ニュースレターNo.69/2018年7月発行
INTERNET ♥ YOU No.4
■プロフィール
ヤフー株式会社 制作企画本部 制作企画部 主幹(ニューヨーク州弁護士)/望月 健太
1984年生まれ。 神戸大学大学院国際協力研究科修士課程、 ならびに米国ジョージワシントン大学ロースクール国際比較法修士課程を修了後、 在ポーランド日本国大使館派遣員、 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部専門調査員を歴任。 帰国後、ニューヨーク州司法試験に合格、 ヤフーでは主に国内外の政府渉外業務を担当。 2017年より、国連傘下のIGF/MAG日本委員。
※本記事は、 2018年4月19日の取材時点における所属に基づき作成したものです。
ヤフー株式会社で国際渉外をメインに担当し、インターネットガバナンスの分野で、 Internet Governance Forum (IGF)のMultistakeholder Advisory Group (MAG:"マグ"と読みます)の委員を務め、 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)でもさまざまな情報提供をされている望月健太さん。 週末に走ることを趣味とされ、フルマラソン完走もされているパワフルな望月さんに、 国際的なフィールドで活躍されるようになった経緯や、 ご自身の活動で実現したい想いについてお伺いしました。
望月さんがインターネットに興味を持ったきっかけ
パソコンに触れたのは中学時代が初めてで、 Web検索や文書の作成など、 ごく一般的なインターネットの使い方でした。 インターネットに仕事として取り組みたいと思ったのは、 ヤフーに入社してからです。
これまでのキャリアについて
大学は法学部でしたが、グローバルに活躍したいと思っていたので、 当時とても面白く感じた国際法を研究することに決めました。 国内の国際法修士課程に進学・修了後、アメリカのロースクールにも留学し、 国際比較法の修士課程を修めました。 その後、まず在外公館派遣員制度を利用し、在ポーランド日本国大使館で2年、 次に同専門調査員制度を利用し、 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部で2年働きました。 ニューヨーク州弁護士資格は、スイス・ジュネーブでの任期後に取得しました。 ヤフーへの入社は、「ヤフーは日本の会社だが、インターネットはグローバル。 そのルールメイキングについても国際面を見ていく人材が必要で、 ルールメイキングを一緒にやっていくことに興味があれば」と声をかけてもらったことがきっかけです。 専門分野は国際法で、在外公館での勤務を通じ外交交渉も経験していましたので、 これまでやってきた国際法とインターネットは、 " 国境を意識しない"という点で親和性を感じました。 ヤフーでは国際渉外を担当しており、インターネットガバナンスをメインに、 GDPR (EU一般データ保護規則)などのデータプライバシー、 電子商取引に関するルールなどの国際通商分野を扱っています。
インターネットガバナンスに関する活動について
在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の専門調査員として関わった世界貿易機関(WTO)のように、 則政府だけが参加するクローズドな場とは異なり、 インターネットガバナンスは、インターネットの公共政策課題について、政府、 民間セクター、技術コミュニティー、学者、市民社会など、マルチステークホルダーで議論し、 政策立案を行います。 いろいろな人の意見が反映されるところが魅力です。 ヤフーでは国連傘下のIGFと、 アジア太平洋地域におけるインターネットガバナンスに関する議論を行うAPrIGF (Asia Pacific Regional Internet Governance Forum)に関与し、 青少年保護や違法有害情報対策、データプライバシー、 デジタル経済・貿易などに取り組んでいます。 2017年3月以降は、 年次のIGF会合のプログラムとスケジュールに関し国連事務総長に助言する立場を担うMAGの日本委員として活動しています。 ヤフーは、元々その必要性を感じつつもIGFには参画できていませんでしたし、 自身のアメリカ留学や在外公館での勤務経験から、 日本の国際的な場におけるプレゼンスが低いと感じていました。 自分がインターネットガバナンスに取り組む中で、 ヤフーだけでなく日本の声を反映するような仕事をやっていきたいと思っています。 もちろん、苦労するところもあります。 例えば、MAGは世界各国からの55名の委員から構成されていますが、 出身母体、 そして言語や文化などバックグラウンドの全く異なる委員達と議論や交渉を行うことは簡単ではなく、 時に自分の常識を覆されることもあります。 「常識はあくまでも自分の経験の積み重ね、 個人の価値判断に過ぎない」ということを日々実感しています。 ビジネス交渉はある意味1対1で行うことが多いですが、 グローバルなルール作りにはさまざまな関係者が参加するため、 交渉相手やタイミングなど、さまざまな要因が全てうまくはまらないと、まとまりません。 これらの調整は非常に難しく、いつも悩んでいますが、その分、 意を共にする委員と連携して特定の主張が通った時は、 達成感を感じる場面の一つでもあります。
最後にインターネットに対する愛情のこもったメッセージをお願いします!
国際渉外を担当し、昨今のインターネットに関する公共政策を見ていると、 インターネットに対する規制強化の動きもあり、 インターネットの分断化が進まないかと懸念を有しています。 インターネットは、人種、信条、性別、経済的背景、文化を超越し、 世界中の誰もが参加でき、表現や経済活動を活発化させる素晴らしいツールです。 世界に70億人いるうち、まだ40億人がつながっていません。 まだまだインターネットは広がる余地があります。 インターネットに関するさまざまな公共政策課題の議論に一人でも多くの方が参加し、 インターネット本来の姿を維持・強化できるよう、そして、 インターネットによって人々の生活が豊かになり、 より多くの人々が笑顔で日々過ごせるように、今後も取り組んでいきたいです。