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ニュースレターNo.87/2024年8月発行

JPNIC会員 企業紹介

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「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

今回は、1996年4月に事業をスタートして今年で29年目を迎えた、 株式会社エアネットを取材しました。 同社はストレージ製品を展開した企業の社内事業として始まり、 その後は単独の事業会社として独立し、 さまざまなサービスを拡充して現在に至っています。

今回の取材では、 一般ユーザーに普及し始めた当初から長らくインターネットに関わっている技術力や知見を活かし、 決して押しつけではない顧客のニーズに合わせて作り込んだ、 信頼性の高いサービスを提供されていることが印象に残りました。 また、インフラを支えるエンジニアとしての矜持も強く感じることができる取材となりました。

ロゴ:
インターネットをすべてのユーザーにあまねく公平に
~意識せずに使えるようにするのが我々の役割~
イメージ:タイトルバック

株式会社エアネット

住所 〒140-0001 東京都 品川区 北品川1-10-4 Y.B.ビル 4F
設立 2002年12月16日
資本金 1億円
代表者 吉村 隆
従業員数 33名(2024年7月時点)
URL https://www.airnet.jp/
事業内容 https://www.airnet.jp/company/profile/
▶ ビジネスクラウド
▶ マネージドホスティング
▶ ISPサービス 等

長年培った経験が裏打ちする熟練の技を提供

▶ まずは貴社の成り立ちを教えてください。

田中:当社のスタートは1996年4月に、 RAIDなどのストレージ製品などを展開していた株式会社アドテックスの社内で立ち上げた、 「AIRインターネットサービス」です。 それまでは、インターネット接続サービスはIIJ社などによる法人向けが主流でしたが、 この頃からいろいろな特色を売りにした中小のISPがサービスを提供し始め、 大手パソコン通信事業者や家電メーカーなども次々と参入してくるなど、 時代が大きく動き始めた頃です。 また、接続料金もそれまでは従量課金のところが大半でしたが、 固定料金を打ち出すISPも出てきて、 この辺りからインターネットが個人の手に届くものになりました。 その後、2005年8月に現在の主要事業であるインターネット関連サービス事業を株式会社アドテックスから譲り受けて独立、 翌9月から株式会社エアネットとして事業を開始、 サービスを拡充しながら現在に至っています。

▶ 社内事業からスタートされたのですね。どういうきっかけで事業が生まれたのでしょうか?

田中:ストレージ関連製品の展開からインターネットに手を伸ばしたことになっていますが、 実際のところは単にやりたかったからだと思っています(笑)。 最初は工場の一角にスペースを確保して、 そこにサーバを置いてインターネット接続をしISPサービスを提供していました。 今ではいろいろなサービスを提供している当社ですが、 このISPサービスが最初の事業です。 サービスブランドは「AIRnet」で、 ユーザーのホームページ容量が無制限というのが当時としては画期的でした。 そのため、法人ユーザーだけではなく、多くの個人のお客様にもご入会いただきました。

スタート時は工場がある神奈川県藤沢市にサーバを置いて、 IIJ経由でインターネットに接続していたのですが、 工場だと法定点検での停電などもあるため、 しばらくして東京の大手町にDCを開設しました。 それに伴いスペースに余裕ができたこともあり、 2001年7月からは今では当社の主力事業になっている、 法人向けホスティングサービスを開始しました。 単なるレンタルサーバではなく、お客様個々にサーバを用意して我々が運用を代行する、 今で言うところのフルマネージドホスティングです。 この頃は、ちょうど独自ドメイン名を使ってWebサイトを立ち上げる企業が増えてきた頃で、 そういったお客様にご利用いただきました。

▶ 貴社の事業割合としては法人向けが大きくて、 また個々のお客様に合わせて運用ということは長いお付き合いのお客様が多いのでしょうか?

写真:社員のみなさま

田中:はい。 数としても売り上げとしても、法人のお客様が多くなっています。 売り上げは約4割がマネージドホスティングですが、 マネージドの専用サーバは新規というよりは、 やはり長くご契約いただいているお客様が多いですね。 お客様のことを一番よくわかっているのは我々エアネットで、 そこを評価していただいています。 もちろん新規のお客様もいらっしゃいますが、 運用手腕の妙味というのは長く付き合わないとなかなかわかっていただけない部分もありますので、 そういう方々に働きかける際は単にマネージドで運用はおまかせというだけではなく、 もう少しわかりやすいサービスを前面に出して訴求するように工夫しています。 昔から長くご利用いただいているお客様は、 システムの規模が大きくてご利用の単価も高めのお客様が多くなっています。

