gTLD・GNSO動向紹介
第2版:2023年11月29日
初版:2023年9月15日
次期新gTLDの導入に関連した動き
次期新gTLDの募集(New gTLD Subsequent Procedure, Subpro)1 に関してはGNSOにおけるポリシー策定プロセス(PDP)が終了したのち、
2021年2月18日 | GNSO評議会における最終報告書2承認 |
2022年1月3日 | Operational Design Phase(ODP)始動 |
2022年12月12日 | ODP報告書であるODA (Operational Design Assessment)3 公開 |
2023年3月16日 | ODAに基づいてGNSO評議会最終報告書を理事会が承認4し、実施準備に移る |
と検討が進み、 2023年6月のICANN77ワシントンDC会議の際の発表では、 新gTLD申請受付開始まで3年ほどの実施準備期間を要するとしています5。
PDPによって策定されたコンセンサスポリシーはGNSO Webページで一覧をご覧になれます6。
なお、Closed Generic(申請者による独占利用が認められる、 一般用語から成るドメイン名)の取り扱いが問題になっています。 GNSOはClosed Genericについて改めてポリシー策定が必要か否かを検討していましたが、 ポリシー策定を現時点では行わないこと、 特にICANNでも決定がなければ前回のラウンドでの方法を踏襲することを最近正式に決めました。
他に、GNSOでは、次期ラウンドでの申請者サポート(Applicant Support)について、 GNSO Guidance Process(GGP)を走らせており、 近くGNSOとしての勧告をICANNに意見を提出する予定です(GGPとはレジストリ・レジストラ等の契約当事者に影響を及ぼす可能性のある話ではないものについてポリシー策定(PDP)ではない形でGNSOからICANNに意見を提出する等の場合に利用されるプロセスで、 ICANN付属定款Annex Dにおいて定められているプロセスです)。
- GNSO Guidance Process
- https://icannwiki.org/GNSO_Guidance_Process
同GGPがまとめた勧告内容については9月11日まで意見募集が行われていました。
- GNSO Guidance Process Applicant Support Guidance Recommendation Initial Report
- https://www.icann.org/en/public-comment/proceeding/gnso-guidance-process-applicant-support-guidance-recommendation-initial-report-31-07-2023
https://gnso.icann.org/en/group-activities/active/new-gtld-subsequent-procedures
2 "Final Report on the new gTLD Subsequent Procedures Policy Development Process"
https://gnso.icann.org/sites/default/files/file/field-file-attach/final-report-newgtld-subsequent-procedures-pdp-02feb21-en.pdf
3 "New Generic Top-Level Domain (gTLD) Subsequent Procedures Operational Design Assessment (ODA)"
https://www.icann.org/en/system/files/files/subpro-oda-12dec22-en.pdf
4 ICANN Annoucement "ICANN Board Moves to Begin Preparations for the Next Round of New gTLDs"
https://www.icann.org/en/announcements/details/icann-board-moves-to-begin-preparations-for-the-next-round-of-new-gtlds-16-03-2023-en
5 "ICANN77概要報告"(大橋由美)
https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20230801-ICANN/icann67-1-ohashi.pdf p.4
6 Active Projects (GNSO)
https://gnso.icann.org/en/group-activities/active
PDP:権利保護メカニズム(RPM)
ドメイン名における権利保護関連のポリシーに関しては、 「全gTLDにおける権利保護の仕組みの検討に関するポリシー策定プロセス」(PDP Review of All Rights Protection Mechanisms in All gTLDs (略称:RPM))において検討が進められてきました。 RPM PDPのPhase 1 (TMCH、 URSのレビュー)は2020年11月に最終報告書が公表され7 8、 同報告書はGNSO評議会において2021年1月に承認され理事会に送られました。 理事会では、2023年4月30日の理事会で承認されています。
RPM PDPのPhase 2においてはUDRPのレビューを中心とする作業が進められていましたが、 2023年4月、GNSOはPhase 1の勧告内容の実施が作業途中であり、 Phase 2も同じメンバーが関与する可能性が高いため、 メンバーの負担を考慮し、 Phase 2の開始を正式に18ヶ月遅らせることを正式に決定しました9。
