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ニュースレターNo.74/2020年3月発行

「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

自分達の手で基盤を守り、文明や文化を作りたい
イメージ:タイトルバック

株式会社ディジティ・ミニミ

住所 〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-11-11 松濤伊藤ビル
設立 1997年6月
資本金 2,320万円
代表者 代表取締役 竹中 直純
従業員数 18名(2020年3月2日時点)
URL https://digitiminimi.com/
事業内容 https://digitiminimi.com/about/
■ インターネット技術コンサルテーション ■ インターネットサービス開発、評価、リファクタリング ■ アプリケーションソフトウェアおよびDBのデザイン、開発 ■ デザイン(UI含む) ■ ホスティングサービス ■ インキュベーション ■ 紙媒体、ビデオなどの編集、デザインなど、編集全般 ■ インターネット技術を用いたイベント企画、実施、運用 ■ 新規技術に関する研究開発 ■ アーティストマネジメント

今回は、創業から23年目を迎えた、 株式会社ディジティ・ミニミを訪問しました。 同社は、音楽アーティストの坂本龍一氏のライブをサポートしたことをきっかけに創業されたというユニークな来歴を持っていることが特徴的ですが、 その後は音楽配信や電子出版など多岐にわたるサービスの開発やそれらが動くインフラの構築管理まで、 幅広い業務を展開されています。

当日は、竹中大樹氏と鈴木敦氏のお二人にお話を伺ったのですが、急遽、 代表取締役の竹中直純氏にもご参加いただくことができ、 誌面には載せきれない竹中直純氏の個人的なインターネットとの関わりなども含めて、 さまざまなお話を伺うことができました。 「裏方として、いろんな企業のお手伝いをしてきただけ」との言葉とは裏腹に、 客様のためを思う気持ちと、インフラの維持へのプライド、 そして何よりもインターネットに対する熱い想いが伝わってくる取材となりました。

創業のきっかけは大物アーティストのお手伝いから

■まずは貴社の成り立ちについて教えてください。

竹中(直):元々は、 音楽家の坂本龍一さんのライブのサポートをしたことがきっかけです。 これは事業になるかもしれないと思って、会社を作りました。 その後、作家の村上龍さんと組んでネットワークを使って何かやろうという話になり、 さらに別会社としてディジティ・ミニミを立ち上げました。 リクルート社がスポンサーとなってくれて、 今で言うところの電子書籍の仕組みを構築したんですが、 これはBitCashが使えるサービスサイトの第1号となりました。

また、設立の経緯から、 坂本さんの音楽活動のサポートが活動の比重として高く、 2000年ぐらいまではライブのサポートを一気に担っていました。 それに関連するスタッフの出入りが激しかったので多少の増減はありますが、 1999年の頃で50人ぐらいはいたと思います。 1999年の坂本さんのライブでは、東京とフランクフルト、 ニューヨークの世界三会場をインターネットで接続して同時中継を行ったんですが、 この時は太平洋と大西洋を越える際に、それぞれ45Mbpsの回線を利用しました。 調達は私が担当したんですが、 そもそもキャリアのメニューに45Mbpsなんてものが無い頃なので、 キャリアとも交渉が必要です。 三つの会場で同期を取らないといけないし、 当時は効率の良い映像の圧縮方法もありませんでした。 結局、仕方が無いのでエラー訂正のことは考えずにIP でカプセル化して送ったんですが、 パケットロスでノイズは乗るものの、無事に中継には成功しました。 今は5Gでそんな話が出てきていますが、 我々は20年以上前に似たようなことにチャレンジしていたわけです。

■音楽関係のお仕事がスタートになっているわけですね。 今はかなり幅広い分野の業務を手がけられているようですが、 どのように展開されてきたのでしょうか?

竹中(大):ディジティ・ミニミとしてやっている現在の業務としては、 システム開発とお客様が提供したいサービスに合わせたインフラの提供、 それらを組み合わせたトータルソリューションを提供しています。 基本的なサービスメニューはありますが、 お客様の要望により提供している内容はさまざまです。 開発も代理店経由での受託はほぼ無く、ほとんどがお客様からの直接受注です。

元々、坂本龍一さんのライブのお手伝いというところからそうなんですが、 人のお手伝いをするというところをスタートにしてしまったんですよね。 一般的には開発と言えば受注型の業務がメインで、 それはいわゆるシステムインテグレーターですよね。 でも、我々はそういうのとは違って、まずは困っている人がいて、 そこに入っていくところから始まります。 その人、その会社が実現しようとしてることを理解して、 それをより良いものにするために、 実際に作りながらコンサルみたいなことをしていくんです。 我々は取引先というよりは、 もはやお客様におけるIT部門の一部になるみたいなものですね。

