ニュースレターNo.78/2021年8月発行
大きな変化とインターネット
JPNIC理事 岩谷 理恵
2020年から2021年にかけては、社会全体が大きく変化した1年でした。
数年前から、政府が働き方改革という課題を挙げて法整備など行っていましたが、 現実にはなかなか進まない部分がありました。 しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延によって、 働き方や生活等について、一気に変化が起こったように思います。
リモートワークや在宅勤務の制度化もさまざまな企業で整備され、 どこにいても働ける環境となりました。 この環境で問題なく勤務できるよう効率化も進んでいます。 また、出勤する際も通勤時間をずらすことによって、 満員電車に揺られていくことも減りました。 勤務の仕方についてはさまざまな変化があり、 都内や近郊に住まない選択をしている人も出てきています。
学校についてもインターネットを利用したオンライン化が進み、 特に大学は現在でもオンラインでの授業がメインとなっています。 オンラインでの授業がメインの時代が進めば、 海外の大学も日本から講義を受けられるようになり、 日本の大学が淘汰されていくのではないかとやや危惧しています。
これらの変化は、インターネットが広く一般に使われるようになり、 Wi-Fiがあればどこでもインターネットに接続できるような環境が広がっているため可能だった変化なのだな、 と感じています。
過去を振り返ってみると、 私が学術系のプロバイダーをやっている大学の情報処理センターへ就職した時は、まだ、 インターネットを使用していたのは主に学術機関の方々だったため、 親や周りの友人に自分の仕事を説明してもインターネット?プロバイダー?何それ? と全然説明も理解もされずに困ったことを覚えています (結局、コンピュータ関係の仕事と説明していました)。 ドメイン名の登録もそこで細々と行っており、 ひと月で100件登録があると盛り上がるような状況でした。 自宅で仕事をする状況としては、 電話回線を引っこ抜いてPPPで接続して遅い回線(9.6Kbps)でインターネットを利用するしかありませんでした。 電話回線ということで、電話がかかってくると切れるという状況でしたので、 仕事をするにも一苦労でした。
ここでは、 私立大学へ専用線を引いて大学でインターネットを利用できるようにする仕事をしており、 JPNICへドメイン名登録やIPアドレスの割り当て、 ネームサーバの登録の申請業務も行い、会員への説明会などにも出席していました。 今では当たり前の話となっていますが、 ドメイン名の登録やIPアドレスの割り当てを世界で初めて有料化するとの説明会に出席した時の驚きは、 今でも忘れられません。
その後、JPNICの職員となりましたが、 インターネットに関する知識や技術をよく知る方々と共に仕事ができたことは大きな財産となっています。 JPNICは現在もインターネット基盤や運営に関わる方々を集めることのできる貴重な組織であり、 世界の大きな変化の中でどうあるべきかを職員、理事ともども、 日々真剣に考えています。 微力ながらも、今までの経験を生かし、 皆様のお役に立てるよう頑張っていきたいと思っています。
株式会社日本レジストリサービス 総務本部長。 東京理科大学の情報処理センターでネットワーク運用、 大学間ネットワークの事務局運営を担当。 その後、JPNICの職員として、IPアドレスの割り振り業務、 IETFやAPNICなどでの国際調整業務、 企画として汎用JPドメイン名サービスの立ち上げなどを担当。 その後、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)に入社。 JPRSではドメイン名サービスを提供する部門を統括し、 現在は組織運営や人事を担当。 2020年よりJPNIC理事。