https://gnso.icann.org/sites/default/files/file/field-file-attach/rpm-phase-1-proposed-24nov20-en.pdf
8 "権利保護機構ポリシー策定プロセスに関する報告"(藏増明日香)
https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20210513-ICANN/icann60-9-kuramashi.pdf
9 "GNSO Council Decision to Defer RPMs Phase 2 for 18 Months (GNSO Council ML)"
https://mm.icann.org/pipermail/council/2023-April/026746.html
PDP:IGO/INGO権利保護
UDRPに関連する検討作業で進行中のものは、上記RPMの他に、 IGO-INGO Access to Curative Rights Protection Mechanisms Policy Development ProcessというPDPがあります10。
IGOは法的には国家政府に準じた扱いを受け、 いずれの国の法的管轄にも属さない可能性があるなど、 その法的性質や取り扱いが一般的な事業会社とは異なるため、 UDRPの手続きでも私人や一般的な事業会社とは別扱いをIGOらは求めていました。
IGO/INGOからの求めを受け検討作業を行ったIGO-INGO Access to Curative Rights Protection Mechanisms Policy Development Process (PDP)は、 勧告を五つ示して2018年7月に既に終了しています11。
報告書に含まれていた勧告五つの内四つはICANN理事会によって2020年11月に一旦判断保留となった12のちに、 2023年4月30日に上記RPMの勧告と併せて承認されました13。
Curative Rights PDPからの残る一つの勧告はその内容が法的な問題を多く含んでいることを理由に当初はRPM Phase 2に送られ、 RPM Phase 2で検討されることとなっていました。 しかしこの予定が変更され、 2021年8月にこの問題を単独で検討するEPDP14が開始され、 同EPDPは2022年4月に最終報告書案をまとめ、 GNSO評議会はこれを同年6月に承認しました。 その後、EPDPの最終報告書は意見募集に付され15、 意見募集の結果報告書は、 2023年3月に公開され ています。
ICANN理事会は、 2023年4月30日の理事会13で勧告内容を承認するとともに、 勧告内容の実施に向けて、 実施計画の作成をICANN事務局に指示しました。
勧告内容を受け、 IGOの法的特殊性に考慮する内容でUDRPが改正される可能性が出てきています。
https://gnso.icann.org/en/group-activities/active/igo-ingo-crp-access
11 "Final Report on the IGO-INGO Access to Curative Rights Protection Mechanisms Policy Development Process"
https://gnso.icann.org/sites/default/files/file/field-file-attach/igo-ingo-crp-access-final-17jul18-en_0.pdf
12 ICANN通常理事会(2020年10月22日開催)決議概要
https://www.nic.ad.jp/ja/icann/topics/2020/20201112-01.html
13 ICANN通常理事会(2023年4月30日開催)決議概要
https://www.nic.ad.jp/ja/icann/topics/2023/20230522-01.html
14 EPDP for Specific Curative Rights Protections for IGOs
https://icannwiki.org/index.php?title=EPDP_for_Specific_Curative_Rights_Protections_for_IGOs&mobileaction=toggle_view_mobile
15 Final Report from the EPDP on Specific Curative Rights Protections for IGOs
https://www.icann.org/en/public-comment/proceeding/final-report-from-the-epdp-on-specific-curative-rights-protections-for-igos-28-11-2022
PDP:Expired Domain Deletion Policy、Expired Registration Recovery Policy
Expired Domain Deletion Policy (EDDP)16とは、 登録継続の意思の確認ができない等のドメイン名の削除手順を定めるポリシーです。 一方、Expired Registration Recovery Policy (ERRP)は、 何かしらの理由で削除されたドメイン名を削除から30日間に限り再登録できる仕組みである「請戻猶予期間」(Redemption Grace Period; RGP)や、 再登録の手順等について定めたポリシーになります。
