ニュースレターNo.80/2022年3月発行
JPNIC会員 企業紹介
「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。
~お客様のお役に立つ存在であり続けるために~
スターネット株式会社
住所 | 〒541-0041 大阪市中央区北浜4丁目7番28号住友ビル 2号館 3階 |
設立 | 1986年4月23日 |
資本金 | 4億8000万円 |
代表者 | 鈴木喜晴 |
従業員数 | 111名(2022年1月31日時点) |
URL | https://www.starnet.ad.jp/ |
事業内容 |
https://www.starnet.ad.jp/company/summary.html
■企業向け情報通信ネットワークの設計、構築、運用
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「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。
今回は、住友電気工業株式会社の呼びかけにより、 複数の優良企業が参画する形で1986年4月に設立された、 スターネット株式会社を取材しました。
今年で設立から36年目を迎える同社は、 通信回線の共同利用を皮切りに日本でも最初期にISP事業を始めたインターネット業界でも古参企業の一つですが、 2000年頃からは幅広い分野に強みを持つネットワークインテグレーターへと華麗な転身を遂げ、 現在も成長を続けられています。
取材当日は、同社の強みであるお客様への高い提案力の根源でもある、 日々の絶え間ない情報収集や新しい技術にチャレンジし続ける気質、 そして、常にお客様のことを考える熱いマインドを感じさせていただきました。 また、関西で活躍される皆さまらしく、 時に笑いを交えながらのとても明るい雰囲気の会話が続き、 あっという間に予定時間が終了する取材となりました。
電気通信事業者からオールラウンドなネットワークインテグレーターへ
◎まずは貴社の成り立ちについて教えてください。
谷本:当社は、 1985年の電気通信事業法改正による通信の自由化を受け、その翌年の1986年、 まだ高価だった高速デジタル回線、と言ってもせいぜい数Mbps程度でしたが、 これを共同利用することで通信コストを下げるために、 いくつかの会社が集まってスタートした会社です。 そのため、初期は回線の共同利用のための会社という側面が大きく、 全国に通信拠点を設置して第一種電気通信事業者から回線を借り、 第二種電気通信事業者として株主を中心としたお客様に電話およびデータ通信回線などを提供していました。
木下:当時は今と違って、 企業ネットワークを作るための回線が非常に高かったのですが、 それを一般企業でも使えるように、 共同利用という形ができないかと考えたんです。 そこで、住友電気工業株式会社(住友電工)が、 住友グループに限らず各社に声をかけて、 12社が株主となり設立されました。 そういった経緯で設立されたので、 当社は住友電工の連結子会社という位置付けですが、 設立当時からの株主も含め、 住友グループ内外に主要なお客様でもある19社の株主がいます。 Webサイトなどには載せていませんし、 社内でも意外に知らない人がいますが(笑)、 社名のスターネットは「Sumiden group Total Advanced Reliable NETwork」の略に由来しています。
谷本:「スター」と言うとスター型というネットワークトポロジーも表しているし、 ネットワーク事業者としては良い名前だと思います。 このように通信自由化の当初から事業を展開していることもあって、 ICT関連企業を中心とする業界団体であるテレコムサービス協会の本部副会長、 近畿支部会長を務めています。
◎現在はより幅広い事業展開をされていますが、 そのきっかけなどは何かあったのでしょうか
谷本:回線の共同利用で始まった当社ですが、 インターネット技術の発展に伴い2000年ぐらいに通信の遠近格差、 つまり費用の格差が少なくなってきました。 東京-大阪間の電話料金も下がり、回線も随分速くなりました。 その結果、デジタル回線を共同で利用するというビジネスモデルが成り立たなくなり、 全国で50ヶ所ぐらいあった自前の拠点を全部廃止して、 自身でネットワークインフラを持つことを止めたんです。 そして、当社ではネットワークインテグレーションと呼んでいますが、 第一種電気通信事業者から回線を調達し、 ネットワークと一口で言ってもLAN/WAN絡めて複雑な構成になっていますので、 それらを組み合わせてお客様に提供するという形に大きく事業の方向性を転換しました。 幸い、手放した部分を新しい部分で上手く埋めていくことができ、 事業規模としては変わらずにスムーズに事業モデルを切り替えられました。
◎それでは、現在展開中のサービスについて教えてください
