メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

Committee on ICANN Evolution and Reform
Working Paper on the ICANN Structure and the Nominating Committee Concept
翻訳文

(社)日本ネットワークインフォメーションセンター
最終更新 [2002年8月26日]

この文書は2002年5月9日に公開された
http://www.icann.org/committees/evol-reform/working-paper-structure-09may02.htm
を翻訳したものです。JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、その品質に責任を負いません。


ICANNの発展と改革に関する委員会

ICANNの構造と指名委員会の概念に関する研究報告書

2002年5月9日掲載


この研究報告書は、さらなる議論を行うために当委員会が意見を述べている一連の資料の一部です。これらの意見は結論ではありません。したがって、理事会もしくはコミュニティ全体への具体的な勧告の基礎材料に実際になるかもしれませんし、ならないかもしれません。今後数週間のうちに、コミュニティにおいてさらに詳細な議論を行うための焦点がこれらの見解により提供されることを期待しています。2002年5月19日までに寄せられたコメントが最も有益なものとなります。

この研究報告書に対してのコメントを提出するにはここをクリックして下さい。2002年5月19日までに寄せられたコメントが最も有益なものとなります。

はじめに

以下の議論は、ICANNの発展と改革にはいくつかの別個のしかし相互に関係する問題が関わってくる、という考えに基づいています。つまり、ICANNの役割とは何か(ICANNの使命)、ICANNの役割はどのように実行されるべきか(ポリシー策定プロセス)、そのような役割はどのように支払われるべきか(資金)、ICANNの内部構造をどのように組織するか(構造)、およびICANN理事会をどのように構成するか (指名委員会プロセス)、といった問題です。これら全ては相互に関係していますが、それぞれの問題は個別に検討するに値します。 この報告書では、最後の2つの問題‐ICANN の内部構造をどのように組織するか、および、ICANN理事会(および運営委員会)をどのように構成するか(指名委員会プロセス)のみを扱います。

I. 構造問題

前述のように、私達はStuart Lynn 氏の提案を分析の出発点として選択しました。Lynn氏自身が明らかにしているとおり、彼の提案は出発点として意図されたものであって、最終的なものではないと私達は認識しています。本報告書では便宜上Lynn提案で使われている用語を使用しますが、それら特定の用語もしくはタイトルを採択することを意味するものではありません。

Lynn氏の提案が問題を正確に記述しているということは広く認められているようです。私達は提案事項を検討するためのベースとしてその記述を受け入れることにしました。概して、Lynn提案の中で最も批判を集めているのは2点です。理事選出・資金確保に対する政府の関与、および、閉鎖的であるとされている指名委員会の性質です。Lynn提案に含まれているその他の提言はそこまで関心を集めていないか、またはそれほどの批判を引き起こしていません。うまくいけば、この報告書がそれらの他の問題にさらに焦点を当てるための働きかけをするでしょう。

Lynn氏の提案の中で政府が強調されている大きな理由は、ICANNの活動に公共の利益を反映させる手段として、政府による関与の拡大が必要だからです。本報告書では、当面の時間的枠組みの中では、政府諮問委員会チェアによる職権上の参加を除いて、政府の資金提供および政府が特定の議席を得て理事会へ直接参加することはないと想定をしています。このことを、政府による明白なICANNへの関与を拡大するこれらの考えの一方または両方が好ましくないという結論と解釈するべきではありません。それぞれの考えの理論的根拠はLynn提案の中で説明されており、非常に大きな利点があります。特に政府の関与を拡大することは、実行可能、有効、経済的に可能、かつ容易には乗っ取りの対象とならないメカニズムを通して、ICANN理事会に公共の利益を反映させる、という重要な必要性を満たすための一つの方法です。しかしながら本報告書では、理事選出への政府の直接関与に代わるものを検討します。なぜなら、政府の直接参加を近い将来に実現するのは事実上難しいと言われているからです。

Lynn提案および寄せられたさまざまな意見をさらに検討した結果から示唆されることは、以下に述べられているような調整をLynn提案に加えれば、それらの提案への支持基盤を拡大することができるだろうということです。この認識および以下の考えについてのコミュニティの意見を募集します。