- 削除済ドメイン名のための「請戻猶予期間」(Redemption Grace Period; RGP)
- https://www.nic.ad.jp/ja/dom/gtld-policy/rgp.html
登録ドメイン名の削除や請戻しについては過去ICANNに3年間ほどの間だけでも数千件の苦情が寄せられたとのことで、 ICANN Complianceも苦情やこれまでの経緯をまとめ、 レジストラを対象とした調査を行い、 その結果が2022年10月31日付でまとめられました。
- ICANN Contractual Compliance Enforcement of the ERRP & EDDP
- https://www.icann.org/en/blogs/details/icann-contractual-compliance-report-on-the-enforcement-of-the-errp-and-eddp-10-11-2022-en
GNSOはレジストラを対象とした独自調査を予定していましたが、 ICANNが実施した調査に重複する可能性があるため、 GNSOが必要であると考えているデータを既にICANNが取得済みであれば調査は取りやめるとしています17。 GNSOはICANNのGDSに情報提供を求めていますが、 2023年4月以降の動きは不明です。
今後、GNSOとICANN Complianceとで検討を進め、 必要があればERRPおよびEDDPの改正へとつながる可能性があります。
https://www.icann.org/resources/pages/registars/accreditation/eddp-en
17 Draft minutes of the GNSO Council meeting 20 April 2023
https://mm.icann.org/pipermail/council/2023-April/026801.html
PDP:レジストラ移転ポリシー
レジストラ移転(レジストラ変更)に関するポリシーについては、 過去にはポリシー策定が行われてきましたが、 現在はポリシーの評価作業が初めて行われています。 作業は2021年2月からレジストラ移転ポリシー見直しのPDPが開始され、 同PDPはPhase 1とPhase 2に分けられ、 更にPhase 1がPhase 1(a)とPhase 1(b)に分けられています。
Phase 1(a)は最近一旦終了しましたが、 以下を検討対象としていました。
- Form of Authorization (FOA)
- Authinfo Code
- Denying(Nacking) Transfer
Form of Authorization (FOA)とは、 ドメイン名の登録者がレジストラ変更を希望するときに記入する移転承認の書式(フォーム)のことです。 現在の仕組みでは、 ドメイン名登録者が移転元レジストラ等に提出するFOAをLosing FOAと言い、移転先に提出するFOAをGaining FOAと言っています。
以前は、 ドメイン名の移転希望先のレジストラ等がWHOISの情報を見てドメイン名登録者の連絡先を知り、 ドメイン名登録者に直接連絡をとり移転の意思について確認することができました。 しかしながら、 GDPRの影響で連絡先情報が伏せられているケースが生じたため、 この方法をとることができなくなるケースが増えました。 このため、Phase 1(a)のInitial Report (2022年6月公表)はFOAはもはや意味がなくなったとしてLosing FOA/Gaining FOAともに廃止を提案しています。
FOAに代わって移転の意思確認に使われるのは、 これまでAuthinfo Codeと呼ばれていたものです。 今回、これをTransfer Authorization Code (TAC)と名称変更し、 ドメイン名登録者が現在使用しているレジストラはドメイン名登録者が希望した場合にTACを発行し、 ドメイン名希望者がTACを移転希望先レジストラに通知するだけで移転を可能にすることをIssue Reportは提案しています。 携帯電話のキャリア変更時のMNP転出のような形になります。 なお、 TACは移転ごとに発行される1回限り有効のもので有効期間は2週間となります。 TACの仕様についてはRFC9154 (およびその後継)によって定めるとされています。
他にPhase 1(a)では、Phase 2での検討が予定されていた、 Denying (Nacking) Transferについても検討を行い、 移転申請が拒否される(べき)ケース等の条件を検討し、 レジストラ等が移転申請を拒否しなければならない場合と拒否できる場合の整理が行われています。 Phase 1(a)では他に、WHOISを"RDDS"に、 "WHOIS Data"を"Registration Data"と呼ぶことに統一する等の用語の統一も提案されています。
2022年6月に公表されたInitial Reportは、 同年8月まで意見募集が行われ、 意見募集結果の報告書も公表されています。 Phase 1(a)は一旦ここで終了となります。
- "Initial Report on the Transfer Policy Review - Phase 1(a)"
- https://itp.cdn.icann.org/en/files/inter-registrar-transfer-policy-irtp/transfer-policy-review-initial-report-21-06-2022-en.pdf
- "Public Comment Summary Report Initial Report on the Transfer Policy Review - Phase 1(a)"
