ニュースレターNo.80/2022年3月発行
インターネットことはじめ
画像フォーマット
1. インターネット以前
日本で商用のインターネット接続サービスが始まったのは1992年、 広く普及したのは1995年以降です。 それ以前の1980年代は、 そもそもパーソナルコンピュータで扱えるのが640×400ピクセル16色から512×512ピクセル65,536色程度で、 写真を扱うにはいささか能力不足でした。 それでもイラストを描くくらいなら可能であったため、 主にパソコン通信を中心として、 機種ごとに独自のフォーマットで画像データが流通していました。 この頃を代表する画像フォーマットには、MAG、PIC、PICTなどがあります。
2. 意外と古いフォーマット
インターネットが普及すると、 表示能力の異なるさまざまな端末間で共通の画像データを扱いたいというニーズから、 機種に依存しない、汎用性の高い画像フォーマットが普及することになりました。 2022年現在、インターネットで広く使われている画像フォーマットとしてGIF (Graphics Interchange Format)、JPEG (Joint Photographic Experts Group)、PNG (Portable Network Graphics)の3種類が挙げられます。 加えてSVG (Scalable Vector Graphics)やTIFF (Tagged Image File Format)が使われることもあります。
この中ではTIFFが一番古く、1986年に開発されました。 ただ、あまりにも柔軟性が高く、 アプリケーションごとにさまざまな拡張版が存在するためか、 データ交換用としてはあまり使われていません。 どちらかというと、 アプリケーションで加工途中のデータを保存する際に広く使われています。
GIFは1987年と1990年、JPEGは1992年に公開されています。 もともとGIFはCompuServeというパソコン通信サービス内で開発されたもの、 JPEGはCCITTとISOが合同で創設したJPEG委員会で開発されたもので、 いずれにしてもインターネット向けに開発されたとは言いがたいところがあります。 しかし、初期のWebブラウザでどちらも標準サポートされていたため、 インターネットによって広く普及した、とは言えるでしょう。 GIFは表現可能な色数が256と少ないもののアニメーションが可能、 JPEGはフルカラーをサポートし非可逆圧縮により高い圧縮率を実現、 とそれぞれの特徴に応じて使い分けがなされています。
3. インターネット普及以後のフォーマット
PNGは1996年、SVGは2001年に公開されています。 これらはインターネット時代の要求に合わせて開発された画像フォーマットです。
PNGが登場した経緯は、技術開発の負の側面を表しているかもしれません。 前述のGIFは、 データを圧縮するために特許によって保護されたLZWというアルゴリズムを使っています。 当初無償とされていた特許使用料ですが、 1994年になると特許保有者が特許権の行使を発表したのです。 そのため、PNGはGIFにとって代わる画像フォーマットとして開発されました。 もっとも、LZWの特許権は米国で2003年、 日本では2004年に失効しているため、2022年時点ではGIFも自由に使えます。
ここまでに説明した画像フォーマットは、基本的にピクセルを並べる方法を採った、 ラスター形式でデータを格納します。 対してSVGはその名にあるように、ベクター形式でデータを格納します。 直線なら始点と終点、四角形なら始点と幅に高さ、円なら中心と半径といった、 図形を描くための数値でデータを収納します。 そのため、画像を拡大してもズレや歪みが生じず、滑らかな表示が可能になります。 さまざまな画面サイズ、ウインドウサイズに対応できるフォーマットです。 SVGの欠点として、表示領域が小さい場合きれいに縮小することが難しい、 表示領域が小さくてもファイルサイズは小さくならない、 といった点が挙げられます。 SVGはInternet Explorer (IE)でのサポートが十分ではありませんでしたが、 IEは2022年でのサービス終了が発表されており、後継となるEdgeを含む、 主なWebブラウザで利用可能になっています。
4. 新しい写真用フォーマット
写真データを保存するためのフォーマットは、 長らくJPEGが事実上の標準となっています。 後継規格であるJPEG 2000や、対抗規格であるWebPなども作られましたが、 置き換わるまでには至っていません。 この状況に一石を投じそうなのが、HEIF (High Efficiency Image File Format)です。 このフォーマットはMoving Picture Experts Groupによって2013年に仕様が定義され、 2015年に開発されたもので、JPEGよりも圧縮率が高くなっています。 iOSやmacOSで標準サポートされ、 Windowsでも有料のプラグインによって扱えるようになります。 Amazon PhotosやGoogle Photosに保存すると、 自動的にJPEGへの変換も行ってくれます。
残念ながら2022年2月時点では、 Webブラウザ単独ではまだHEIFは表示できません。 しかしiPhoneで標準サポートされているため、 潜在的なユーザー数はかなりの数が見込めます。 HEIFはJPEGを置き換えるまではいかなくとも、 第2の選択肢となるかもしれません。