=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.605【臨時号】2008.12.22 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.605 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本号では、vol.600、vol.601、vol.603に続いて、第73回IETFのレポート [第4弾]として、引き続きIPv6関連WGの動向についてお届けします。 後編となる本号では、behave WGとintareaの活動をご紹介します。 その他のIEPG、6man、v6opsの各WGに関する動向については、前編をご覧 ください。 □第73回IETF報告 特集 ○[第1弾] 全体会議報告 (vol.600) http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2008/vol600.html ○[第2弾] DNS関連WG報告 (vol.601) http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2008/vol601.html ○[第3弾] IPv6関連WG報告 [前編] (vol.603) http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2008/vol603.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第73回IETF報告 [第4弾] IPv6関連WG報告 [後編] JPNIC IPアドレス検討委員会メンバー/ NTT情報流通プラットフォーム研究所 藤崎智宏 NTT情報流通プラットフォーム研究所 松本存史 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆behave WG(Behavior Engineering for Hindrance Avoidance) behaveという名前からはちょっと想像が難しいですが、behaveはIPv4で広く普 及しているNATの挙動を定義するワーキンググループです。標準仕様が定義さ れないままに広く普及してしまったNATにはさまざまな実装があり、NATトラ バーサルの処理が複雑化しEnd-to-End通信を阻害してしまうことになるため、 NATの実装をBCP(Best Current Practices)として文書化するというのが主な 目的です。 今回の第73回IETFの会期中に、behaveのセッションは3回行われました。これ までのbehaveで扱っていたNATに関係する各種提案に加え、2008年10月にモン トリオールで行われたIPv4-IPv6共存中間ミーティングで提案されたIPv4と IPv6の共存技術のうち、IPv4-IPv6トランスレーションに関する方式をbehave で扱うことになったため、三つのスロットを取って議論が行われました。ま た、中間ミーティングで検討された技術のうち、トンネル方式をベースとした ものはsoftwireにて議論が行われました。 behaveで行われた、IPv6とIPv4の枯渇対策に関係する議論としては以下のもの がありました。 ・IPv4-IPv6トランスレーションに関する提案 draft-baker-behave-v4v6-framework draft-baker-behave-v4v6-translation draft-bagnulo-behave-nat64 draft-bagnulo-behave-dns64 draft-vogt-durand-virtual-ip6-connectivity ・大規模NATに関する提案 draft-nishitani-cgn draft-shirasaki-nat444-isp-shared-addr ・ユーザー毎に使用できるポートを制限する提案 draft-ymbk-aplusp draft-bajko-v6ops-port-restricted-ipaddr-assign draft-boucadair-port-range draft-despres-sam draft-boucadair-dhc-port-range ・IPv6 NATの提案 draft-mrw-behave-nat66 IPv4-IPv6トランスレータとしては最初に、Fred Baker氏から中間ミーティン グでの議論の結論として、NAT64方式とIVI方式が統合されてトランスレーショ ン方式のベースとなり、トランスレーションに関する機能毎にドキュメントを 分割して検討していくという、トランスレーション方式の検討のフレームワー クについて説明がありました。ドキュメントとして、全体のフレームワークに ついて記述したドラフト、パケットの変換ルールを規定したSIIT(RFC2765)の 更新について記述したドラフト、ステートフルアドレス変換方式への拡張(今 のところIPv6からIPv4への変換方式のみ)について記述したドラフト、DNS ALG でのアドレス合成について記述したドラフト、そしてその他の要素(FTP ALG 等)について記述したドラフトという構成になっています。 アドレス変換方式に関する議論としては、対象とするトランスポートプロトコ ルがTCPやUDPだけになっているが、SCTP、DCCPやIPSecなどの新しいプロトコ ルは考慮しなくていいのかという質問がありましたが、SCTP、DCCPやIPSecな どのプロトコルは変換方式についての議論が尽くされておらず、別のドラフト として進めるという意見が大勢を占めました。 大規模NATに関してはKDDIの中川あきら氏より発表があり、4-4NATや6-4NATな ど各種のアドレス変換をISPや企業網で利用する場合に共通して必要となる機 能を整理した提案と、4-4-4NAT即ち、IPv4 NATを2回行うモデルに関する提案 がありました。また、この4-4-4モデルを利用する際のISPの空間で利用するア ドレスについて、本提案ではISPで共有できるアドレスブロックの新設を提案 しており、その議論はintareaのセッションにて別途行われました。 