A.組織の構造

Lynn提案では、現在存在する構造と平行して、理事会に活動提案を行う中間的なポリシー策定機関(フォーラムおよびポリシー評議会) を持つ構造を提案しています。構造については、Lynn提案は基本的にアドレス支持組織(ASO)およびプロトコル支持組織(PSO)を1つの組織にまとめ、DNSOに代わる分野別TLDネームポリシー評議会(GNPC: Generic TLD Names Policy Council)を創設し、地域別TLDネームポリシー評議会(CNPC: Geographic TLD Names Policy Council頭辞語の混乱を避けるために、country別と呼ぶ方がよいでしょう)を新しく提案しています。また技術的な助言を与える技術諮問委員会も創設しています。

構造上の問題についてLynn提案で述べられている新しい点は、(1)DNSO部会の固定数を廃止、(2)運営委員会(現在の評議会)および理事両方の直接選挙の廃止です。提案されているポリシー評議会においては、これらは(1)ポリシーを議論し、ポリシー評議会運営委員会および理事会に対し見解を述べる唯一の手段となる自己組織型のフォーラム、(2)理事会のメンバーおよび運営委員会(例えば現在のドメイン名評議会に相当するもの)の委員を選出するための、一部は職権上、一部は指名委員会による全く別個のプロセス、の2つに置き換えられます。Lynn提案は広範囲に渡る多様なポリシーを、それぞれに運営委員会を創設することにより比較的一律に扱っています。それら運営委員会のメンバーの半数は、各分野の主要グループからの代表者による職権上の参加となり、残りの半数は指名委員会により決定されます。フォーラムは評議会をクロスオーバーし、3つのポリシー評議会それぞれに関連する範囲で参加するものと想定されています。

アドレス割り振りに関する問題
アドレス割り振りとプロトコル番号の割り当てポリシーを1つの組織にまとめるという考えについては、ほとんどの場合一様な反応が返ってきます。それは2つの組織は必ずしもうまく混ざらない、そして提案されている組み合わせの理論的根拠が弱いという趣旨です。ボトムアップ型のポリシー策定はアドレス支持組織(ASO)の枠組みの範囲内では効果的に機能しているように思われ、影響を受けるコミュニティは満足しています。これらの理由により、既存のASOの構造が基本的に現状通り保たれ、アドレス割り振りポリシーの策定責任を引き続き負う可能性も考えられます。Lynn氏の提案に従うと、これはASOのチェア(もしくは指名を受けた者)が理事会に職権上の参加をすることを意味するでしょう。 この作業仮説は地域インターネットレジストリ(RIR)が最近発表したポリシーに一致するように思われますが、私達はRIRからのさらなる意見およびコミュニティからの意見を歓迎します。

Q15. コメント募集: ASOの有効性に関するこれらの結論は正しいでしょうか。また、アドレス割り振りおよびプロトコル番号割当のポリシーを1つの組織に合併しない方が最適である、との意見は正しいでしょうか?ASOについてはどのような変更もしくは追加を行うのが望ましいでしょうか?

プロトコルに関する問題
アドレス支持組織(ASO)とプロトコル支持組織(PSO)を1つの組織にまとめない場合、私達は理事会メンバーの選出をこれらのポリシー諮問組織の役割からはずすことにすでに合意しているので、PSOについては再検討の余地があります。

Lynn提案は技術諮問委員会(TAC: Technical Advisory Committee)の設立を提案しています。実際のところPSOがそのような存在となることも可能ですが、それはポリシー策定組織としてではなく技術諮問組織としてであり、そのメンバーは関連する技術上の能力および経験に基づき選ばれることになります。「ICANNの使命および核となる価値に関する研究報告書」の中で指摘されているように、プロトコル分野におけるICANNのポリシー策定責任は非常に制約されています。なぜなら、ICANNは特定の関連レジストリの「創設者」(ほとんどの場合IESG(Internet Engineering Steering Group)およびIAB(Internet Architecture Board)ですが)により作成された指針に従い、単にパラメータおよびプロトコル値のレジストリを管理する、という長年に渡って確立されたポリシーに従っているからです。このような責任の割当の妥当性についての意見を募集します。

