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        "Interim Report of Working Group C of the Domain Name Supporting
         Organization, Internet Corporation for Assigned Names and Numbers"
                               翻訳文
          ftp://ftp.nic.ad.jp/jpnic/translation/dnso-wg-c-proved-j.txt

                (社)日本ネットワークインフォメーションセンター
                        最終更新 1999年 12月 27日

この文書は

        http://www.dnso.org/dnso/notes/19991023.NCwgc-report.html

を翻訳したものです。JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、その品
質に責任を負いません。

------------------------------------------------------------------------
ICANN/DNSO

検討部会C - 新gTLD
暫定報告書(1999年10月23日)


検討部会Cの暫定報告書
DNSO (Domain Name Supporting Organization) / ICANN (Internet Corporation for
Assigned Names and Numbers)


共同議長による序文

本書は、検討部会Cの履歴および現在までの活動の成果について述べ、同検討部会の
メンバーが起案した一連の方針提案書に対する意見を広く求め、同検討部会の将来の
責務に関するわれわれの見解を明らかにするためのものである。

検討部会Cは、2つの案件についてラフコンセンサスを得た。第1は、新たなグローバ
ルトップレベルドメイン(global top-level domain: gTLD)を追加すべきであると
の主張である。第2は、ICANNがドメイン名空間を拡張するに当たり、まず試験的に6
~10個の新gTLDを追加し、その後に一定の評価期間を設けるのが妥当であろうという
提案である。

われわれは、検討部会Dの勧告に従い、検討部会Cのメンバーに対し、これらの論点に
関するいくつかの異なる見解を示す一連の方針提案書を事前に準備するように求めた
。これらの方針提案書は、当検討部会としての見解を表すものではなく、単に、当検
討部会に所属する個々の起案者とその支持者の見解を示すものにすぎない。われわれ
は、すべての利害団体およびインターネット社会のすべてのメンバーに対し、広くこ
れらの方針提案書に対する意見の提供を求める。

作業の経過

Names Council(ドメイン名審議会)は、1999年6月25日、検討部会Cのチャーターを
承認し、Javier Solaを議長に任命した。7月29日、検討部会のメンバーは共同議長と
してJonathan Weinbergを選出した。検討部会の名目上の規模は検討部会の存続期間
中着実に拡大し、メンバー数は現在90人を超えている。しかしながら、検討部会のメ
ンバーの大半は、まったくメッセージを発信してこないか、またはごくわずかなメッ
セージを寄せるにすぎない。部会の中心的メンバー(部会の存続期間中に20以上のメ
ッセージを発信したメンバー)は20数名である。

検討部会の初期の審議では、さまざまな案件に関する広範な(ただし必ずしも建設的
とは言えない)討論が交わされた。8月26日、Names Councilは、検討部会Cが意見の
応酬のみ多く進展の度合が低いという状況を認識し、同検討部会の構造が「DNSOの実
質的な作業を推進するには適していない」との結論に達した。そして、Names
Councilは、検討部会Dに対し、検討部会Cの共同議長が「本来の機能を果すべく同検
討部会を再構成」できるようにするための方策を示唆するよう要請した。検討部会D
は、検討部会Cが「独自の方策を模索するよう求められた場合に、少なくとも問題の
一部に対する解決策についての妥協と合意に達する能力を備えていること」を確認し
た上で、手続きの進め方に関する2つの有用な方式を提案した。

第1の提案は、検討部会Cにおいて、同部会の様々なメンバーが作成した「方針提案書
」から成る暫定報告書の形で、検討部会で審議すべき問題点に関する各自の主張を提
起すべきであるというものであった。検討部会Dは、この方針提案書を作成すること
で「各グループの位置付けが明らかになり、合意と不合意の部分が明確に区別され、
技術的および経済的に実施不可能な分野が浮き彫りにされ、個々の立場に対する一般
社会の支持が明確にされる」と述べている。第2の提案は、検討部会Cの共同議長は、
メーリングリストに司会進行役をつけるか、または各メンバーが1日に発信できるメ
ッセージの数を制限することを検討すべきであるというものであった。Names
Councilは検討部会Dの報告書を承認し、当検討部会は両方の勧告を実行に移すことに
した。

ラフコンセンサス

検討部会Cは、暫定報告書を作成する過程の中で、2つの案件に関するラフコンセンサ
スに達した。まず、新規のグローバルトップレベルドメインを追加すべきであるとい
う点については、検討部会は早期にコンセンサスに達した。検討部会のメンバーは、
圧倒的多数でこの主張を支持した。検討部会のメンバーのうち反対意見を出したのは
2名のみで、その主張は、商標紛争を解決するためのメカニズムまたは著名商標を除
外するための手続きが制定されるまでは、新gTLDの追加を延期すべきであるというも
のであった。しかし、これは、ICANNが新gTLDを追加することの是非を問うものでは
なく、実施の時期と方法を論点とする意見にすぎないというのが、検討部会の一致し
た見解であった。

第2の案件については、コンセンサスに至るまでに時間がかかったが、これは、検討
部会で論議すべき残された現実的な問題点が、容易に解決できるものではなかったか
らである。そこで、われわれは、これらの問題点に関するラフコンセンサスに至る方
策を模索するための手段として、一連の非公式な紙上投票を実施した。この非公式紙
上投票の結果、ICANNが新規のグローバルトップレベルドメインを設置する時期につ
いては、検討部会の意見がはっきりと二分されていることが判明した。一方の側は、
まず2、3個の新gTLDを追加し、結果を評価するための一定の期間を経た上でさらに追
加を続けるという慎重な方法を主張した。もう一方の側は、今後数年間にわたり中断
なく、多数の新規トップレベルドメインを増設する方法を推奨した。

この議論を解決に導くために、検討部会は、初期段階で6~10個の新gTLDを設置し、
その後に一定の評価期間を設けるという妥協案を検討した。この初期段階はテストベ
ッドとしての役割を果たすものであり、後続のgTLDに関する以後のICANNの決定は、
初期段階の展開の経験に基づいて行うことになる。この提案は、両方の側の部会メン
バーからの支持が得られる折衷案、つまり対立するグループ間のギャップを埋める方
法を目指すものであった。

この提案に対する意見を表明した人の70%以上が、この案に賛意を表した。正確に言
えば、26名がそれぞれどちらかの側の立場からメッセージを発信し、そのうち19名が
支持を表明した。そのうち2名は、6~10個の新TLDを同数の新レジストリが運営する
ことを条件としてこの案を支持し、1名は、少なくとも4つの新レジストリを設置すべ
きであると主張した。

7名が反対意見を表明した。そのうち5名は、新規のトップレベルドメインを特定目的
のものにするか汎用目的のものにするかといった討議事項を解決してからでなければ

、検討部会は新gTLDの数について論議すべきではないと主張した。また、7名のうち3
名は、初期展開で設立する新gTLDを2~3個に制限すること、さらに、この設立と連携
する形で、著名商標保護も含めた効率的かつ迅速な商標紛争解決プロセス、およびコ
ンタクト情報を入手するための簡便かつ費用効率に優れたシステムを確立することを
主張した。さらに、1名は、最初に導入する新gTLDは1個に制限すべきであると述べた
。

われわれは、ICANNが初期段階として6~10個の新規のグローバルトップレベルドメイ
ンを設立し、その後に一定の評価期間を設けるという提案に対し、検討部会がラフコ
ンセンサスに達した(満場一致ではないが)ものと見なした。この問題に関する論争
に加わったメンバーの数は、検討部会の中心的メンバーの規模から見て妥当であり、
意見を表明した人の大多数が実質的に賛意を表した。

意見提供の要請

検討部会C暫定報告書は、この序文と、同検討部会のメンバーが検討部会Dの勧告に従
って起草した7つの方針提案書から成っている。方針提案書は、新規のグローバルト
ップレベルドメインの導入に関する広範な問題点について論じている。これら方針提
案書は、検討部会の統一見解を示すものではなく、各方針提案書の起案者および支持
者の個人的見解を表すものにすぎない。

本暫定報告書における方針提案書掲載の順序については、特に最善と認められる方式
は見出せないため、検討部会内において最も高い支持を得たものから順に掲載するこ
ととした。つまり、検討部会内に最も多数の支持者を獲得した方針提案書を最初に掲
げてある。意見を述べる際の参照を簡便にするために、それぞれに「新gTLDに関する
方針提案書A~G」のタイトルを付けた。

われわれは、関心を持つすべての個人および団体に対し、これらの方針提案書に対す
る意見の提供を要請する。意見の宛先は、comments-gtlds@dnso.org である。寄せら
れた意見は、検討部会の作業を進捗させるための叩き台として使用される。検討部会
の最終報告書は、一般の人々から寄せられた意見と部会の今後の作業に基づいて作成
されることになる。

Javier Sola
Jonathan Weinberg


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新gTLDに関する方針提案書A
新gTLDに関する方針提案書B
新gTLDに関する方針提案書C
新gTLDに関する方針提案書D
新gTLDに関する方針提案書E
新gTLDに関する方針提案書F
新gTLDに関する方針提案書G
-----------------------------------------------------------------

新gTLDに関する方針提案書A

要旨

ICANNは、汎用目的および特定目的の両方のドメインを含め、多数のgTLDを追加設置
すべきである。その際、まず初期テストベッドとして6~10個の新gTLDを設置し、評
価期間を経て大きな問題がなければ、さらに多くのgTLDを追加する。短期的には(テ
ストベッドおよび初期の段階的展開中は)、希望するgTLDを即時にルートに組み込も
うとするレジストリの数がICANNで計画した許容量を上回るまでは、ICANNは臨時措置
的な選択プロセスを実施できる。長期的には、ICANNにとって最も重要なことは、ル
ートへの新gTLDの追加に対する障害を最小限にするためのポリシーを確立することで
ある。ICANNにとっては、営利および非営利の両方のgTLDレジストリに認可を与える
ことに意義がある。

序

本方針提案書の趣旨は、起案者の見解を表明すると共に、コンセンサスへの到達に向
けて作業を促進することにある。これは、gTLDの拡張のすべての局面を網羅した実施
計画を提示するものではない。検討部会Cは基本方針の点で意見が鋭く対立しており
、本方針提案書は、主として、これらの大綱的な問題点に対する何らかの解決策を求
めようとするものである。

I. 新gTLDは必要か

必要である。TLDの数を増やせば消費者の選択肢が増加し、現在のドメイン名構造の
下では締め出されていた組織にとっての機会が新たに発生する。一般の人々の大半が
.comを唯一の「真の」TLDと見なしている一方、一般的な英語の辞書に載録されてい
るあらゆる語がすでにSLD(第2レベルドメイン名)として登録済みになっているとい
う現在の状況は、このまま維持するのが妥当とは決して言えない。このような状況が
存在するため、企業は現在、自社を表す名前としてますます意味不明のドメイン名を
登録せざるを得ない状況で、.comドメイン名の2次市場(投機家の市場)の価値が急
騰している。

今や、.comは、ドメイン名空間上で米国における唯一の「真の」商用TLDとして、ま
た世界におけるきわめて重要なプレイヤーとしての地位を占めており、その規模は最
大のccTLDの10倍に相当する。現在<www.companyname.com>の形式のドメイン名を持つ
企業は、マーケティングおよび企業名周知のための非常に重要なツールを獲得してい
ることになる。これらの企業は、ネットサーフィンをする消費者が最も容易に見つけ
やすい企業であり、したがって、この形式のアドレスを持っていない他の企業より有
利な立場にいる。ドメイン名空間を拡張すれば、企業は覚えやすいドメイン名をこれ
までより容易に入手できるようになり、エレクトロニックコマース(電子商取引)に
参加するための最初の障害が軽減される。さらに、新gTLDを追加することで、非商用
ドメイン名空間の拡大も期待できる。

