Committee on ICANN Evolution and Reform
Final Implementation Report and Recommendations
翻訳文
(社)日本ネットワークインフォメーションセンター
最終更新[2002年10月25日]
この文書は2002年10月2日に公開された
http://www.icann.org/committees/evol-reform/final-implementation-report-02oct02.htmを翻訳したものです。
JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、その品質に責任を負いません。
ICANNの発展と改革に関する委員会
改革実施に関する最終報告および勧告
2002年10月2日
目次
- 1. 改革の目的
- 2. これらの勧告は特定された諸問題にどのように対応しているか
- 3. 新付属定款
- 4. ポリシーおよびプロセス
- 5. 透明性およびアカウンタビリティ
- 6. 政府の関与
- 7. 資金確保
- 8. 結論
- 注:
2002年2月24日、 ICANN事務総長Stuart Lynnは「ICANN - 改革に向けての状況」という報告書を発表し、 ICANNがその使命に関わる責務を果たすのであれば、 ICANNの構造およびプロセスに対して建設的な変革を行う必要があるということを明白かつ説得力のある方法で述べました。 この報告書をきっかけに、 ICANNコミュニティ全体で非常に建設的で広範囲にわたる議論が始まりました。 この報告書および添付されている新付属定款案は、その議論の成果です。
1. 改革の目的
ICANNは、重大な公共ポリシーの意味合いを持つグローバルなリソースの、 重要な機能の1つを管理しようとする大胆な試みです。 その目的は明快で、反論しようのないものです。 つまり、民間による管理のスピードと敏捷性を、 (政府を含む)しかるべき公共部門から取り入れる意見と組み合わせて、 成果が広範な公益と調和がとれているようにするということです。 ただ目標はいかに価値のあるものであっても、 その目標は果たして実現可能なものなのか、 また実現可能であるならばどのように達成するのが一番良いのか、 という点について様々な意見があります。 未だICANNは進行中の状態にある野心的な取り組みであるということは明白であり、 従って、この試みの結果も依然として未知のままなのです。
ICANNはいくつかの点では非常に成功を収めてきていますが、 他の点ではそれほどではありません。 創設以来ほぼ四年の間、公共と民間、幅広い問題を包括した協議と実効性、 アカウンタビリティと敏捷性の適正な混合を見出そうとする苦闘が続き、 それによってICANNがあげた業績の影が薄くなるということがしばしばありましたが、 この苦闘はICANNの試みを成功させるためには不可欠なものでした。 この成功と苦闘が入り混じった経歴と未だ残る課題が動機となって、 今年初めにLynn氏による報告書が作成され、その報告自体が、 以後行われてきた真摯な議論および協議の先駆になりました。 そしてそれらの議論や協議が、 ICANN改革の総合計画の採択をもって上海で頂点に達することになります。
Lynn氏は、現状のICANNと成功の間に立ちはだかる次の3つの基本的問題を特定しました。 それは、(1)重要組織の参加が不足していること、(2)プロセスが煩雑すぎること、 (3)資金が不足していることであり、 後者2つの問題が部分的に1つ目の問題の原因になっています。 Lynn氏は、 これらの問題に対処するためICANN内で多数の変革を実施することを提言しました。 一般の議論が始まるとこれらの問題を同時に扱うことはできないということが明らかになりました。 そこで、ICANNがその核を安定させることができれば重要な組織がICANNに参加することにもっと魅力を感じるようになり、 そうすれば他の問題もより効果的に処理できるであろうという期待を持って、構造、 プロセス、資金確保などの直接取り組める問題に焦点を合わせることに決定しました。
過去7ヶ月間、ICANN内外で、また民間セクターおよび公共セクターで、 ICANN改革に真剣に取り組んできました。 この改革に関する論議の調整のため、 ICANN理事会は3月のアクラ会議で発展と改革に関する委員会(ERC)を設置しました。 以来ERCは、非常に重要なグローバルレベルの議論が行われるきっかけを作り、 その議論を様々な(ICANN内外の)電子メールリスト、ならびに、同様にICANN内外の個人、 グループ、組織が作成した多数の資料という形で文書化してきました。 このような議論、そしてERCによるそれらの議論のまとめは、 ERCが作成した多数の研究報告書、状況報告書、 中間実施報告書のカタログに加えられてきました。 これらの文書は、ICANN関係者や、 ERCが様々な特定のテーマを検討する際の支援役として設立した支援グループもすべて含めた全体から寄せられた公式・非公式の意見を生かし、反映させています。 この寄せられた意見の大部分は、 http://www.icann.org/committees/evol-reform/links.htmにリンクが掲載されています。
改革を目指す努力の第一段階は遂に、 6月20日にERCが発表した「改革に向けた青写真」となり、 この「青写真」は6月28日のブカレスト会議でICANN理事会の採択・承認を受けました。 「青写真」は、 ICANNが開かれた透明性の高い民間のポリシー策定組織としての本質的特性を保ちながら、 構造とプロセスひいては実効性をどのように改善できるか、 という点に関する非常に多数の提案のまとめに相当するものになりました。 「青写真」には骨子が記載されましたが、この報告書には、 その骨子を実践に移す詳しい付属定款を記載するとともに、 特定されたこれまでのICANNに関する問題を、 この付属定款案がなぜ取り扱うことになるのか、 またどのように取り扱うのかという点も説明します。
