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    /P▲          ◆ JPNIC News & Views vol.308【臨時号】2005.11.22◆
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◆ News & Views vol.308 です
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昨年に引き続き、ドメイン名紛争の処理手続きを行うICANN認定紛争処理機関
の一つであるWIPO仲裁センターでWorkshopが開催されました。本号では
Workshopに参加してきたJPNICインターネット政策部の小久保明日香よりレポー
トをお届けします。


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◆ WIPO Workshop“Advanced Domain Name Dispute Resolution”レポート
                               JPNIC インターネット政策部 小久保明日香
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2005年10月20日および21日、スイス・ジュネーブにて、WIPO仲裁センター主催
のWorkshop、“Advanced Domain Name Dispute Resolution”が開催されまし
た。ジュネーブはヨーロッパ最大の淡水湖であるレマン湖に面し、国連の欧州
本部をはじめとする多くの国際機関を抱える静かな落ち着いた街です。
WIPO本部は国連欧州本部のすぐ隣にあり、Workshopは、このWIPO本部の1階会
議室で行われました。今回、日本からはJPNIC丸山直昌理事および私が昨年に
続き参加し、また、今年はJPNICドメイン名検討委員会委員長の早川吉尚氏(立
教大学教授) も参加しました。以下、Workshopの主なプログラムをかいつまん
でご説明します。


WIPO仲裁センター(以下、センター)は、1999年12月以来、これまで8000件を超
えるUDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy:統一ドメイン名
紛争処理方針)(*1)に基づく申立を受け付け、裁定を下してきました。
Workshopは、これらの裁定に関連して同センターに蓄積された情報を参加者に
提供することを主な目的として開催されたもので、毎年CLE(*2)の対象にもなっ
ています。Workshopでは、センタースタッフおよび著名なパネリスト(*3)経験
者David Bernstein氏とパネリスト経験者のAnna Carabelli氏らが主な講師を
務め、センターやUDRPの法的枠組みの解説、UDRP重要条文の解説、最近の重要
裁定の紹介、UDRPに基づくドメイン名紛争で裁判にも至った事例の紹介等があ
りました。参加者にはドメイン名紛争の仮想事例(Case Scenario)が事前に送
付され、参加者は予め目を通し、考えをまとめておくことが求められます。

参加者の多くは今回が初めての参加であることを考慮して、Workshopでは、ま
ずセンターやUDRPの法的枠組みの解説がセンタースタッフより行われました。

その後のBernstein氏およびCarabelli氏によるUDRPの条文についての解説は、
特にUDRP第4節a.の(i)から(iii)を中心に行われました。第4節a.の(i)から
(iii) は、申立人側が申立の中で立証しなければならない3項目を定めるもの
です。両パネリスト経験者による解説は、条文の一般的解説にとどまらず、実
際の事例の中で上記3項目の立証の成否を左右し得るような具体的な状況例、
例えば「商標権の成立のタイミングとドメイン名の登録」「批判サイト(の正
当性)」等、微妙な典型的状況例が列挙され、さらに典型的な各状況例につい
て、「Majority View(パネリスト間の多数意見)」「Consensus View(パネリス
ト間の統一的な意見)」が明確に表示された上で解説がなされました。

UDRPに基づくドメイン名紛争で裁判にも至った事例に関しては、センタースタッ
フEun-Joo Min氏より、スペインやアメリカ、韓国で裁判に至ったケースの紹
介がありました。裁判に至った場合でもその情報がセンターに自動的に入って
くるわけではありません。そのため、センターは、昨年のWorkshopでは、ほと
んど裁判事例を把握していないと言っていましたが、その後かなり時間をかけ
て情報を収集したようでした。

また、上記解説の合間に何度かグループに分かれてディスカッションが行われ
ました。ある状況例の解説の後、その状況例を反映したCase Scenarioについ
てディスカッションが行われ、参加者はディスカッションを通じて各状況例に
おけるポイントに対する自身の理解度を確認することができます。

ちなみに、今年のCase Scenarioは、センターへの過去の実際の申立を参考に
して作成されたものだということで、昨年のものと比べて現実に参考になる事
例だったと思います。


今年のプログラムの中には昨年とは全く違う趣旨のものが一つありました。そ
れは、センターのパネリストを務めたことのない人(ドイツのBMW社、Senior
Legal CounselのAimee Gessner氏)がインストラクターを務めたプログラムで
す。

Gessner氏からは、BMW社の商標保護方針や同社のドメイン名紛争事例について
の解説がありました。同社は過去にUDRPに基づく申立を800件以上も行ったと
いうことで、多くの事例紹介がありました。こうした話は、企業から派遣され
ていた人達にとっては現実的で参考になるものだったのではないかと思います。
センターは来年以降のWorkshopにも同様の内容を含める予定だということでし
た。


Workshopには今年は19ヶ国から予定定員(50名)を超える参加者があり、
Workshop初日の夜にはWIPOの最上階の部屋でカクテル・レセプションが行われ
ました。同レセプションや2日間の昼食会等では他の参加者から各国のDRP制度
やドメイン名紛争の現状について話を聞くことができました。参加者の多くは
各国弁護士で、顧客の要望に応えるために知識を得たいという人が多いようで
したが、イタリアのGucci社やドイツのMerck社といった一般企業の法務部門か
ら派遣されていた人もおり、パネリスト経験者も数名参加していました。

前述の早川氏は、レセプションや昼食会でセンタースタッフやパネリストと積
極的に情報交換をしていましたが、Workshopの中でも挙手し、予め用意した資
料を配布してUDRPとJP-DRPの比較について紹介する等して他の参加者の関心を
集めていました。


WIPO仲裁センターは、UDRPに基づく申立を過去最も多く処理してきた紛争機関
です。しかし、申立の処理はセンターおよびセンター指名のパネリストにより
処理され、当事者の審問や公開の審理等は行われません。また、センターの下
す裁定は公表はされているものの、裁定の傾向の分析等に関する情報等はあま
り蓄積されていないのが現状です。また、こうしたWorkshop等を開催している
機関も他にはないため、センターのWorkshopはドメイン名紛争のトレンドや情
報を得ることができる年1回の貴重な機会だと思います。

なお、同様のWorkshopは、来年も同時期に開催される予定になっています。

(*1)UDRP:
    http://www.nic.ad.jp/ja/drp/udrp.html
    http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-uDRP
   ・UDRP紛争処理方針(翻訳文)
    http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-policy-j.html
   ・UDRP手続規則(翻訳文)
    http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-rules-j.html
(*2)CLE:
    Continuing Legal Education(研修受講義務)の略。日本の弁護士資格と異
    なり、海外特に米国の弁護士資格の中には資格取得後、CLEとして認定さ
    れた講座の受講が義務付けられているものがあります。受講を怠ると資格
    の継続は認められません。
(*3)パネリスト:
    UDRPに基づくドメイン名紛争において、紛争機関(センター)からの指名に
    より審理を行い、裁定を下す人


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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