個々のサーバ管理を引き受けているということは、 お客様それぞれに色があるということで、 単に一律のシステムを納品して終わりではありません。 まずはお客様のニーズをヒアリングして、 それに基づいて機材を選択したら作り込んで当社DCに設置します。 お客様にはリモートでアクセスする手段を用意して、 お客様はそれを使ってクラウドのように利用します。 そのシステムには個別サービスを作り込んで利用していて、 お客様のニーズを満たすと同時に、我々にとっても運用しやすいように設計しています。 単に、お客様が作ったものを預かっているわけではありません。 用意するサーバにしてもHDDを1本だけということはなく、 お手頃なプランでも冗長化していて、これはお客様のためでもあるし、 我々が運用しやすくするためでもあります。 さらに高い水準を求めるお客様には、システム自体も冗長化しますし、 SLAも含めて要望に応じたものを用意しています。 「安くて壊れない」みたいな魔法みたいなことはできませんが、 最初の設計段階から関わることで、 お客様の要望に添った高品質なサービスを提供しています。 ただ、実際に使っていただかないとなかなか良さが伝わりにくいので初めてのお客様相手には通じにくく、 そこは苦労するところです。 付き合いの長いお客様だとシステムの勘所もわかりますし、 リスクやどこまで許容できるかを示した上でお客様にご提案できるのですが。

写真:オフィス近隣の稲荷堂

また、ネットワーク系のサービスも得意としているので、 お客様からはクラウドサービスと当社のDCを相互接続したいといった相談も結構あります。 クラウドサービスの良いところは、 管理がしっかりできていれば安全で冗長化も何らかの方法で実現されていることですが、 その何らかの部分が可視化できなかったり、 自社でコントロールするのが難しかったりするところが困りものです。 そのため、お客様からはバックアップを手元にも置いておきたいという需要が結構あり、 クラウドサービスのバックアップを当社で用意したサーバで取るなどの案件もやっています。 我々もクラウドサービス側と相互接続が必要になるので、 社内でも各社のクラウドサービスについては常に学んでいます。

電子メール系サービスのラインナップには自信あり

▶ 貴社はメール系のサービスにとても力を入れていらっしゃいますよね。

田中:はい、 企業の情報システム部門向けのサービスとしてのマネージドホスティングは最近それほど増えてはいなくて、 「ALL in Oneメール」というクラウド型電子メールソリューションが伸びています。 このサービスには、当社としてもとても力を入れています。

ISPとして電子メールには30年近く向き合ってきましたが、 昔は認証も何もないところからスタートした電子メールも、 今はさまざまなセキュリティが求められるようになりました。 一方で、昔ほどそれぞれの企業の技術者が電子メールシステムに詳しいわけではありません。 そのため、Webベースなどで簡単に管理できるような仕組みが必要で用意しています。 それだけなら他社のサービスでも同じような機能はありますが、 当社ではそこにセキュリティという付加価値を付けています。 電子メールはプロトコルとしては世界共通のものを使って送受信されるわけですが、 管理機能を作り込むことで他社と差別化しています。

例えば、従業員が数千人もいるような大企業だと、 こういった内容の電子メールは送信できないようにしたいとか、 メールを送った証跡を保存しておきたいとか、 さまざまな社内ポリシーがあります。 このALLin Oneメールでは、そういったポリシーすべてを取り込んで、 電子メールシステムをかなり細かく作り込んで提供できます。 このようなサービスを提供している企業はサービス開始当初はあまりなくて、 今はライバルも増えてきましたが、 この辺りのスキルや知見はやはり長年電子メールに取り組んできた我々の強みですね。 ALL in Oneメールのサービスにはいくつか種類があって、 お客様ごとに専用環境を用意するProプランと、 自社専用の環境までは必要ないというお客様には、 もう少しお手軽なLiteプランも用意しています。 マネージドホスティングのインフラを用意して、 その中に電子メールのシステムを入れています。 やっていることはマネージドホスティングと変わりません。