谷本:当社のサービスは、ネットワーク、セキュリティ、クラウド、 コミュニケーション、サポートの5本柱となっています。 これらを上手に組み合わせるところが我々の価値で、 我々自身は「オールラウンド・ネットワーク・インテグレーター」と呼んでいます。
まずネットワークですが、当社は元々がネットワークの会社ですので、 これが一番の基盤です。 マルチベンダー・マルチキャリアで、 特定の通信会社ではなくいろいろと組み合わせることで冗長性を持たせています。 一口にキャリアと言っても、それぞれに細かいサービスの違いもありますので、 どれがお客様に一番マッチするか、適切なものをチョイスして提案しています。 また、セキュリティについては、インターネット接続、リモートアクセス、 そこに繋がるクライアントのどれを取っても、 今やネットワークとセキュリティは密接不可分なものですので、 ネットワークとともに提供しています。
クラウドについては大きく二つに分かれていて、 まずは当社自身がサービス提供しているEDI(Electronic Data Interchange)の仕組みや各種のセキュリティ関連サービスなどです。 それに加えて、 最近はAWSをはじめとする外部のクラウド利用が主流になりつつありますので、 そういったシステムを構築するお手伝いをするという仕事も、 近年は割合を増やしつつあります。
コミュニケーションとは、 ネットワーク上で使っていただく音声や映像系の製品やサービスを指します。 以前から、回線を提供するだけではなく、お客様の各拠点へ電話交換機の導入や、 拠点間を結ぶテレビ会議システムの構築なども請け負っていました。 そういったものの構築にはノウハウが求められます。 その手の強みが当社にはあり、 その延長線上で最近ではWeb会議システムなども提供しています。 近頃は自席に電話なども置かないところが増えてきましたが、 電話自体が無くなることはなく、代わりにスマホが普及し、 ZoomやTeamsなども当たり前のように利用されてきていますね。
最後はサポートですが、 これは今まで説明してきたサービスのすべてに通じるものです。 どのサービスも導入して終わりではなく、日々、運用状態を最適に保ち、 不具合があれば速やかに対応するという、保守運用のサービスです。 取り扱うソリューションによって内容は変わってきますが、 それぞれに対応したものを提供しています。
お客様の中に深く入り込むとともに、お客様に育てられ日々成長
◎これらの中ではやはりネットワーク系のサービスの割合が多く、 またお客様は法人が主体なのでしょうか?
谷本:やはりネットワークが多いですね。 あとは、最近ではセキュリティの伸びが凄いです。 ただ、先ほどお話ししたように、 ネットワークとセキュリティは一体というところではあります。 また、当社の顧客は約400社の法人のお客様です。
当初は自社の通信ネットワークサービスが中心なので、 その内容をいかに高めるかがポイントでしたが、 2000年頃の事業モデルの転換以降は、世の中で一番良いものを組み合わせて、 一番お客様にあったものを提案できるかどうかがポイントになりました。 自社の通信ネットワークサービスが無くなったからという事情はありましたが、 逆に言えば今は持たない強みを活かせる環境です。 特定のサービスを担いでいると、それしか売ることができないですからね。 もちろん、なかなかしんどい部分もありますが、 常にいろいろな製品やサービスを評価しながら、 お客様にとって一番となるものを提案しています。
また、当社自身が提供するサービスには、 一般のサービスでは実現できないようなところまで作り込んでいるものもあります。 PKI (Public Key Infrastructure)などは細かいニーズにも対応していたりして、 普通のベンダーだとそこまでやっていません。 こういった、お客様の深いところまで入っていって提案するのが特徴です。
奥野:この400社ほどのお客様に対して、 汎用的なサービスを提供してお客様の側でそれに合わせて使ってもらうというのではなく、 お客様のニーズを元にして要望にあったものを作り込むという、 サービスの内容をお客様に合わせる形で提供しています。 さすがに完全オーダーメイドとまではいきませんが、 ここが当社の強みになっています。
◎約400社の取引先に、 111人の社員でそこまでしていくのはなかなか大変そうですね
木下:正直大変ですね(笑)。 自社サービスだけを扱っていた当時と違い、 今では組み合わせのパターンは装置ごと、お客様ごとに膨大な数があり、 装置もルータ、スイッチ、 ファイアウォールと求められるスキルの幅は広がってきています。
