削除済ドメイン名のための「請戻猶予期間」
(Redemption Grace Period; RGP)
2003年9月4日
最終更新 2004年1月9日
削除済ドメイン名のための「請戻猶予期間」とは
削除済ドメイン名のための「請戻猶予期間」(Redemption Grace Period; RGP)とは、 ドメイン名の登録が登録者の意図しない形で削除されてしまった場合、 そのドメイン名を他人に再登録されてしまう前に、 元の登録者が請戻しできる期間(30日間)のことを指します。
これは、 削除されたドメイン名の請戻しのために従来設けられていたセーフティネットを強化する目的で新たに導入されたしくみであり、 全てのスポンサーなしgTLD (.com/.net/.org/.biz/.info/.name/.pro)に適用されます。
ドメイン名が登録者の意図によらず削除されてしまう原因としては、 登録者によるミス、レジストラによるミス、 または不正行為(ドメイン名ハイジャッキング)によるものが挙げられます。 このうち、登録者によるミスが最も一般的であり、具体的には、 登録者情報を更新していないため、 あるいはISPを変更したために登録ドメイン名の更新料支払通知を受けられない、 または、通知メールを受け取っていても見過ごしてしまう、 といった事態が発生しています。 こうしたドメイン名の削除問題を解決するには、 従来の制度では不十分であったために、 新たに導入されることになったのが「請戻猶予期間」です。
「請戻猶予期間」のしくみ
通常、登録ドメイン名の有効期限が近づくと、 レジストラ(あるいはリセラ)から登録者に対して更新についての通知が送付され、 登録者は有効期限日までに所定の手続を行うことでドメイン名を更新することができます。
一方、有効期限日までにこうした更新手続が行われず、 有効期限が切れてしまったドメイン名については、 レジストリによって一律に1年間自動更新され、 レジストリからレジストラに対して1年分の登録更新料が請求されます(.nameを除く)。 ドメイン名がレジストリによって自動更新されると、 45日間の「自動更新猶予期間」(Auto Renew Grace Period)に入り、 この期間内にレジストラがレジストリにドメイン名の削除申請を行えば、 自動更新料がレジストリから返金されるしくみになっています。
これまでのプロセスでは、 この45日間の自動更新猶予期間内にレジストラによって削除されたドメイン名は、 すぐに他者による再登録が可能となっていました(※図A)。 しかし、「請戻猶予期間」が導入されると、 レジストラによってドメイン名が削除された後、 30日間の猶予期間が設けられ、 この間に元の登録者がレジストラに請戻しの申請をすることによって、 ドメイン名を取り戻すことができます(※図B)。 この「請戻猶予期間」が過ぎると、5日間の「削除保留期間」の後、 レジストリによってドメイン名が削除され、 他者による再登録が可能な状態となります。
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これまでも、 45日間の自動更新猶予期間外に削除されたドメイン名については、 5日間の削除保留期間が設けられ、 この間にレジストラがレジストリに特別な要請を行うことにより、 登録の請戻しが可能となっていました(※図C)。 「請戻猶予期間」のしくみは、この請戻しのための期間を大幅に延長し、 かつ45日間の自動更新猶予期間内・期間外にかかわりなく適用されるものです (※図D)。 「請戻猶予期間」は、 ドメイン名の初期登録後5日間の「登録猶予期間」(Add Grace Period) 中に削除された場合を除き、 すべての削除済ドメイン名に対して適用されます。
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削除されたドメイン名を登録者が請戻すには
自身の意図によらず削除されてしまったドメイン名を登録者が請戻すには、 そのドメイン名の登録先であったレジストラに対して 「請戻猶予期間」中に請戻しの申請をする必要があります。 (※ただし、レジストラによっては「請戻猶予期間」を採用していないところもあります。)
現在の制度では、請戻しの申請先は登録先レジストラに限定されていますが、 将来的には登録者が請戻しのためのレジストラを選択することができるよう、 ICANNを中心に検討が進められています。
各gTLDレジストリの「請戻猶予期間」導入状況