▶ なるほど、マネージドサービスを長年提供されてきた蓄積が、ここにも活かされているのですね。

写真:リモート会議

田中:一方で、 最近のお客様はクラウドサービスの利用にも慣れてきて、 電子メールのサービス丸ごとではなく、 欲しい部分だけパーツとして利用したいというお客様も増えてきました。 そういったお客様向けのサービスが、Gatewayプランです。 これは、ALL in Oneメールの中にインバウンドやアウトバウンドのセキュリティなど一つ一つのパーツがあって、 その中から必要な機能のみを組み合わせて利用することができるサービスです。 電子メールサービスをビジネスにするというのも今時はなかなか厳しくて、 例えばMicrosoft社のMicrosoft 365を利用すれば電子メールサービスも付いてきます。 今や電子メールはアプリケーションの一部になりつつあり、 そういったサービスに移りたいというお客様も当然出てきます。 ただ、その手のサービスは規模が大きいため、 一社一社の細かいところまでは当然配慮されていません。 機能を提供するから自分で頑張って、というスタンスです。 一方で、当社であればそれぞれのお客様の顔を見ながら、 お客様にあったサービスを提供できます。

具体的には、Microsoft 365のようなサービスを使いつつも、 セキュリティチェックの部分だとか、アーカイブ機能だとか、 必要な部分のみを当社のサービスと組み合わせて使っていただきます。 また、クラウドサービスだけでは機能が足りず、 移行できずに残ってしまう部分、 お客様が困ってしまう部分を補うこともできます。 例えば、監視メールなどで大量にメールが送信される際に弾かれてしまうのを避けたいとか、 昔からあるシステムからのメールをどうしても中継する必要があるけれども古い認証方式には対応していないといったケースでも、 当社のサービスを組み合わせることで解決できます。 エンドユーザーとしてのみインターネットを利用している企業であれば、 極論すればクラウドサービスなどで対応していない部分は切り捨てることもできますが、 自社のお客様を抱えている企業やサービス提供事業者などは、 どうしても捨てきれない機能などもありますからね。 受け取れない、送信できない電子メールが発生するのは絶対に困るというお客様もいらっしゃるんです。

また、Microsoft 365のような他社のメールサービスを利用するようになると、 自社内で完結していたこれまでとは違って、 メールが届かない場合などにログを調べることも難しくなります。 当社のサービスを組み合わせてご利用いただくことで、 ログも見られるようになるし、 何か困った際の相談窓口としての機能も果たします。 もちろん、情報システム部門を自社で持っているところであれば自力で解決できるのかもしれませんが、 世の中すべてがそうではありません。 当社がこういうサービスを提供することで、 どんなユーザーでもあまねく公平にインターネットを使っていただくための手助けができればと思っています。

インターネットを意識せずに使えるのが本当に良いサービス

▶ 貴社が提供されているサービスに「リザーブキーパー」というものがありますが、他のサービスとは少し雰囲気が違いますよね。

田中:はい、我々は常に、自分達のサーバをどう使ってもらうのかを考えていて、 サーバにいろいろ味付けをして提供しているのですが、 その中でも少し異色のサービスが飲食店の予約情報や顧客情報をデジタル管理できるリザーブキーパーです。 居酒屋などでお馴染みの席の予約ですが、 紙やホワイトボードなどアナログで管理していた時はかなり問題がありました。 満席時に予約を断るとお客さんは当然別のお店に行きますが、その場合でも、 自分の店が無理なのであれば、せめて系列店に行ってもらいたいわけです。 リザーブキーパーでは管理端末としてiPadやPCを使って、 どこのお店なら案内できるのかがグラフィカルに見られて一目瞭然で、 タッチ一つでそのまま予約受付もできます。 こういった、予約台帳のデジタル化からサービスが始まりました。

また便利な使い方としては、 店舗で予約受付できない際に留守番電話に回すだけではなく、 チェーンの本部など当該店舗以外に回す場合があります。 そうすると、本部で管理端末を見ながら空いている他の店舗にお客様を振り向けることができます。 もちろん、店舗で受けて混雑状況に応じ他の店舗に振ることも可能です。 コロナ禍の時にはテイクアウトや自社デリバリーを強化したい、 といった需要が増えたことで、 現在はテイクアウトや自社デリバリーの注文受付の機能を強化しています。

リザーブキーパーを開発したきっかけは、 事業推進を担当する役員がある大手の飲食チェーンから困っていることがあると相談を受けたことです。 我々はみんなサービス精神旺盛なので問題解決のために事業を立ち上げることになり、 その飲食チェーンにはブラッシュアップに協力してもらう代わりに無料で使っていただき、 サービスを一緒に作り上げていきました。 開発重視で毎月のように新機能をどんどん追加していっていて、 これも事前に仕様をしっかりと決めて作り込んでからリリースすることが多い当社としては異例のことでした。 また、サーバなどシステムのことなんて何もわからなくても使えるサービスになっていて、 リザーブキーパーを使っているお客様は特にインターネットのことを意識していません。 そういう意味でも、当社のサービスの中では独特ですね。