新gTLDを追加すれば、複数の異なる企業がそれぞれ異なるTLD内で同じ第2レベルドメ
イン名を持つことができるようになる。つまり(架空の例を挙げるなら)、
shopping.comはshopping.bizやshopping.storeなどの競争相手を持つことになる。そ
してこれらの企業は、どの企業が最も望ましいドメイン名を最初に確保するかという
偶然的な要因ではなく、価格、品質、およびサービスを基盤として競争を展開するこ
とが必要になる。

事実、ドメイン名空間を拡張することで、商標とドメイン名に関連した最大の難題の
一つを解決することが可能である。現在は、関係のない複数の企業が同一または類似
の名前(たとえば、United AirlinesおよびUnited Van Lines)を持っている場合、
どの企業が<www.companyname.com>の形式の有利な名前を取得するかという問題を解
決するための有効な手段はない。しかし、ドメイン名空間を拡張して、たとえば一社
が<www.companyname.biz>、そして他社が<www.companyname.firm>を取得できるよう
にすれば、この種の紛争の多くを回避することができる。SLD文字列が同じであって
も、TLDが異なれば、複数の異なる企業を表すということを消費者に理解してもらえ
ば、消費者が短絡的に、特定のドメイン名が特定の企業に結び付くという結論に達す
ることはない。

II. 新gTLDの性質はどうあるべきか

中には、新gTLDは、一部支配的な特定目的または完全な特定目的のドメイン(たとえ
ば .firm ではなく .airline)にすべきであるとの主張がある。この主張の主旨は、
特定目的のTLDは消費者により多くの情報を与えることができ(united.airlinesがト
ラック輸送業者ではなく航空会社であろうことは容易に想像がつく)、さらに、ドメ
イン名空間の拡張に伴う逆効果として発生する商標利益への脅威も軽減できる(たと
えば、united.booksが登録されたとしてもUnited Airlinesにとって脅威にはならな
い)という点にある。さらに、ICANNは、最初から特定目的TLDの枠組(たとえば、.
transpおよび.healthなど)を細密に計画して、ユーザがDNSの構成を信頼して、特定
の企業またはコンテンツプロバイダに関連したURLを見つけることができるようにす
べきであるとの主張もある。

特定目的TLDが時として有益であるという点にはわれわれも異論はない。しかし、す
べての新gTLDがこのような形であるというのは妥当ではない。上記で述べた理由によ
り、.comは現在圧倒的な勢力を持つTLDとなっており、.comに属するドメイン名は強
大な(人為的な)市場価値を持っている。いくつかの特定目的TLDを追加したところ
で、この状況が変わるとは考えられない。依然として、.comは(そしてそれよりは劣
るが.netおよび.orgも)TLDピラミッドの頂点に君臨し、その下位に多くの特定目的
TLDが連なることになろう。これに対して、汎用トップレベルドメインは、.comに対
する有効な競争力を提供できる可能性がある。これにより、魅力的なドメイン名を求
める個人や企業にとっての競争の場がさらに均等化され、Eビジネスにおけるマイノ
リティーが、単に「最良」のTLDに効果的な名前を登録することによってのみ利益を
得るという可能性は低下する。

上記で述べた内容は、新規の特定目的gTLDと新規の汎用gTLDを混在させたものが理想
的なシステムとなることを示唆している。新gTLDを選択するプロセスについては、本
方針提案書の第VII部で論じる。ICANNは、gTLD文字列をICANN自身で選択するプロセ
スを採用した場合、単純に各カテゴリ毎にいくつかのgTLDを選択することができる。
これに対して、ICANNが新レジストリを認定し、それらのレジストリがそれぞれ独自
にTLD文字列を選定するというプロセスを採用したとすれば、結果は類似の混合シス
テムとなろう。レジストリによっては、汎用的なアピールをもたらすような名前(た
とえば.web)を選択して広範な市場範囲を網羅しようとすることもあり、限定的用途
の名前(たとえば.per)を選択することによりすき間市場を開拓しようとすることも
あろう。その結果、ドメイン名空間は、各カテゴリ内にgTLDを持つことになる。

III. 新gTLDの数はどの程度が適当か

長期的には、多数のgTLDを持つドメイン名のシステムがきわめて望ましいと考えられ
る。個々の追加TLDは、ドメイン名登録者に対して新たな選択肢を提供することとな
る。さらに、多数のTLDおよびTLDレジストリを擁するドメイン名空間は、レジストリ
自身にも有益な市場競争の論理が適用されるようなドメイン名空間となる。競争する
TLDが数多く存在すれば、特定のTLDが持つ市場支配力が抑制される。あるレジストリ
の能力に対して不満を抱くユーザは、別のレジストリが運用する別のトップレベルド
メインで新たなドメイン名を登録することができる。インターネットコミュニティの
メンバーは、ドメイン名登録の決定により、多数のTLDのうちのどれがドメイン名空
間における重要な役割を果たすのかを、自ら決定できるようになる。

ドメイン名空間に、.sportsと呼ばれる一つのレジストリがあるとしよう。ほかにレ
ジストリがない場合は、このレジストリは、ある種の登録者にとって最も有益なTLD
と見なされるほどの市場支配力を確保し、その勢力を利用して不適切な利益を得るこ
とができる。これに対して、多数のTLDがあり、比較的自由にTLD空間に加入できると
すれば、.athleticsの登場により.sportsは制約を受けるので、ドメイン名登録者に
とっての利益となる。この観点から見て、技術的な実施可能性および運用上の安定性
からくる限界さえなければ、gTLDの数を人為的に制限するのは望ましくないと言える
。

gTLDの数を制限すべきであるとの主張の最大の理由は、商標権者の利益の保護という
点にある。商標権者は、多数のgTLDを追加すると、それぞれの監視費用が大幅に増加
すると主張する。新gTLDが増えれば増えるほど、他者が自分の商標(またはその類似
のもの)を、消費者の混同を招くような形で第2レベルドメインとして使用していな
いかどうかを確認するための労力が増加するというのである。

われわれの見解を言えば、この心配は過大に誇張されたものである。商標権者は、す
でに、既存の汎用トップレベルドメインにおいても、またさまざまな国コードトップ
レベルドメインにおいても、商標に関する監視活動を行っている。費用に関する問題
は、新規のトップレベルドメインレジストリに対し、第2レベルドメインのリストを
自動的に容易にサーチできるようにすることを義務づけることによって、容易に解決
できる。このような規則を制定すれば、新ドメインの追加に伴う商標権者の費用負担
は軽減される。さらに重要なのは、単に商標権者の費用増加を抑制するために、イン
ターネットのドメイン名空間の全体構造をゆがめることには、何の意味もないという
点である。

IV. 拡張されたドメイン名空間への移行はどのようにすべきか

膨大な数の新TLDを一度にドメイン名空間に組み込むのは、賢明な方法とは言えない
。それより、ICANNは、拡張ドメイン名空間への円滑な移行を推進するための監理を
行うべきである。移行期間中は、ICANNは、レジストリになる組織に対し、技術的な
能力と安定性に関する適格性を求める必要がある。さらに、資格条件を満たした新レ
ジストリに与えるgTLDを、当初は1個のみに限定すべきである。これにより、最大数
の組織が移行に参加でき、新レジストリの競争の中で最大の「費用効率」を達成でき
る。

ICANNが選択できる移行計画は2つある。第1は、テストベッドとして一定数の新レジ
ストリをルートに追加し、その後に一定の評価期間を設ける方法である。このテスト
ベッドで重大な問題が発生しなければ、次に段階的展開に移り、資格条件を満たした
レジストリからの申請に基づき徐々に新TLDをルートに追加するが、一ヶ月に追加す
るレジストリの数が一定数を超えないようにする。この一ヶ月当たりの上限を設ける
のは、新TLDの急激な増加により、ICANNの処理能力または新しい紛争解決システムの
機能が圧倒されるのを防ぐためである。

第2として、テストベッドを省略し、最初から段階的展開に入る方法が考えられる。
いずれの計画の場合も、移行期間の終了後に、ICANNは、単に新レジストリを追加す
るためだけでなく、既存のレジストリもTLDを追加できるようにするための手続きを
確立することができる。

検討部会Cの非公式紙上投票では、多数のメンバーがテストベッドを廃するのは軽率
であると主張した。この紙上投票を叩き台とする討論において、検討部会内で優勢を
占めた(ただし満場一致ではない)見解によれば、われわれは最善の方法について意
見を異にしているものの、大半のメンバーは1つの妥協案を支持している。それは、I
CANNが最初は6~10個のgTLDによるテストベッドの展開から着手し、評価期間中に重
大な問題が生じなければ、さらにgTLDを追加してゆくというものである。われわれは
、この問題に対する実行可能な解決策の1つとして、このラフコンセンサスを支持し
ている。

V. ICANNは、新規の各gTLDレジストリを共有とすべきか、つまり、「同等アクセス」
ベースで競合するレジストラをサポートすべきか

共有レジストリシステムでは、レジストリは複数のレジストラをサポートする必要が
ある。レジストリは、資格条件を満たすレジストラを排斥したり、特定のレジストラに
他より高い資格を与えたりすることを禁じた規定に従わなければならない。この方法
では、(現在ICANNがNSI gTLDとの関連で行っているように)SLD登録に関する機能が
2つに分割できることが前提となる。それは、エンドユーザを取り扱う「レジストラ
」機能と、レジストリデータベースのメンテナンスを担当する「レジストリ」機能で
ある。レジストリの共有により、すべてのTLD内でのレジストラサービスの提供にお
いて、均等な競争の展開が確保され、ユーザはこの競争がもたらす利益を享受するこ
とができる。特に、各TLDに、レジストラサービスを提供する優れた能力を持つ組織
を確保することによって、ユーザにとって望ましいTLDを管理しているレジストリが
、レジストラサービス提供の用意ができないといった事態を回避することができる。
これは重要な利点である。非常に効果的な共有レジストリシステムの一例としては、
.ukのNominetシステムが挙げられる。

しかし、共有は万能薬ではない。特に、レジストリの市場支配力に対する影響力はま
ったくない。(つまり、レジストリが複数のレジストラをサポートしなければならな
いという条件自体は、レジストリがレジストリサービスに課することのできる価格を
拘束するものではない。価格を抑制する要因は、市場の力か、またはNSIの場合のよ
うに直接的な規制だけである)。さらに、共有という要件が、実際には革新的なサー
ビスの提供を阻害する可能性があるということも想像に難くない。たとえば、.famil
yの運営計画において、TLD運営者が自己の裁量によって家族にやさしい(family-fri
endly)と判断されたWebサイトを運営する人のみに登録を限定した場合を考えてみよ
う。このドメインが商業的に成功するかどうかの要因の1つは、これらの選択を行う
際に運営者が見せた配慮と洞察力を、一般社会がどのように評価するかということで
ある。どれか1つのレジストラが、自己の自由裁量に任せて.familyドメインに名前を
追加できるとすれば、このビジネスプランは成功しないであろう。

