=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1131【臨時号】2013.10.11 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1131 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本号では、前村昌紀による、各RIRのCEOをメンバーとして構成されるNRO EC の会合と、インターネット基盤の技術調整などを行う団体であるI*(アイス ター)による会合のレポートをお届けするとともに、I*会合の成果として声明 文を発表するに至った経緯などをご紹介します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ モンテビデオウィークを終えて JPNIC インターネット推進部 前村昌紀 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013年9月30日(月)から10月4日(金)までの1週間、私は南米ウルグアイの首都 モンテビデオに出張していました。目的は、NRO ECおよび I*(アイスター)の 合宿検討会合に参加することでした。これらの団体に関して、本稿でご紹介 します。それぞれの会合内容に関しては、基本的に公開を前提としたもので はないため、概要のご紹介になります。 ■ NRO EC合宿検討会合 NROは「Number Resource Organization」の略で、五つの地域インターネット レジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の連合体です。ICANN (The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)や他の団体に対し て、IPアドレスやAS番号を管理するレジストリの立場を代表する機能を有し ています。特にICANNの中では、2004年に取り交わしたASO-MoUによって、NRO がICANNのアドレス支持組織(ASO; Address Supporting Organization)の役 割、責任、機能を遂行することが定められています。 その中でEC (Executive Council)は、NROの意思決定を行うグループで、五つ のRIRのCEOをメンバーとして構成されます。私はアジア太平洋地域のRIRであ るAPNIC (Asia Pacific Network Information Centre)の理事を拝命していま すが、その中で、APNICにおける議長とともにNRO ECオブザーバも仰せつかっ ています。そのため、今回この合宿検討会に参加したということです。 NROは、5RIRを代表して他団体に対応することと、5RIRの協調活動を行うこと を目的としていますが、専任のExecutive Secretaryを1人置く以外、すべて の活動はRIRの職員が分担で行っています。世の中に対しても、NROよりも各 RIRの方が名前が通っているのが実情で、NROとしてのアイデンティティが確 立していないという状況にあります。そういう中で、今回の合宿検討会合は、 戦略計画立案を目標として、外部コンサルタントをファシリテータに、ワー クショップ形式で、9月30日(月)、10月1日(火)の2日間にわたって開催されま した。 ワークショップは、NRO ECメンバーであるRIRのCEO以外にも、オブザーバ、 随行した各RIRの職員も参加しました。全体検討でも積極的に発言が求めら れ、小グループに分かれた作業も行いながら「強み(Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)」といったそれぞれの 側面から分析する、SWOT分析による戦略領域の検討、ビジョン(理想像として 追い求める目標)、ミッション(現在全うするべき使命)の検討を行いました。 私はNROが創設された2003年には既にAPNIC理事を務めていましたが、2日間に わたる集中的な検討で、今に至るまで気づかなかったさまざまな点に気づく ことができ、NROがどういうものであるか、何を志向するべきなのか、かなり 明確な考えを持つことができるようになりました。今回策定したビジョンと ミッションは、正式な採択手順を経て、後日公開される予定です。 ■ I* (アイスター)合宿検討会合 I* (アイスター)は、一般的にはなじみのない言葉だと思いますが、インター ネット基盤の技術調整などを行う団体のグループを指し、現段階で、ISOC (Internet Society)、IAB (Internet Architecture Board)、IETF (Internet Engineering Task Force)、IANA (Internet Assigned Numbers Authority)、 ICANN、W3C (World Wide Web Consortium), および五つのRIRの計11組織が参 加しています。InternetのIを頭文字にするところが多いことから、Iの後に ワイルドカードの*(アスタリスク)を置き、I*(アイスター) と呼んでいます。 I*11団体の代表者は、年1、2回会合を持ち情報交換を行っていますが、これ をNROの会合に合わせて、10月2日(水)と3日(木)、モンテビデオにて行いまし た。 会合は、各団体からの情報共有から始まり、以下の内容がそれぞれ報告され ました。 ・RIR : NRO共同で行った、Global IPv6 Deployment Monitoring Survey の結果 ・IETF : 最近米国の国家安全保障局(NSA)がPRISMと呼ばれるプログラムで 実施しているらしいことが明るみに出た、pervasive tracking (情報行動追尾)に関するIETF内での議論の状況 ・W3C : マーケティング用途でのtrackingに対する対策を検討する、 Tracking Protection Working Groupに関する状況 ・ICANN : 最近国際電気通信連合(ITU; International Telecommunication Union)会議体などで議論が盛んな、インターネットガバナンスの 状況 これらはどれも、現在のインターネットにおいて、大きな懸念を持たれてい る重要課題です。IPv6の普及は、日本でも大手ISPが新規顧客に対してIPv6/ IPv4デュアルスタックで提供し始めるなど徐々に浸透していますが、コンテ ンツ、サービスサイドでの取り組みは停滞している状況です。