Completion of "A Unique, Authoritative Root for the
DNS" (ICP-3)
翻訳文
(社)日本ネットワークインフォメーションセンター
最終更新 2001年 9月10日
「DNSにおける唯一の権威あるルート(root)の必要性について」(ICP-3)の完成
掲載日: 2001年7月9日
私は、ICANNのストックホルム会議が開催される前に、「DNSにおける唯一の権威あるルート(root)の必要性について」と題した討議用のドラフトを掲載いたしました。このドラフトは、単一の権威あるルートに対するICANNの責任に関して、その技術上および政策上の背景を概説したものでした。このドラフトは、コメントを求めるためICANNウェブサイトに掲載されました。この話題は、ストックホルム会議でのパブリックフォーラムやICANN理事会においても、様々な点を明らかにする議論となりました。
このドラフトについて、賛成・反対両方のコメントがたくさん寄せられております。ご意見を寄せられるに当たり、貴重な時間をさいていただいた皆様に感謝いたします。これらのご意見は、ICANNの正しい伝統に則り、率直な形で表明されたものでした。
これらのコメントに基づき、私は最終的な文書を完成させました。この最終版は、「インターネット調整ポリシー(Internet Coordination Policy)」シリーズの3番目(ICP-3)として掲載されております。
インターネット・コミュニティの多くの方々が私に知らせてくれたところでは、この文書は基本的に正確なものとして受け止められており、また、全世界のインターネットユーザーのための堅固で唯一のネーミングシステムを維持することができる、単一の権威あるルートの原則の基礎にある長年維持されてきたポリシーを、誠実かつよく整理された文書の形にまとめた報告書として、賞賛されているということです。同時に、多くの方々から改善に向けた建設的なご意見もいただきました。また、この文書に批判的な方々からも、有益な助言をいただきました。
批判的な方々の中からは、この文書は適切なプロセスを経ることなく、新たにポリシーを作り上げるものだとの反対意見が寄せられました。しかしながら、討議用のドラフトで指摘したとおり、この文書は新たなポリシーを作り上げるというものではなく、むしろ現在のポリシーの内容を明らかにするということに慎重に範囲を絞っています。新たにポリシーを作り上げるということになれば、ICANNのコミュニティに基盤をおくコンセンサス形成のプロセスが必要になりますが、このようなプロセスによって新たなポリシーが達成されるまでは、すでに存在しているポリシー(ICANNでこれまでに策定されてきたものであるか、ICANNが創設時に引き継いだものであるかを問いません)を公明正大に遵守すべきなのです。
この文書を評価するに当たって焦点を当てるべきは、ICANNがこれまでどのようなポリシーを策定してきたか、あるいは受け継いできたかという点であり、どのようなポリシーを実施したいと望んでいるかではありません。この探求作業は、過去の声明および措置についての文書に大いに依拠しております。この理由から、討議用のドラフトではこれら資料の慎重な検討を行うとともに、最終版では、後の討議の過程で示唆された引用文献をいくつか新たに追加いたしました。批判的コメントのうちのいくつかには、ポリシーがどのようにあるべきかという点についてきわめて洞察に富む見解がありましたが、討議用のドラフトで述べたポリシーが、確立されたポリシーと違っているという具体的な文書による証明を欠いておりました。
ドラフト文書に批判的なコメントの多くは、DNSO-GAメーリングリストおよびDNSO-Competitive Rootsメーリングリストの関連スレッドのいくつかに見ることができます。また、ドラフト文書に関連するウェブベースのパブリックコメントフォーラムのスレッドもいくつか参照してください。
今回の対話の過程からいくつかの文書が派生的に出てきました。ストックホルム会議の場で、New.netという本年初めにオルタネート・ルートの展開を始めた企業が、同社の見解を表明した「ポリシードキュメント」と題した文書を配布しました。その中には、DNSの安定性を維持するに当たって、普遍的なドメイン名の名前解決機能は必要ないという利己的な見解も含まれています。New.net社の社長は、その文書に対する私の回答を求めていました。私は、同氏が私に宛てたメール2通、New.net社の見解表明文、そして私の要請に従いICANNスタッフが作成した同社の表明文に対する回答を掲載しております。
私は、両方の文書について賛成・反対の意見があるものと確信しております。私が申し上げられることはただ、安定性に対してNew.net社がとっている基本的前提は論拠が薄弱で、技術的にみても支持できないものであるのみならず、仮に広範囲に渡って展開された場合、一般消費者、企業、研究者その他の人々がそれを有害であり、紛らわしいと考えるだろうということです。
ドラフト文書では、別のオルタネート・ルートのTLDプロバイダーに関する初期の情報に触れ、特にその登録のタイミングについて、ICANN理事会の決定に関連付けて記載しておりました。私は、最終文書ではこの点を削除いたしました。というのは、特定のオルタネート・ルートの最近の活動の細かな点は、いろいろ参考にはなるものの、この文書で本来取り扱うべき主題から話をそらしてしまうおそれがあったからです。より詳細な内容は、インターネット上の他のサイトに掲載されている「ARNI社の「.BIZ」トップレベルドメインにおける登録状況の分析」で見ることができます。また、「Image Online Design社の「.WEB」トップレベルドメインにおける登録状況の分析」も参照してください。
また、代表的な電気通信事業者、ソフトウェアハウス、金融サービス業者、そしてコンテンツプロバイダー会社の見解を代表するグローバルインターネットプロジェクト(Global Internet Project)の意見書(昨秋発表)へのリンクも掲載しておきました。
今回の議論に参加していただいた方すべてに感謝の意を表します。今回の文書で述べているポリシーに対して強く反対している方々が依然としておられる一方で、同程度の熱心さでもって賛同してくださる方々もおられることでしょう。これは、グローバルなインターネットに関連する人々のような多様なコミュニティにおいては不可避なことでありますが、これらの意見の不一致を、新たなポリシーを策定することによって解決するような討論の場を提供することこそが、ICANNの基本的な役割なのです。
この最終結果に依然として賛同できない方々に対しては、今後将来、意見を同じくする部分をお互いに多数確認できるものと確信していることを申し上げておきます。
M・スチュワート・リン
事務総長 兼 CEO
注:単一の正式なルートと普遍的なドメイン名の名前解決機能に関する、技術的ではない背景文書は、InterNICのウェブサイトに掲載されています。