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ニュースレターNo.71/2019年3月発行

「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

選択と集中で、自社が持つ強みを磨き抜く
イメージ:タイトルバック

Coltテクノロジーサービス株式会社

住所 〒106-6027 東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー27階
設立 1999年4月2日
資本金 34億5,435円
代表者 代表取締役社長 アジアCCO 兼 アジア代表 日置 健二
従業員数 500名(2019年2月時点)
URL https://www.colt.net/ja/
事業内容 https://www.colt.net/ja/profile/
■ 専用線サービス ■ イーサネット・サービス ■ IPサービス  ■ 音声サービス ■ サイバーセキュリティサービス ■ クラウド&DC接続サービス ■ オンデマンド・サービス ■ ワイヤレス・バックホールサービス  ■ キャピタル・マーケット向けサービス

今回は、1992年設立で今年28年目を迎えた、 Coltテクノロジーサービス株式会社を訪問しました。 同社は、1999年に日本で設立されたKVH株式会社が、 1992年にロンドンで設立されたColtテクノロジーサービス株式会社と2014年に事業統合したことにより、 ヨーロッパ、北米およびアジアを中心として、 全世界に幅広くネットワークを持つ事業者となりました。 メトロエリアに絞って集中的にサービスを展開することで、 金融業界向けをはじめとする幅広い業界への接続サービスでアドバンテージを発揮しています。

当日は、六本木の泉ガーデンタワーにある、 本社オフィスを訪問しての取材となりました。 世界的に事業展開されている企業にふさわしく、 国際色豊かな雰囲気のオフィスで、 みなさんはつらつと働いていらっしゃると同時に、 社員の方々からは自身が提供するサービスに対する確固とした自信を感じさせるインタビューとなりました。

「One Colt」の名の下に世界各地でサービスを展開

■まずは貴社の成り立ちについて教えてください。

村越:当社は1992年に、ロンドンの通信事業者として設立されました。 社名の「Colt」は「City of London Telecom」の略で、 文字通り世界有数の金融センターであるロンドンのシティ地区を中心に、 金融機関などに対してロンドン証券取引所などへのアクセスネットワークの提供を行い、 そこでのプレゼンス向上を通じて徐々にサービス領域を広げると同時に、 ヨーロッパ全体に展開していきました。 米国の投資信託会社であるフィデリティ・インベストメンツ社が100%の株式を持つ、 米国籍の企業ですが、本社は今もロンドンにありますし、 「どこの企業か?」と聞かれたらイギリスの企業ですね。

一方、フィデリティ・インベストメンツ社はアジア地域にも同様の投資を行っていて、 1999年に日本にKVHテレコム株式会社(2005年に「KVH株式会社」に社名変更)を設立しました。 こちらも同様に、東京証券取引所へのアクセスネットワークの提供などからスタートし、 アジア地域を中心としたサービス展開を行っていました。 2014年12月にColtグループがKVHの全株式を取得して事業を統合したことにより、 現在に至っています。

■日本ではKVHの名前が通っていましたが、 買収というよりかはブランドが統一されたという感じなのですね。

村越:そうですね。 元々両社は親会社も一緒で、サービスのポートフォリオも同じで、 サービスエリアが違っていただけと言えます。 ヨーロッパではColt、アジアではKVHとして展開していましたが、 元々同じバックボーンを持ち、同じネットワークを利用していました。 R&D部門でも協力関係にありましたので、 統合は非常にスムーズに行われました。

日本のマーケットを知らないと日本で営業できないのと同様に、 ヨーロッパのことがわからないと現地で物を売ることは難しい。 なので、当社から他地域に多くの社員が出向いていますし、 逆に当社にも多くの社員を受け入れています。 このオフィスにはアジア系を中心に、約20の国籍の社員が働いています。 基本的にはグループ全体で「One Colt」の精神の下、 いろいろなものを共有して、 形式上だけではなく実態上も一丸となって取り組んでいます。