上記の点から見て、すべてのgTLDが複数の競合するレジストラをサポートするという
ことは一つの「仮定」であると発表することは、ICANNにとって賢明であると言える
。これによってレジストラ相互の競争から生じる利点を生み出すことになるが、特定
のレジストリが他の方法にも大きな利点があるという申立てをICANN に提出できる程
度の反駁の余地を残しておくのである。このような申立てができるのは特化された市
場にサービスを提供するレジストリのみであろうと考えている。(Joseph Friedman
は、汎用gTLDのみを共有とし、特定目的gTLDは共有としないようにすべきであると述
べている。Rod Dixonはこの方針提案書に署名しているが、ICANNは共有に関する要件
を一切強制すべきではないとの意見である。Dixonは、NSIおよび現在のgTLDドメイン
名空間の場合とは逆に、新gTLDの設置に際しては、レジストラサービスにおける競争
と品質を市場の力に任せるべきであると主張している。ICANNがレジストリレベルで
ドメイン名空間を開設する範囲においては、レジストリが、競合する複数のレジスト
ラサービスに対してライセンス(または何らかの形のアクセス権)を提供することは
、ライセンス提供がレジストリの目的とチャーターに適合しているならば、市場の力
によってなされるべきである。言い換えれば、新しいgTLDドメイン名空間においては
、ICANNが強制する共有レジストリシステムがなくても、適切なレジストリサービス
における純粋な競争により、レジストラサービスにおける競争が必然的に発生すると
いうことである。)

VI. ICANNは、新gTLDレジストリに対し非営利(原価回収)ベースでの運用を義務づ
けるべきか

非営利レジストリと営利レジストリには、どちらにも利点がある。非営利レジストリ
の主な利点は、ドメイン名登録者を犠牲にして自己の市場支配力を行使する可能性が
低いという点にある。営利レジストリの主な利点は、効率的な運営と革新的サービス
の提供に対する意欲が大きいという点にある。

レジストリは、2つの理由により、強大な市場支配力を振るう可能性がある。第1に、
いずれのレジストリであっても、特定のユーザ層に対して、当該レジストリが管理す
るトップレベルドメインが他のどのドメインより魅力的であると思わせる範囲で市場
支配力をもつことになる。言い換えれば、各レジストリは、自己のドメインに対する
「独占的」な制御権を持っている。したがって、NSIは、.comレジストリサービスに
課している価格がDOC-NSI協力合意により直接規制されていなかったとすれば、.com
の運営によってもたらされる独占的利益を享受できることになる。第2に、レジスト
リは「ロックイン(閉じこめること)」の効果により既存ユーザに対する市場支配力
を振るうことができる。つまり、ユーザにとっては新たなレジストリに切り替えるこ
とは容易ではなく(これまでのドメイン名を放棄しなければならないため)、レジス
トリは移動に対するユーザのこのような消極性を利用している。

非営利レジストリの主な利点は、自己の市場支配力を利用して独占的な使用料を課す
る傾向が弱いという点にある。ただし、この利点は保証されているわけではない。非
営利レジストリは、原価および価格を削減しようという積極的な動機を持たないこと
がしばしばある。つまり、非営利レジストリは、厳密な原価管理をせず、原価の膨張
を放置し、それを補う必要から価格を上げることがある。しかしながら、少なくとも
一部の非営利レジストリは、低い原価でレジストリサービスを提供するための効果的
な施策を実施している。これについても、好例としてNominetを挙げることができる
。

営利レジストリには異なる利点がある。最も重要なのは、利潤を追求することに意欲
的なレジストリは、効率を高め、価格を削減し、さらに多くの付加価値サービスを提
供するための方法を模索することに労力を注ぐという点である。同様に、営利レジス
トリは、TLDを周知し売り込むことにも多大のエネルギーを投入することが多い。一
般論として言えば、営利TLDには、ユーザに便益をもたらすような革新的なサービス
と構造を期待することができる。

ただし、これらの利点が効果を発揮するには、市場支配力の問題に対する解決策を見
出すことが前提となる。レジストリが有効な市場制約を受けない限り、営利レジスト
リの利点は単なる幻影に終わることになる。レジストリに市場支配力を与える源泉は
2つあると考えられる。レジストリの市場支配力が単にTLDの魅力から導き出されてい
るという範囲においては、ドメイン名空間を拡張すること自体が1つの解答となる。g
TLDの数が増加するにつれて、競争相手となる同種のgTLDが存在するgTLDの魅力は低
下する。少数のgTLDしか存在しない現在の体系の中では、ユーザにとって、トップレ
ベルドメインを選択する際の信頼できる選択肢はほんのわずかしかない。これに対し
て、ユーザにとっての選択肢が増加すれば、TLDレジストリが振るうことのできる市
場支配力は著しく低下し、TLDレジストリがドメイン登録に課すことのできる料金も
低減される。競争市場における営利企業は、原価と価格を削減することに精力を傾け
る。特に、競争環境の中では、新規の登録者をひきつけようとするレジストリは、絶
えず原価と価格を抑制しようとする。

ロックインから派生する市場支配力は、もっと扱いにくいかもしれない。この場合は
、ドメイン名空間を拡張することは問題の解答にはならない。われわれの中の一部の
メンバーは、レジストリに対して他の制約を課するだけで十分と考えている。市場が
成長を続ける限り、レジストリは既存の顧客に圧迫を与えるようなことはしないだろ
う。そのようなことをすれば新規顧客の意欲を削ぐことになるからである。さらに、
その他のメカニズムも効果的な役割を果たす可能性がある。この種のメカニズムには
、たとえば、長期契約の利用可能性、急激な価格上昇を抑制する行動規約、および、
ユーザが簡単にドメイン名を変更できるようにするメカニズムなどがある。われわれ
の中の他のメンバー
は、これらのメカニズムでは不十分であると考えている。

本文書への署名者の大半は、非営利レジストリと営利レジストリが混在するシステム
を確立することに意義を認めている。両者は、それぞれ異なるものを提供することが
できる。ロックインを最も問題視するドメイン名保有者は、非営利レジストリが運営
するドメインの方が安全な道と考えるのであれば、その種のドメインを自由に利用す
ることができる。そうでない利用者は、営利レジストリの活力と革新性がもたらす利
点を活用することができる。しかし、われわれの中には、ロックインによりもたらさ
れる市場支配力を抑制する一層効果的なメカニズムがない限り、営利レジストリの存
在は妥当でないと考えるメンバーもいる。

VII. ICANNではどのようなプロセスにより新規のドメインおよびレジストリを選択す
べきか

この質問に対しては、長期および短期の両方の視点から解答を求めるのが効果的であ
る。長期的には、ICANNは2つの方法のいずれかをとることができる。第1の方法では
、ICANNは、まず追加する新gTLDを選択し、その次にレジストリになろうとする組織
に対し、新gTLDの運営に関する申請を要求する。第2の方法では、ICANNは、申請者の
レジストリサービス遂行上の技術的能力や財政面の安定性などの基準を条件としてレ
ジストリを認定し、
その次にレジストリが、独自にそれぞれのgTLDの名前を決定する(ただし、ICANNが
衝突を解決したり、有効でないgTLD文字列を識別できるようなプロセスに従うものと
する)。

この2つの方法はしばしばまったく異質のものととらえられがちだが、実際には、見
た目よりはるかに類似性が大きい。いずれの方法でも、比較的小人数のグループが新
gTLDの名前を選定することになる。第1の方法では、ICANNの意思決定者が、コミュニ
ティにとってどの新gTLDが最も利点が大きいかについての各自の判断に基づいて決定
を行う。第2の方法では、レジストリの運営者が、コミュニティがどのような新gTLD
を望んでいるかについての各自の判断に基づいて決定を行う(これは、最大限の登録
収益を得るための当然の筋道である)。これらはいずれも類似した考え方であり、し
たがって結果として生じる名前のセットも類似したものになると考えられる。(Eric
Brunnerは本文書への署名者の一人だが、この段落の内容には賛同していない)。

いずれの方法の場合も、ICANNが十分な数の新TLDをルートに組み込んでおけば、最終
的にはインターネットユーザ自身が、gTLDのどれが成功しどれが失敗するかを決める
ことになろう。ユーザは、どのトップレベルドメインに名前を登録するかを、自分の
判断で決定する。その結果、一部のgTLDは繁栄し、また一部のgTLDは沈滞することに
なるだろう。それを決めるのはコミュニティである。

この点から考えれば、ICANNがこの2つの方法のどちらを選ぶかは、さほど重要ではな
い。ICANNにとって最も重要なのは、新gTLDをできるだけ簡単にルートに組み込める
ようなポリシーを採用することである(これには、新レジストリおよび既存レジスト
リのいずれに運営されるgTLDも含まれる)。つまり、新レジストリの資格認定に関す
るICANNの基準は、不当に負担の重いものであってはならない。さらに、ICANNのプロ
セスは、申請された新TLD文字列の内容を直接吟味できる程度の範囲内で、過度の遅
滞なく認定承認に向けて進められるようなものでなければならない。最後に、段階的
展開におけるgTLD拡張の進度に関する妥当な制限は別にして、技術的な実施可能性お
よび運用上の安定性に関する限界がないならば、ICANNはgTLDの総数に制限を設ける
方向を目指すべきではない。ICANNのプロセスがこれらの基準を満たしていれば、上
記で述べた選択プロセスのいずれも効果を発揮するものと考えられる。

さらに、短期的に重要な問題が1つ残されている。それは、テストベッドおよび段階
的展開において、それぞれの希望のgTLDを即時に組み込もうとするレジストリの数が
、計画された許容量を上回った場合に、ICANNがどのように作業を進めるべきかとい
うことである。この問題に対する満足すべき解答はない。一つの仮定ではあるが、基
準を満たしている申請者の処理を一部遅らせなければならないことになるだろう。こ
の決定に至るどの方法を選んでも理想的と考えられるものはない。ICANN自身にとっ
て最も進めやすいと考えられるプロセスは、レジストリの適格性やTLDの性質などを
含め、さまざまの要因を吟味しながら行う臨時措置的な選択プロセスであろう。長期
的には、このような方法は望ましいとは言えない。この方法には、主観的で根拠のな
い意思決定という危険性が伴うからである。しかし、短期的には、この方法は、初期
実施段階の監理の観点から見て、よく言われるインターネットの安定性と信頼性とい
う問題への対応手段として効果があると考えられる。

Ann-Catherine Andersson
Jean Michel Becar
Eric Brunner
Robert F. Connelly
Dave Crocker
Rod Dixon
Joseph Friedman
Siegfried Langenbach
David Maher
Mark Measday
Paul Stahura
Jonathan Weinberg

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新gTLDに関する方針提案書B

新gTLD: 競争、革新、および文化的多様性

検討部会Cのメンバーによる方針提案書

要旨

本方針提案書は、新gTLDに対する強い要求を表明するものである。ICANNは、今後3年
間に500個の新gTLDを追加する意図があることを宣言すべきである。新規追加は、徐
々に、しかも停滞なく進めるべきであり、安定性に対する明白な脅威が発生しない限
り停止すべきではない。3年が経過した後は、新規のTLDまたはレジストリの数につい
て固定的な限界を設けるべきではない。特にUDRPが採用された後は、知的財産権保護
の手段という形での人為的制限をドメイン名空間に対して用いるべきではない。トッ
プレベルドメイン名空間の中身は、将来のレジストリが提出する申請に基づいて決定
されるべきである。レジストリ、レジストラ、そしてドメイン名空間の市場構造は、
その市場におけるエンドユーザとサービス提供者の相互作用によって決まることが妥
当と考えられる。ICANNの役割は、関係者間の活動の調整、および、DNSの安定性を維
持するために必要な技術的および運用上の最小限の基準の制定のみに、厳密に制限す
べきである。