でも、こういうやり方には弊害もあって、 例えばお客様のところに他の開発会社が入る時、 我々が邪魔になるんですよね(笑)。 お客様にとってその方が良いという確信があれば、 他の開発会社が理にかなわないことを言ってきた際に「これは止めた方がいいです。変えましょう。」と遠慮無く言ってしまうので(笑)。 このようなストレートな物言いは、 目的への最短距離を求めての発言なのですが、 お客様の社内事情と合う合わないがありまして、 反発が生まれるケースもあります。 そういう意味では、何とか運良く20年以上続けてこられたという感じです。

■音楽のお仕事は今はされていないんでしょうか?

竹中(大):創業のきっかけが音楽と配信だったこともあって、 その分野には強みがあり、設立初期からずっと積極的に関わっています。 今はグループ会社が「オトトイ」という音楽配信サービスを運営していて、 我々は主に開発を担当しています。 立ち上げ初期は音源へのコピープロテクトが盛んだった頃だったのでインディーズレーベルが中心でした。 その後世の中の変化も経て、今はメジャーレーベルも扱っています。 「インターネットは自由さを重視すべきで、 他者に制御されることや過度に制限されてはならない」という、 社長である竹中の考えにフィットする流れは歓迎しています。 今は、サブスク、ハイレゾと、 まさに現在進行形でユーザーの音楽体験は大きく変化しています。 オトトイでは高解像度の音源を売りにしている部分もありますが、 サービスとシステムの面からユーザー目線で多角的に研究を続けています。

時代に応じて柔軟に姿や人は変わりつつも、芯の部分は決して変わらずに

■売れれば何でもではなく、確固とした信念を持って事業展開をされてきているわけですね。

鈴木:そうですね。 「これをやるんだったら、こうだよね」という我々側の前提があって、 お客様の案件を受ける時は、それとのすり合わせをします。 お客様に合わせて我々がどこまで方向転換できるかという決断を迫られることもありますが、 我々の芯が硬くてなかなか動きません(笑)。 それでも良いと言ってくださるお客様が残ってくださっている状態です。 費用的にもディスカウントして数をこなすようなことはせず、 規模の拡大をめざすというよりは、 納得できる仕事ができることを重視しています。

それでも我々と一緒に仕事をしたいと仰っていただけるお客様に対しては、 我々の技術と知識を駆使して、 お客様のやりたいことをより良い方法で実現できるように取り組んでいます。 お客様からお話をいただいた時は、要望をまず伺って、 必要なら開発と同時にサービスのインフラも検討します。 クラウド、オンプレミス、それらのハイブリッド、 サービスによって適材適所を判断して提案します。 最近はクラウドが流行ですが、 データベースや大きなストレージと組み合わせる場合は、 一部をオンプレミスにすることも多いですね。 お客様は初期の開発費用は頭にあっても、 ランニングコストまでは考慮されてないこともあったりして、 大規模になるとクラウドでは負担も大きくなりますから。

■営業の方がそこまで考えて提案してくれれば、お客さんの信頼もしっかり勝ち取れそうです。

竹中(大):実は、当社には営業専任の社員がいないんです。 もちろん、いて欲しいので募集中ではあるのですが(笑)。 その代わり、私をはじめとした社員全員が営業を担当しています。 小規模な会社で実際に自分達が作っているものが商品ですので、 当然中身はわかっているし説明もできます。 これには良いところがあって、お客さんとの打ち合わせの場では、 持ち帰りがまず出ません。 疑問はその場で解決できるし、いろいろと決めてしまえます。 コスト削減ですね。 他社も交えた大きなミーティングに参加すると、 「それを持ち帰っちゃうのか…」と思うようなこともあります(笑)。 そういう無駄は我々にはありません。 たとえ持ち帰っても、聞く相手が自分以外にいない、とかありますしね(笑)。 また、一度決まると担当がほぼ変わらないのも特徴です。 お客様の担当窓口として、 サービスへの理解が一番深い人間が継続して付きます。 社内で昇格してもずっと特定の案件の担当であることは珍しいことではありません。 さまざまな相談を担当者がダイレクトに解決します。 このフットワークの軽さは、合うお客さんには、とても歓迎されています。