- https://itp.cdn.icann.org/en/files/inter-registrar-transfer-policy-irtp/summary-report-initial-report-transfer-policy-review-phase-1a-30-08-2022-en.pdf
PDPは現在、Phase 1(b)を開始しています。 Phase 1(b)では"Change of Registrant"(登録者の変更)に関するポリシーのレビューが行われます。 これについては、 登録者変更に関するポリシーは引き続き必要かとの問いに反対が表明されていないため、 あまり時間がかからずに報告書が作成・公表されるのではないかと思われます。
Phase 2における検討対象は以下の通りです:
- Transfer Emergency Action Contact (TEAC/移転申請者向けのレジストラの緊急連絡先の確保)
- Reversing inter-Registrar transfers(移転の取り消し)
- Transfer Dispute Resolution Policy (TDRP/レジストラ変更における紛争処理方針)
PDPでは、Phase 2の暫定的な結論が出たら、再度、 Phase 1の作業に戻る予定となっています。
EPDP:IDN
IDNに関連する動きとして、2021年5月20日付で開始された、 Expedited Policy Development Process on Internationalized Domain Names (EPDP-IDNs)が挙げられます。
Sub Pro PDPでもIDNに関連する検討は行われましたので、 同EPDPはSub Pro PDPでの検討結果をIDN TLDおよび異体字IDN TLDの運用に適用していく観点から作業が進められました。 また、Sub Pro PDPで検討が行われなかったものの他で検討が行われたケースの検討も行われました。
検討作業はPhase 1とPhase 2に分けられ、 それぞれの検討課題は次にようになっています、
- Phase 1
- トップレベルにおけるIDN gTLDの定義と異体字IDNの管理
- Phase 2
- セカンドレベルにおける異体字IDNの管理
Phase 1における検討ポイントは以下の通りでした。
- ルートゾーンラベル生成ルール(RZ-LGR)の統一の定義と技術面の統一性
- トップレベルにおける「同一の組織」について
- レジストリ契約の修正の調整、registry service、registry transition process、その他ドメイン名ライフサイクルに関連するプロセスや手続き等
- 類似の文字列に関する評価方法、異議申立手続、string contention resolution、予約の文字列、その他のポリシーや手続き
現在、 Phase1の初期報告書18にパブリックコメントが行われ、 その結果を取りまとめたレポートが2023年7月10日に公表されたところです19。
現在GNSOでは、 次期新gTLDラウンドにおけるapplicant support(新gTLD申請者のサポート)や、 Closed Generic(独占利用を目的とする一般名称TLD)の登録を認めるにあたっての判断基準の検討が進められています。 2023年6月には、枠組みの案が公表されました。
- The Facilitated Dialogue on Closed Generic gTLDsDraft Framework
- https://gnso.icann.org/sites/default/files/policy/2023/draft/draft-framework-for-closed-generic-gtlds-08jun23-en.pdf
ただ、 現時点で整理されていることは基本的な条件(新gTLDの申請と基本的には同じになるが、 Closed Generic gTLDについては追加の条件がある、等)に加え、 「Closed Generic gTLDは公益に資するものでなければならない」といった、 どちらかと言うと観念的な条件の提示となっているため、 誰にどの文字列の使用を認めるかといった判断基準についてもう少し詰めていく必要はあるように思われます(但し、 どのような基準を設けても、実際に申請が開始されたならば、 同じ文字列に複数の申請があることが予想され、 誰にどのような理由から使用が認められるかは、いわば正解の無い、 過去の事例で言えば.AMAZONのケースが思い起こされる話のように思われます)。
https://www.icann.org/en/public-comment/proceeding/phase-1-initial-report-on-the-internationalized-domain-names-epdp-24-04-2023
https://itp.cdn.icann.org/en/files/internationalized-domain-names-idn/public-comment-summary-report-phase-1-initial-report-on-the-internationalized-domain-names-epdp-10-07-2023-en.pdf
この他、 現在GNSOにおいてレビューが進められているポリシーは以下のポリシーです。
WHOIS情報の正確性(accuracy)について
レジストリ認定契約(RA)、 レジストラ認定契約(RAA)に基づく義務として、 WHOIS情報の正確性の担保があります。
この問題を検討すべく、 GNSOは2020年からICANN事務局とやり取りを行い、 2021年7月にRegistration Data Accuracy Scoping TeamをGNSO内に発足させました。