検討部会Cのメンバー
Milton Mueller, Syracuse University School of Information Studies
Rod Dixon, J.D., LLM, Rutgers University-Camden
Timothy Denton, BA, BCL, Telecom and Internet law and Policy
Mikki Barry, Domain Name Rights Coalition
William Walsh, DSO Net
Christopher Ambler, Image Online Design
Joop Teernstra, IDNO
Anthony M. Rutkowski, NGI Associates
Paul Garrin, CEO, Name.space
Mark Langston
Kathryn Vestal, Esq. Billings, MT

その他の支持者
Hans Klein, Computer Professionals for Social Responsibility
Don Mitchell, Vienna Virginia
Peter Deutsch, Shophound, Inc.
Richard Sexton, VRx


1. 新gTLDのルートへの追加はICANNの要求の重要な部分である

ICANNが創設されたのは、既存の各種機関が、新規のトップレベルドメイン名に対す
る需要がもたらす政治的および経済的な強い摩擦を解決できなくなったためである。
米国商務省が出したホワイトペーパーは、この新法人の4つの主要目的の1つとして、
「新TLDをルートシステムに追加する条件を決定するためのポリシーを監理すること
」を掲げている。したがって、ICANNが新TLDをどのように取り扱うかは、DNS監督者
としてのICANNの資質を見る重要な試金石の1つとなる。われわれは、この問題に対す
る柔軟かつ多様、そしてオープンな方法を提言する。

2. 新gTLDに対する需要

ドメイン名空間の拡張に対するエンドユーザからの強い要望があることは明白である
。一部のユーザは、今後も変わらずccTLDのもとでの登録に満足しているあろうが、
大半のユーザはgTLDを望み、しかも.com、.net、および.orgに代わるgTLDを求めてい
る。新しくて意味的に関心を集めるgTLDに対する強い需要がある証拠を、以下に列挙
する。

a) .com TLDの下の第2レベルドメイン名は、極端に高騰する価格のために絶えず所有
者が変わっている。次の表に示すのは「サイバースクワッティング」の事例ではなく
、商標が設定されていない通常の単語が、合法的に取り引きされた事例である。価格
の高さは、既存のgTLDにおける一般名称の人為的な不足、および、特に.comの名前に
対するプレミアムを反映している。

ドメイン名の価格
Bingo.com  110万米ドル
Wallstreet.com 103万米ドル
Rock.com  100万米ドル
Eflowers.com  100万米ドル
Drugs.com  80万米ドル
University.com  53万米ドル
Computer.com  50万米ドル
Blackjack.com  46万米ドル
BBC.com  20万ポンド
Business.com  15万米ドル
Internet.com  10万米ドル
Trade.com  4万米ドル

b) ユーザの間では、NSI gTLDにおいて単純なドメイン名を見つけることがますます
困難になっていることに対する不満が蔓延している。この不満の根拠は、1999年4月1
4日付けのWired Newsの調査により検証されている。この調査によれば、標準的な辞
典に掲載されている25,500語のうち、.comドメイン内で使用できるものとして残され
ているのはわずか1,760語にすぎない。この調査の時点で、登録されているドメイン
名の数はわずか750万個である。その後の5ヶ月間に300万以上のドメイン名が登録さ
れている。

c) 現在、週当たりのドメイン名の登録増加数は270,500を超えている。この成長率を
将来に投影すると、2003年にはドメイン名登録数は6700万に達するものと予測される
。現在のgTLDの数では、この成長率に対応することはできない。

d) ドメイン名に対する需要の増加は、ccTLDレジストリによって満たすことはできな
い。問題は、容量ではなく消費者の選択である。ほとんどのユーザはgTLDを望んでい
る。全世界のドメイン名の74%がgTLDに登録されており、61%が.comに登録されている
。ドメイン名の登録総数におけるgTLDのシェアは、1997年以降変化していない。同期
間中に北米以外の地域のインターネットユーザが急増しているにもかかわらず、この
現象は真実である。現在使用可能なgTLDの選択肢が限られているにもかかわらず、依
然として、インターネットユーザがccTLDよりgTLDを好む傾向があることは明らかで
ある。gTLDの数を増やし、それぞれの意味的な部分を異なる文化や言語に関連付ける
ようにすれば、gTLDに対する好みの傾向は一層強まるだろう。われわれは、TLDポリ
シーは、ユーザがどこそこに登録「すべきである」というトップダウン型の先入観で
はなく、エンドユーザの嗜好を反映すべきであると考える。

e) 提供者の側について見れば、新gTLDの運営を望みその能力を持つ潜在的なレジス
トリサービス提供者が多数存在している。この種の提供者には、たとえば、Core、Im
age Online Design、Name.space、VRx、およびMHSCなどがある(もちろんこれらに限
られるわけではない)。何千もの登録者が、既存のIANAルートで運営されていないTL
Dのドメイン名を予約するために支払いを済ませている。いくつかのccTLDレジストリ
(.NU、.CC、.TOなど)がgTLDに転身し、.com、.net、および.orgに代わる存在とし
て広く名前を宣伝している。これらの企業が、gTLDサービスに対する深刻な需要を認
識していることは明らかである。

3. WG-Cの勧告

DNSOに対する検討部会C(WG-C)の報告書は、「テストベッド」として6~10個の新gT
LDのみをルートに追加することを提案している。さらに、後続のgTLDを追加する前に
一定の評価期間を設けることも提唱している。後続の追加に関しての確約または予測
を示すものではなく、また評価の期間および基準も設定されていない。新たな追加に
際しては、まったく新しいプロセスを開始することが必要になる。この報告書への署
名者の多くは、6~10個という提案を、検討部会内の大多数の合意を得るための最小
公分母として支持しているが、われわれは、この提案は制限が大きすぎ、競争、革新
、および文化的多様性に対する過度の制約を課するものとあると考える。

4. 代案

以下に示すポリシーは、ICANNの要求とインターネットのニーズをより的確に反映す
るものである。

a) ICANNは、今後3年間に500個の新gTLDの申請を受ける意図がある旨を発表する。

b) これらの新gTLDの申請者を、漸次的に追加してゆく。たとえば、最初の6ヶ月に10
個、次の6ヶ月に40個、2年目に150個、3年目に300個といった方式を用いる。

c) 新gTLDのうちの一定の部分を、異なる文化/言語グループを反映する名前用として
確保する。この確保の基礎としては、ICANNの5つの地域を用いることができる。

d) われわれは、無期限の「評価」期間を設ける代わりに、ICANNはルートに新gTLDレ
ジストリおよび名前を追加するプロセスを中断または中止することの正当性を立証す
るための、明確、客観的、かつ数量的な指標を定義することを提案する。つまり、新
gTLDは、有罪が立証されない限り無罪と見なされるべきである。3年の経過後は、gTL
Dの数に人為的な制限は加えないものとする。

これに似た提案は、検討部会Cの議長が行った紙上投票において、投票した検討部会
メンバーの35%の支持を得ている。以下の項では、新TLDの問題に対して、よりオープ
ンで、より多様性に富み、より競争指向の強い方法をとる理由を列挙する。

4.1 競争ポリシー

開始時点において特定多数のgTLDを指定することの最大の理由は、新gTLDのもとでの
ドメイン名登録サービスの提供に関して、競争的市場と平等な競争環境を確保すると
いう点にある。新gTLDがわずか6~10個に限定され、後続の追加に関する確約もない
状況では、レジストリの売手寡占および各名前のもとでの市場独占を招く恐れがある
。競争は不活発になり、先発組織は、新たな競争者の参入を減速させたり阻止したり
する既得権益を持つようになることが考えられる。初期の認定組織は、強大かつ不公
平な競争上の利点を享受できることになる。これらの組織は、短期間に、新規の名前
に対する鬱積した需要を利用できるようになる。

4.2 市場の確実性

初期の展開に対する制限が大きく、しかも前進の確証がない状態では、新レジストリ
へのgTLDの初期認定は、消費者と生産者のどちらにとってもきわめて合理性に欠けた
プロセスとなる。一般の人々は、近い将来新たな代替物が利用可能になるかどうかを
知ることはできず、したがって、新gTLDが唯一の選択肢であるという想定のもとに提
供者を選択することになる。新gTLDの数が少ないと、人為的な不足が続くという可能
性に基づく先買的かつ投機的な登録を招く恐れがある。新規参入を企図する競争者は
、いつ市場に参入できるのか、または果たして参入が可能かどうかも知り得ない。ま
た、追加数を制限することで、初期割り当ての決定は論争を招きやすく、しかも恣意
的なものになる。ICANNは、初期割り当てが、過去におけるNSIの独占に見られるよう
に、きわめて強大な特権を永続的かつ最終的に付与する結果をもたらさないようにす
るという確証を得ることはできないだろう。

これに対し、大きい数を事前に発表しておけば、新gTLD割り当ての認定を最初に受け
た者は、多数の後続競争者が参入することを明確に予測することができる。また、新
規参入の競争者の投資および参入決定もはるかに合理的なものになる。消費者の決定
は、人為的な不足を利用しようとする企図ではなく、ドメイン名自体の必要性とそれ
自体の価値に基づいて行われる。

5. 商標に関する問題点と新GTLD

検討部会Cにおいては、商標侵害を防御するために、新gTLDの数を制限し、導入のペ
ースを遅くすべきであるとの意見がいくつか出された。われわれは、この主張には大
きな欠陥があると考えている。

商標および知的財産権については、その利害団体がケースバイケースの紛争解決手続
きを推進し、各自が不正なドメイン名登録に対する防御策を講じることは適法である
。しかし、商標権者が、単に監視と執行の作業に要する費用と労力を軽減することの
みを目的として、合法的サービス(ドメイン名登録)のための市場への参入を一律に
禁止せよと要求することは、適法とは言えない。このようなポリシーは、何百万もの
罪のない消費者および提供者に対し、不当な費用と制約を課することになる。TLDを
運営することは、本質的には不正でも侵害でもない。不正または投機的な名前登録は
、どのTLDにおいても登録総数のほんのわずかな部分を占めるにすぎない。周知のよ
うに、VCR、複写機、および類似の記録機器も著作権違反の原因となる。今日、その
ことを理由として、これらの機器を禁止したり、その製造および販売の数を厳しく制
限することを提唱する者はいない。テクノロジは発展すべきものであり、法的な保護
は必要に応じて新たな現実に合わせて調整すべきであろう。したがって、商標保護に
対する影響を根拠として、gTLDの数を制限すべきではない。

上記の理論に賛意が得られないとしても、ICANNがUDRPを採用すれば、gTLDの数と商
標保護の問題との間の関係は完全に断ち切られる。UDRPのもとでは、コンタクト情報
はアクセス可能でしかも正確であり、登録に対する異議申し立ては簡単で費用も少な
くてすむ。サイバースクワッタは、何らかの形で異議申し立てを受けたすべての訴訟
で敗北しており、すべての客観的情報はこの問題が解消されつつあることを示してい
る。UDRPは、さらにこの問題を抑制する役割を果たすはずである。

最後に、gTLDの数を厳しく制限することは、実際には多くの「サイバースクワッティ
ング」の問題を助長するということを指摘したい。gTLDにおけるドメイン名に特別な
価値が付くことにより、ドメイン名の投機買いが横行することになる。特別な価値は
、主として、TLD空間の不足を人為的に招いた結果の産物である。さらに、新gTLDが4
個または5個しかないとすれば、主要な商標権者がとる最も自然な対応は、すべてのg
TLDにわたって先買的な名前登録に走ることであろう。これは、gTLD追加の目的を挫
折させることになる。