うまく機能しているものと、 最初にICANN創設の原因になった重要な方針やコンセプトの両方を維持しつつ、 特定された問題を解決する、 ということをこの過程を通じて目標にしてきました。 この一連の「最終」勧告(注1)では、特定された問題を効果的に処理して、 使命をうまく果たせる方向へICANNを位置付けるという風に、 これまでの7ヶ月間にコミュニティ全体から寄せられたあらゆる意見に基づいてERCが考える改革案を述べます。
コミュニティから寄せられたすべての提案が統合されているとは言いません。 互いに矛盾している提案も多々あります。 「青写真」と矛盾している提案もあります。 さらに、狭い視野を反映した提案もありました。 しかしERCではすべての提案を慎重に検討し、その中の多数を取り入れました (1つの提案を別の提案と組み合わせるという形をとることがよくありました)。 この実施報告書最終版は、お寄せいただいた幅広いコメントの大きな影響を受けています。 時間と労力を惜しまずこの重要なテーマを検討して意見を出して下さったコミュニティのメンバーの皆さん、 そしてすべてのICANN構成組織に対して、非常に感謝しております。
移行 この文書では安定状態に入ってからの新生ICANNに的を絞り、 現在の組織から新しい組織への移行については取り扱いません。 与えられた時間の中で安定後の未来の問題に効果的な方法で取り組むだけでも、 十分難しい課題です。 つまり、コミュニティやICANN理事会が移行の方法に関する問題に気をとられて、 この重要な目標から焦点が逸れてはいけないのです。 従って上海会議では、 安定状態に入ってからの未来の問題だけに焦点を当てるべきであると我々は考えます。 そちらが決定したら、別個に移行計画案を作成し、 コミュニティおよび理事会に提出して承認を求めます。 これを実現する方法として、 2002年のICANN年次総会は別個のウェブ放送フォーラムおよび公開の会合として12月初旬に開催し、 ERCが作成する移行計画案は総会の約30日前に公開して一般のコメントを募集しておいて、 会合では議題を(必須の理事選出以外では)ERCの移行計画案の検討のみに限定することを、 ERCから理事会に提言します。 理事の任期はICANN年次総会の閉会の際に満了になるため、 12月初旬の会合の閉会までは理事会に変更は生じません。 移行計画では、 現在の組織から新付属定款で示される組織への移行に必要な暫定措置を発表する2002年の年次総会で、 移行に関する条項を新付属定款に追加することを提言するつもりです。
上述の通り、この報告書には新付属定款案が含まれており、 これは現在のICANN付属定款にそっくりそのまま取って代わることを意図したものです。 新付属定款がICANN理事会の承認を受ければ、 その時はこの報告書ではなく新しい付属定款が、ICANN改革の説明の決定版になります。 従って、「青写真」のコンセプトを実践に移す統制力を有し、 かつ新付属定款が承認を受ければ拘束力も有することになる文言が入るのはこの報告書ではなく新付属定款の方ですから、 新しい付属定款は慎重に見直さなければなりません。 この報告書では、新付属定款案の内容をまとめ、説明し、 適切な場合には詳細も見ていきますが、 この新定款案はERCの正式勧告に相当するものです。 この報告書では便宜上、新付属定款の適切な個所には参考注釈を付けています。
2. これらの勧告は特定された諸問題にどのように対応しているか
ICANN新付属定款案には現状からの変更点が多数ありますが、 当報告書のこの部分では我々が重要と考える変更点、 およびこれらの変更点が特定されたICANNの諸問題に直接対応するものであるとする理由に焦点を当てます。
A. 使命の表明
繰り返し浮上するICANNにとっての課題の1つに、ICANNの活動範囲の枠組みが、 ここまでという境界のあるはっきりした使命によって示されていないということに多数の人々が抱いている不安感がありました。 この不安感が、 何人かの重要な関係者がICANNに全面的に参加することを躊躇する主な理由の1つになっており、 またそれが手の込んだプロセスを求める声をもたらし、 そのプロセスによってICANNが効力を発揮することが非常に難しくなりました。 よって、境界の決まったはっきりした使命を定めることが、 特定されたICANNの諸問題に取り組むための前提条件であるという一点については、 ICANN関係者全員が同意していると思われます。 適切に使命を表明するとともに、 ICANNの使命追求の指針になる核となる価値を明確に述べることは欠かせない第一歩であって、 それによって、使命の達成にふさわしい構造、プロセス、 および資金確保の要件を明確にすることが可能になるのです。 そのような使命の表明および核となる価値の明確な記述は、 新付属定款 第I条に記載されています。
B. ICANNの構造
これまでの4年間、非常に大量のICANNに関わるグローバル・エネルギーが、 ICANNの構造、特にその構造の2つの側面に注がれてきました。 その2つの側面とは、At Large関連の問題 (いかにして、幅広いインターネットユーザーに情報をふまえた上で参加してもらい、ICANNに組み入れるか)、 および政府その他の公的当局のICANNにおけるふさわしい役割です。 新付属定款案は、 ICANNの明示された使命の効果的な追求を促進することを目的とした形で、 これら2つの問題を直接取り扱っています。