- 参照(GNSOからICANN宛レター)
- https://www.icann.org/en/system/files/correspondence/fouquart-to-swinehart-04nov20-en.pdf
同Teamが検討を予定していた課題は、 以下のように取り決められていました。
- Enforcement and reporting
- Measurement of accuracy
- Effectiveness
- Impact and Improvements
- Registration Data Accuracy - Scoping Team
- https://community.icann.org/display/AST/Registration+Data+Accuracy+-+Scoping+Team
RAやRAAが定める正確性の把握や報告システムがどの程度機能していると言えるかを検討し、 さらに改善点の検討を行う予定でした。
しかし同Teamの作業は当初の目論見どおりには進まず、 実質停滞してしまっていました。 その理由は、何をもって「正確」であると言うべきか、 という「正確性」の定義の段階で2022年中躓いてしまい、 Team内で正確性について合意に至ることができなかったことが一つの要因でした。 検討作業レジストラにアンケート調査を行うという案も出ていましたが、 具体的には何を調査するのかという点も整理できずに終わりました。
登録データ正確性
登録データの「正確性」を検討するためには、 gTLDの登録者データの分析が必要になってきますが、 GNSOが登録者のデータにアクセスできるわけではありません。 このため、GNSOはICANN事務局に対して、 欧州データ保護委員会への働きかけを求めました。 また、 GDPRがデータの処理者に取り交わしを義務づけているデータ処理契約(Data Processing Agreement/DPA)がICANNと契約当事者間で交わされていないことが問題であると考え、 GNSOは、ICANNと契約当事者に対して、 DPAの締結に関する交渉を要請しました。
これらの作業が進まないとデータにアクセスすることができない状態です。
"WHAT CAN I EXPECT AT ICANN77 RELATED TO THIS TOPIC?" (Registration Data Accuracy Scoping Team)
https://gnso.icann.org/sites/default/files/policy/2023/briefing/policy-briefing-reg-data-accuracy-scoping-team-icann77-26may23-en.pdf
"GNSO Registration Data Accuracy Scoping Team – Update"
https://gac.icann.org/advice/correspondence/incoming/20221201/gnso-registration-data-accuracy-scoping-team-update
ただし、いずれも、 必ずしも短期間に進捗が見込めるものではないため、 2023年6月の時点でDPAに関する交渉が決着していなかったり、 ICANN事務局からの情報提供の状況次第では、 検討作業を一旦中止するとGNSOは2022年12月の時点で表明していました。 そして2023年6月の時点で具体的な進捗が見込めないため、 GNSO評議会は作業を6ヶ月間中断する決定を2023年7月の評議会会議で正式に承認しました。
DNS Abuse問題
DNS AbuseについてはGNSO内に2021年10月に設置したsmall teamによって検討が進められ、 それまでのICANN内でのDNS Abuse問題への取組結果の確認を行ったり、 Abuse問題の解決にポリシーは必要か否か、また、 ポリシーによってどこまでAbuse問題を解決できるか等を検討したりしてきました。
Small teamは2022年10月に"DNS Abuse Small Team Report to GNSO Council"とのタイトルの報告書をGNSO評議会に提出しています。 同報告書では、 Abuse問題解決のためにポリシー策定が必要か否かの検討の必要性が示唆されていた他、 Malicious RegistrationとBulk Registrationの二つがAbuseを助長している可能性が指摘されていました。 Small teamは、 Bulk registrationについてはレジストリ・レジストラ部会をはじめとする関係者の意見を聞くようGNSOに求めており、 Malicious RegistrationについてはGNSOにIssue Reportの作成を求めています。 ドメイン名登録時やその直後に悪用されるドメイン名の特定を可能とするポリシーを策定することを前提として考えており、 その前段階としてIssue Reportをまとめるよう、 GNSO評議会に求めたのです。
small teamは、Bulk Registrationに関する聞き取りから先に着手し、
- DNS Abuse問題はポリシーによって解決できると考えるか否か、また
- Bulk RegistrationがAbuse問題に及ぼす影響等
について2023年1月にレジストリ部会/レジストラ部会/DNS Abuse Institute/ICANN事務局にレターを送り20意見を求めました。 四つの宛先すべてから回答を得ています。 ただ、そもそも、Bulk Registration行為がすべてドメイン名の悪用につながっているわけではない上に、 "Bulk Registration"を定義することは可能なのかといった問題もあります。 実際、寄せられた意見でもこうした指摘はなされていましたし、 契約者会議(CPH)からは、 レジストリ契約やレジストラ契約の改訂によって解決すべき問題なのではないかとの指摘もありました。
