポリシー策定活動状況報告
株式会社日本レジストリサービス 村上 嘉隆
5. ICANNルートサーバー諮問委員会(RSSAC)報告
株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文
6. WHOIS/次世代登録ディレクトリサービス(RDS)に関するディスカッション
モデレーター:一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 前村 昌紀
パネリスト:総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 金子 裕介
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 佐藤 晋
GMOドメインレジストリ株式会社 田村 宜丈
株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文
警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課 松岡 竜一郎
ICANN GNSO非商用ユーザー関係者部会(NCUC) Rafik Dammak
会議概要報告
これまでのICANN報告会では、会議全体の概要についてはJPNICからご紹介することが大半でしたが、今回は趣向を変え、ICANNアジア太平洋ハブオフィス(APAC Hub) Kelvin Wong氏、ICANNジャパン・リエゾンの大橋由美氏より、会議の概要をご報告いただきました。
前半の「ICANNヘルシンキ会議報告」でも報告した通り、今回はB会議形式という最も開催期間の短いものとなりましたが、参加者数は1,436名、セッション数も計199で、決して少なくはなかったとのことです。
また、Kelvin氏の報告では、コミュニティ横断セッションに焦点が当てられていました。このセッションでは、次回募集手順や権利保護、オークション収益といった新gTLDに関する話題や、次世代登録ディレクトリサービス(RDS)などの重要課題がテーマとして取り上げられていたそうです。
支持組織(SO)・諮問委員会(AC)に関する報告
国コードドメイン名支持組織(ccNSO)
今回のハイライトは、以下の2点でした。
- 移管後におけるIANAの活動内容のうち、ドメイン名に関する機能部分を顧客としてgTLDおよびccTLDレジストリがIANAをレビューするための委員会である、顧客常設委員会(Customer Standing Committee, CSC)へのccNSOからの代表選出
- TLDの委任・権限取り消し・撤退のそれぞれに関する、プロセスの定義と明確化についてポリシー策定プロセスの開始
政府諮問委員会(GAC)
IANA監督権限移管に伴うICANNの説明責任強化議論の結果、従来よりもコミュニティから理事会に対する牽制機能が強化されることになります。そのような権限を持った「強化されたコミュニティ」について、次の2点が主な論点となったとの報告がありました。
- GACが議決権を行使することの是非
- 議決権を行使する場合の範囲および基準
これらの議論では、各国の立場は明らかになりましたが、結論は出ず継続検討となったとのことです。
分野別ドメイン名支持組織(GNSO)
JPRSの村上氏からは、GNSOにおけるポリシー策定活動の状況に関して、次の二つについてご報告いただきました。
- 新gTLD導入に追加された権利保護メカニズムについて、2018年1月を目標としてレビューを実施する予定
- 新gTLD次回募集に向けて、一部の部会メンバーは早期募集を求めているものの、ポリシー検証に多くの時間を要しており、また名前衝突(Name Collision)についても分析が行われていないという議論がある
ルートサーバー諮問委員会(RSSAC)
JPRSの堀田氏からはRSSACについて、以下の3点を報告いただきました。
- ルートサーバーの概要について
- RSSACが公開している文書
- RSSACワークショップの報告:ルートサーバーにおける課題の明確化について議論
WHOIS/次世代登録ディレクトリサービス(RDS)に関するディスカッション
最初に、現在の状況についてのまとめを行い、各自の自己紹介と考えを述べてもらった上で議論に入りましたが、特にデータの正確性に関する議論が中心となりました。
議論では、WHOISが生まれた当時とは違い、現在はWHOIS情報が迷惑メールの送信に使われたり、それを避けるために捨てメールアドレスやプライバシー・プロキシサービスが生まれてきたという状況と、それにより本当に必要な際に連絡が付かない事態が生じているのではないかという考察が示されました。また、登録主体によって必要なWHOISは異なるのではないかという意見や、WHOIS自体の必要性に関する意見も述べられました。一方で、コストの問題もあるものの、ドメイン名関連の犯罪が増えていることも事実で、今のうちに取り組むべき課題だとの声もありました。
会場からは、コスト面やマルチステークホルダーによる検討背景から、実現性を危ぶむコメントも出ていましたが、それに対しては要件定義対象に対して声を挙げていくことが重要で、検討にあたってはトレードオフも必要ではないかとのコメントが返されていました。
今回の第46回ICANN報告会の発表資料および動画は、JPNIC Webサイトにて公開していますので、ぜひ併せてご覧ください。
(JPNIC インターネット推進部 山崎信)