At Large関連の問題については、新付属定款案では、ICANNに関心を持つインターネットユーザーのグローバルコミュニティに、情報をふまえた上でICANNに参加してもらうための手段としての機能を果たすAt Large諮問委員会を設置するとしています。さらに新付属定款案では、ICANN理事会のちょうど過半数(15議席のうち8議席)は広範な基盤を持つ指名委員会が選出し、この指名委員会メンバーにはICANNに関心のあるすべての関係者の中から選出される代表者が含まれる、と定めています。指名委員会メンバーの4分の1以上は最終的にはAt Large諮問委員会が選出し、指名委員会が人選の際に従わなければならない基準によって、ICANN理事会自体にコミュニティ全体の幅広い対象から選出された代表者が入るようになります。ICANNコミュニティはこれまでの4年間の大部分をこれらの問題との格闘に費やしており、この問題におびやかされているためにICANNが直面する重要な問題にコミュニティが専心できない、という非常に不都合な影響が生じました。At Large諮問委員会の創設を通じてこの問題を解決することは、ICANNが実効的な組織として前進するためには重要です。
純粋な民間組織ではICANNの使命を効果的に遂行できないということは、現在明らかになっています。その結果、新付属定款案では、ICANN理事会を含むICANN構成組織と政府諮問委員会(GAC)をより効果的に統合させることを定めています。ICANNを成功させるためには、民間の代表と並んで、公共ポリシーに対して直接的な責任を負う人々にも適切かつ効果的な形でICANNに参加してもらわなければなりません。新付属定款の条項には、GACはICANN理事会およびその他のICANN組織にリエゾンを置くことができると規定しているものがあり、これによって、GACを媒介としている政府およびその他の公的当局がICANNの調整やポリシー策定の役割を果たす上でより密接に民間と協力することが可能になります。
上記2点の変更に加え、新付属定款ではICANNのポリシー策定組織を再編成して、ICANNがある程度グローバルでの調整を担当している分野、つまりグローバルのドメイン名やアドレス関連のポリシーにそれらの策定組織がより正確に集中するよう図っています。このような分野それぞれの問題に最も効果的な形で対処するには、別々の組織やプロセスが必要であるということが今では明らかになっているため、新付属定款案では、従来の付属定款の「フリーサイズ」的モデルを捨てて、それぞれの支持組織の構造や責務を関連する特定のニーズや組織に合わせて調整しています。
C. ICANNのプロセス
ICANNの問題の原因はICANNの構造だけではなく、ICANNが機能するプロセスにもあるのではないか、とこれまでよく指摘されてきました。当初のICANNの計画に見られる重大な欠点の1つに、構造化されたポリシー策定プロセスの必要性を十分に予想していなかったという点があります。特に、ICANNの使命の中心的側面であるグローバルなドメイン名ポリシーに関する、非常に議論が多く政略の絡んだ環境における必要性です。新付属定款案では、次のようなプロセスを定めています。(1)現実的かつ達成可能なポリシーを支えるコンセンサス形成のためのインセンティブを盛り込んだ、GNSOにおけるポリシー策定の具体的プロセス。(2)ICANNの活動や決定に対する独立審査および再検討の手続きの改正。これによって、プロセスに過度に負担をかけることなくアカウンタビリティおよび透明性を実現できるはずです。(3)ICANNによるポリシー策定の試みを徹底的に公の目に触れさせるための明確な仕組み。これによって、審査や再検討の手段を用いなければならないケースの減少を図ります。さらに新付属定款案では、公正な態度をICANN内で擁護し、何らかの形で不公正な扱いを受けたと感じる人々が頼みにできる存在の役割を果たすオンブズマン事務局を設置するとしています。
最終的には、ICANN使命の達成に向けたより効果的なプロセスの完全な基盤ができ、この基盤によって、ICANNが自らの設立目的である重要な業務を実際に行う能力を抑圧することなく、参加したいと思う人々全員が参加できるようになります。またこの基盤によって、重要な関係者の方々は自分たちがICANNに参加することの価値と効果により確信が持てるようになるはずです。
D. 資金確保
皮肉なことですが、資金確保の問題は最も簡単に解決できる問題であることが分かりました。仕組みは、ICANNがレジストリやレジストラと締結している契約を通じて常に利用できる状態にありました。これまで欠如していたのは、その仕組みを十分に活用しようとする意思であり、それは、より多くの資金が使える状態になってもICANNには効果的にその資金を活用できる構造がないのではないか、という懸念に動かされたのが大部分であると思われます。ICANNが効果的な改革への道を進んでいるということがいったん明らかになると、資金拠出関係者から非常に前向きな反応がありました。今日のICANNは、現在の債務レベルでは各種運用業務の資金確保に深刻な不足は出ていませんが、十分な準備金を積み立てるための資金は依然不足しています。また、(資金拠出関係者の前向きな反応と併せて)現在の契約関係によって、この最終報告書に言外で含まれている新しいレベルの責務を支えるのに十分な資金を確保できると我々は見込んでいます。長期にわたって改革の資金を確保する必要性については2003-2004会計年度の年次予算プロセスで対応し、それより短期にわたる移行資金の必要性は、移行の必要性が完全に明確化された後で本年度予算に調整を加えて対応すべきです。
もちろん、資金確保の問題は解決されていません。その時々の出来事にさほど依存せず実施できる、より自動的な資金確保の仕組みを開発しなければなりません。現時点でのキーポイントは、契約をベースにした今の仕組みによって、ICANNが効果的に機能するのに十分な水準の額の資金が確保できるということです。この分野で最近得られたのと同じ水準の協力があれば、ICANNでは改革後も必要に足る額の、しかも十分に安定した資金フローを作り出し、使命を遂行しながら十分な準備金を賄えるはずです。
E. 重要組織の参加