参考資料(2023年4月GNSO評議会議事録)
Item 8: COUNCIL DISCUSSION - Next Steps on DNS Abuse
Greg DiBiase, Council Vice-chair, introduced the topic on next steps regarding DNS Abuse by explaining that the small team sent letters to the community asking what abuse could be tackled by policy efforts, in particular on the subject of Bulk Registrations. The small team received input from Contractual Compliance, DNS Abuse Institute, Registrar Stakeholder Group (RrSG) and Registries Stakeholder Group (RySG). GNSO Council may need to reconstitute the small team to evaluate the feedback. There is a need to discuss bandwidth issues with the proliferation of small teams and the council may need to wait until another process is over to begin.
Mark Datysgeld, BC, thanked the remaining members of the small team and the new members for their participation. He stated that some items are still open and need scrutiny - particularly bulk registrations. He is working on summarizing them and has drafted a preliminary statement that can be circulated. He is cognizant of the bandwidth issues but sees the necessity in tackling this topic before the ICANN77, June 2023 meeting.
参考資料(2023年7月のGNSO評議会のConsent Agenda)
Resolved,
- The GNSO Council extends the deferral of consideration of recommendations #1 and #2 of the Registration Data Accuracy Scoping Team write up for another six months.
- The GNSO Council commits to considering the Scoping Team recommendations at an earlier date if the DPA negotiations have been completed before six months have passed and/or there is feedback from ICANN org if/how it anticipates the requesting and processing of registration data will be undertaken in the context of measuring accuracy.
なお、ICANNでは2023年7月20日まで、 レジストリ契約(RA)・レジストラ契約(RAA)の改正案について意見募集が行われていました。 この意見募集は、Abuseについての定義を明確化すると同時に、 レジストリ・レジストラのAbuseへの対応義務を契約上明確にする改正案について意見を募集していたものでした。
意見募集は7月20日まで行われた後に、 意見募集結果をとりまとめた報告書も公開されています。
- Amendments to the Base gTLD RA and RAA to Modify DNS Abuse Contract Obligations
- https://www.icann.org/en/public-comment/proceeding/amendments-base-gtld-ra-raa-modify-dns-abuse-contract-obligations-29-05-2023
本件について、 Small teamは意見募集結果を見て今後の方針を考えることとしており、 ICANNからの意見募集結果の公表を待つ状態です。
GNSO内部の課題
その他、GNSO内部の最近の取組課題は以下のようになっています。
- ICANN理事会におけるRebalancingへの意見提出
- GNSO内部での自己評価(Self Assessment)の作業
- GNSO運営規則の改訂(Statement of Interest/SOIの書式改訂に伴うもの)
- GNSO取組課題の明確化(その月と次の月の取組課題を分かりやすくする)
- GNSO評議会メンバーの任期の制限(4年まで)の提案の検討
- GACへのリエゾンに求められる役割の2年ごとの見直し