グローバルデジタルコンパクト(GDC)に対する意見提出について

国際連合事務総長技術使節は、 2024年9月に開催される「未来のサミット」での採択に向けて提案されている、グローバルデジタルコンパクト(Global Digital Compact, GDC)^*に対する意見を、2023年4月30日まで募集していました。この募集に対し、JPNICはAPNIC (Asia Pacific Network Information Centre)と共同で意見提出を行いましたので、お知らせします。

* https://blog.nic.ad.jp/2023/8457/

JPNICとAPNICが提出した意見は、 GDCの七つの盟約(Compact)のうち2番目の「インターネットの断片化を防ぐ(Avoid internet fragmentation)」に対するものです。

今回提出した意見は、国際連合の下記ページにてご覧いただけます。

JPNICおよびAPNICの提出意見(英語): https://www.un.org/techenvoy/sites/www.un.org.techenvoy/files/GDC-submission_JPNIC-APNIC.pdf

なお、提出意見の日本語参考訳を本アナウンス末尾に付けておりますので、あわせてご覧ください。

JPNICはこのような活動を通じて、インターネットの円滑な運営に寄与してまいります。

JPNICおよびAPNICが提出した意見の日本語参考訳

JPNICとAPNICは、グローバルデジタルコンパクトに意見を提出する機会をいただけることに感謝します。 JPNICは日本における国別インターネットレジストリ(NIR)であり、インターネット推進団体です。 APNICはアジア太平洋地域における地域インターネットレジストリ(RIR)です。インターネット技術コミュニティの一員として、両者は、インターネット社会の繁栄と安定のためにインターネット基盤が健全に運営されることを支持します。意見はこの立場からのもので、第2領域「インターネットの断片化を防ぐ」に対するものです。

a) 大原則

インターネットはネットワークのネットワークとして、全体的にはグローバルに単一のネットワークとして機能するように発展してきた。これは各ネットワークが共通する／標準化された技術要素(アドレスやプロトコルなど)を使用することと、世界中のあらゆる人々がアクセスできることで、インターネットとしての機能と価値を実現しているのである。これに対して断片化が起こればそもそもインターネットとして意味をなさなくなるため、断片化を避けることが最重要である。

グローバルで単一なインターネットは保全されなければならない。この点に関して、2022年4月6日にRIPE NCCが"An Open Internet Remains the Goal"というRIPE Labs記事の"The Internet Runs on Consensus"と題された段落で示した立場を支持する。インターネットは地球上のあらゆる国や企業、個人がやり取りをする基盤である。「競合する国々やビジネスが単一のグローバルインターネットを共有している。これは少なくとも協力のための基本的な層が必要だからだ。」と、この記事が指摘する通りである。

インターネットではいくつかの主体がセキュリティの保全などの目的で、悪質なトラフィックを食い止めるなどの対策をしているが、これらは単一でグローバルなインターネットの保全を前提として、その上で個別的な措置として実施されるべきである。

b) 主要なコミットメント・誓約・行動

インターネット基盤の運営調整団体であるICANN、RIRs、IETFなどが、特定の国家や企業団体の方針から独立して、マルチステークホルダーアプローチで策定されたポリシーに従って、一意な識別子の管理分配、標準プロトコルの策定を進められるよう、必要な措置が講じられるべきである。例えば、IPアドレスの供給の役務が、外交政策上の制裁対象になる場合が、国の管轄権がグローバルで単一なインターネットに影響を及ぼす例として挙げられる。これら運用調整団体の独立性と、グローバルに影響する性質を尊重することは重要である。一方で、必要な場合には団体の事業運営において、継続性の維持に配慮がなされるべきである。