■社内の雰囲気はどんな感じなんでしょうか? 皆さん、のびのびと働いていらっしゃる様子ですが。

竹中(大):社員は現在18人と小規模ですが、 少ないからダメだとは考えていません。 小回りが大事だと考えています。 確かにもっと人は増えて欲しいのですが、 むやみに増えてケアが行き届かなくなることに恐怖感があります。 スタッフに求める仕事のスタンスは、オフィスに居なくても、 自分がやるべき仕事をして報告すればそれで良し、となっています。 なので、今日はそうでもないですが、 オフィスが本当にがらんとしていて寂しい日もあります(笑)。 元々の創業時の、おのおのが自立した技術者の集団という社風が、 今もまだ残っている感じですね。

写真:壁面

鈴木:社員もずっと同じメンバーが続いているわけではなく、 創業時のコアなメンバーは数人程度です。 我々は規模を追い求めてきたわけではなく、面白い、 自分達が興味のある仕事をしたい人間が集まってきて、 法人化した方が便利だから会社を設立したという経緯があります。 元々スキルが高く、やりたいことがある人間が集まっているので、 これまで多くの人間が創業などの形で社を巣立っていきました。 一方で、新しく我々のところに集まってくるメンバーもいて、 時代によって入れ替わったり増減したりしながら、現在に至っています。

竹中(直):当社と同じ頃に創業した人達は、 みんなどこかでまともになって上場していったんですが、我々はまだ、 おたまじゃくしのままずっとここまで来ていると言っても良いと思うんです。 長年続けていれば、マネタイズというか、 社会の中で自分の役割を見つけて適合する、 そういう段階を迎えるのが普通ですが、 我々は良くも悪くも初期の団体としての性質を保ったままです。 それを良いとも悪いとも評価はしていませんが、 初めの志や雰囲気を持ったままここまで会社が続いてきたことは、 良かったと思っています。 今や大企業になった当時の人達は、 昔は苦労したとか大変だったみたいな話を嫌がることが多いですが、 みんなが忘れていても我々はその頃の気持ち、 初心をしっかり覚えています。 これからも忘れずにいきたいですね。

■まさに「少数精鋭」といった雰囲気ですが、新しい人も大歓迎なんですよね? どんな人と一緒に働きたいとお考えでしょうか?

鈴木:デザインなどの仕事もあるので、 必ずしも技術がわからなくても良いんです。 それよりも、能動的に動ける人、 スキルが身についたら「こんなことをやりたい!」と発案して取り組める人が良いですね。 その結果、「やりたいことができたから辞めます」となってしまっても仕方は無いですが、 インターネット上で何かシステムを作ってみたいと思った時には会社としてバックアップもしますし、 うちで働いた経験は役に立つと思います。 ただ、何の意思もなくうちに来てしまうと続かないかもしれませんね。

竹中(大):「何だこの会社は?」みたいになるかもですね。 言われたことだけやるスタンスだと、 丸1日何も無い日も出てきてしまうかもしれません。 誰も言わないので(笑)。 一方、会社の求める進め方の基礎さえわかってくれていれば、 後は独自の興味で自分の好きな分野を研究してもらって構いません。 もちろん、業務上必要な知識が出てくれば、 部の全員で勉強会を開いて理解を深めたりしていますので、 普段は放任気味ではありますが、 締めるところは締めているつもりです。

インフラの重要さや自分達の矜持まで仮想化してはいけない

■若い世代はインフラにあまり興味が無いと聞きます。その辺りについてはどのように思われますか?

竹中(直):重要性が認知されていないんですよ。 壁にコンセントがあって挿せば電気が使えることの重要性はみんなわかっていますが、 インターネットに繋がることがそこまで重要だとはまだ思われていません。 普通の企業だと、そういったところまでケアされてないんですね。 そこは付け入れるところではあるので、我々の強みにもなるんですが。 インフラは重要なのに、何十年もかけてどんどん存在が薄くなってきています。

鈴木:クラウドの普及につれて、 インフラの大切さも仮想化されてきているんですよね。 コマンドを一つ打ち間違えると全部止まる。 インフラを管理するのはとてもストレスがかかります。 それを嫌だと考えてクラウドに全部置けば、 知らないところで知らない人が、 リーズナブルな値段で管理してくれる。 そして、考えることを止めてしまうんです。 でも、止まると大騒ぎですよね。