また、我々のようにネットワークセキュリティも含めた提案をしていくためには、 お客様の中に入っていって、目線を合わせないといけません。 今は私も技術畑ですが、元々は営業をやっていました。 「もう一歩踏み込んで」という意識が社員みんなのマインドに入っていて、 よくも悪くもドライではいられなくなってくるんですよ。 機器の設定とかだけならドライでもいいんですが、 なぜこの設計をしないといけないのかとか、 信頼性のためにはこういった考慮が必要だとかいったところまでやっていくと、 どうしてもお客様と同じ目線が必要になってくるんです。
だから、一見さんというお客様はほとんどおられなくて、 継続的なお付き合いが大半です。 「次にネットワークを作る時にもスターネットさんにお願いしたい」とか「セキュリティについてスターネットさんの目線で見て欲しい」とか、 昨今はビジネス的な割り切りが世の趨勢ではありますが、 当社ではわりとお客様と密なお付き合いをさせていただいています。
◎貴社は新卒採用もされてますが、 今時だとそういった深い人付き合いが苦手な学生もいそうですよね
木下:新卒・キャリアとも採用を行っていますが、 採用枠に限らず入社当初はなかなかお客様との会話に付いていけない社員も中にはいます。 そういう社員を見ると「コミュニケーションに苦労してるんやろか?」と思ったりもしますが、 お客様の案件に入り込むとみんな「お、変わってきたな」「こいつ、 こんなに話すやつやったかな?」と感じるぐらいに変わってきます。 お客様が変えてくれるんでしょうかね、 みんなマインドが変わってくるんですよ。
谷本:また、当社では採用後に営業と技術の間の人事交流がわりとあって、 これは結構珍しいかもしれません。 ローテーションとして、長いスパンで見ると営業から技術に行ったり、 技術が営業になったりしています。 これも営業が高い技術スキルを持ち、また技術者がお客様目線を忘れないという、 当社の社員のマインド作りに貢献していると思います。 話していて思い出しましたが、私も昔は両方やっていました(笑)。
営業と技術の垣根を越え、常に新しいシステムとサービスの提供に挑戦
◎コロナ禍に限らず、災害などへの備えはどのようにされていますでしょうか
谷本:BCPにはしっかり取り組んでいて、定期的な訓練もしていますし、 監査なども受けています。 当社は元々、第二種電気通信事業者でしたので、 設備面での対策などは昔からですが、 感染症対策なども新型インフルエンザが流行した頃に整備し始めて、 今回のコロナ禍で一気に進んだ感じです。
木下:設備面の安全性や信頼性の向上にはずっと取り組んできましたので、 それを活かして、 お客様のネットワークについても気をつけた方が良い点や冗長化の考え方とかそういうものを、 設計の中に盛り込んで提案・構築をさせていただいています。
谷本:新型コロナウイルス対策で進んだリモートワークについては、 当社では目標を7割に設定して取り組んでいます。 ただ、ペーパーレス化などはともかく、 出社については業務の内容にもよるので、どうしても多少のばらつきは出ています。 完全にリモートで回るのかと言うと、まだそこまではいっていないですね。
◎世の中には日々新しい技術が生まれていますが、 そういった部分への取り組みについて教えてください
谷本:当社の経営理念に「常に最新の情報通信技術の動向を見据え、 新しいシステムとサービスの提供に果敢に挑戦します」とあるように、 常に新しい技術に挑戦しています。 そして、まさに今、コロナ禍により大きく変わろうとしていて、 これまではネットワーク事業が中心でしたが、 クラウドやセキュリティの比率が大きく増えてきました。 最近はゼロトラスト関連を中心にセキュリティに大きな比重を置いて取り組んでおり、 これをさらに加速しようと、昨年、 先進ソリューション室という部署を新設しました。 ここでは、特にセキュリティ関係を中心に、 先進的な技術を用いた製品などについて、 評価検証からお客様への提案レベルまでをやっています。
一方、これまでの延長線上にある新製品や新サービスに関する検証等については、 各部署がそれぞれやっています。 元々当社の営業は、先ほどお話しした営業と技術の人事交流などの影響もあるのか、 技術に強いんですよ。 新しい製品を見つけてきては「これはいいな」とかやっています。 新しいものを常に、軽やかに追っています。
◎営業の方でも、そこまでするというのは凄いですね
谷本:お客様に沿う提案ができることは当社の生命線で、 最も重視しています。 さらにお客様のお役に立つ存在であり続けるためには、 自分達が最新の技術を扱える力を付けていかないといけません。 自社製品を持たない我々にとっては、最新の技術を素早く提案する力、 運用する力が必要なんです。
奥野:今で言えば、セキュリティですね。 どの社員もみんな興味を持って、 お客様からの話やインターネット上の情報を収集しています。 我々が詳しくなれば、お客様に情報を提供できますし、 逆にお客様から収集することもできるようになります。 各ベンダーからも担当者を呼んで話を聞いて、 それを元に実際にテストをしてといったことを繰り返しています。
