=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.739【臨時号】2010.4.12 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.739 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本号では、vol.736、vol.737に続き、2010年3月にアメリカのアナハイムで 開催された第77回IETFのレポート[第3弾]として、「DNS関連WG報告」をお届 けします。 なお、IPv6関連WG報告に関する報告は、以下のURLからご覧ください。 □第77回IETF報告 ○[第1弾] IPv6関連WG報告(vol.736) ~v6ops WGについて~ http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2010/vol736.html ○[第2弾] IPv6関連WG報告(vol.737) ~6man WG、behave WGについて~ http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2010/vol737.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第77回IETF報告 [第3弾] DNS関連WG報告 JPNIC DNS運用健全化タスクフォースメンバー 東京大学 情報基盤センター 関谷勇司 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■dnsext WG dnsext WGでは、前回のIETF76での会合から今回のIETF77での会合までに、 一度会合が開催されていました。これは、どこかの会場にて開催されるいわ ゆるinterim meetingではなく、WebExを利用した遠隔会議として行われ、 virtual interim meetingと呼ばれました。 WebExは、最近のIETFにおいてもいくつかのWG会合に導入されており、従来 の音声中継に加えて、遠隔からの双方向参加を実現するツールとして利用さ れ始めています。 今回のdnsext WGの会合では、まず"Name equivalences"に関する議論が行わ れました。これはinterim meetingにて話し合われた議題で、DNSに完全な aliasの機能を導入しようという動きです。現在利用されいるCNAMEやDNAME といった機能では、RR(Resource Record)単位もしくはzone単位の redirectionが提供されますが、NS(Name Server)やMX(Mail Exchange)を含 めた全てのRRに完全なredirection(alias)は提供されません。 これは、もともとはIDN(Internationalized Domain Names:国際化ドメイン 名)に関連する要求として上がってきた機能です。IDNの場合、その文字上の 表記は異なっていても、同じドメイン名として扱いたいという場合が発生し ます。例えば日本語でのIDNの場合、"慶応義塾大学.日本"というドメイン名 と、"慶應義塾大学.日本"というドメイン名を、DNS的に全く同じものとして 扱いたい、という要求が出てくるかもしれません。日本語TLDでこのような 機能が導入されるかは全くわかりませんが、中国語TLDではこのような要求 があることが、以前のIETF会合にて報告されています。 この機能の提案に関して、会場では活発な議論が行われました。Paul Vixie 氏は"CLONE RR"という新たなRRを導入して解決することを提案しました。発 表の中で例として挙げられていたのは、"vix.com"というドメイン名を、 "vixie.com"ならびに"vix.sf.ca.us"というドメイン名にaliasする例です。 BINDのzone表記に従うと、以下のように定義します。 $ORIGIN vix.com @ IN CLONE vixie.com. @ IN CLONE vixie.sf.ca.us. このようにTLDから異なるドメイン名に関しても完全なaliasを提供すること を提案しています。もちろん、まだ単なる提案レベルであり、セキュリティ 的な問題やaliasのループ等、気をつけるべき多くのことがあるとも報告さ れました。会場の雰囲気としては、あまり導入に前向きとは言えず、まだ多 くの慎重な議論が必要である、という方向性になりました。 その他の議題としては、draft-ietf-dnsext-dnssec-bis-updates-10に関す る報告が行われました。09との差分が報告され、DNSSECでの応答に関しても DO bitを設定することや、CD bitが設定された問い合わせに対しては、CD bitを設定した応答をすることが必須とされました。 さらに、2009年12月16日に発生した、in-addr.arpa zoneに対するDNSKEY問 い合わせの増大に関する報告も行われました。これは、Fedora OSにあらか じめ設定されていたDNSKEYが有効期限切れになったことに起因して、世界中 のFedora OSを利用したDNSリゾルバサーバから一斉に、in-addr.arpa zone に対するDNSKEYの問い合わせが増大したという現象です。現在は収まりつつ あることが報告されましたが、BINDへの改善要求も出され、DNSSEC導入に向 けての一つの教訓となりました。 ■dnsop WG dnsop WGの会合では、通常通りWG draftの状況報告や、関連draftの報告が 行われました。まず、draft-ietf-dnsop-dnssec-dps-framework-01に関する 報告が行われました。.SE TLDは、このフレームワークに従い、OpenDNSSEC (*1)を用いた運用を開始したと紹介されました。また、Root zoneの署名に 関する事項も追記されています。 