金融を支える広帯域・低遅延・高セキュリティの圧倒的高品質

■統合により世界的にサービス展開をされるようになったわけですが、 創業の経緯からも、やはり貴社は金融業界向けのサービスが強いのでしょうか。

写真:オフィスビル

村越:証券取引には、ネットワークが多用されています。 売り手側、買い手側のどちらもネットワークが不可欠で、 これが止まると大変なことになりますし、遅延が少ないことも求められます。 当社が提供するネットワークは、国内・グローバルのどちらもですが、 トラフィックの集中にも耐えられるように100Gbpsの広帯域を提供するのはもちろん、 パケットロスが少なく低遅延であることも売りです。 KVH時代の2013年には100Gbpsイーサネット専用線サービスを開始したのですが、 これは当社が日本初の事例となりました。 また、バックアップも含めて冗長構成にすることでサービス停止のリスクを削減すると同時に、 強固なセキュリティも確保しています。 金融業界では、公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)が定めるFISC安全対策基準などへの対応が求められますが、 当社もその要求に応える各種サービスを提供しています。 ネットワークだけではなく当社ではデータセンターも持っているので、 データセンターでシステムを預かるところまで合わせて一括してサービスが提供できます。 こういった、広帯域かつ低遅延、堅牢なサービスが、 お客様から支持をいただいています。

■金融以外ですと、どういったところに展開されていますでしょうか。 低遅延というのは、オンラインゲームなどでも重宝されそうですが。

村越:仰る通り、 ゲーム系のサービスを提供している事業者にも利用していただいています。 そういったお客様は、 ネットワークへの投資規模が企業規模と比例しないことも特徴です。 ベンチャーで始められて、 企業サイズに応じた選択ができるクラウドサービスで構築されることも多いのですが、 低遅延であることは必須なので、 ネットワークは最初から高品質なものを選ばれることも多いと感じています。

また最近は、メディア関連業界からも引き合いが強いですね。 画像や動画などをブロードキャストで配信されたり、 ビジネスサイドで多用されるようなネットワークサービスを提供されるようなお客様です。 ここでも広帯域で高セキュリティ、 低遅延なネットワークを提供できるという当社の強みが活かせています。

この背景には、パブリッククラウドサービスの隆盛があります。 昔はクラウドと言えば、 スタートアップ企業などが利用するものというイメージがありましたが、 最近では信頼性が高まってきて、大企業などの利用も増えてきています。 クラウド利用にはそこへのアクセスが必要となりますが、 このアクセスネットワークとして当社は1Gbps単位のネットワークをリーズナブルな価格で提供していることもあって、 最近はお客様からの引き合いがかなり多くなっています。 また、昨今はブロックチェーンを利用したサービスも多種生まれてきていますが、 これも結局は金融向けのサービスと同じサービスレベルを要求されます。 ここも当社の強みが活かせるところですね。

選択と集中が我々の強み。

■高品質なのにお値打ち価格というのは嬉しいですね。 その秘密はなんでしょうか。

村越:投資する対象を決めていることですね。 ヨーロッパはColt、アジアはKVHとして展開していた時代から、 サービスの提供をメトロエリアに絞って、 そこに集中してリソースを投じています。 例えば、日本では東京証券取引所がある東京から始まって、 そこからサービスエリアを展開してきましたが、 あくまで巨大な経済圏を有する東名阪を中心としたエリアにとどめています。 それ以外のエリアについては、 他キャリアとNNI (Network Network Interface)接続して、 それを用いてお客様にアクセスを提供しています。 また、我々はB2Bに限定してサービス展開しているため、 主なお客様は中~大規模企業の方々となっています。 コンシューマー向けのサービスは提供しておらず、 低帯域のサービスよりも広帯域のサービスに力を入れています。

幅広く上から下までサービスを提供している事業者と比べるとできないことも多いわけですが、 裏を返せばそれだけフォーカスをはっきりとさせて、 得意な部分に集中的に投資しているわけです。 それによって、 メトロエリアにおける広帯域ネットワークの提供という分野では圧倒的な優位性を発揮できることに繋がっています。

■選択と集中がカギということですね。 業界的に、もしくは顧客からの要望として、 何か最近のトレンドみたいなものはありますでしょうか。

村越:最近では、 共有回線と専用線の価格差がどんどん少なくなってきています。 価格破壊の波が専用線にも押し寄せてきていて、両者に昔ほどの差はありません。 アクセスラインとしてインターネットを利用する場合、 トラフィックが増えてくると通信料がかさみますので、 専用線との価格差はますます小さくなります。 例えば、1Gbpsの帯域保証型で月額いくらぐらいになると思いますか? 実は、今だと13~14万円ぐらいで提供できるんです。 思ったよりも安いと思いませんか。

また、クラウドへの接続でお客様が気にするのは、やはりセキュリティです。 機密性の高いデータもどんどんクラウドに預けるようになってきていますが、 アクセスにはより安全性の高い閉域網を使いたいというニーズも増えてきています。 従来のオンプレミスのサービスをクラウドサービスで置き換えるのであれば、 専用線の方が安定した環境が構築できますし、 高セキュリティを求める場合も専用線の方が有利ですので、 お客様の求めるメリットに応じて、 専用線とインターネットを使い分けるのが良いと思います。