これは、現在行われている改革の運動が完全に目的を果たせていない分野です。未だ、すべての組織に、真のICANNの成功を実現するために必要な水準で本格的に参加していただいてはいません。これには様々な理由があり、それらはすべて時間をかけて取り組むことが可能ですし、実際に取り組んでいきます。よって、作業は継続します。ERCではこれまで少なからず努力してきましたが、今後も努力を続け、これらの組織(および組織周辺のコミュニティ)がなぜ改革後のICANNに参加すべきなのかという理由を話し合っていきます。
ICANNが使命を遂行する以上は、国コードおよび分野別ドメイン名のレジストリおよびレジストラ、ルートネーム・サーバー運用者、営利・非営利の主要ユーザー、一般インターネットユーザーのコミュニティ、主なインターネット標準化組織、政府および公的当局を包括していなければなりません。まだ、これらすべての部門がICANNコミュニティへの参加を十分に果たしてはいません。今回の改革の試みおよび新付属定款案で示されるICANNの核心が安定したら、次に重視すべき点は、まだ実現できていない範囲まで適切な方法で上記のコミュニティ1つ1つに関与してもらうことによって、このプロセスを完了することです。その方法は、各部門の独自の状況を反映する個別の方法になることはほぼ確実です。
上記の説明でお分かりの通り、ここで我々が提案する新付属定款案は、今年2月にLynn氏がはじめて指摘して以来、ICANNが抱える病の正確な診断であるとして広く受け入れられてきた中核となる問題を中心に直接取り上げています。新付属定款案に反映されている具体的な変革内容は、これらの問題の解決方法についてコミュニティで真剣に7ヶ月間議論した結果出てきたもので、あくまでそれらの問題を取り上げるだけです。その他の変革が今後必要になるのは確かです。インターネットのように急速に変化を遂げる媒体を扱うICANNのような組織は、今後の出来事の必要に応じて変わっていく意欲と能力を備えていなければならないのです。しかし人間は常に変化する環境でそれほど効果的に機能しませんから、休息期間も必要です。いくぶん矛盾はありますが避けることのできないこれらの事実を調整するため、新付属定款に(第IV条 第4項)ICANNのすべての要素を定期的に見直して役所的な惰性が定着しないようにするという要件を入れます。しかしこの見直しは、参加者やオブザーバーがICANNの構造や手続きをじっくり学べる期間ができるようにするため、ICANNのいずれの1側面についても3年に1回のみ行うことを求めます。
この後は新付属定款の説明ですが、重要な変更箇所を強調していきます。ただし、この報告書の説明および記述はあくまで解説のためであり、権威を有するものではないということを改めて言っておきます。唯一権威を持つ文書は新付属定款ですから、関心をお持ちのICANNコミュニティのメンバー皆さんに注意深く見直していただくようお願いします。
3. 新付属定款
ERCが提言した従来の付属定款と新しい付属定款には、相違点が多数あります。新しい付属定款は従来の定款に完全に取って代わることを意図しているため、すべての変更点を明確に述べようとするのは難しく、おそらくどうしようもなく紛らわしくなってしまうでしょう。新付属定款の中で我々が最重要と考える点を以下に示しますが、適切な場合には従来のICANN付属定款からの具体的な変更点も入れてあります。それでもやはり、関心をお持ちのすべての方々に新付属定款全体を注意してお読みいただくようお願いします。
我々は、従来のICANN付属定款の期間やその他の側面を変更することは適切であるということを示す経験の積み重ねを踏まえて、改革の運動によって出現した好機をとらえてそれらの点に多数の変更を加えました。今回の定款変更は通知なしで定款を変更しようとする試みであると言われるのを避けるため、新しい付属定款には従来の定款からの細かい変更点が多数あることをここで明白にお知らせするとともに、皆さんに定款を注意深く見直していただくようお願いします。不注意による間違いや矛盾点が生じないよう我々としては最善を尽くしていますが、そのような間違いや矛盾点が見つかっても意外なことではないと思われますので、コミュニティのみなさんの中で間違い等を見つけた方はすべて我々にお知らせくださるようお願いします。さらに重要な懸念事項がある場合は当然、上海会議の前にERCとコミュニティで評価を行えるようできるだけ早期に提起していただかなければなりません。
上記の通り、10月下旬の上海会議では、コミュニティおよび理事会は安定状態に入ってからのICANNの将来の構造やプロセスを中心に考えて、現在のICANNから改革後のICANNへの移行方法に関する多数の詳細については、12月初旬の年次総会まで保留することを提言します。よってこの報告書と一緒に出す新付属定款には移行に関する各種条項は入っていませんが、後で新付属定款の末尾に移行に関する条項という形で含められるとERCでは見込んでいます。
以下は、新しい付属定款の中でERCが最も重要と考えている条項の説明です。
A. ICANNの使命
ICANNの使命および核となる価値の本文についての最終案は、新付属定款第I条に記載されています。基本的な構造と内容は「青写真」と概ね同じままになっています。最も重要な変更点は、ポリシー策定に関する使命の表明が記載されている部分で、「必要な」という語の代わりに「合理的かつ適切な範囲で関連性のある」という表現が入ったという点です。ERCでは第一次中間実施報告でやや詳細に述べた理由により、「必要な」というのは適切な限定の役目を果たす表現ではないという結論を出し、上記のように他の表現を代わりに使うことを提案し、コミュニティの反応を募りました。この意見募集に寄せられた回答は非常に少なかったため、ERCでは、変更案は自分たちから見ても完璧ではないものの、容認可能かつ納得できる表現であるという結論を出しました。よってこの変更は最終勧告に残し、新付属定款に組み込まれました。