同じくIPv4アドレス在庫枯渇に関する技術として、ユーザーにIPv4グローバル アドレスを付与するが、利用できるポート範囲を制限するというA+Pと呼ばれ る方式がRandy Bush氏より提案されました。本方式のメリットとしては、ユー ザーがISPのNATの配下に収容されるのではなく、利用は制限されるものの、あ くまでグローバルIPv4アドレスがユーザーに付与されるため、End-to-Endの透 過性が保持されるというものです。しかし、ISP内でのルーティングや、ユー ザーが使用しているルータや時には端末への変更が必要であり、実際に利用す るにはクリアすべき障壁の多い方式になっています。 また、3回目のセッションではMargaret Wasserman氏とFred Baker氏より、 NAT66、つまりIPv6からIPv6へのNATに関する発表がありました。IPv6の設計思 想の一つとして、IPv4で現在広く使用されているNATを使わないようにする、 というものがありましたが、本提案の趣旨としては、IPv6においてもなおNAT を必要とするケースがあることから、IPv6 NATを実装し利用する人々が出てく ることは不可避であり、そこでIETFとしてはIPv4 NATのような標準仕様のない 混沌とした状況を生み出さないためには、IPv6 NATの標準仕様を策定する必要 がある、という論調になっています。 具体的な適用先としては、企業ネットワークなどが挙げられ、特にネットワー ク間を接続する際にトポロジーの隠蔽が必要であり、双方向のNATが必要であ る、などの提言がありました。NATを利用しないためにIPv6を標準化し、普及 を推進してきたIETFとしては、非常に重要なトピックであり、さまざまな議論 が交わされました。否定派の意見としては、IETFでNAT66がRFCになることで、 NAT66の普及を促進してしまうのではないか、IPv6でのセキュリティ実現方法 について記述したLNP(RFC4864)でカバーできているのではないか、といった意 見がありました。その場でのディスカッションでは、肯定否定というのではな く慎重派が多いように見受けられましたが、結論としては本提案内容をベース として議論を継続することになりました。 □v4v6interim http://trac.tools.ietf.org/area/int/trac/wiki/v4v6interim □behave WG http://www.ietf.org/html.charters/behave-charter.html □第73回IETF behave WGのアジェンダ http://www.ietf.org/proceedings/08nov/agenda/behave.html ◆intarea (Internet Area Open Meeting) 先にbehaveの項でも触れましたが、ISP等でNATを行う場合にNAT配下で利用す るアドレスとして、ISP共有アドレス(ISP Shared Address)の新設に関する提 案がKDDIの中川氏よりありました。NAT配下で利用するアドレスとしては、RFC 1918で定義されるプライベートアドレスを利用することが一般的ですが、ISP でこのアドレス空間を使った場合に、ユーザーが設置するNAT装置配下で利用 するアドレス空間とバッティングする可能性があり、通信障害が発生するため 別のアドレスブロックが必要であること、またISP共有アドレスとしてどの程 度の大きさのアドレスブロックが必要か、などの説明がありました。この提案 に関する議論としては、現在利用されていないクラスE(240/4)の空間を利用し てはどうか、ISPによっては際限なく大きなアドレス空間を要求するのではな いか、ISP共有アドレスを利用している複数のISPにマルチホームしている場合 にはやはり通信障害が発生するのではないか、といったものがありました。そ の場の結論としては、メーリングリストで継続して議論を行うということにな りました。 また、これらのIPv4アドレス在庫枯渇、IPv6への移行といった一連のトピック に関して、今回の第73回IETFと次回のIETFとの間に、マルタ島にて中間ミー ティングを開催して集中議論を行うことが計画され、参加者数の調査などが行 われていたのですが、3回目のセッションにおいて、マルタ島での中間ミー ティングはキャンセルになったことが発表されました。中止の理由としては十 分な参加者数が期待できないことが主だと思われますが、場所を移して中間 ミーティングが行われるかもしれないとのことでした。 □第73回IETF intareaのアジェンダ http://www.ietf.org/proceedings/08nov/agenda/intarea.txt 第73回IETFミーティングの各種情報は、以下のURLより参照可能です(議事録も 今後掲載される予定です)。 □ 全体プログラム、WGアジェンダ、発表資料 https://datatracker.ietf.org/meeting/73/materials.html □ 録音 http://videolab.uoregon.edu/events/ietf/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: http://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: http://www.nic.ad.jp/member/(PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.605 【臨時号】 @ 発行 社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田2-3-4 国際興業神田ビル6F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には http://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ 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