ファスト・トラック(Fast Track)とは
ファスト・トラック(Fast Track)とは、 元々は通商に関する権限が議会にあるアメリカ合衆国において、 通商協定の批准の際に議会に対して修正審議を認めず、 部分修正無しに協定全体の承認か不承認かを選ばせることにより、 大統領に迅速かつ柔軟に通商交渉を行うための、 大きな権限を与える制度です。
ここから派生して、ある案件の審査や実施などの際に、 従来と比較して簡易な手続きを採用することにより、 迅速に進めることができるようにしたプロセスのことを、 ファスト・トラック(プロセス)と呼ぶ例が多くあります。
ここでは、その一例であり、 トップレベルドメイン(TLD)への国際化ドメイン名(IDN)(*1)導入に向けたプロセスの一つとして進められている、 IDN ccTLDの導入におけるファスト・トラックについて、 詳しく解説します。
IDN ccTLDの検討を行っているccNSOでは、 ポリシー策定プロセス(PDP; Policy Development Process)(*2)に従い検討を行っていますが、 導入にあたり、 例えば複数の公用語を持つ国や地域では複数のTLDを認めるべきかどうかや、 誰がどのようにTLDの文字列を決めるのかなど考慮すべき課題も多く、 IDN ccTLDの恒久的ポリシー策定までには、 数年単位の時間が必要だと考えられています。
それではIDN ccTLDに対する高い需要に迅速に応えることができないことから、 恒久的なポリシーと並行する形で、 暫定的なアプローチによるIDN ccTLDの導入が検討されるようになりました。 このプロセスは、恒久的ポリシーによるIDN ccTLD導入に対し「ファスト・トラック」プロセスと呼ばれており、 技術、運用、ポリシーなどの面で問題が生じない範囲で、 限定した数のIDN ccTLDを、比較的早期に導入することを目指しています。
「ファスト・トラック」プロセスによるIDN ccTLD導入は、 あくまで限定的なもののため、例えば申請できるTLDの文字列として、 その国の公用語であることやラテン文字以外のスクリプト(文字種)であることなど、 恒久的ポリシーによる導入に対して、 一定の要件が設定されています。
(*1) http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-ka.html#12-kokusaikadomainmei
(*2) http://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/pdp.html