付属定款に概念を盛り込む際は様々な問題に配慮する必要がありますが、それはこの報告書全体で反映し論じています。文言は慎重に見直して必要に応じて付属定款の要件に適応するように調整し、できる限り明瞭にしなければなりません。さらに、文言が自動的には効力を発しないことがしばしばあり、時として条項を追加して付属定款の文言がどのように適用されるのか、あるいは適用されるべきか説明しなければなりません。このケースの実例は、新付属定款第I条第2項で見られます。
また、使命の表明では概して固有の識別子(ドメイン名、IPアドレス、AS番号、プロトコルポートおよびパラメータ番号)の「調整」について述べている、という点にも注意すべきです。調整方法は識別子のそれぞれのタイプについて異なるので、「フリーサイズ」的なアプローチは不適切になります。様々な調整方法に適応するため、新付属定款では引き続きそれぞれのタイプの識別子について個別の支持組織(SO)を採用し、それぞれの状況を踏まえてそれらの支持組織を区別しています。プロトコルポートとパラメータ番号に関するICANNの役割は、ドメインネームシステムとユニキャストIPアドレス割り当ての運用に関する役割と相当の差があると経験から判明したため、引き続き個別の契約(IANAの技術的作業に関するICANNとIETFとの覚書(RFC2860))の対象とすべきです。このように取り決めると、プロトコル関連問題の支持組織を維持する必要はなくなります。元のプロトコル支持組織が果たしていた技術的指導の役割は、設置が提案されている技術諮問委員会(TAC)で的確にカバーできます。
B. 理事会
構成と人選 関連条項は、新付属定款の第VI条に記載されています。これらの条項は、「青写真」で示された次のような構造に従っています。
- 指名委員会が選出する理事8名
- 3つの支持組織それぞれが選出する理事2名ずつ計6名
- 職権上の理事としてのICANN事務総長1名
第二次中間実施報告(ERC-2)で述べ、新付属定款の第VI条第9項でも詳細を説明していますが、理事会に置く議決権のないリエゾンの人数は「青写真」勧告の5名よりも、6名とすることを我々は提言します。「青写真」承認の採択の際にICANN理事会から出された指示に従ってAt Large諮問委員会の設置を勧告し、その諮問委員会も議決権のないリエゾンを理事会に置くべきであると考えたため、その結果1名増員となりました。
任期 理事会の議決権を有するメンバーの任期は3年とすることを、「青写真」に引き続いて提言します。議決権のないリエゾンについては、任期3年という「青写真」勧告を修正し、再任が可能であることを条件として任期1年とすることを提言します。これによって、リエゾンの選出元の組織がより柔軟に多様なメンバーに責務を割り当てることができるようになります。
新付属定款では、支持組織選出の理事はその支持組織が解任できるとする条項をなくしています。指名委員会選出の理事は当然、指名委員会による解任を受けるべきではないですし、理事は着任した以上はどんな事情があっても自分の選出元のグループのみならずICANN全体の最大の利益を図って任務を果たすことを信託されたという義務を負っていますから、新付属定款では、選出方法に関わらずすべての理事の解任事由を全理事の4分の3の採決に限ると定めています。
資格 理事は新付属定款の第VI条第3項および第4項に記載されている特定の基準を満たしているべきであり、また、第VI条の第2項および第5項で述べられている通り、地理的、文化的その他のメンバー構成の多様性の要素をできる限り取り入れなければならないという点を引き続き提言します。理事が指名委員会選出理事であるか支持組織選出理事であるかに関わらず、これらの基準はすべての理事に適用されます。
C. 支持組織
分野別ドメイン名支持組織(GNSO)、国コードドメイン名支持組織(ccNSO)、アドレス支持組織(ASO)という3つの支持組織の創設を、引き続き提言します。「青写真」からの唯一の変更点はccNSOの名称ですが、これはコミュニティから寄せられたコメントから生じた変更です。これに関連する新付属定款の条項は、第VIII条(ASO)、第IX条(ccNSO)、第X条(GNSO)です。
ERCは、ccNSOの構造および運営に関する詳しい勧告の策定を支援する支援グループのメンバーを任命しました。この支援グループからの勧告はまだ出ていないため、新付属定款第IX条は空白になっており、支援グループの勧告待ちの状態です。さらにERCでは引き続き、RIRとICANNとの関係の様々な側面について各RIR組織と話し合っていきます。この話し合いの結果が出るまでは、新付属定款のASOに関する条項は基本的に現在の付属定款の繰り返しになっています。
また、各支持組織(および諮問委員会)が効果的に機能しやすくなるよう、資金を拠出してそれらの組織を支援するICANNスタッフをつけることを提言します。GNSOについては、この案はX条第4項に反映されています。ccNSOの勧告完成後は、ccNSOに関する同様の条項が第IX条に入る見込みです。1999年10月に各RIR組織は覚書に従ってICANNと共同でASOを結成しましたが、RIRでは、RIRの現職員を任命してASO事務局スタッフを引き続き提供することを希望する可能性があると示唆しています。支持組織がICANNからの資金以外の方法でスタッフ支援を得ることを希望している場合は、当然認めるべきです。
GNSO 初年度のGNSOの構成部会は以下の6部会とすべきである、という「青写真」で我々が出した勧告を、ここで再度主張します。
- gTLDレジストリ部会
- gTLDレジストラ部会
- ISP部会
- ビジネスユーザー部会
- 知的財産権(IP)部会
- 非営利ユーザー部会
また新部会の承認も提言しますが、これは次のような適切な根拠によるものです。 (1)部会の増設により、ポリシー策定に関するGNSOの責務遂行能力が向上すること、そして、(2)新しく設置する部会は、その部会が代表する関係者の利害を、グローバルな規模で適切に代表することです。これに関する新付属定款の条項は、第X条第5項3に記載されています。