おそらくTACは理事会に技術的アドバイスを行う上での主要な手段になるでしょう。Lynn提案は、TACのチェア(もしくは指名を受けた者)がICANN理事会へ職権上の参加をすることを提案しています。Lynn提案の中で説明されているように、これは、少なくとも二つの明確な技術的能力のソースを職権上参加する議席を通じて理事会に提供することになります。その二つとは、TACチェアもしくは指名を受けた者(議決権あり)、およびIABチェアもしくはその他の指名を受けた者(議決権なし)です。 IABにより指名を受けた者は、事実上IABとIETFへの技術リエゾンを務めることになります。

Q16. コメント募集:提案されているTACのようなグループの有効な役割はありますか?もしあるなら、TACはどのように構成されるべきですか?また理事会でどのような役割を持つべきですか?そのような役割は(仮にあるとして)、IABから指名を受けた者を議決権のないメンバーかつIETFへの技術リエゾンとして理事会へ派遣するという提案にどのように関係するでしょうか?この問題に対応するための他の考えはありますか?

ドメイン名ポリシーに関する問題
ドメイン名の分野で理事会より下のレベルにおいてコンセンサスに基づくポリシー策定への真剣な取り組みが存在する場合、そのようなポリシー策定の取り組みを引き受けることができる何らかの手段が存在するべきです(基本的にはDNSOに代わる手段、もしくはDNSOの発展を通じて)。Lynn提案ではこれは分野別ネームポリシー評議会(GNPC: Generic Names Policy Council)と呼ばれていますが、名称は全く重要ではありません。

ドメイン名ポリシーに関する問題に対しては、ICANN内で引き続きかなりの配慮が必要とされることは疑いないように思われます。これらの問題は理事会が単に決定すればよく、下位のポリシー策定組織は全廃するべきであると主張する人もいます。私達はこのアプローチが望ましいかどうかについては懐疑的です。そうすることにより理事会レベルにおける全体の議論が推進される理由が明らかではないからです。

Q17. コメント募集: 中間ポリシー策定組織抜きで、理事会によるドメイン名ポリシーの決定を支持する方々へ: 何故それがICANNの核となる使命および価値を向上させると同時に、他の選択肢の構造より効率的であるのかに関し、詳細な説明をお待ちしています。
Q18. コメント募集: ICANN内部における中間ポリシー策定組織の構想を支持する方々へ: 構造、プロセスおよび後述する運営委員会の議論についての詳細な提言をお待ちしています。

ICANNに中間ポリシー策定構造が存在し、ccTLDコミュニティがICANNの一部になるとすれば、地理的もしくは国名に関連するポリシー策定組織(GPNC:上述参照)の設立は慎重に検討されるべきです。この分野全体に関連する複雑な問題が多数あり、かなりの議論が必要となるでしょう。そのため私達は、この課題についての完全な議論は、後に包括的な分析が行われるまで延期します。もしCNPCがICANNの新構造の一部になるとすれば、そのポリシー策定における役割、誰がメンバーとして適格か、そしてそれはどのように管理されるべきかを明確にする必要があります。本報告書では、中間ポリシー策定組織の存在を単純に前提としています。

その結果、Lynn氏が提案する基本的全般的なポリシー策定構造を想定してみると、前述の中間ポリシー策定構造は理事会の下に3つの主要な下部組織を持つことになります。アドレス、非地域別ドメイン名、地域別ドメイン名の3つです。

これらのポリシー策定組織にLynn提案の4つの諮問委員会が加えられます。それらは、技術諮問委員会 (TAC: Technical Advisory Committee)、政府諮問委員会 (GAC: Government Advisory Committee)、セキュリティ委員会(Security Committee)、及びルートサーバーシステム諮問委員会(RSSAC: Root Server System Advisory Committee)です。Lynn提案では、TACはポリシー策定組織と同様に、理事会に議決権のある職権上の議席を持ちます。そして他の諮問委員会は議決権のない職権上の議席を理事会に持ちます。いずれのケースも、代表者は理事会の連絡を受け、全ての理事会会議及び電話会議に出席、参加する資格を有します。

Q19. コメント募集: TACに関してはすでに意見を募集しています。さらに、これらの諮問組織のメンバーが理事会で議決権のない職権上の参加者となることは望ましいかどうか、これらの組織に関する具体的な提案、議決権のある議席と議決権のない議席の相対的な利点に関する議論も募集します。これらの組織に密接に関係のある組織のメンバーからの意見は特に歓迎します。