6. レジストリモデルにおける多様性と競争

検討部会Cにおいて最も活発な論議の的になったのは、おそらく、レジストリに関す
る適正な経済モデル、および名前選択のプロセスに関する問題であろう。部会では、
次に示すすべての問題が長期にわたり検討された。

a) レジストリは、共有または専有とするか、またはどちらも可能にするか。
b) レジストリは、非営利または営利とするか、またはどちらも可能にするか。
c) ルートに追加する名前をICANNが決めるか、それとも申請者がICANNに名前を提案
するか。使用可能な名前は固定的で標準的な分類方式にすべきか。

これらのすべての質問を煮詰めると、1つの基本的な問題に帰結する。それは、ICANN
がドメイン名登録に関する市場構造を制御し、あらかじめ規定された構造に適合する
特定の組織にライセンスを与えるのか、それとも、エンドユーザとサービス提供者が
市場の中で相互作用を繰り返しながら、レジストリ、レジストラ、および名前を決定
し、ICANNはこれらの活動の調整を行うのかということである。

われわれは、後者の案が最善であり、ICANNの要求との一貫性を持つ唯一のポリシー
であると考える。ICANNは、レジストリに対して特定のビジネスモデルを課するべき
ではなく、また中央管理により特定パターンの名前を強制すべきでもない。どのモデ
ルおよび名前が成功または失敗するかは、市場におけるエンドユーザの選択によって
自然に決まるべきことである。

われわれは、Network Solutions の事例および同社が近い将来の市場で占める優位性
により、ビジネスモデルについての論議が歪曲されているものと考える。ホワイトペ
ーパー
は、.com、.net、および.orgの共有を必須条件とすることで、gTLDにおけるNSIの独
占を修正する方法を模索した。しかし、NSIの優位性を短期的なものにするポリシー
アプローチによって、ドメイン名市場が長期にわたってどのように働くかを規制すべ
きではない。事実、われわれは、ICANNには、自己を経済規制機関と位置付け、特定
のビジネスモデルを課する権限はないものと考える。

トップレベルドメイン名空間の中身は、将来のレジストリが提出する申請に基づいて
決定されるべきである。レジストリは、既定のパターンを持つことなく、自由市場の
原則に基づいてレジストラにコンタクトすべきである。どの方法が成功するかは、市
場における競争とユーザの嗜好によって決まる。消費者保護に関する問題に対する規
制および法的救済は、政府の規制専門官に任せるのが妥当である。ICANNは、安定性
、相互運用性、およびアカウンタビリティを確保するために、レジストリ運営者の技
術的および管理的調整に専念すべきである。ICANNは、トップレベルドメイン名レジ
ストリに関する基本的な資格要件を設定し、また、それらの資格要件は専ら技術的安
定性および財務責任のみに限定されるべきである。

以下、この方法を採用する理由を列記する。

6.1  製品の差別化と革新のためには、レジストラおよびレジストリの機能の統合が
必要になることがある。TLDに独自のアイデンティティおよび固有な特性を持たせた
いレジストリは、そのTLDに誰が登録するかを制御することが必要になる場合がある
。また、レジストリにとっては、登録のためのフロントエンドソフトウェアインタフ
ェース、またはその他の技術およびビジネスパラメータを制御することも必要になる
。たとえば、検討部会Cに提案があったように、北米先住民専用のTLDにおいては、特
定の部族名を必ずその部族の正しいメンバーのみに割り当てるようにすることが望ま
れる場合がある。あるいは、これも検討部会Cへの意見の中で提案されたことだが、
プライバシが強化されたgTLDということであれば、特定の技術パラメータを適用し、
データの完全性を保護することが必要になる場合がある。いずれの要件を満たすにも
、レジストリとレジストラの機能を統合するのが最適と考えられる。これは、申請者
が選択できるオプションとすべきである。

6.2  新規参入者に画一的なモデルを課した場合、おそらくNSIと競争することが困難
になろう。.comはすでに強大な市場優位性を獲得しており、このTLD内の名前には経
済的プレミアムが付加されている。.comおよびその他のNSI gTLDはすでに共有とされ
、それらの卸売り価格は規制されている。市場への新規参入者が同じビジネスモデル
への厳密な準拠を強制されたとすれば、彼らが生み出す利益、マインドシェア、およ
びNSIに挑戦するために必要な投資が阻害される。

6.3  義務的な共有には、詳細な技術的および経済的な規制が必要である。米国商務
省がこれまで理解したように、レジストリに「同等アクセス」を課するには、a) 卸
売り価格を固定すること、b) 確実に同じSRSソフトウェアが使用されること、c) レ
ジストリの経済的原価を判別するよう努めること、d) レジストラから別のレジスト
ラに名前を移転するための価格を規制すること、そして、その他の複雑な監視および
規制/契約事項が必要とされる。ICANNは、世界規模でこの種の活動に従事するための
資源も専門技術も備えていない。しかも、ICANNは市場支配力の濫用に対する唯一の
防御線ではない。反トラスト法による訴訟、司法による価格規制、消費者詐欺訴訟手
続き、およびその他の救済制度が利用できる。

6.4  共有の利点は、義務化しなくても実現できる。共有レジストリTLDは、市場にお
ける選択肢の1つである。NSI gTLDはすでに共有されている。それをモデルとして運
営されているccTLDもいくつかある。消費者がこのモデルにより提供される価格とサ
ービスに対して明確な嗜好を表明した場合は、このモデルを適用すればよい。しかし
、消費者が、別のモデルに従う他の組織が提供するサービスを望んでいる場合に、IC
ANNがそれに干渉する必要があるだろうか。

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新gTLDに関する方針提案書C

質問1: いくつの新gTLDをどのような速度で追加するか

われわれは、追加すべきgTLDの数とそのペースについては、次に示すような適切な安
全保護対策が講じられるまでは、論議すべきではないと強く主張する。それは、i)
ドメイン名登録手続きの改善、ii) 不正登録に関する迅速かつ効果的な統一紛争解決
手続きの確立、および、 iii) すべてのgTLDにおいて著名および周知商標を保護する
システムの採用である。

これらの安全保護策が採用された後は、必要であれば新gTLDを導入することを可とす
るが、ただし、ゆっくりかつ制御された形で導入を進め、一定の評価期間を経た後に
、さらに後続のgTLDを追加するという方式を用いるべきである。評価には、規則およ
び条件に関する必要な修正を施すために、新gTLDおよびレジストリの技術的および法
的なすべての局面を盛り込む必要がある。そして、評価結果の査定が済んでからのみ
、必要であれば新たなgTLDを追加できるものとする。

われわれは、ドメインネームシステム(DNS)における登録の業務形態、特に"WHOIS"
のようなデータに対して一元的にアクセスできるよう改善する必要があるという、WI
POの結論を全面的に支持する。ドメイン名登録者に関する信頼性の高い情報が欠如す
ると、知的財産権の所有者が、不正なドメイン名登録から自らの知的財産権を保護す
るために費やす時間と費用は急激に増加する。そのような制約があると、知的財産権
の侵害を助長し、合法的な知的財産権の効果的な実施を阻害し、その結果、必然的に
エンドユーザがインターネット上でビジネスを展開するための費用を増加させ、同時
にインターネットに対するエンドユーザの信頼を低下させる。ICANNは、この種のデ
ータの重要性を認識しており、ICANN、米国商務省、およびNSIの間の暫定合意に基づ
き、認定レジストラに登録データに対する問い合わせベースのアクセスの提供を義務
づけ、登録データの合法的使用に対する条件付けを禁止することを提案している(ht
tp://www.icann.org/nsi/factsheet.htmを参照)。これは、正しい方向へ進むための
ステップの1つではあるが、ICANNが認定しているレジストリの数から考えて、われわ
れはこの種のデータへのアクセスを一元的に集中化する必要があると考える。

特に、知的財産権コミュニティにおける主要な関心事は、上記のような安全保護策が
ない現在のDNSにおいて日常的に発生している明らかな侵害行為に関するものである
。しかし、知的財産権コミュニティは、第2の関心事として、商標およびドメイン名
における、競合する適法な権利の所有者間の紛争の解決も重要視している。われわれ
は、ICANNが、明白な不正を牽制する(一掃できないまでも)ためのシステムを実現
するために、迅速に行動を起こすことに賛同するが、さらには、現実世界の市場にお
いて存在している適法な商標権同士が、仮想世界のDNSという市場で紛争を起こした
ときに、ICANNが適切に対応するための手続きを確立することも必要であると考える
。

同様に、われわれは、現在のレジストリにおいて維持されている現行の紛争解決ポリ
シーは不十分であるとするWIPOの見解にも賛同する。この理由により、われわれは、
裁定的紛争解決手続きの設定と実施によって、現在のDNSのもとですべての知的財産
権所有者が直面している問題が緩和されるとするWIPOの勧告を強く支持する。紛争解
決手続きを制定することにより、ICANNは、訴訟を手段とする煩わしい作業を必要と
せずに、ドメイン名に関する紛争を迅速かつ低費用で解決する手段を、知的財産権の
所有者に提供することができる。われわれは、統一的な紛争解決ポリシーを短期に実
現すべきであることを主張する。なぜなら、ICANNは、8月26日、サンチャゴにおける
ICANN会議での決議に準じたポリシーを、45日以内をめどとして実現するよう提案し
ているからである。

同様に、われわれは、ICANNが著名および周知の商標を保護する手続きを実現すべき
であるとするWIPOの勧告にも賛同する。DNSOの検討部会Bはすでにこの問題に着手し
ており、われわれは、新gTLDを追加する前に、同検討部会の報告と叡智が提供される
のを待つべきであると信じる。

質問2:  TLD文字列およびレジストリをどのように選択するのか

ICANNは、一揃えの新gTLD文字列を決定し、これらのTLDを運営するレジストリになろ
うとする組織(または既存レジストリ)に対して申請を求めるべきである。新gTLD文
字列を選定する際には、新gTLDに関して定期的な提案を行う常設の検討部会の補佐を
受けるものとする。

商用gTLDと非商用gTLDの間の区別に関する問題については、われわれは、このような
区別により現在のDNSのもとで発生している多くの知的財産権に関する問題を解決す
るという主張には懐疑的である。たとえば、われわれは、いわゆる「非商用」gTLDに
ついてコンタクト情報に関する基準を他よりゆるやかにしたとすれば、この種のgTLD
における不正な操作を助長するのではないかという懸念を抱いている。「非商用」と
称する使用により商標が希釈化される可能性があるとすれば、われわれは、「非商用
」を装った使用は「商用使用」と同じ乱用や悪用を招く可能性があると考える。さら
に重要なのは、インターネットのエンドユーザがこの区別を正しく認識しない場合が
あり、消費者の混乱が多くなる恐れがあるという懸念である。

さらに、既存のgTLDにおいてすでに知的財産権所有者が経験している極悪な行為を踏
まえて言えば、このような区別に依存するシステムは不正に利用されやすいと考えら
れる。

したがって、商用TLDと非商用TLDの間を区別するシステムを採用するのであれば、い
かなる人もその団体が自己の競争相手の製品またはサービスを誹謗する「非商用」
Webサイトを開設することができないように、きわめて厳格な保護手段を講じる必要
がある。

現在DNSが直面している問題に対するより建設的な解決策は、現在の乱用行為を大幅
に減少させるためのシステムと手続きを確立すると共に、DNS において紛争の的にな
っている乱用行為を効果的に撲滅するためのツールとメカニズムを、知的財産権所有
者に提供することであると考える。