GNSOの業務はGNSO評議会が運営し、初年度の評議会のメンバー構成は、上記6部会それぞれの代表3名ずつ、および指名委員会選出の議決権を有するメンバー3名とすることを提言します。全メンバーの任期は2年で延長可能とします。各部会の代表3名の指名は移行に関する条項(添付資料には入っていませんが、2002年の年次総会で採択予定です)の1項目として明記し、2003年の年次総会まで適用するものとします。ERCでは、各部会から3名ずつ代表を出すとGNSO評議会が大規模化し(21名)、それによってGNSO評議会の効果的な運営が阻まれると考えています。よってGNSOの運営1年目の年度末に、理事会でこの問題を見直して、現行の仕組みが効果的に機能しているという有力な証拠がない場合は移行を終了して、それぞれの承認済み部会から代表2名ずつという構成に戻ることを提言します。第X条第3項をご参照下さい。
上述の議決権を有するメンバーの他、GACが適切かつ望ましいと考えるのであれば、GNSO評議会に議決権のないリエゾンを1名置くことを同委員会に認めることを提言します。新付属定款第X条第3項1をご参照下さい。
「青写真」からの重要な変更点は、GNSO評議会で追求するバランスの正確な方法です。「青写真」では、プロバイダーとユーザーの議決権を均等にするという形でバランスをとろうとしました。このバランスは、いつでも可能な時にコンセンサスをまとめようとする意欲を促進したり作り出したりするのに望ましいと考えられていました。ERCではコミュニティから寄せられたコメントを元に(コメントを見て、これは白熱した議論を起こす問題であると気付きました)、ERC-2で詳述されている理由により、ICANNと契約を結んでいる組織の代表部会とその他すべての組織の代表部会との間のバランスがより適切なバランスである、と確信するに至りました。よって、GNSO評議会の議決権を平等に分けて、gTLDレジストリおよびレジストラの部会に割り当てる議決権の合計数を、最初に設立された別の4部会が有する議決権の合計数と同じくすることを提言します。これを実現する方法としては、GNSO評議会のgTLDレジストリおよびレジストラの各代表に2つずつ議決権を割り当てて、その他4部会の代表には1つずつ議決権を割り当てることを提言します。別の新部会を増設したり部会を減らしたりする場合は、割り当て数を調節して、ICANNと契約を結んでいる組織の代表部会とその他の代表部会のバランスを維持するようにします。いずれの特定の部会にも実際上も認識上も義務を負っていない指名委員会の選出者3名をGNSO評議会に置くことによってバランスは増強され、このバランスによってGNSO評議会全体のポリシーに関する立場をまとめるチャンスが高まります。新付属定款でこれに関連する個所は、第X条第5項2です。
「青写真」では、GNSO総会は決定や勧告を出したり、または正式の立場を決めたりするフォーラムではなく、部会の壁を越えた会合の場であり、チェアはGNSO評議会メンバーが務めるべきであると提言しました。これに対してGNSO部会は明白な強い関心を示してはいませんが、GNSO部会の積極的な協力がなければ「青写真」が意図している形で機能することはあり得ません。従ってERCでは、今後安定状態に入った後はGNSO総会をなくすことを提言します。これまで総会が果たしてきた、より広範なコミュニティでコミュニケーションを図るという目的は、この報告書で設置を提言しているAt Large諮問委員会(ALAC)に取り込むことが可能です。ALACが効果的に機能し始めるまでは、ドメイン名関連ポリシーの問題の話し合いに使う全コミュニティ公開メーリングリストの節度ある使用をGNSO評議会が運営することを提言します。
最後に「青写真」では、設置勧告の出ているGNSOを新しい構造の下で1年実験運営してみた後で、GNSOまたはGNSO評議会いずれからも独立している組織によるGNSO(GNSO評議会の構造と運営も含む)の見直しを行うべきであると提言しています。この案は、第IV条第4項で述べられている通り、以後その他の組織についても一般化されました。
ccNSO 上述の通り、ccNSOに関する第IX条はまだ起草されていません。ccNSO支援グループが勧告を出して一般のコメントや議論を受けてから、適切な条項を入れます。
ASO ICANNと様々な地域インターネット・アドレス・レジストリ(RIR)の間で交わした覚書で示されている現在のASOの組織および運営については、変更を加えないことを提言します。アドレス評議会の議決権のないリエゾンを政府諮問委員会に指名させるのは適切であろうと考えていますが、この件についての話し合いは未だRIRと続いています。RIRは、ASOの役割に関するその他の懸念事項を提起するとともに、ASOの役割にその他の変更を加えることを提案していますので、それは今後も継続する議論の議題にすべきです。
D. 諮問委員会
これより前に述べたように、「青写真」で提言された4つの常設諮問委員会(政府諮問委員会(GAC)、技術諮問委員会(TAC)、ルートサーバーシステム諮問委員会(RSSAC)、セキュリティおよび安定性に関する諮問委員会(SAC))の設立を提言します。
ERCでは、技術諮問委員会に含まれる各組織の意見に基づいて、(同委員会はまだ存在していませんが)技術諮問委員会の慎重に限定された綱領を作成しました。IAB/IETF/IRTFに関するIANAの業務について技術諮問委員会が果たすべき役割は一切ないということに留意するのは、重要なことです。技術諮問委員会については、どのような構造にすればその限定された活動目的に最も貢献できるようになるのかという点について、多数の異なる意見を取り入れるよう苦心しながら計画してきました。