次に、draft-ietf-dnsop-dnssec-trust-history-01ならびに、 draft-ietf-dnsoprfc4641bis-02に関する報告が、Olaf M. Kolkman氏から行 われました。これらの報告に関しては、多くの質問がなされ、本当に提案し たものを検証しているのか、また変更の意図は何なのか等の質問が出されま した。会場の雰囲気としては、あまり説得されていない感触で、さらなる検 討を求める声が複数出された上で、より実践的な提案が求められる結果とな りました。 その他のDNSSEC関連では、draft-morris-dnsop-dnssec-key-timing-02の報 告も行われました。このdraftに関しては、いくつかの質問が出ましたが、 特に大きな反論も無く、WG draftとして採用されました。 WG draft以外としては、draft-howard-isp-ip6rdns-03ならびにNSEC3 Hash Performance、IPv6 & recursive resolversに関する報告が行われました。 IPv6の逆引きに関するdraftでは、主にCPEの場合におけるIPv6逆引きに関す る事項が変更されたとの報告がありました。会場からはあまり反応も無く、 引き続き議論が行われる運びとなりました。 NSEC3 Hash Performanceでは、NSEC3が導入されたzoneにおいて、DNSSECの validatorやAuthoritativeサーバにどの程度負荷が増えるのかの評価結果が 報告されました。結果として、validatorは鍵長が増えることが、 iteration(反復)の回数が増えることよりも負荷に影響を与えることがわか り、Authoritativeサーバは鍵長に影響されず、iterationの回数のみに負荷 が影響されることがわかったと報告されました。 IPv6 & recursive resolversでは、Yahoo!社のIPv6リゾルバに関する提案が 行われました。これは、サーバにAAAAアドレスを付加した場合、クライアン ト側のIPv6環境が適切でなければ、IPv6 timeoutによるIPv4 fallbackが頻 発するという問題に対する提起です。ISPのDNSリゾルバサーバが、クライア ントからの要求に対してAAAAを返答するにあたって、そのクライアントが適 切なIPv6環境にあるかどうか、すなわちIPv6の到達性があるかどうかを判断 してからAAAAを返すようにしたらどうか、という提案です。BINDでは、 9.7.0b2から導入されたdisable-aaaa-on-v4-transportというオプションに よって、IPv6トランスポートによるDNS問い合わせの場合のみAAAAを返すと いう機能が追加されています。この提案に関しては、AAAAを返す場合が非常 に限定される形となるため、やはりさまざまな意見が出されました。残念な がら時間が押していたため、議論に多くの時間を取ることができず、メーリ ングリストでの議論継続となりました。 (*1)OpenDNSSEC : http://www.opendnssec.org/ ■その他のDNS関連活動と雑感 その他のDNSに関連した活動としては、DNSSEC ROOT Q+A BoFが開催されまし た。このBoFでは、Root zoneがDURZ(Deliberately Unvalidatable Root Zone)(*2)によって署名され、いくつかのRoot DNSサーバが署名されたRoot zoneを提供開始したため、その影響や各Root DNSサーバでの計測結果が報告 されました。TCPによる問い合わせの増加や、UDPにおけるパケットサイズの 増大が見て取れる結果となりました。 今回のIETFはアナハイムで開催され、近くにディズニーリゾートがあったた め、多くの参加者はディズニーリゾートに入園もしくはダウンタウンディズ ニーにて食事したのではないかと思われます。普段は一人で来ている人が、 子供を連れて来ている様子も見受けられました。 IETFの会合自体は、金曜日の午後まで埋められており、以前に比べて会合の 数が増えてきた印象を受けます。また、"Bar BoF"と呼ばれる、時間外に企 画される簡易的なBoFが多く行われ始めています。これはもともとホテルの Barにて、夜に関係者だけが集まって話を行う形態で行われていたものです が、最近は昼食の時間帯に部屋を取り、気軽なミーティング形式で行われる ものも"Bar BoF"と呼ばれています。これに関しては賛否両論あるようで、 IETFメーリングリスト上でも議論が行われました。できるだけ通常のBoFと して行い、早めに事前アナウンスを行った方が参加者にとってもうれしい、 という議論がなされました。次回以降も、"Bar BoF"形式は継続されると思 われます。 (*2)DURZとは、意図的に検証不可能としたルートゾーン、またはDNSSECの検 証をできないようにするため、意図的に入れられたダミーの署名データ のことを指します。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: http://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: http://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.739 【臨時号】 @ 発行 社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田2-3-4 国際興業神田ビル6F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には http://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ http://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2010 Japan Network Information Center