質問3: レジストリは営利または非営利のどちらとすべきか

われわれは、一部のレジストリは非営利の原価回収ベースで運営され、任意の数の
gTLDを運営できるようにすべきであると考える。ただし、その他のレジストリは営利
ベースで運営できるようにし、割り当てるgTLDの数を少数に限定する。適切な安全保
護策を施してあれば、営利レジストリが存在してもまったく問題はないものと考える
。

質問4: ICANNは共有を義務づけるべきか

ICANNは、規則により原則的にgTLDの共有を義務づけ、特別の場合に例外を認めるよ
うにするのが妥当である。今後は特定目的の新gTLDが生れる可能性があり、その種の
gTLDは共有の原則から除外すべきである。

まとめ

結論として、われわれは、DNSに新規のgTLDを追加するという作業に着手する前に、
ICANNおよびすべてのインターネット利害関係者が共同して、現在のgTLDおよびccTLD
に存在する問題に効果的に対処するための適切な安全保護策を確立することが義務で
あると考える。必要な安全保護策が整った後に、ICANNおよびWIPOは、これらの安全
保護策が、現在DNSに対する弊害となっている問題の解消に実際に役立つかどうかを
評価する必要がある。提案された安全保護策が有効であることが確認されたことを前
提として、われわれは、「DNSに新gTLDを導入されるときは、必要度に応じた数を制
御された形で導入すべきである」とするWIPOの勧告を支持する。

Caroline Chicoine
Marilyn Cade
Tod Cohen
Keith Gymer
Anthony Lupo
Rita Odin
Annie Renard
Petter Rindforth
Martin Schwimmer

本方針提案書に対し、AT&T、Angela Babineck、Bell Atlantic、Dr. Victoria
Carrington、Jonathan Cohen、J. Scott Evans (Adams Law Firm)、Elissa Hecker
(NMPA)、Michael Kirk (AIPLA)、Steve Metalitz (CCDN)、Nintendo of America、お
よび Viacom, Inc. が支持を表明している。

-----------------------------------------------------------------

新gTLDに関する方針提案書D
Kent Crispin
1999年10月18日

モチベーション

人間の自由、個人の権利、知的財産権、競争の促進、独占の排除などは、言うまでも
なくきわめて重要な事項である。しかし、これらについてはこれまで長期にわたり論
議されてきているので、この提案ではこれらの事項を特に強調することはしない。代
わりに、この提案では、これまでの論争のなかで多分に軽視されてきた分野、つまり
インターネットの安定性の分野に重点を置くことにする。

DNSの登録サービスに関して言う限り、安定性に関する根本的問題点は、「レジスト
リが利用不能になったときにどうなるか」ということである。具体的に言えば、物理
的、政治的、または経済的な障害により、Network Solutions レジストリが長期間利
用不能になった場合にどうなるかということである。誰が後を引き継ぐのか。そして
データはどのように回復されるのか。

もちろん、短期的には、インターネットが正しく機能するかどうかは、ドメイン名を
登録できるかどうかに依存しないので、レジストリの短期間の機能停止はさほど重大
事には至らない。しかし、登録プロセスの長期中断は重大な影響をもたらし、さらに
、登録データが消失した場合は、ドメインの「所有権」を確立する手段がなくなり、
大混乱を招く恐れがある。

この点を中心に置いて考えるとき、この提案の根拠とする視点から見て、現在の諸状
況における根本的な問題点は、NSIが独占組織であることでも、また登録業務におい
て競争性が欠如していることでもない(もちろんこれらの現象も問題ではあるが)。
それより重視しなければならないのは、重要なサービスについて障害を発生させる単
一点があるという事実であり、ここではこの問題を緩和するためのモデルを提案する
。

基本モデルは、それぞれが複数のTLDの登録を管理する能力を備えた複数のレジスト
リから成るモデルである。各TLDのレジストリデータは移動可能であり、複製して保
管されるかまたは第三者預託される。特定のレジストリが損壊したり利用不能になっ
たときは、他のレジストリが、安定性に支障を来さない期間内にその機能を引き継ぐ
ことにより、事態を収拾することができる。レジストリ運営の観点から見れば、
ccTLDレジストリとgTLDレジストリとの間に相違はなく、事実、1つの組織が、ccTLD
に加えて、いくつかのgTLDのレジストリを運営することも可能である。[「レジスト
リ」という語は一般的な意味で使用していて、TLD のバックエンドデータベースを運
営し、レジストラの機能を持たない組織を表す。]

このモデルでは、複数の新gTLDが必要になるが、これは本質的には競争性を促進する
ためではなく、安定性の確保に必要な複数のレジストリをサポートするためである。
このモデルでは、「プロプラエタリ(所有権を主張できる)」TLDを廃することも主
張する。これは、レジストリから別のレジストリにレジストリデータを移動するとき
に、法的な困難が生じる恐れがあるからである。さらに、いかなる形においても特定
のレジストリ運営者による独占を禁止することを主張する。これは、非営利体制を義
務づけることで解決できるが、他の方法を用いてもよい(NSIは価格統制下にある)
。最後に、このモデルでは、最終的に望ましいTLDの数に関する推定値の設定はして
いない。安定性を確保するためのインフラストラクチャを確立するために、近い将来
(1~3年以内)TLDの追加が必要とされることだけを指摘しておく。

提案

1) 完全にオープンなgTLDとして運営されることを条件として、ただちに4~9個の新
規のTLD名が承認されるべきである。「チャーター付き」または「スポンサー付き」
TLDの承認プロセスができあがり、少なくとも同数の「チャーター付き」または「ス
ポンサー付き」TLDが承認されるまでは、オープンgTLD名をこれ以上承認しないよう
にする。

これら最初の一連の名前は、それぞれを運営するレジストリをまったく考慮に入れず
に選択するものとする。

2) ICANNは、レジストリ運営者に対して提案要請(RFP)を出すべきである。この
RFP の目標は、ICANNの地域分けに基づく各地域から1つずつ、5つの独立レジストリ
運営者を選択することにある。これらの運営者の一部は複数のTLDを運営し、RFPには
、運営者から別の運営者にTLDを整然と移動するための計画を含めるものとする。

3) RFPにより提出する提案はレジストリの運営全般に関るものとし、特定のTLD名に
関連したものとすべきではない。ICANNは、これらのレジストリを次の根拠に基づい
て選択すべきである。1) 地域への帰属性。2) 下記に述べる「公共サービス」モデル
を実施するための計画。3) 技術的な適格性。

4) レジストリへのTLD名の割り当ては、レジストリ運営者の選定がすむまでは行わず
、無作為選択などのような完全に独立したプロセスを用いて行うものとする。複数の
TLDが割り当てられたレジストリは、ICANNの定める方式でTLD運営を他のレジストリ
に移管する態勢を整えておき、ICANNはこの種の移管を定期的に行う必要がある(無
作為方式が望ましい)。

5) ICANNは、「スポンサー付き」TLDまたは「チャーター付き」TLDに関する提案要請
(RFP)を迅速に出し、この種のTLDが必要であると考えている組織に対し、これらの
TLDに対する提案の機会を与えるものとする。これらの提案は、ICANN/DNSOによって
策定された承認プロセスを経る必要がある。この承認プロセスが確立されない限り後
続のTLDを承認することはできないので、その確立には最高の優先順位を与えるもの
とする。

TLDの「スポンサー」とは、TLDに対する一定程度のポリシー権限を付与された機関で
ある。この概念は少し前からあったが、用語はまだなかった。ICANNとスポンサーと
の関係は注意深く規定する必要がある。たとえば、ICANNは、スポンサーに対しICANN
への補償を義務づけることができる。スポンサーの性格、およびスポンサー資格を取
り消す条件も、入念に模索する必要がある。

6) ICANNは、共有レジストリプロトコルを標準化するためのIETFの作業をサポートし
、新レジストリがこのプロトコルを使用し開発するのを支援すべきである。

7) すべての新レジストリは、下記に述べる公共資源モデルに従って運営すべきである。


レジストリデータはレジストリが所有するものではなく、プライバシーに基づく制約
を受ける。さらに、障害、レジストリ運営者の管理上の誤り、またはその他類似の理
由によりTLDを移動する必要がある場合に備えて、ICANN にとって有利な形で第三者
預託される。レジストリ内のデータは、レジストリ運営者とは異なる権限のもとで、
広域に分散する複数の場所に第三者預託すべきである。他のレジストリにバックアッ
プを保管することはきわめて望ましいことである。

レジストリは、非営利原価回収を原則として共有レジストリとして運営する。ただし
、レジストリ運営者は、ICANNまたはICANNが承認したレジストリスポンサーとの契約
に基づいて運営を行う営利企業であっても差し支えない。レジストリ運営者は正当な
理由に基づき解任することができ、契約は定期的に再入札にかけられる必要がある。
TLDはレジストリスポンサーの後援のもとに運営することができ、スポンサーは、そ
のTLD内での登録について制約を課することができる。この種の制約は、ICANNの承認
を受けることが必要であり、また公正に実施されなければならない。

いくつかのレジストリ運営者が存在するものとし、そのどれもが、第三者預託された
データに基づいて、gTLDレジストリの業務を数日間で引き継ぐことができるようにす
べきである。これらのレジストリ運営者は全世界に分散していることが必要である。
多くの場合、各レジストリ運営者は、同一設備において複数のTLDレジストリを運営
するものと考えられる。

1つのレジストリ運営者から別の運営者へのレジストリの移管は、簡単な技術操作に
より遂行できることが必要である。

[レジストリ運営者は、破産することもあり、物理的災害により特定施設が損壊する
場合もある。複数の運営者による複数の分散したレジストリがあれば、DNS全体の強
靱さが大幅に向上する。単一のサイトは、いかに安全策を施してあっても障害が生じ
る可能性があるが、上記のようにレジストリを分散させ、迅速な切り替えでレジスト
リデータの第三者預託されたコピーを利用できるようにしておけば、はるかに強靱で
弾力的なシステムを実現できる。

レジストリデータを容易に移管できるようにするための必要条件の1つは、基礎を成
すソフトウェアおよびプロトコルを標準化することである。]

下記の人々がこの提案に対する支持を表明した。この支持は、必ずしも各人がすべて
の細部に至るまで賛同していることを意味しているのではなく、この提案が容認可能
であり有用であると認めたことを示している。下記はいずれも検討部会Cのメンバー
である。

Ann-Catherine Andersson
Eric Brunner
Kent Crispin
Dave Crocker
Joseph Friedman
Jim Glanz
David Maher
Javier Sola

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新gTLDに関する方針提案書E

Domain Names Supporting Organization
検討部会Cドラフト

E. Brunner
Abenaki Community of Portland
B. Geogh
Intertribal Council on Utility Policy
A. Mandell
Nevada Indian Enviromnental Coalition
J. Cristeau
Treaty 7 Tribal Council
October 18, 1999

新gTLDに関する方針提案書
<draft-icann-dnso-wgc-naa-01.txt>

この覚書の位置づけ

本文書は、Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)の
Domain Names Supporting Organization(DNSO)の検討部会C(WG-C)が作成したも
のであり、WG-Cのチャーター、DNSO Names Council (NC) からWG-Cへの指示、共同議
長からWG-Cドラフト作成者への指示に準拠している(参考として下記に掲げる)。

WGのメンバーは、方針提案書の初期ドラフトを提出しなければならない。ドラフト作
成者は以下の事項を盛り込むことが望ましい。ドラフト作成者の立脚点と推奨事項を
要約した提案の要旨。提案およびその理論的根拠の明快な論述。誰またはどのシステ
ムが影響を受けるかの分析。具体的な実施計画。提案の費用および危険性に関する考
察。および、各種の利害関係コミュニティにおける提案に対する支持についての記述
。ただし、ドラフト作成者は、最善と考えられる書式により自由な形式で論述するこ
とができる。

検討部会Cの共同署名者

Kent Crispinのみ

著作権表示

Copyright (C) The Internet Society (1999). All Rights Reserved.

