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ニュースレターNo.78/2021年8月発行

Internet ♥ You No.13

NTTテクノクロス株式会社 セキュアシステム事業部 第三ビジネスユニット 武井 滋紀さん

タイトルバック
図:マイク NTTテクノクロス株式会社で、 セキュリティ分野のエンジニアとして活躍されている武井滋紀(たけい しげのり)さんにお話を伺いました。 国内外でのコミュニティ活動にも積極的に取り組まれており、 JPNICではInternet Weekのプログラム委員としてご尽力いただいています。 日々お忙しい中、健康維持を兼ねて散歩を習慣とされている武井さんに、 どのような縁でインターネットの業界に進み、 キャリアを積んでこられたのか語っていただきました。

武井さんがインターネットに触れるまでの経緯と学生時代について

家にパソコン(富士通のFM-77)があり、小学生から中学生の頃に、 雑誌などに載っているプログラムを打ち込んで動かしていました。 一番やったのは音を出すことです。 パソコンにFM音源が付いていて、6和音まで出すことができました。 楽譜を読んでは1音ずつプログラムに書き換えて、 ドラゴンクエストなどゲーム音楽を鳴らしていました。 中学校のパソコンの授業でも、ゲーム音楽の再現を行いました。 ゲーム音楽はループするものが多く、パソコンで再現しやすかったです。 その後はパソコン通信に触れることはなく、 高校生の頃はパソコンからは少し離れていました。

コンピュータを動かした経験から、 大学ではコンピュータを学ぼうと情報工学を専攻しました。 進学した大学では、Sunのワークステーションを中心に導入されており、 学生全員にメールアドレスアカウントが配られていました。 ターミナルでコマンドを叩くことを覚え、最初にメールが使えるようになり、 その後ブラウザも使えるようになりました。 インターネットの仕組みを認識したのはそこから2~3年後で、 研究室のネットワーク管理を任されてからです。

研究室のネットワークは学生が運用することになっていました。 18時~19時頃に教授が帰った後は、 みんなでローカルネットワークのオンラインゲームをやるなど、 かなり自由に使っていました。 端末にグローバルIPアドレスが割り当てられている環境だったので、 今なら事件と言えるようなことも起きました。 ある時、Sendmailが悪用されてスパムメールを送ってしまったようで、 スパムを受け取った会社の管理人から連絡がきて、 すぐにSendmailをアップグレードしたことがありました。 当時は、プロバイダーのメールを使う人が増えてきたとか、 Apacheが使われるようになってきたという頃で、技術者がフランクに交流し、 実名でのやり取りも多かったです。 古き良き時代ですね。

大学卒業後の進路と、これまでのキャリアについて

「就職してもプログラムを書いているのだろう」とだけは想像していましたが、 就職氷河期だったわりにはこの程度の考えしか持っていなかったので、 就職活動に対しての認識は甘かったかもしれません。

NTTソフトウェアに就職した同じ研究室の先輩が、 研究室に説明に来てくれたことをきっかけに、会社説明会に申し込みました。 当時ではまだ珍しい?インターネット経由の申し込みでした。 選考はとんとん拍子に進み、内定をもらいました。

入社後は、システム開発やネットワークに携わるエンジニアとなりました。 学生時代からネットワークの運用をやっていたことに加え、 オブジェクト指向を研究のテーマにしており、 面接の際にソフトウェア開発の経験があるという話をしていたので、 即戦力・経験者のような扱いをされていたように思います。 会社の新人研修にあったシステム開発研修が免除となり、 いち早く現場に配属されることになりました。

最初はネットワーク系のシステム開発業務を担当しました。 印象深いのはIPv6関係です。 2006年頃ですが、NGNが盛り上がっていました。 WIDEプロジェクトの傘下で2000年より開始されたUSAGI (UniverSAl playGround for Ipv6) Projectに関連して、 LinuxにおけるIPv6の実装を取り扱っていたわけですが、 カーネルに近いところに携わり開発の難易度が高かったです。

入社当時はレイヤーの高いところを扱っていましたが、 だんだんレイヤーの低いところも扱うようにもなりました。 IPv6をやっていた頃、入社して最初に配属された部署が解散となり、 モバイルとセキュリティを扱う部署に異動しました。 モバイルのIPv6に関する業務が一段落した後に、 セキュリティを扱うことになりました。 当時NTTでセキュリティと言うと、暗号・証明書・PKIでしたが、 自分は扱ったことがありません。 そのため、これらの範囲外の案件、 例えばネットワーク上の攻撃を検知するといったことなどが自分の担当となりました。 自分ともう1人くらいしか担当者がいなかったのですが、 会社には「とりあえずやらせてみる」という風土があって、 初めはどうにかこなしていくという状況でした。 これが2010年頃で、セキュリティ界隈では後発になると思います