▶ インターネットを利用しているのに、お客様にそれを意識させないということですね。 それだと、貴社の皆さまの努力があまり伝わらないと思うのですが。

田中:どんなサービスでも、 普及が進むとお客様はそれに特別な価値を感じなくなりますが、 インターネットもそろそろそうなりつつあるのかもしれません。 また、私がインフラ系に長らく関わっているからかもしれませんが、 インフラは空気と同じなんですよ。 トラブルなく当たり前に使えるようにするのが我々の仕事で、 何事も起こらなければ我々の勝ち、 何かあれば負けみたいな心意気でいます。 そういう意味では、 自分に限らずインフラエンジニアの皆さんはあまり表に出たり自分を出していったりしたがらないですよね。 たまたま今日は、こうやって取材に応じてお話ししていますけども(笑)。

▶ インフラを支える人材を集めるのに苦労している企業は多いと思います。 貴社ではどのように集め、育てていらっしゃるのでしょうか?

写真:勤務の様子

田中:そんなに上手くいっているわけでもないので偉そうなことは言えませんが、 システム運用などに関わっていて、 保守監視などからもう少し仕事の幅を広げたいと思っているような人に目を付けています。 単に手順通りの仕事をするだけではなく、 トラブルを未然に防げて良かった、 これを防ぐためにはどうしたらいいのだろう、そういったことに興味を持つ、 考えられる人がこの仕事に向いていますね。 ただ、当社では新卒を育ててというのはなかなか難しいので中途採用に力を入れているのですが、 先ほど言ったようにインフラエンジニアは自分から積極的にアピールしてこないので、 そこが悩みどころですね。 一方、営業職もそれなりの深い技術的知識が必要になり、 これまた採用はなかなか大変です。

採用した新人への導入教育では、 全員にドットコムマスターのダブルスターまでは目指してもらっています。 その後は先輩社員が指導しながら実際の業務にあたってもらうことで、 各個人への教育としています。 最初は失敗する経験も大事なので、 社内のシステムを担当してもらいながら経験を積んでもらい、 それからお客様のシステムを少しずつ任せていくようにしています。 JPNICの技術セミナーなども、 電子メールでお知らせを見た時にちょうどハマりそうなものがないかは考えたりしています。 知識カテゴリごとにひとまとめにしたような、 セミナーや教育コンテンツなどがあると嬉しいですね。

▶ 本日はいろいろと興味深いお話をたくさん聞くことができました。 ありがとうございます。 最後に伺いたいのですが、 田中様にとって「インターネット」とは何でしょうか?

田中:一番難しい質問ですね(笑)。 何でしょうね、という感じです。 私の認識だと、 今の時代の人達にとってはインターネットは遊びのツールだったりインフラだったりするんだと思います。 一方、私は20歳で入社して当社の立ち上げに関わってからずっと、 仕事でしかインターネットに関わっていません。 つまり、終始提供側だったんです。 どういう風に使っていただくのかをずっと考え続けていたので、 自分でそれを使って遊ぶという感覚がよくわからないんですよね。 最近でこそ動画配信サービスを利用したりもしますが、 実は自分はユーザー側の気持ちがよくわかっていないんじゃないかと不安になったりもします。

私が学生の頃は今のようなTCP/IPを使ったインターネットではなく、 UUCPを使って接続していました。 先生の研究室に行くと、たまにモデムがカチっと鳴って電子メールが届いたり、 NCSA Mosaicというブラウザを使ってWebを見せてもらったりと、そういう時代です。 その後、自分でもFreeBSDをPCにインストールして遊び始めたのですが、 ここで「これはインターネットが必要だな」と思いました。 そしてISPを探し始めたのですが、ここで知人のさらに知人として、 当社を立ち上げようとしていた当時の上司に出会いました。 その結果、ユーザーとしてISPに入るつもりが、 なんと中の人としてISPに入ってしまいました(笑)。 そのままずっと働き続けてきて、今ではもう社内でも一番の古株です。

そんな感じで作る側からインターネットに関わり始めたので、 ユーザーとしての感覚があまりないのかなと思います。 使うよりかはインフラを引く側、育ててきた側という感じです。 WIDEプロジェクトの方々と比べると少しおこがましいかもしれませんが、 そういう気持ちです。 もう今時の普通の社会に上手く適合できないぐらい、 インターネットとは一心同体と言ってもいいのかもしれませんね(笑)。

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