.com/.net
VeriSign (.com/.netレジストリ)ウェブサイト
「請戻猶予期間についてのFAQ」
- [2003年2月25日]
ICANN理事会が「請戻猶予期間」導入のために.com/.netレジストリ契約を改定することを承認 -
ICANN理事会特別会議議事録(2003年2月25日)(原文)
.com/.netレジストリ契約 Appendix C 改定案 - [2003年1月25日]
VeriSignが「請戻猶予期間」を導入 - [2003年1月15日]
ICANN副事務総長がVeriSignに対し、「請戻猶予期間」の導入を暫定的に認める書簡を送付
.org
Public Interest Registry (.orgレジストリ)ウェブサイト
「請戻猶予期間についてのFAQ」
- [2003年8月19日]
.orgレジストリ契約に「請戻猶予期間」に関する規定を追加 - 「.org Registry Agreement: Appendix C, C.13 Additional Services」(19 August 2003)
- [2003年8月19日]
ICANN理事会が「請戻猶予期間」導入のために.orgレジストリ契約を改定することを承認 - ICANN理事会特別会議暫定報告書(2003年8月19日)(原文)
- [2003年6月7日]
Public Interest Registryが「請戻猶予期間」を暫定的に導入 - [2003年6月6日]
ICANN副事務総長がPublic Interest Registryに対し、「請戻猶予期間」の条件付導入を認める書簡を送付 - 「(仮).org Registry Agreement Appendix C, Part C11 [sic, C13] 」(6 June 2003)
.biz
- [2003年6月23日]
NeuLevel (.bizレジストリ)が「請戻猶予期間」を導入 - [2003年6月18日]
.bizレジストリ契約に「請戻猶予期間」に関する規定を追加 - 「Unsponsored TLD Agreement: Appendix C, Section 11 (.biz)」(18 June 2003)
- [2003年6月2日]
ICANN理事会が「請戻猶予期間」導入のために.bizレジストリ契約を改定することを承認 - ICANN理事会特別会議暫定報告書(2003年6月2日)(原文)
.info
Afilias (.infoレジストリ)ウェブサイト
「請戻猶予期間についてのFAQ」
- [2003年10月31日]
ICANN理事会が「請戻猶予期間」導入のために.infoレジストリ契約を改定することを承認 - ICANN理事会特別会議暫定報告書(2003年10月31日)(原文)
背景報告書(原文) - [2003年9月26日]
ICANNがAfiliasに対し、「請戻猶予期間」の導入を暫定的に認める書簡を送付
.name
*未定*
.pro
*未定*
ICANNにおける検討の経緯
- [2002年6月28日]
ICANN理事会がスポンサーなしTLDにおいて「請戻猶予期間」を導入することを承認 - ICANNブカレスト会議暫定報告書(2002年6月28日)(原文、日本語訳)
- [2002年6月7日]
ICANNが技術運営グループによる「請戻猶予期間」の実装案を発表 - 「ICANNブカレスト会議議題:削除済ドメイン名のための請戻猶予期間(2002年6月7日)」(原文)
- [2002年4月4日]
ICANNが技術運営グループのメンバーを発表 - ICANNアナウンス(2002年4月4日)
- [2002年3月14日]
ICANN理事会が「請戻猶予期間」の具体的実施案を作成するための技術運営グループを召集することを決定 - 「ICANNアクラ会議暫定報告書(2002年3月14日)」(原文、日本語訳)
- [2002年3月7日]
ICANNが「請戻猶予期間」案に関し寄せられたコメントを発表 - 「ICANNアクラ会議議題:削除済ドメイン名のための請戻猶予期間(2002年3月7日)」(原文)
- [2002年2月20日]
ICANNが「請戻猶予期間」の補足提案を発表 - 「補足討議資料:削除済ドメイン名のための請戻猶予期間(2002年2月20日)」(原文、日本語訳)
- [2002年2月14日]
ICANNが「請戻猶予期間」の導入案を発表 - 「討議資料:削除済ドメイン名のための請戻猶予期間(2002年2月14日)」(原文、日本語訳)