さらに、グローバルな個人ユーザーのコミュニティが構造化された形で、かつ十分な情報に基づいて、ICANNおよびICANNのポリシー策定プロセスに参加できるようにする手段を提供する、At Large諮問委員会の設置を提言します。諮問委員会に関する新付属定款の条項は、第XI条に記載されています。At Large諮問委員会に関する新付属定款の条項は、第XI条第2項5にあります。
E. 指名委員会
ICANN理事会メンバーの大部分を選出する方法としては、広範な基盤を持つ指名委員会が好ましいという点について、我々は依然として確信しています。新付属定款の中で指名委員会についての具体的な規定は、第VII条に記載されています。
構成および選出 「青写真」では、指名委員会の構成を、議決権を有するメンバー19名、理事会が任命する議決権のないチェア、RSSACおよびSACからの議決権のないリエゾンとすることを提言しています。議決権を有するメンバー19名のうち4名は「外部公益関係者」とし、1名は「個人ドメイン名所有者」の中から選出するとしていました。また、委員1名は小規模ビジネスユーザーが選出、もう1名は大規模ビジネスユーザー、さらに1名はIAB/IETFが選出するとしていました。ERCの今回の勧告は、次の点で「青写真」と異なっています。
- 前年度のチェアを議決権のないメンバーとして加え、継続性を向上させます。
- At Large諮問委員会が完全に運営可能な状態になったら、「外部公益関係者」4名と「個人ドメイン名所有者」1名の代わりに、At Large諮問委員会が最終的に選出する代表5名を入れます。第VII条第2項5では、安定状態に入った後はこの代表5名はALACが選出すると定めています。移行に関する条項(12月初旬の年次総会で採択予定)で、At Large諮問委員会が完全に運営を開始して効果的に機能すると分かるまでの暫定の選出手続きを述べます。
- IAB/IETFによる代表者1名の選出を、単純にIETF代表1名に変更します。
- 小規模ビジネスユーザーおよび大規模ビジネスユーザーの代表選出は、GNSOのビジネスユーザー部会が行います。同部会のメンバー構成に上記のカテゴリーが両方入っており、初期の解決方法として実行可能であるためです。
「学術その他公益団体」代表の選出方法についてはどのようにすべきか確信がないと我々は指摘しており、よってこの問題に関する意見を求めています。この問題が明確になるまでは、この代表は含めないことを提言します。「消費者/市民グループ」の代表は、GNSOの非営利ユーザー部会が選出すべきであると提言します。
任期 指名委員会メンバーの任期は1年で、最長1年の延長を可能とする「青写真」の勧告を、再度主張します。詳細は、新付属定款の第VII条第3項に記載されています。
4. ポリシーおよびプロセス
ERCは、これらのテーマに関する「青写真」での議論内容を再度主張します。これらの方針をICANNの作業へ具体的に適用する方法でこれまで明示されているものは、GNSOにおけるポリシー策定プロセスに関する新付属定款の条項に記載されています。その条項は、第X条第6項および付属文書Aで述べられており、大部分はこのテーマに関する支持グループの勧告に追随しています。
5. 透明性およびアカウンタビリティ
ICANNの活動に関心を持っているすべての人々に参加してもらって透明性のある運営を行い、広範なインターネット・コミュニティにICANNの構造および運営の内容を説明できるようにするための仕組みを、新付属定款では多数定めています。上記を実現する主な方法は、(ICANN関係者の多様性を反映する分散型のプロセスを通じた)理事の選出、ICANNのポリシー策定組織の運営、また特定のICANNコミュニティ各部門の意見を提供する各種諮問委員会の運営です。しかしICANNの基本構造の他に、ICANNの使命を遂行するにあたっての透明性、アカウンタビリティ、一般的な公正さを目指すための条項を新付属定款で複数定めています。
透明性 新付属定款第III条では、可能な最大限の範囲で透明性をもって運営を行うというICANNの一般的な義務を保持するとともに、その義務について推敲を加えています。
オンブズマン 新付属定款の第V条では、オンブズマン事務局の設置を求めています。構造と運営の規定については、大部分はこのテーマに関する支援グループの勧告に追随しています。第V条第4項5に1箇所追加項目があり、ICANNまたはICANN構成組織に対するいかなる訴訟提起も、オンブズマンがいかなる形でも援助することを明確に禁じています。オンブズマンはICANNの独立した一組織であり、ICANN内の他の組織に対する訴訟を起こしたり、そのような訴訟提起を支援したりすることはオンブズマンの役割に含まれていません。
一般の参加 「青写真」では、一般の意見やコメントを募ったり公開したりする手段の管理、確保、強化を担当する、一般参加についての管理者(またはこれと同等の役職)の設置を提唱しています。第III条第3項で述べている通り、我々はこのコンセプトを引き続き支持し、理事会に提言します。
再検討 再検討に関するポリシーは、新付属定款第IV条第2項に記載されています。大部分は、このテーマに関する支援グループの勧告に追随しています。
付属定款および基本定款の違反疑惑 これらの問題は、第IV条第3項に記載されている独立審査プロセスの対象です。大部分は、このテーマに関する支援グループの勧告に追随しています。
この新付属定款で提言している独立審査プロセスは、コミュニティの一部の方々が求めている「ICANNの最高裁」ではありません。そのような組織を設置しても、提言されている構造や手続きの価値や有効性が増すとは、我々は考えていません。また、改革の重要目標は行き過ぎたプロセスの軽減や実効性の向上であるのに、システムの管理の多層構造がさらに厚くなってしまうのは明白です。今回の改革プロセスの最中および開始前に多数のフォーラムで議論されたように、ICANN理事会が出した決定を再び取り上げて、ことによっては無効にしたり取り消したりする権限を持つこのような「最高裁」それ自体が、多くの難しい疑問を提起するのです。その疑問とは、例えば(1)この組織のメンバーの任命方法はどのようにするか、(2)この組織は誰または何に対して説明責任(アカウンタビリティ)を負うのか、(3)どのような見直し基準に従ってこの組織は活動するのか、などです。
