ニュースレターNo.66/2017年8月発行
四国地域のブロードバンドサービス(FTTH)の状況とスキルアップの必要性
JPNIC理事 橋川 和利
私が在住する四国地域のブロードバンドサービスにおいて、 FTTH(光ファイバーを用いたアクセスサービス)契約の世帯比率は2016年3月末では、 徳島県が53.7%(全国第10位)、香川県が53.6%(全国第11位)と、 全国平均の50.4%を上回っています。 四国全体の契約数では前年同期から7.6%増と、 全国(4.8%増)を上回る割合で増加しており、特に愛媛県は8.5%増(全国第8位)、 高知県では8.4%増(全国第9位)と高い伸びを示しています(総務省四国総合通信局の発表 資料より※)。
※http://www.soumu.go.jp/soutsu/shikoku/press/20160726.html
このFTTH普及拡大の背景には、 四国の各地域でサービスを展開する27局のケーブルテレビ事業者と私が所属する株式会社STNetのサービス提携にありまして、 両社の設備を上手く活用し、それぞれのサービス(インターネット、光電話、 テレビ等)を同じFTTHでサービス展開していることが挙げられます。 これは全国的に見ても非常に珍しいサービス提携だと思われます。 当初はHFC (Hybrid Fiber-Coaxial:CATV局側は光ファイバー、 端末側は同軸ケーブルで配線する方式)を利用してケーブルモデムによるインターネットサービスを提供していましたが、 インターネットの高速化の流れをいち早く取り入れ、 ケーブルテレビ事業者の設備はHFCからFTTHに設備更新を進めてきた結果、 FTTHサービスのエリアの拡大に繋がっております。
IPv6インターネットも2014年からFTTHで提供を開始し、 現在ではIPv6トラフィックが全体の約半分を占めている状況です。 さらに、徳島県内では4Kの実証を進め、 2014年から「とくしま4Kフォーラム」イベントを毎年開催し、 2016年8月には阿波踊りの4Kライブ配信を実施しました。 このようなこともあって、 2016年9月にはケーブルテレビ事業者では全国初となるIP方式による4Kコミュニティチャンネルをケーブルテレビ徳島株式会社が開始しています。 全国で展開する事業者に比べて本当に小規模であるので、 各事業者の技術スタッフは非常に少ない人員です。
サービス提携をすることにより、 各自が保有する技術力をお互いに協力し補完し合ってさまざまな課題を解決してサービス開発に取り組んでいますが、近年、 年間1.5倍程度増加するトラフィック対策としての設備増強工事、 ネットワーク運用などは技術スタッフにとって大きな負担となっています。 今後においても映像系などの高トラフィックコンテンツが増加する傾向は続くと思われることから、 中長期的な視野でネットワークの信頼性向上施策と合わせて増強計画を進めていくことが必要と感じていますし、 新規サービスの開発、技術の継承には人材育成は重要な課題であり、 計画的な養成が必要と考えています。
話はJPNICの話題に変わりますが、 JPNICでは各種セミナーを以前から開催しています。 地域のIPv6を普及する活動支援としては「IPv6対応セミナー」を主催者として2015年に香川県高松市で初めて開催して以降、 年2~4回ほど各地域で開催しています。 IPv6の普及は長年の課題でしたが、 最近では国内のインターネット接続事業者等によるサービス提供が進み、 国内の携帯電話事業者3社も今年中にサービス開始するとの状況から、 ここ2~3年の内に急速に普及していくものと確信しております。 これはIoTなど新しいものを作っていく上において、 今後手間がかかる可能性のあるIPv4を使い続けるのは得策では無いと皆さんが考えると思うからです。 IPv4アドレスの在庫が枯渇して6年が過ぎ、 この課題は早期に解決できればと念願しております。 また、セキュリティ対策は国家の課題にも挙がっているところですが、 各地域の方も含め積極的にスキルアップに取り組む必要があり、 セミナー、技術交流会への参加を通じて、技術力の向上が必要となります。 今後も皆さんと協調して、地域担当の理事として取り組めたらと考えていますので、 よろしくお願いします。