各位
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
APNICに対し、統治機構強化の要請を行いました
2023年3月2日に開催されたAPNICのAnnual General Meeting (AGM、 年次総会)で実施されたAPNIC理事会選挙の期間中に、 APNICの名前を騙る者から、APNIC会員に対して一部候補への投票が要請されたという、 不適切な行為が報告されました。 JPNIC理事の松崎吉伸が当選したことは既報*1の通りですが、 JPNICは、こうした事態をAPNICの統治機構に対する脅威と捉え、 理事長名にて、APNIC理事会および事務局長に宛て、 統治機構の強化を要請する書簡を送りました。 以下に文面を示します。
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2023/20230302-01.html
APNIC EC議長 Gaurab Raj Upadhaya様、
APNIC EC各位、
APNIC事務局長 Paul Wilson様APNICの統治機構強化に関する要請
APNICはインターネットが機能するために不可欠な一意な識別子であるIPアドレスとAS番号を分配・管理するとともに、 逆引きDNSなど関連サービスの運用に責任を持つ地域インターネットレジストリである。 この生来の機能の他に、研究や能力開発などの活動も展開することで、 インターネットの基盤運営を支える最も重要な役割を占めている。
APNICの運営は一義的に事務局によって行われるが、会員が選出したECが、 事務局業務を監督している。 ECが正しく会員を代表し、監督することで、 APNIC事務局の業務が適切に運営されることは、何よりも重要である。
しかしながら、今回のAPNIC EC選挙は、この適切な運営に重大な懸念をもたらした。 2月15日及び2月21日の事務局からのアナウンス*1によれば、 この選挙期間中に、APNIC事務局を騙って特定候補への投票を促す電話、 匿名の脅迫や選挙関連に関する沈黙の要求などの事案が発生し、 法執行機関への通報もなされたとのことである。 今回新たに導入された、Election Nominee Code of Conductと、 その監視機構は、これらの攻撃に警鐘を鳴らしたとは考えられるが、 APNIC定款に規定がないこともあり、 それ以上の積極的な対策が採られるには至らなかった。
*1 [apnic-talk] [Apnic-announce] Callers impersonating APNIC: Election scam warning
https://orbit.apnic.net/hyperkitty/list/apnic-talk@lists.apnic.net/thread/OAHAKZE33QSGDTY3KQ23SNRQOLPVNQ6R/
[apnic-talk] [Apnic-announce] Appointment of law firm to oversee election nominee code of conduct
https://orbit.apnic.net/hyperkitty/list/apnic-talk@lists.apnic.net/thread/MQZLPC54FDOWB3DKO4WDIDNY6XQQIPTH/我々は、 このような懸念がいくつかの政府や他のインターネット運営調整団体からも明確に表明され、 APNICの安定性への脅威が、 インターネット全体に波及しうることを示唆していることを認識している。
これらの攻撃は、公正に選出された代表者によるAPNICの事業の監督を阻害し、 APNICの安定運営を脅かし得る。 今後このような脅威に対処するためには、 定款を始めとするAPNICを統治している機構を点検し、脆弱であれば補強して、 今後の安定運用を十分見込める堅牢性を確保しなければならない。 これは喫緊の課題と言え、APNIC ECのリーダーシップの下、 思慮深く着実なステップが取られることを強く求めるものである。
JPNICは、30年前にAPNICの設立を主導し、 設立以来現在に至るまでAPNIC会員である。 APNICをグローバルインターネットの最重要機能の一つと捉え、 今日に至るまでECメンバーの輩出やポリシー検討への参画など、 積極的に関与してきた。 今後の統治機構の検討に会員としての関与が必要であれば、 喜んで参加する所存である。
JPNIC理事長
江崎浩
以上