ICANN理事会メンバーの選出プロセスをめぐって激しい議論が行われていることを考えると、「ICANN最高裁」メンバーの選出方法、またはその権限の有効範囲を決定するプロセスについての議論がそれより少なくなるとは、想像しがたいことです。新付属定款で想定している、指名委員会が任命するメンバーも含めたICANN理事会は、すべてのICANN関係者を幅広く代表する組織であり、従って、同様に新付属定款で示されている使命の範囲内でICANNポリシーに関する最終決定を出すのに最も適した組織であると我々は考えています。ですから、新付属定款で提言している独立審査パネル(IRP)では、理事会の言動が新付属定款に反しているという申し立てに的を絞って処理します。
定期審査 第IV条第4項で、すべてのICANN構成組織は3年ごとに構造および運営について独立審査を受けることを提言しています。これは急速に変化するICANNの運営環境を認識して、実効性やアカウンタビリティの低下をもたらす役所的な惰性のリスクを低減することを目的としています。
6. 政府の関与
「青写真」では、GACについて次のような勧告が出されました。(a)理事会に議決権のないリエゾンを置くこと、(b)指名委員会に議決権を有する代表を出すこと、(c)各SO評議会およびRSSAC、TAC、SAC(我々はこれにALACを追加しました)に議決権のないリエゾンを置くこと。これらのリエゾンは、各組織に効果的に参加するに足る十分な専門知識を有していれば、GACのメンバーでも非メンバーでも結構です。上記の勧告はそれぞれ新付属定款で言明されています。第VI条第1項(理事会のリエゾン)、第VII条第2項(指名委員会)、第XI条第2項1(g)(諮問委員会のリエゾン)をそれぞれご覧下さい。
7. 資金確保
「青写真」では、ICANN活動を支えるために必要な資金確保の方法は、ICANNと契約を結んでいるドメイン名レジストリの登録ドメイン名1つにつき25セントの登録料を、ICANNへの直接拠出資金と指定する規定を提言しています。現在ERCでは事務総長が提出した分析に基づき、この25セントという金額は必要な目標の達成に要する額よりも高いと考えています。安定状態に入った後は、最高でも1ドメイン名あたり17セントに相当する相殺額で、改革活動案(7名の正規職員をICANNスタッフに追加増員する必要が出るという見積もりが出ています)が採用されれば生じることになる追加費用を含めても、運営要件をカバーするのに足りるはずです。我々の見方では、この金額には毎年適切な更新を加えて、インフレ関連の理由を除いては、該当するドメイン名の数の増加とともにICANNの総収入が増えないようにすべきです。(ただし、年間予算サイクルの一環として別の正当な根拠が示され承認を受けた場合は、除きます。)比較してみると、現在のICANN予算では1ドメイン名あたり13セントの相殺額を賄っています。さらにERCでは、相殺額を1ドメイン名あたり3セント増額し(合計20セントになります)、ICANNの監査済みの無拘束準備金が1年の運営費の水準に達した後は増額を停止することを提言します。ICANNと契約を結んでいないccTLDからの任意寄付金などその他の資金源によっても、準備金が増加する可能性があることも、言及しておきます。
移行のための資金確保に関する詳細は移行計画そのものによって決まるため、別個に掲載予定の移行に関する勧告に含まれることになります。スタッフの雇用が予算で想定しているペースより遅くなっているという事実、および「改革」に伴う新しい役職の人材募集にかかる時間を考えると、2002-2003会計年度中に発生する移行費用はすべて現在の予算から拠出できるという考えには、根拠があります。
8. 結論
添付されている新付属定款に記載され、この最終実施報告および勧告で説明されている勧告は、非常に多くの方々の並々ならぬ努力の賜物です。当委員会は筆記者となる機会に恵まれましたが、ここに反映された考えやコンセプトの大部分は、立法機関にたとえれば「全院委員会」の役割を果たしているコミュニティの業績です。これまで何度も言及してきた通り、ドメイン名に関するポリシーにしても付属定款の厳密な文言にしても、グローバルなコンセンサスをまとめるというのは非常に難しい仕事です。我々は最善を尽くして、コミュニティから出された様々な見解を総合して、我々が本当に機能すると思うICANN、これまでの4年間の成長の苦しみは後に残して前進し、範囲は狭くとも重要な使命に沿って、複雑な諸問題を効果的に処理することができるICANN、という形にまとめました。
これをもって、現在のICANN付属定款に完全に取って代わるものとして、添付されている新付属定款を採択するようICANN理事会に勧告いたします。
2002年10月2日
発展と改革に関する委員会
注:
1. これらの勧告は大部分の点においては、上で述べたような非常に多大な思索および努力に配慮しながらERCが出した結論に相当するものであり、従ってERCの最終勧告と見なされるべきですが、課題の残っている分野もまだ若干あります。さらに、今回の勧告を見直した結果さらに意見が寄せられ、それによってわずかの修正が何箇所か必要になることも予想できます。よって、上海会議の前にERCで数回にわたってERCがこれらの勧告を増やす可能性があります。この報告書で相当の重要な作業が残っていると言及した分野を除いては、修正が提言されたとしても比較的些細な修正になるだろうと我々は見込んでいます。
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