要約すると、この中間組織は理事会に7つの職権上の議席を設けることになります。うち4つには議決権があり(APC、GNPC、CNPC、TAC)、3つには議決権がありません(GAC、Security Committee、RSSAC)。全員が指名委員会の関与を受けずに決定されます。 理事会が15名の議決権を有するメンバーを持つと想定した場合(効率的な規模の上限に近いので望ましいと思われる)、CEOが議決権を持つ職権上の参加者としての地位を維持すると、残りの10名の理事会メンバーはその他の手段により選出されることになります。これら追加のメンバーの選出方法については本報告書の第二部で検討します。

B.運営委員会

Lynn提案では、職権上の参加者および指名委員会による選出者から構成される運営委員会を各ポリシー評議会に設置することを提案しています。その理由は、運営委員会を単にICANNの中だけで活動する代表ではなく、コミュニティ全体のより幅広い代表とするためです。私達はこの構造をGNPCおよびCNPCの作業仮説として受け入いれますが、これは指名委員会の構成およびプロセスに関する全般的なコンセンサスを得ることが条件である、と認識しています。この議題は本報告書の第二部で詳細に扱われています。

Lynn氏が提案しているより流動的なフォーラムの構想では、フォーラムは常設的なものから非常に短期間のものまで、多様な問題を扱う自己組織型となる可能性があり、関心を有する全ての個人および団体がICANNへより容易に参加できるように意図されています。この構想はICANNに関するこれまでの議論でも提言されています(しかし採用されていません)が、ICANNの発展にはその再検討が必要となるでしょう。

フォーラムという概念の下では、指名委員会のメンバーもしくは各フォーラムが運営委員会のメンバーを選出すること、また議席をどのように割り当てるかについて決定をすることは、いずれも実行可能なことではありません。なぜなら、それはフォーラムの設立を悪い意味で助長することになり、機能しない多くのフォーラムが設立される可能性があるからです。このような懸念を解決する1つの手段は、常設および暫定フォーラムの両方を持つことです。常設フォーラムはプロセスへの継続的な関与についての一定基準を満たし(そして現在のほとんどもしくは全ての重要な利害関係者を含み)、指名委員会に自動的に代表を送ります。暫定フォーラムはそれ以外の全てのフォーラムで、一定期間の参加および/もしくは、必要と見なされる追加の基準を満たした場合、運営委員会の選出の役割を持つことができるものです。さらに、新しい常設フォーラムの最終的な設立および時間を経て有用性を失ったフォーラムの廃止に関する方法が策定されなければなりません。

Q20. コメント募集: これは、将来条件が変わった時に新しい関係者または組織の参加を現状が抑止しないようにする上で、また複数の部会に対応する上で、有効な方法でしょうか?これは現在の問題を新しい構造下でも持続させるでしょうか?また新たに重要な問題をもたらすでしょうか?プロセス自体は扱い可能な状態に保つ一方で、プロセスにおいて望ましい流動性を許容する、という目標を達成するための他の方法はあるでしょうか?
Q21. コメント募集: 特に各運営委員会の構成、および各運営委員会のメンバーを決定する手続きについての意見を募集します。Lynn提案では職権上の参加者の定員を運営委員会ごとに指定し、残りを指名委員会が決定することになっていますが、これは望ましいでしょうか?よりよい選択肢はあるでしょうか?もし職権上による参加がなされるべきならば、どの組織または関係者のために議席をとっておくべきでしょうか?