要旨

本文書は、主としてドメインネームシステム(DNS)のルートに追加するジェネリッ
クトップレベルドメイン(gTLD)の作成に関する事項を主題としたWG-Cに提出する方
針提案書である。

本文書は、共同議長によるコンセンサス声明("6-10")を基礎としてそれを拡張した
ものであり、「チャーター付き」または「スポンサー付き」とも呼ばれる、地域限定
のポリシー指向型gTLDの作成を擁護するものである。特に、北米、および米国および
カナダの領土、信託領、および条約保護領を対象地域とし、Indigenous Nations and
Peoples of North America(北米に土着の国々と人々)へのレジストリ委任およびそ
れによるレジストリ運営をポリシーモデルとするgTLDの設置を主張する。

1. 序

DNSOおよびICANNの文献における「チャーター付き」およびさらに最近の「スポンサ
ー付き」という用語は、登録者の区別をしないグローバル(「オープン」とも言う)
gTLDを代替するものであって、特定の地域範囲およびポリシーモデル(ccTLDとも言
う)が存在するかまたは存在すると推定されるものを意味する。この二元性は簡便な
表現として役立つが、しばしば広く普及している実際の形態と矛盾するところがある
。

ここでわれわれが提案するのは、たまたまccTLDに関連付けられている地域範囲とポ
リシーモデルのほとんどを備えたgTLD、および、地域範囲とポリシーモデルの両方を
持つgTLDのモデルに関する特定のテストケース、すなわちIndigenous Nations and
Peoples of North AmericaのgTLDである。

地域範囲およびポリシーモデルは、分離している場合もあることに注意されたい。身
近な例を2つだけ挙げれば、ポリシーモデルとしての .EDU と地域範囲としての .TO
があるが、DNSのSLD、特にccTLDのSLDにはもっと多数の例がある。この分離について
は、この方針提案書では言及しない。

2. はじめに

DNSのトップレベルへの政治的地理分類の導入 [1, 2] は、多くのトップレベルおよ
び第2レベルドメイン名の日常的な運用責任を地域レジストリに委任するためのメカ
ニズムの1つであった(ほかにも可能性は多数ある)。これはある一組の問題に対す
る解決策であったが、次のような新たな一組の問題をもたらすこととなった。

IABと(導入時点そしてその後も)連携関係がない標準化組織の作業結果への依存 [3]、

新トップレベルドメインの定義におけるIANAの役割の終了、さらには、

契約者の濫用問題の解決策に関する直接的検討を行うIANAの能力の限界

そのときから現在に至るまで、政治的地理分類が持つ魅力、そして、その独占市場解
体(または新たなものを作り出すこと)の魅力は、ドメイン名空間の基本的財産に関
する論議を、IANAおよびその後継者にとって利用可能な空間は、地理的範囲とポリシ
ーモデルの二元的縮図で表現されるということに押しとどめてきた。

3. 検討部会Cのコンセンサス声明

検討部会Cの共同議長は、次の2つのコンセンサス声明を発表した。

新gTLDを追加すべきである。

近い将来6~10個のgTLDを追加し、その後に一定の評価期間を設けるべきである。

これに続き、検討部会C共同議長Weinbergは、7つの問題点に関する方針提案書を回覧
した。

1. 新gTLDは必要か。2. 新gTLDの性質はどうあるべきか。3. 新gTLDの数はどの程度
が適当か。4. 拡張したドメイン名空間への移行はどのようにすべきか。5. ICANNは
、新規の各gTLDレジストリを共有とすべきか、つまり、「同等アクセス」ベースでの
競合レジストラをサポートすべきか。6. ICANNは、新gTLDレジストリに対し非営利(
原価回収)ベースでの運用を義務づけるべきか。7. ICANNではどのようなプロセスに
より新規のドメインおよびレジストリを選択すべきか。

本ドラフトでは、上記7つの質問のうち3つを取り上げて詳しく考察する。

質問2. 新gTLDの性質はどうあるべきか

基本的には、新gTLDの性質は、DNSドメイン名空間の2つの支配的なメカニズムの1つ
である政治的地理分類の導入によってもたらされる問題に対する解決を妨げるような
ものであってはならない。さらに、新gTLDの性質は、規制を超え経済的競争から保護
され、私的資源として扱われている主要なDNSドメイン名空間の一部の部分(たとえ
ば、.COM、.NET、.ORG)の独占への依存によってもたらされる問題の解決を妨げるよ
うなものであってもならない。

この目的を達成するために、新gTLDには、一般に理解されている2つの形式のTLDを含
めるべきである。つまり、「オープン」gTLDと、「チャーター付き」gTLD(「制限付
き」または「スポンサー付き」とも呼ばれる)の両方を設けるべきである。さらに、
新規のccTLDも設置可能であるが、それは、たとえば後発または問題のあるccTLDレジ
ストリに制度的な形態を与えるため、および、個々の新ccTLD、たとえばPalestinian
Authorityが最終的に求めるccTLDの、技術的に単純な割り当てと運営を容易にするた
め、あるいはその他やむをえない技術上の理由がある場合に限る必要がある。

本提案書(draft-icann-dnso-wgc-naa-00.txt)は、地域範囲を限定し、特定のポリ
シーが設定されたgTLDの作成を要求する。ICANNが、まず「オープン」gTLD、次に「
チャーター付き」gTLD、さらに「オープン」gTLDのように、交互に新gTLDを作成する
ことには妥当性があるが、「オープン」および「チャーター付き」の両方のgTLDの実
際の要件を識別するのに過度の遅滞が生じることは、ICANNにとって得策ではない。

近い将来に、範囲限定だが特定のポリシーを設定しない新gTLD、または範囲限定では
ないが特定のポリシーを設定している新gTLDを求める提案が浮上してくる可能性が大
きい。この種のgTLDの例としては次のようなものがある。

範囲限定 - 欧州連合(EU)など
特定ポリシー - 空港専用、法律家専用など

質問5. ICANNは、新規の各gTLDレジストリを共有とすべきか、つまり、「同等アクセ
ス」ベースでの競合レジストラをサポートすべきか。

共同議長Weinbergの方針提案書は、レジストリへのアクセスをオープンかつ競争的な
ものにすべきであるとの、反駁可能な仮定を主張している。われわれは、レジストリ
の定義におけるポリシーの役割に注目すべきであると考える。共同議長が例に挙げた
「.family」の根底を成すのは、レジストラの自由裁量モデルに対立する、レジスト
リにアクセスするレジストラが共通のポリシーを持つモデルである。暗黙的に範囲を
限定しないモデルに対して、共有レジストリにアクセスするレジストラに地域限定を
課する場合、これと同様の構造が生じることになる。

質問7. ICANNではどのようなプロセスにより新規のドメインおよびレジストリを選択
すべきか

共同議長Weinbergの方針提案書では、2つのメカニズムが提案されている。その第1は
、ICANNが新gTLDを決定し、次にそれらgTLDに対しレジストラの希望を募るというも
のである。第2は、ICANNがレジストラを選択し、次にレジストラが新gTLDを決定する
というものである。

共同議長は、いずれの方法の場合も、新gTLDの名前およびそれを管理するレジストリ
については小人数のグループによって選定されること、および、この2つのメカニズ
ム間の相違は、ICANNにとっても、DNSのユーザコミュニティにとっても重大なもので
はないことを主張している。

われわれの見解はこれとは異なる。エリート集団の決定は、エリートの気質と共通の
動機づけを反映したものになる。ICANNのエリートの気質は、NSIおよびその潜在的競
争者の気質とは異なり、また、公共利益のための動機づけは私的利益のための動機づ
けとは異なる。

われわれは、今ではないにしても、遠からぬ将来、ICANNがDNSルートの固有の要件の
問題に基づいて行動するようになると確信する。私的利益を目的とする動機づけが、
これと同じ問題点に基づいて同等の行動をもたらすような時期が到来するとは、到底
考えられない。

4. 提案と理論的根拠に関する論述

少なくとも1つの新TLD名を、地域限定gTLDとして運営するものとして直ちに承認し、
そのポリシーモデルはその地域を定義する組織に委任する。

特に、北米、および米国およびカナダの領土、自治領、および保護領を対象とする地
域限定gTLDとしての運営を目的として、TLD名"NAA"をただちに承認するものとする。
ポリシーモデルは、レジストリの運営および管理のみに限定せずに、Resolution
PALM SPRINGS-99-000[4] に従って、National Congress of American
Indians/Assembly of First Nationsが指名する組織に委任する。

NCAI/AFNは、地域限定のgTLDの委任を受ける組織として適任である。NCAI/AFNは、下
記のことを目的として、適切な機構を備えた適切な組織を確立するために、Mataatua
Declaration on Cultural and Intellectual Property Rights of Indigenous
Peoples [5](特に勧告1.8)に記述されている基本ポリシーモデルを委任する組織と
して適任である。

a) パブリックドメインにおける先住民族の文化的財産のコマーシャリズムその他を
保存し監視する。
b) 先住民族による文化的遺産の保護手段について助言しその促進を図る。

さらに、原価回収および種族インフラストラクチャ開発の原則に沿った公共の信託と
してのレジストリの運営にも適している。

5. 影響を受ける関係者の分析

この提案により明らかに影響を受けるものと考えられるのは、IANAのみである。現在
、IANAはNSN.US SLD(第2レベルドメイン)のレジストラとしての機能を果している
。この提案が採用され、NAAレジストリが運営を開始すると、IANAレジストリの登録
者数が実質的に減少する可能性がある。

8月現在で、NSN.US SLDにおいてゾーン転送で確認された登録名の数はわずか45であ
り、この影響はきわめて小さい。

NSN.US SLD以外の民族関係団体その他が利用するレジストリへの影響もわずかであり
、.CA、.COM、.ORG、および.NET TLDの全体で数千の登録者のみである

6. 具体的な実施計画

NAAは、下記に述べる公共資源モデルに従って運営する。

レジストリデータは、種族およびその他のプライバシー制約を受ける公共資源であり
、公共目的のためにNCAI/AFNまたはその指名組織(デフォルトではICANN)に委託さ
れる。

NAAレジストリは、原価回収型の種族インフラストラクチャ開発をベースとする共有
レジストリとして運営する。レジストリ運営者は下記の者とする。

Nevada Indian Environmental Coalition

Treaty 7 Tribal Council

National Indian Telecommunications Institute

Abenaki Community of Portland

および(ポリシー上の役割のみで、運営はしないが)

Intertribal Council on Utility Policy

このレジストリは、ヨーロッパおよび北米のレジストリ、特にフランスおよびアイル
ランドのモデルに類似する形で編成する。次の2つの組織モードを採用する。

ドット・サフィックス表記(正規サブドメイン形式)
ハイフン・プレフィクス表記(セクター地域形式)

NAAは、国際法制度、特に知的財産権制度の規範、および、Mataatua Declaration on
Cultural and Intellectual Property Rights of Indigenous Peoplesに規定されて
いる原則に準じて運営する。