■セキュリティ的には、やはり専用線が有利だということですね。 しかも、昔ほどは高くないと。

写真:受付

佐々木:世間では2020年の東京オリンピックが近づいて盛り上がってきていますが、 それにつれてセキュリティ系の脅威が増すことも予想されています。 最近はヨーロッパではGDPR (EU一般データ保護規則)、 国内では改正個人情報保護法の施行という話がありましたが、 個人情報が漏洩すると直接損害以上のダメージが発生することもあり、 お客様の関心も非常に高くなっています。 以前は「専用線なら安全」という認識もありましたが、 最近はより高いセキュリティを求める声があり、 当社では専用線にも通信を暗号化するオプションサービスの提供を開始しています。 昔はいわゆる「保険」的なものにはお金を払いたくないという風潮もありましたが、 最近は少し世間の意識が変わってきたと感じています。 高いセキュリティを実現できると同時に、 お客様にとっても「できることはすべて対策した」という納得感が得られるためか、 大変ご好評いただいています。

Coltのサービスでニューヨークから日本、ロンドンまで一気通貫に

■貴社は世界的にサービスを展開されていますが、 同様に展開されている他の事業者と比べて、どこか違いはあるのでしょうか。

村越:AT&Tやベライゾン、ブリティッシュテレコム、 NTTなどといった事業者は、 それぞれの国ではナショナルフラッグキャリアであっても、 その国から一歩外に出て第三国に行くとパートナーキャリアという立ち位置になってしまいます。 例えば、AT&Tは米国ではナンバーワンキャリアですが、日本や香港、 イギリスではライセンスを持っていません。 これらの地域でサービスを提供するためには、 ブリティッシュテレコムなりColtなり現地キャリアと自社の回線を繋がないといけません。 一方、我々のサービスを利用すれば、 ニューヨークにあるデータセンターから東京にあるオフィスまで、 一気通貫にColtで提供できます。 ここに、さらにシンガポールにも回線が欲しいとなると、 通常であればまた別の現地キャリア回線を追加しないといけないわけですが、 当社であればその必要はありません。 このようにワンストップでサービスを提供できるところが我々の強みですね。 メトロエリアにおいてであれば世界4大陸を専用線で繋げられるのはColtだけで、 これは競合他社のどこもできないことです。

■それは凄く魅力的ですね。顧客からしても、 すべて貴社のサービスで完結できるのは大変便利だと思います。

村越:もちろん、 全世界でワンストップのサービスが提供できているわけではありません。 米国だと30拠点に限定されますし、日本国内でも東名阪以外のエリア、 北海道や九州などですとNNIを利用して他社様の回線を使わせてもらっています。 しかしこれは先ほども申し上げたように我々が投資先を選択していることが理由で、 その結果がその分野での圧倒的な強みに繋がっています。

国内のキャリアですと、NTT、KDDI、 ソフトバンクと細かい違いはあれどおおよそ似通ったポートフォリオを持っていると思いますが、 そういった同業他社と当社との一番の違いはここですね。 やるべきところとやらないところをはっきりと決めています。 こういった方針は、ネットワークのデザインにも影響してきます。 コンシューマーを対象にしないことで設備が減り、ホップ数も減ります。 その分シンプルなネットワーク構成にすることができるため低遅延というメリットにも繋がっています。

■サービスエリアとしては大都市経済圏を中心に展開されているとのことですが、 それ以外に今力を入れていらっしゃることはどんなことでしょうか。

佐々木:先ほどからお話ししているように、 当社ではネットワークに特化して、 その中でもメトロエリアに大きな投資をしているわけですが、それとともに、 これまでに力を入れてきた技術としてイーサネットの多拠点通信があります。 従来は拠点間通信ではデータの発信側と受け取り側で1対1で設備を用意する必要があったのですが、 受け取り側の拠点数が100も200もあると大変です。 これが1対200といった形で通信ができるようになると大変効率的であり、 当時は他社では提供できないサービスとして提供しておりました。 お客様からのニーズは現在も高く、ご好評いただいているサービスです。