これら全ての質問に関し、コミュニティからの意見または実行可能な選択肢(実行可能という点を強調します)をお待ちしています。


C.独立審査パネル

独立審査パネルという目標を達成するための何らかの代替手段を決定しなければならないというLynn氏の提案については、今日までの意見は賛否両論です。独立審査の概念はリスクを伴うと指摘する人もいます。ICANN理事会より代表性の低い組織が理事会による価値の決定を覆す能力を持っているとすれば、そこには確かに権限剥奪の大きなリスクが存在します。他方、そのような組織が存在するだけで、理事会がICANNの定款外の決定を行うことへの阻害要因となる、と言う人もいます(少なくとも数人の人々にとっては慰めとなるような)。それは、これは非常に重大な条件ですが、権限が明確に限定され、ICANNコミュニティ全体から幅広く信頼できると見られている人々により独立審査パネルが構成される場合です。コメントを提出された方の中には、ある種の審査プロセスの必要性は基本的なものであり、オンブズマンの設立こそその必要性を満たすものであるとする人もいます。既存のレジストリとレジストラ間の契約には、契約当事者は独立審査パネルが設立されるまで新たに策定されたICANNのポリシーの順守を避けることができると規定されているので、 独立審査パネルの設立は潜在的な法律問題に直接関わる可能性があります。この件についてはさまざまな提案がありましたが、それらに対する示唆、派生問題、賛否に関する詳細な議論または分析はほとんどありませんでした。

Q22. コメント募集: この概念は望ましいでしょうか?および/または、ICANNの効果的な運営に重大な妨げを生じることなく同様の目的を達成するためのその他の提案はあるでしょうか?特に、何らかの形態の独立審査パネルが設立されることを想定した場合に、独立審査パネルがどのように構成され、どのように機能するか、そして意思決定および行動を起こすためにどのような能力を持っているべきか、についての具体的な考えを歓迎します。他にはどのような方法によりICANNの行動を監視することができるでしょうか?それは、事前に説明を行い、実行可能で、信頼できる方法であって、ICANNの効率性を妨げるものであってはいけません。

提起されている別の問題は独立審査パネルの審査の範囲です。現行の独立審査ポリシーでは、審査の範囲を以下の範囲に厳格に限定すべきであるとしています:「異議が申し立てられているICANN理事会の行為を付属定款および基本定款と比較したうえで、ICANN理事会がそれらの規定に従い行動しているかどうかを言明すること。独立審査パネルはまた、ポリシーが採択される際にその元となるコンセンサスの存在に関し、ICANNと第三者間の契約に規定する範囲内で、決定事項を見直す責任を負っている。」

私達は独立審査パネルによるいかなる審査も、非常に慎重な制約を条件にすべきであると考えています。独立審査の範囲を広げることは、例えば、特定の決定についての利点に関して見直しを行う場合には、潜在的な問題をはらんでいるように思われます。独立審査パネルがその利点ついて理事会と意見が合わないというだけの理由で、代表ではない組織に理事会の決定を覆す能力を与えることは適切ではないと思われます(理事会の選出プロセスがコミュニティ全体の代表としての理事会を生むという前提で)。実際に、現在のポリシーにコンセンサスの評価という役割を加えるためには、ICANNにより最終的に採択された決定基準に従わなければならないでしょう(詳細については、ポリシー策定プロセスに関する研究報告書を参照してください)。さらに、いかなる独立審査パネルも、取るに足らない問題を迅速に処理するための明確な権限を持たなければならないと私達は考えます。それは、本プロセスが単に存在するということが誤用されて、コミュニティの意思の実行を妨げないようにするためです。

Q23. コメント募集: 独立審査パネルポリシーの考えられる範囲について意見を募集します。どのような理事会の行動が審査の対象となるでしょうか?またどのような基準によるべきでしょうか?独立審査パネルが責任のない「超理事会」にならないようにするためには、どのようなメカニズムを利用することができるでしょうか?

II. 指名委員会の概念

Lynn提案は、5名の職権上の参加者と10名の一般(At Large)会員による15名の理事会を提言しています。10名の一般会員のうち5名は、政府が何らかの方法により選出することになっています。その根拠は2つあります。(1)現在ほど直接代表的ではない理事会の方が長期的には優れた理事会となる、(2)政府選出のAt Large理事は公共の利益全体についての意見を提供し、そのことにより、一般会員オンライン選挙の動機の大半を生み出した説明責任/正当性の問題に応えることができる、というものです。さらにLynn提案では、政府選出以外の5名のAt Large理事(および各ポリシー評議会運営委員会の約半数)を、3名の理事および理事会に任命された4名のメンバーからなる指名委員会(NomCom)が選出するよう提案しています。

前述のように本報告書の議論は、当面の時間的枠組みの中では、政府が理事会のメンバーを選出しないということを前提にしています。その結果この想定による指名委員会は、Lynn提案による5名ではなく、At Large理事の議席10名分を決定する責任を負うことになります。

