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ニュースレターNo.7/1996年11月発行

1.巻頭言 人間の近視特性と産業の発展

KDD研究所
小西 和憲

 人間は、現状を認識した上で、今何をすべきかという最適解を考案する能力は優れている。一方、数年後における最適システムはどうせ分かりはしない、と諦める傾向も強いようだ。例えば、多くの人は、3年後まで快適に使えるということを重視してパソコンを選択したりはしない。この「近視である」という人間の特性が、実は、産業界にとっては有難い性質であり、このため、次々と新製品を市場に出しても、買い替えの需要を喚起でき、産業界全体の発展に寄与しているものと考えられる。

 インターネットも、また、この近視特性を巧みに利用して、発展を続けてきた。つまり、現在の環境を継承でき、今までよりも優れた環境を次々と出し続けることで、設計者の予想を常に越える成長を続け、産業界に隆盛をもたらすことができた。一方、研究者にとっては比較的馴染みのある『規模の拡大に対処する技術』を常に研究し続けることとなった。

 ここ数年のアドレス割り当て原則についても、クラスCを世界中にバラバラと配布していた時期もあったし、経路数が増大してきたからと言ってクラスBを推奨してきた時期もあった。現在では、経路数も増大させず、アドレス空間の枯渇も抑えるために、ユーザにはJPNIC会員からCIDRブロックを取得するよう推奨している。

 IPv6の時代になっても、拡張性が重視されたプロトコルの設計が行われていることから、インターネットは引続き「変身・改善」を続け、新しがり屋のユーザは次々とシステムを更改してくれるであろうから、産業界も活況を続けるに違いない。

 これに呼応して、JPNIC規則も次々と改定されるという現象も変わらないであろう。「JPNIC規則の改定をフォローするのが大変だ」、「JPNICの規則がくるくる変わるのはJPNICが不安定な組織だからだ」と思われている会員の皆様もいると思われるが、これらの改定は『規模の拡大に対処する一連の技術開発』に起因するものが多いこと、さらにはこれらの改定が、結局は、産業界の発展に寄与するためのものである場合が多いことを認識してくださるよう、お願いする次第である。

 一方では、JPNIC自体も、規則の改定に躊躇したり、守りの姿勢になるのではなく、産業界の発展に寄与できそうな事項は積極的にトライするという、研究開発を重視した姿勢を保ち続けることが大切である。

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