竹中(直):止まるのはクラウドサービス側の問題だけど、 それよりも問題なのは経営者のマインドセット。 自分の責任を誰かに押しつけているんです。 クラウドが原因でサービスが停止すれば、 それはやむを得ないと許容する雰囲気がありますが、 インターネット以外の業界ならそんなのは普通は通りません。 電気が止まって店が開けられなければ、客も店主も怒りますよね。 無駄だとわかっていてもクラウドが止まれば声を大にして怒るべきだし、 向こうのSLAに自分達の側から合わせていくのは、 少なくとも我々のサービスでは絶対にやりません。 自分達の基盤は自分達で守りたいし、大げさかもしれませんが、 もっと言えば自分達の文明や文化は自分達で作りたい。 でも、今は多くの人が矜持を捨ててしまって、 基盤が崩されつつある状態です。 そこに危機感を持っています。

竹中(大):関心の低さは、担当の少なさにも表れています。 今は本当に人がいないです。 取引先にもインターネット担当がいればまだ良い方で、 インフラ担当はまずいません。 使えないとユーザー、そしてサービス担当者は困るのに、 経営側からはかなり軽んじられている印象があります。 重要な部分なんだよと頑張って伝えていこうと、 最近は使命感も出てきたところです。

インフラとしての維持と並行して、もっと自由な視点でインターネットを発展させたい

■インフラの重要さを伝えていくことは、我々も重要だと考えています。貴社には長年会員としてJPNICを支え続けていただいていますが、JPNICに期待することは何かありますでしょうか?

竹中(大):子供達の教育分野にぜひ踏み込んで欲しいです。 子供に「お父さん、何の仕事をしてるの?」と聞かれて説明しづらいんです。 インフラとしてのインターネットが、電気やガスなどと違って、 子供にはちょっと想像が難しいと思うんです。 子供達はインターネットに毎日接しているはずなのに、 それを仕事としている自分が上手く説明できないというのは、 何とももどかしいところがあります。 プログラミング教育なども良いんですが、 インターネットのしくみについても、 小学校ぐらいから教えていった方が良いと思うんです。 JPNICさんならできるんじゃないでしょうか?  そうやって子供達の理解が進むと、 次第に大人達もわかってくるようになると思います。 今は一部のすごく詳しい人達がインターネットを回している状態ですが、 社会全体でその意義が理解されるようになって欲しいと思っています。 あとは余談ですが、AD.JP ドメイン名ですね。 もっと広めたら良いのにと思います(笑)。

竹中(直):私は逆ですね。 私は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの職員だった1996年に、 村井純さんに「行ってこい」と言われてJPNICのJPドメイン名割り当て検討部会(DOM WG)にメンバーとして参加していました。 AD.JPはその頃の、 JPNICがお茶の水の萬水ビルにあった頃と同じ雰囲気が残っていて、 それが良いと思ってます。 無理に広めようとしたら、 その独特の雰囲気が無くなってしまうんじゃないでしょうか。 それよりかは、インターネットのことがよくわかっている組織、 インターネットのために頑張っている組織が登録しているドメイン名だという側面を、 もっと宣伝した方が良いとは思います。

■ありがとうございます。最後の質問になりますが、貴社にとってインターネットとはどのようなものでしょうか?

竹中(大):私としては「機材」と「通信」。 ただ、それだけですね。 物理的なものと、それを制御するためのルール。 そういったものの塊が、インターネットだと思います。 インフラを運用管理する者としては、 そこからずれてはいけないと考えて日々取り組んでいます。 ただ、そのルールに関しては、最近はどんどん自らを縛っていってしまい、 そのために発展にブレーキがかかっている側面もあると思います。 私は15年ほどインターネットに関わっていますが、 技術の基本的な部分は当初からあまり変わっていません。 インターネットが初めて登場した時のようなパラダイムシフトを私自身も経験したいですし、 まったく得体の知れないものがインターネットのプロトコルとして登場するとか、 ぜひ見てみたいです。

鈴木:昔は簡単だったけど、 今の時代は一言では言えないですね。 私は、インターネットはもっと自由であるべきだと思ってるんです。 これまで我々は、自由な空間を作り上げるために頑張ってきたはずなんですが、 実際には自由過ぎるためにルールと言う名の規制を次々作ってきたというのが現実です。 また、「インターネット=Web」ではないはずですが、 SNSが普及してきたとはいえ使われ方の大半はWebで、 他はせいぜい音楽や動画を流してみる程度。 そういう状況に閉塞感を抱いています。 セキュリティの問題など、現実的な話も考慮する必要はもちろんありますが、 昔みたいにいろいろと試しにやってみることも大事なんじゃないでしょうか。 インターネットの限界がこの程度だと思いたくないし、 もっと自由に発想する若者が出てきて欲しいと思っています。 また、そういった自由な発想を受け入れられる空間であって欲しいですね。

写真:竹中(大)氏、鈴木氏、竹中(直)氏

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