A.指名委員会の理論的根拠

指名委員会の考え方に関する現在までの主な批判は、指名委員会が理事会のメンバーおよび理事会が指名した人々により構成されていたので、その結果理事会による支配が強くなりすぎて、インターネットの発展につれて必要となる更新、修正、調整を阻害し、自己再生をする「閉鎖式循環」が形成されるというものです。この批判は指名委員会にとって妥当な点があると思われるので、指名委員会プロセスの利点に関する認識を保つ一方、その批判に対処するための改善について意見を求めることにします。

私達は以下の考えについての意見を募集します: 指名委員会は特定の部会の代表により構成されます(可能な例としては、レジストリ、レジストラ、地域インターネットレジストリ(RIR)、大規模ビジネスユーザー、消費者団体、学術もしくは他の非営利組織、等)。そのような指名委員会には理事会が指名する議決権のないチェア(理事会のメンバーであるかもしれないし、そうでないかもしれない)が置かれ、また議決権を持つ/持たない1名以上のリエゾン(IAB、GAC等)が置かれる可能性もあります。これらは、理事会またはポリシー評議会運営委員会いずれかにおける特定の要求に対して見識を提供する上で、またそれまでの知識もしくは経験に基づき検討されている特定の人々の長所および短所に関する意見を提供する上で、役に立つでしょう。この目的を達成する別の方法は、理事会から職権上の参加によるメンバー(議決権有りまたは無し)を指名委員会に何人か入れることです。

私達はdelegate(使者)という言葉を意図的に使用しています。ICANNが最も有効な組織となるためには、理事会はその状況のもとで可能なかぎり中立、客観的、有能であるべきです。その目的の達成のために、理事会が主に特定の利益団体の代表により構成されることが最良である、とは私達は考えません。それとは対照的に、多様なスキル、視野を持ち優れた人間性を備えた人々により構成された理事会、また、影響を受けるコミュニティ全体の最大の利益に根ざした決定を行うために、平等に責任を負い、効率的な行動ができる理事会、そのような理事会が、公共の利益およびICANNへの直接参加者の長期的な利益の双方にとって役立つと私達は考えます。この意見が示しているのは、プロバイダーが代表者を指名委員会へ送る一方で、一般的な公益は消費者団体およびユーザー団体から選出された代表者により指名委員会において代表することができる、ということです。ICANNに直接継続的に関与しているそれらの部会に、理事会メンバーの選出において重要な役割を持たせることは、適切なことであり有効であると私達は信じています。しかし、 指名委員会において全ての部会の代表者が自分たちをRepresentative(代表)ではなくdelegate(使者)であると認識することが、「一貫して質が高く実効的な理事会」という目的により適うのではないか、という意見を私達は謹んで提示します。言い換えると、自分たちを指名委員会にもたらした特定の部会の限定的な利益を「代表」するのではなく、ICANN理事会に望ましいメンバーを選出するための合同プロセスへ特別な視野および知識をもちこむ、ということです。

これは、私達の考えでは抽象的な意味論ではありません。ICANNのような組織が実効的になるための唯一の方法は、ICANNが公益を推進するかどうかです。現在のこの公益とはもちろん、全参加者(および非参加者)の合法的な利害が複合されたものですが、特別な場合にはそれらの利益が1つも直接反映されないことが起こりえます。理事会レベルだけでなくポリシー策定組織においても、メンバー同士が駆け引きで馴れ合い投票せずにコンセンサスによる解決策を見つけるために真摯に努力をすることが、ICANNに必要とされています。コミュニティの公益を探し求める文化・伝統を私達が確立すれば、たとえそれが特定の当事者または団体の意見を通して行われたとしても、この取り組みは前進するでしょう。