また、専用線に置き換わる高品質なイーサネットの研究にも力を入れています。 高品質で低遅延なものを提供できれば、お客様の選択肢と利用用途が広がります。 その他にも、SDN (Software Defined Networking)やSD-WAN (Software Defined-WAN)をはじめとするSDI (Software Defined Infrastructure)、 オンデマンド・サービス、ブロックチェーン、AI、5G、RPA (RoboticProcess Automation)と、多岐にわたって研究を行っています。 こういった先進技術をColtのサービスの一部として取り入れられないかを日々考えています。 お客様の体験を向上し、 いかにお客様にとって利益となり使いやすいサービスにできるのか、 ネットワーク接続だけではなく、プラスアルファとなるものを開発しています。 今、挙げた技術の中で、 近々サービスに繋がるようなものもリリースできる見込みです。

写真:オフィス

村越:SDNを使ったオンデマンドでのネットワーク提供は、 お客様の支持が特に強いサービスです。 ビジネスの変革が日常的に起こるようになると、それに応じて接続先や帯域、 ネットワーク環境を変える必要が出てきますが、 これまではどのキャリアも申込書ベースで手続きを行って、 契約も1年単位でのサービス提供が当たり前でした。 これがSDNを使うと、ネットワークの導入からデザイン、サービスインまで、 すべてネット上のツールを使ってできるようになります。 費用も利用量で決まり、必要に応じて柔軟にデザインを変更できます。 こういったサービスももちろん、Coltなら国内だけではなく海外でも利用できますし、 海外回線も国内から簡単に利用開始できます。

インターネットは人に知識を与え、ライフスタイルを変えた

■継続して投資を行って研究開発を行い、 それを将来の顧客サービスに繋げていくというのは、 長期的な視点をしっかりと持っていらっしゃる証拠ですね。

村越:これもフィデリティ・インベストメンツをバックに、 IT分野に関して長期的な視点で投資をしているからです。 普通の人が外資系の投資会社と聞くとイメージするのは、M&Aのように、 買収した会社が利益を出したら売却して差益を得るというケースだと思います。 一方、当社は1992年以降ずっと、フィデリティ・インベストメンツがオーナーです。 また、いろいろと手を出し過ぎず、財務が健全であることも大きいですね。 モバイルはやっていませんし、 クラウドも一時期はやっていましたが今は手を離しています。 そういった部分は他社に任せています。

この他社任せであるところも、当社の強みになっています。 ニュートラルな立場で、パブリッククラウドの接続先としてAmazon、 Google、Microsoft、IBMと自由に選ぶことができます。 国内、海外におけるパブリッククラウドとの接続拠点数は当社が業界をリードしており、 ミャンマーやカンボジアのような外資障壁のある国ではさすがにローカル事業者とパートナーを組んでいますが、 それ以外の提供国では直接ライセンスを取ってサービスを提供しています。

■なるほど。貴社のそういった考え方が、 顧客から見ても自由な選択肢を増やす結果になっているのですね。 ところで、JPNICではInternet Weekやセミナーなどの各種普及啓発活動を行っています。 外部の力として、こういった面でもお役に立てればと思うのですが、 いかがでしょうか?

村越:普段のJPNICとのお付き合いは事務的なやり取りが大半ですが、 主催セミナーなどには当社の社員も参加しています。 外資系では、一般に転職経験の豊富な社員が多い傾向がありますが、 エンジニアは比較的定着率が高くなっています。 そうすると、この業界に長くいる人間と新しく入ってきた人間の間に知識格差があり、 その差を埋めるのに何らかの手当が必要になりますので、 そういった機会を提供してもらえるとありがたいですね。

■ありがとうございます。 貴社には会員として活動を支えていただいていますが、 我々も会員の皆さまの少しでもお役に立てるよう、 これからも励んでまいります。 最後の質問になりますが、 あなたにとってインターネットとはどのようなものでしょうか?

村越:コミュニケーションとナレッジ。 「知る」ということと「相手を理解する」ということ。 それを実現するためのツールというのが私の解釈です。 インターネットが無い世の中は、もうあり得ないと思います。 コミュニケーションが何で成り立つかを考えると、 フェイスtoフェイスもありますが、 SNSを見てもわかるように今時はネットワークが無いと何もできません。 人に知識を与え、そしてライフスタイルを変革するものが、 インターネットだと思います。

佐々木:基本的には村越と同様ですが、 少し格好いい言葉で言うと「No Internet, No Business」でしょうか。 インターネットなくしてビジネスは成り立ちません。 ビジネス上で情報を閲覧するところから始まって、 インターネット接続は今やビジネスインフラとして当たり前のものになっています。 それをさらに高度化させていき、 さらにお客様のビジネスを支えていきたいと考えています。

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