谷本:今後の社会の重要課題であるSociety 5.0やSDGsを実現していくために、 インターネットを中心とするネットワークシステムが、 ますます重要になっていくことは間違いありません。 当社は、それらの実現に少しでも貢献できるよう、 ICT新技術に絶えずチャレンジするとともに、 それをしっかりと支える人材も育成していきたいと考えています。
インターネットは便利なだけではなく、使う側の意識が試され続ける存在
◎JPNICも情報提供やセミナーなどを行っていますが、 お役に立てていますでしょうか。 また、IPv6対応やIPv4アドレスの調達などで、 何かお困りのことはありますでしょうか。
木下:Internet Weekに参加している社員がいて、 情報収集をして良い情報があれば社内で共有しています。 ベンダーなどからのものではなく、中立で網羅的な情報が貰えるのが嬉しいと、 参加する社員からは聞いています。
奥野:IPv6については、 6年ほど前に今後どうするか検討を行いましたが、 現状はいろいろとIPv4の延命手段が出てきていますし、 我々の事業はコンシューマービジネスではないので大量にIPアドレスを使う状況ではありません。 お客様側でも足りないという話はありませんので、 積極的には対応はしていません。
谷本:弊社ホームページの沿革にも載せていますが、 当社は日本で4番目のISPだったんですよ。 1996年当時はJPドメイン名の管理がまだJPNICだったんですが、 当社のドメイン名である「starnet.ad.jp」を登録した時は、 ネットワーク事業者にふさわしいドメイン名を持つことができたと、 ちょっと誇らしい気分だったのを思い出しました。
◎会員番号25番の貴社には、 長年JPNICを支えていただいて本当にありがとうございます。 さて、長らくインターネットに関わってこられた皆さまに最後に伺いたいのですが、 あなたにとって「インターネット」とは?
奥野:私自身にとっては、水や空気と一緒ですね。 生活する上でも、仕事の上でも必需品です。 繋がれば全世界の情報が収集できて、コミュニケーションができて、 遊ぶこともできる。一点、セキュリティ面に不安があって、 そこが我々のビジネスになっていますけども。 インターネットに関わったのは2000年以前でしたが、その頃はまだまだ不安定で、 そんなものだと思って使っていました。 そこから大きく変わってきて、今では特別に何かを思うこともない、 ごく当たり前に存在するものという認識です。
木下:私が会社に入った30年以上前、 その時に凄く興味を持った言葉が「情報通信」です。 誰から聞いたのか忘れましたが、情報はそこにあるだけではなく、 必要なところに持っていって初めて役に立つものだと教えられました。 そういうものに携わる会社に入れたら良いなと思って、この会社に入ったんです。 インターネットは、最初はまさに情報通信を担うためのツールでしたが、 今はもうインフラになってきたと思っています。 そして、身近なもの、そこにあって当たり前な存在だからこそ、 便利なだけではなくセキュリティというか脅威もそこに存在します。 コロナ禍で、今日の取材もそうですがZoomでいろいろな人と会えるようになりました。 昨年は、40年振りに高校の部活のOB会をZoomでやりました。 凄いなと思った反面、企業がランサムウェアにやられて……みたいな話も聞きます。 それぞれが、同じインターネットから出てきた話です。 表裏一体ですよね。 そういったことを、常に意識していく必要があると思います。 使う側での意識が試されている、試され続けていくものですね。
谷本:世の中ますますインターネットが中心になってくるので、 仕事的にはインターネットは当社の主戦場です。 個人的には、 インターネットに接したのがちょうど当社がインターネットサービスを始めた頃で、 東京で営業をやっていました。 お客様に説明するのに、まずは接続しないといけないということで、 当時はまだものすごく高かったデスクトップパソコンを準備して、 お客様に提案するために半日かけてWebサイトを閲覧しました。 まだ日本のWebサイトがほとんど無かったので、海外も見て回り、 「うわ、地球の裏側が見えるわ」と、凄い感動したのを覚えています。 まだWebブラウザもNetscapeがなくて、NCSA Mosaicだった頃です。
その後、世の中がWebアプリに注力し始めた頃に一旦スターネットを離れて、 Webソフトウェア開発をやっていましたが、またこちらに帰ってきました。 個人的には仕事柄、 年齢のわりには知識がありデジタルデバイドには遭っていないと思っています(笑)。 ただ、世の中を見てみると、インターネットがそこにあることが普通で、 その上で動くSNSなどで繋がっていることを当然としたコミュニケーションなどは、 やはり若者の方がずっと得意ですよね。 そういう世界になっていくこれからは、できるだけ時代に遅れないように、 いろいろなところでキャッチアップしていきたいなと思っています。