B.コメントを募集する具体的な問題

Q24. コメント募集: 指名委員会の概念に関する提案について意見を募集します。このアプローチは基本的には、代表者により構成される理事会から、能力が有り、関心を有し、実効的である人々により構成される理事会への移行を模索しています。それらの人々はICANNに最も関係のある組織の活動に日々直接従事しているかもしれませんし、そうではないかもしれません。これを達成するために、理事会自体を直接代表する組織ではなく、理事会の過半数を選出する組織を導入し、特定の利害団体/部会と理事会の間を和らげるバッファ(代表制による指名委員会)を作ることを模索しています。
Q25. コメント募集: 上述されているような指名委員会の代表となるべき団体または部会の具体的なアイデンティティーについての意見を募集します。さらに、新しい団体または部会の指名委員会への参加は認められるべきか、どのように参加を認めるべきか、についての意見も募集します。
Q26. コメント募集: 指名委員会は具体的にはどのように機能するのか、ということに関してコメントを募集します。私達は一般からだけでなく、特定の自己組織型の団体(フォーラム、部会、または他の名前で呼ばれていようと)も指名委員会に候補者を推薦する可能性を想定しています。そうなると、議論、討論によるプロセスを通して、コミュニティ全体から幅広く合意された支持が生み出されるかもしれません。
Q27. コメント募集: 少なくとも指名委員会メンバーとしての任期中および任期終了後の短期間の間は、指名委員会のメンバー自身が指名されることを禁止するべきでしょうか?このことにより自己取引への懸念は減りますが、その代償として候補者の対象人数が減る可能性があります。
Q28. コメント募集: 指名委員会が選出を行うためのプロセスへ特定の基準を適用するべきでしょうか?もしそうするべきならば、どのような基準を適用するべきでしょうか?ICANNの状況においては、それらには地理的多様性、機能的多様性などが含まれるかもしれません(少なくとも理事会、そしておそらく運営委員会にとっても)。そのような基準はおそらく全体として規定されるべきもので、特定の空き定員のためではありません。そのため、必ずしも全てではなく一部のみが指名に関連する場合もあるでしょう。さらに加えて、どのような指名においても、指名の過程で理事会または運営委員会にとっての特定の必要性が認識される可能性があります。それは理事会(おそらく議決権のないチェア)から指名委員会に伝えられ、および/または指名委員会自身がそのメンバーおよび/またはリエゾンからの意見に基づき決定をするかもしれません。これらの考えについてのあらゆる意見を歓迎します。
Q29. コメント募集: また、理事会が候補者もしくは候補者名簿を拒否することは認められるのかという問題があります。認められるとすれば、何らかの圧倒的多数による議決が必要とされるでしょうか?理事会以外の組織が合理的に候補者を承認することは考えにくいのですが、指名委員会の選考に対して承認をすることは望ましいことでしょうか?もしそうであるならば、どの組織がどのような基準に基づき承認をするべきでしょうか?これらについての意見および提案を募集します。
Q30. コメント募集: また、指名委員会メンバーの条件に関するご意見も募集します。適切な移行および任期の時差があると想定すると、指名委員会は毎年3名から4名の理事および1名から2名の各運営委員会のメンバーを選出することになるでしょう。これは実行可能な仕事であると思われます。指名委員会は1年もしくは2年間のサイクルで存在し、その後は別のメンバーで再構成されるべきでしょうか?または継続することに何らかの価値はあるでしょうか?継続性を提供することが必要であると考えられるなら、メンバーの任期をずらし、定員の一部が毎年改選されるようにするかもしれません。もし十分なリエゾンおよび/または職権上参加するメンバーが存在すれば、これは必要ないかもしれません。毎年新しい指名委員会を設置することは、更新および包括の必要性と継続および安定の必要性の均衡を適切に保つことができるでしょうか?指名委員会およびその構成は、効率を最終的に低下させる厄介な策略から離れることができるのでしょうか?指名委員会の手続きは、理事会からどの程度そのような策略を引き離すことができるでしょうか?ご意見を歓迎します。

結論

Lynn氏の提案および当委員会が受け付けたICANN全体の構造および指名委員会の概念に関する意見をもとに、この報告書ではさまざまな考えを示しています。示されている考えが委員会のメンバーおよびICANN事務総長に訴える程度は異なりますが、それらは明らかに結論でも勧告でもありません。それはコミュニティがさらなる議論をするために提供されたものであり、極度の時間的制約を与えられた中で、より詳細で特定した問題へコミュニティの議論の焦点を合わせようと努めたものです。

この報告書の中で扱われているあらゆる議題について、迅速で詳細なご意見を募集します。

ICANNの発展と改革に関する委員会
2002年5月9日

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.