情報行動追尾 は、情報ブロッキングと併せて、利用者にインターネットに対する懐疑心を 引き起こしています。インターネットガバナンスの議論は、ITUなどの会議体 で堂々巡りの議論を繰り返すばかりの印象が強く、打開策が望まれています。 そこで、会合に参加した団体トップたちは、これらの重要課題に対して積極 的に取り組む意志を明確にし、I*11(アイスター)団体共通の姿勢を示す声明 文を発表するべきだということになりました。I*(アイスター)会合でこのよ うな声明が出されるのは、初めてのことです。 この声明文は、「今後のインターネット協力体制に関するモンテビデオ声明」 と名付けられ、現地における草案検討の後、各団体における承認プロセスを 経て、10月7日(月)に発表されました。JPNICでは、既にこの声明文を、和訳 とともにWebでお知らせしています。 インターネット関連10団体が「今後のインターネット協力体制に関する モンテビデオ声明」を発表 https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2013/20131008-01.html (現在、IANAはICANNの一部局であるため、10団体となっています) 初めての声明発表に至ったということもありますが、インターネット基盤の 運営をリードする団体のトップによる2日間の議論は、非常に密度が濃く、充 実したものでした。 ■ 滞在記 モンテビデオは、ラテンアメリカとカリブ海地域のRIRであるLACNIC (The Latin American and Caribbean IP address Regional Registry)がオフィス を構える場所で、これらの会合はLACNICオフィスから至近のホテルで開催さ れました。LACNICオフィスは、中南米地域のインターネット諸団体もオフィ スを構える、"Casa de Internet de Latinoamérica y el Caribe"(ラテンア メリカとカリブのインターネットの家)にあり、海岸に面した開放的な雰囲気 が漂うオフィスです。10月2日(水)の夕方は、I*(アイスター)関係者と地元の インターネット関係者が一堂に会したレセプションが行われ、歓談の輪が広 がっていました。この建物を建設する時点で、こうしたレセプションも収容 できるように作ってあるのです。Casa de Internetは、"Internet Hub for Latin America and the Caribbean"と英訳されますが、まさにインターネッ ト関係者みんなが集まるハブとして機能していることが分かります。NRO EC、 I*(アイスター)を通じて、この1週間、LACNICの会議参加者に対するもてなし は素晴らしく、Casa de Internetを含め、LACNICのホスピタリティに感銘を 受けた1週間でもありました。 ・Number Resource Organization(NRO) http://www.nro.net/ ・インターネット用語1分解説:NROとは https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/nro.html ・ICANN Address Supporting Organization (ASO) MoU http://www.nro.net/documents/icann-address-supporting-organization-aso-mou ・NRO's 2013 Global IPv6 Deployment Monitoring Survey Results http://www.nro.net/documents/2013-ipv6-survey-results ・W3C Tracking Protection Working Group http://www.w3.org/2011/tracking-protection/ ・Casa de Internet de Latinoamérica y el Caribe http://www.lacnic.net/en/web/lacnic/casa-de-internet ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ◆◇◆◇◆ 本号のご感想をお聞かせください ◆◇◆◇◆ ┃ ┃良かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1131/de507b9be6fbfaacfdf6702650ceda9d┃ ┃ ┃ ┃悪かった ┃ ┃→ http://feedback.nic.ad.jp/1131/256c9e353dd6a17addcd7348454bfe04┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: https://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.1131 【臨時号】 @ 発行 一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田3-6-2 アーバンネット神田ビル4F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には https://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 登録・削除・変更 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/ バックナンバー https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/ ___________________________________ ■■■■■ News & ViewsはRSS経由でも配信しています! ■■■■■ ::::: https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/index.xml :::::  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ■■◆ @ Japan Network Information Center ■■◆ @ https://www.nic.ad.jp/ ■■ Copyright(C), 2013 Japan Network Information Center