コミュニティでの活動について

コミュニティ活動に携わるようになったのは、 セキュリティの仕事に関わるようになってからです。 会社としても社外のコミュニティに参加した方がいいという話が出て、 特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)に参加することになりました。 年会費を払うので、JNSAの活動にきちんと参加し、成果を得てくることとなり、 自分の仕事に一番近いところとして、 JNSA傘下の日本セキュリティオペレーション事業者協議会(ISOG-J)を選びました。

セキュリティ分野では、自分たちのビジネスや監視している内容について、 内輪で話をすることが多いです。 ISOG-J自体も一般には何をしているかわかりにくい団体だと思います。 私が参加した頃、 日本年金機構における不正アクセスによる情報流出のような問題が起きており、 「こういう問題に、どう対応しているか?」とか、「こういう問い合わせには、 どう答えるとよいか?」といった議論をしていました。 ただ、それを外部に提言していくような雰囲気ではありませんでした。

その一方で、自分が活動に参加した頃、 セキュリティを扱う事業者の団体として外部に提言や発表をすべきでは? という話があり、 Internet Weekで発表する機会がありました。 それまでは団体として成果物を出すことはあまりなかったのですが、 その後のきっかけになったと思います。 現在は、私がInternet Weekのプログラム委員を行いつつ、 ISOG-J側のワーキンググループのリーダーとして毎年発表を行うというサイクルになっています。

ここ数年は、地域NOGや人づてで教えてもらった勉強会に出向き、 発表を行うことを続けています。 最初に「ISOG-Jを知っていますか?」と質問するのですが、全然手が上がりません。 いくらインターネット上に「みんなに読んでほしい!」とドキュメントを掲載していても、 気がつかない人は、本当に気がつきません。 なので、インターネットに関する最新の話題に興味を持っている人が集まっているところで話をするのが一番早いと考え、 注力しているところです。 何かイベントや勉強会等を開催される際、 セキュリティ界隈の発表を加えたいということがあれば、ぜひお声がけください。

他には、電気通信に関する国際標準の策定を行っているITU-T (International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)で、私が策定に携わった国際標準が出る予定です。 米国からセキュリティ防衛のための組織のフレームワークが提案されていたのですが、 ISOG-Jで同じような議論をしていました。 すでに参加している関係者から話を受け、 ISOG-J関係者で日本からの提案を出すことになりました。 私がNTTグループに所属しており、 ITU-Tに参加できる条件を満たしているということも後押しになりました。 米国からの提案に、日本からの提案内容も加えていく方針で進めていたのですが、 紆余曲折があって米国の提案者が抜け、 日本からの提案を中心に世界標準になる予定です。 この提案に関しては、 ITU-Tに関連した日本の標準化団体である一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)から、 日本の標準としても出してもらえるよう働きかけています。 今年の秋くらいからは、この活動の宣伝に力を入れるつもりです。 この活動をして分かったのは、言語の壁さえ乗り越えられれば、 意外と何とかなることです。 よいアイデアは世界各国の方も賛同してくれます。 自分の場合は一人の力だけではなく関係者の皆さんのご協力などあり、 何とか日本発の提案も加わった標準になったかと思います。

今後の目標について

セキュリティ業界のキャリアパスはまだ定まっていないので、 今はできるだけいろいろなことをやってみるしかないと思っています。 後から振り返って、「こういうことをすれば、 こういう人になれる」というロールモデルになれればいいですね。

武井さんがプライベートではまっていること

ビリーズブートキャンプをやり始めて丸1年になりました。 昨年、子ども達の学校が休みになって運動ができない際に、 一緒にやり始めました。 今では自分だけになってしまいましたが……。 もう一つはウォーキングです。 1時間で5kmくらいのペースで行っています。 平日はテレワークが終わった後に1時間、休日は2時間くらいやっています。

最後にインターネットに対する愛情のこもったメッセージをお願いします!

単純に最初はテキストでコンソールからメールを打っていたのが、 ブラウザになって、スマホになって、クラウドになってと、 インターネットはどんどん広がっています。 この先もどんどん変わっていくのだろうと思います。

ここまで来ると、インターネットと関わらずに仕事をするなんてことはないでしょう。 例えば私が脱サラをするなどして大きく状況が変わったとしても、 インターネットは何らかの形で関わりを持ちつづけていく存在と思います。

写真:講演中
Internet Weekで講演する武井さん
写真:散歩中
ウォーキング中に出会った猫や風景

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