国際法制度と、先住民族に関する知識の促進および保存に関する制度、または米国お
よびカナダにおける制度(それぞれ"Federal Indian Law"および"Aboriginal Law"と
呼ばれる)との間に対立が生じた場合は、先住民の主張を正当と認める。(ただし、
反駁は可能。)

紛争解決機関は、Indigenous Intellectual Property CouncilおよびDNSOの
Intellectual Property Constituencyで、両者が対等の構成員として共同作業に従事
する。この機関のプロセスモデルについてはこれから決定する必要がある。

先住民族に関する知識の促進および保存の制度の中で、たとえば、先住民族国家間で
対立が生じた場合は、Indigenous Intellectual Property Councilが紛争解決機関と
して働く。

7. 費用と危険性に関する考察

ICANNまたはDNSOにとって、この提案により予測される費用または危険性はない。

NAAレジストリ設立のための予測費用には、一時的費用と継続的費用が含まれる。

主な一時費用は、ICANNがNAAレジストリの運営を認可するときの料金、共有レジスト
リシステム(SRS)を構築するための費用、 および、インターネットソフトウェアコ
ンソーシアムからサポートされるDNSソフトウェアを取得するための費用である。

主な継続的費用は、人件費、施設費、および、通常インターネットサービスプロバイ
ダから発生する関連費用である。

このレジストリにとって、特定の地域範囲内で相互の信任と共通のポリシーを基盤と
して運営される、地理的に分散した一連の初期レジストラを選択することにより、適
切に対処し得ないような予測される危険性はない。

8. 利害関係者に関する考察

DNSルートにおいてIndigenous Nations of North Americaにより運営されるトップレ
ベルドメイン内の利害関係者となるのは、National Congress of American Indians
and Assembly of First Nations、ネットワークインフォメーションセンター(レジ
ストリ運営者)、音声/データネットワークインフラストラクチャプロバイダ、民族
の政府機関および準政府機関、選出される公務員および選出される公職の候補者、非
営利組織、営利組織、個人、band(インディアン集団)およびclan(種族)、言語お
よび芸術研究機関、一般教育機関、分野別組織および専門的および通商的関連団体、
および商標エージェントである。

その他の利害関係者は、レジストリの運営が成熟した時点で明らかになるものと考え
られる。

本提案、および、「知的財産権」の領域を先住民族知識システムにまで拡張しようと
する提案を認識している利害関係者は、こぞって本提案を支持している。

関心を持つ読者には、The Benton Communications Policy Mailing
List<BENTON-COMPOLICY@CDINET.COM>の購読をお勧めする。そこには、北米(米国)
の一部における実情に関する長大な考察が紹介されている。この利害関係者に関する
詳細な論述の標題は、"Native Americans and the Digital Divide"である。

9. 謝辞

本文書は、Indigenous Law、Indigenous Knowledge、Indigenous Telecomms、および
Data Networksコミュニティのさまざまなフォーラムの無数の考察および意見、さら
に、DNSコミュニティメンバー、IESGおよびIABの現在および過去のメンバーによる見
識の高い考察から、多大の恩恵を受けている。

民族に関するDNSアクセスは、1992年以降、初期の民族関連採用組織およびIANAおよ
びDoDの間で論議の的になってきた。今回の論議は、1996年に主要執筆者とJon
Postelの間で開始されたものである。残念ながら、人生の短さゆえ、この論議はドメ
インネームシステムの運営形態に貢献するまでには至らなかった。

10. 主要執筆者のアドレス

Eric Brunner
1415 Forest Avenue
Portland, ME
04103

Email: brunner@world.std.com
Phone: +1 617 803 3699

11. 参考文献

[1] Cooper, A., and J. Postel, "The US Domain", RFC 1480, June 1993.(位置付
け: 情報提供)

[2] Postel, J., "Domain Name System Structure and Delegation",RFC 1591,
March 1994(位置付け: 情報提供)

[3] ISO 3166:1988 (E/F) - Codes for the representation of names of countries
- The International Organization for Standardization, 3rd edition,
1988-08-15.

[4] Brunner, E., Gough, B., Mandell, A., "Creation of a Top-Level Domain
Operated by the Indigenous Nations of NorthAmerica in the Domain Name System
(DNS) root", National Congressof American Indians Resolution PALM
SPRINGS-99-000, October 4-8,1999.[付録1に形式を変えて全文を掲げてある。]

[5] Mataatua Declaration on Cultural and Intellectual Property Rights of
Indigenous Peoples, Whakatane 12-18 June 1993 Aotearoa New Zealand.

12. 付録1 -- NCAI Resolution PALM SPRINGS-99-000の全文

決議 PALM SPRINGS-99-000

題名:Creation of a Top-Level Domain Operated by the Indigenous Nations of
North America in the Domain Name System (DNS) root.

National Congress of American Indians of the United Statesの一員たるわれわれ
は、われわれの努力と目的に対する創造主の神聖なる祝福を祈念しつつ、米国のイン
ディアン条約および協約により保護されているわれわれならびにわれわれの子孫の権
利、および、米国の法律ならびに憲法の下で、インディアン民族に対するよりよい理
解に向けて国民を啓発する意図の下にわれわれに与えられているその他すべての権利
と便益を守り、インディアンの文化的価値を保存し、またインディアン民族の福祉を
促進するために、ここに下記の決議を策定し提起する。

National Congress of American Indians(NCAI)は、1994年に創立された最古かつ
最大の国家的組織であり、国家、地域、および地方の民族関係組織の代表者から成り
立っている。

NCAIの主たる目標は、健康、安全、福祉、教育、経済、ならびに雇用の機会、および
、文化ならびに自然資源の保存である。

NCAIは、1999年7月23日バンクーバーにおけるAssembly of First Nationsおよび
National Congress of American Indiansによる、Declaration of Kinship and
Cooperation among the Indigenous Peoples and Nations of North Americaに明記
されているWorking Principlesを再確認する。

NCAIは、下記のことを目的として適切な機構を備えた適切な機関を確立するために、
Mataatua Declarationに盛り込まれている先住民族に対する勧告、特に勧告1.8を支
持する。

a) パブリックドメインにおける先住民族の文化的財産のコマーシャリズムその他を
保存し監視する。
b) 先住民族による文化的遺産の保護手段について助言しその促進を図る。

Mataatua Declaration on Cultural and Intellectual Property  Rights of
Indigenous Peoples, Whakatane 12-18 June 1993 AotearoaNew Zealand

NCAIは、「先住民族の知的ならびに文化的財産、および慣習的かつ管理的な体系と実
践を維持する権利を保護する政策ならびに法規を採用ならびに強化する」とする国連
加盟国の行動に注目する。- United Nations Conference on Environmental
Development: UNCED Agenda 21 (26.4b)

NCAIは、さらに、現在は米国政府契約のもとIANAならびに他の組織によって担われて
いるドメインネームシステム管理に関する責任、および、ルートサーバーシステム管
理機能を引き継ごうとする、Internet Corporation for Assigned Names and
Numbers(ICANN)の行動にも注目する。

INTERTRIBAL Council On Utility Policy(COUP)は、北米の先住民族ならびに国家
の発展に対するインターネットの経済的社会的価値、およびその価値を実現する可能
性の表現とドメインネームシステム (DNS) の中心的関係の経済的社会的価値を指摘
している。

NCAIは、トップレベルドメインの運営と管理の要件を満たすための準備、および、
Nevada Indian Environmental Coalition(NIEC)ならびに Treaty 7 Tribal
Council(TREATY7)(インターネットサービスプロバイダ)、およびNational
Indian Telecommunications Institute(NFTI)ならびにAbenaki Community of
Portland(WAMPUMPEAG)(技術的卓越性のセンター)の能力を支持する。

そしてここに、National Congress of American Indiansは、Internet Corporation
for Assigned Names and Numbers (ICANN) に対し、DNSルート内にIndigenous
Nations of North Americaが運営するトップレベルドメインを作成するよう要求する
ことを決議する。

最終的には、National Congress of American Indiansは、NEIC.NET、TREATY7.ORG、
NITI.ORG、WAMPUMPEAG.COMに対し、このトップレベルドメインに関する運営および管
理を引き受け、さらに、INTERTRIBAL COUPと共に、基本ポリシーおよび原価回収の責
任を引き受けることを要求することを決議する。

保証者

W. Ron Allen, President

証明者

Lela Kaskalla, Recording Secretary

1999年10月4~8日、パームストリングのPalm Springs Convention Centerで開催され
た1999 Mid-Winter SessionにてGeneral Assemblyにより採択。

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新gTLDに関する方針提案書F

ICANNによるgTLDの委任に関する原則

1. インターネットのネームシステムは公共資源であり、TLD空間は、パブリックなイ
ンターネットの重要な機能の1つである。

2. したがって、ルートゾーンおよびgTLDレジストリの管理は、ユニークなインター
ネット識別子の世界規模での相互運用性、およびインターネットの公共的に調整され
たルートへの到達可能性を確保するような形で、公共の利益を代表するものとして実
施されなければならない。

3. したがって、私的な知的財産権またはその他の財産権は、割り当てられたgTLD自
体に備わっているものではなく、また、gTLDの委任の結果としてその管理者の権利と
なるものでもないということをWG-Cは主張する。

4. さらに、WG-Cは、gTLDレジストリの割り当てと委任は、ICANNの最終的権限に委ね
るべきであることを主張する。

5. インターネットテクノロジの現在の適用形態においては、記憶しやすく意味論的
にも使いやすいドメイン名は、人間の通信における重要かつ便利なツールとなってき
ているものと考えられる。

6. さらに、有用なインターネット識別子を望む人々が使用できる十分な数の名前の
選択肢を絶えず確保し続けるために、gTLD空間の拡大が必要であるとも考えられる。

7. さらに、現在のインターネットユーザとこれからの新しいユーザのどちらも、記
憶しやすいという点においても意味論的にも有用なドメイン名を媒介として通信する
機会を引き続き享受できるようにするためにも、gTLD空間の拡張が必要であると考え
られる。

8. ドメイン名自体が、しばしば、規範的な表現および意見を伝達するメカニズムと
して使用されるものと考えられる。

9. ICANNは、政治的、宗教的、およびその他の標準的言語や内容に基づいて、偏った
恣意的な制約を課する道具と化してはならないと主張する。

10. 現在、インターネットエンジニアリングコミュニティのさまざまなグループによ
って進められている、gTLD管理のベストプラクティスについての仕様作りと文書化の
作業に注目する。

11. 新gTLDレジストリの委任が行われる前に、上記の作業が完了し、Internet
Current Practice(ICP)シリーズとして発行されることを期待する。

12. したがって、WG-Cは、ルートに新gTLDを追加すべきであることを決議する。追加
のプロセスは、6~10個のgTLDから始めるものとする。

13. さらに、WG-Cは、最初の一組のgTLDを導入した後に、合理的かつタイムリーな方
法で後続のgTLDを追加するための影響調査を行うことを決議する。

14. これらの原則が実施される前に適正かつ正当な提示がされるようにするために、
WG-Cは、さらに、正式に任命されたすべてのメンバーが出席したICANN理事会の検討
を経るまでは、ICANNは委任の指示を出さないことを決議する

Craig Simon

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新gTLDに関する方針提案書G

ルートレベルレジストリ規則: インターネットに新gTLDを追加する方法

Roeland M.J. Meyer, Morgan Hill Software Company (MHSC)

本方針提案書は、きわめて長大なため別個の独立した文書として提供する。
(訳者注:http://www.dnso.net/library/dnso-tld.mhsc-position.shtml)
            

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