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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1539【臨時号】2017.10.13 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1539 です
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2017年9月上旬から中旬にかけて台湾・台中で開催された、APNIC 44カンファ
レンスのレポートを、vol.1537より連載にてお届けしています。最終回とな
る本号では、アドレスポリシー関連の動向をご紹介します。

これまでに発行した、全体概要および技術動向に関する報告は、それぞれ下
記のURLからバックナンバーをご覧ください。

□APNIC 44カンファレンス報告
  [第1弾] 全体概要報告(vol.1537)
  https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2017/vol1537.html
  [第2弾] 技術動向報告(vol.1538)
  https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2017/vol1538.html

また、JPNICブログでも本カンファレンスの様子を写真入りでご紹介していま
すので、こちらもぜひご覧ください。

  APNIC 44 フォトレポート
  https://blog.nic.ad.jp/blog/apnic44_photo/

  APNIC 44 ライトニングトークレポート
  https://blog.nic.ad.jp/blog/apnic44-lt/

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◆ APNIC 44カンファレンス報告 [第3弾] アドレスポリシー関連報告
                                               JPNIC IP事業部 川端宏生
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■ はじめに

APNIC 44カンファレンスのアドレスポリシーSIGで議論が行われたポリシー提
案6点について、議論の結果をご紹介します。JPNICブログでは、提案内容の
詳細について解説を行っています。併せてご覧いただければ、より理解が深
まるかと思います。

  (JPNICブログの記事)
  APNIC 44でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介
  https://blog.nic.ad.jp/blog/apnic44-policy-proposal/


■ アドレスに関するポリシー提案の結果について

(1)「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」の移転禁止提案
   (提案番号:prop-116)

  提案者:藤崎智宏氏

  概要:「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」の移転を禁止
        する旨をポリシーに追加する。

  (補足事項)
   ・上記在庫から割り振り・割り当てを受けてから2年間、移転を禁止する。
     IPv4アドレスが不要となった場合、割り振りを受けた組織はAPNICに返
     却する。

   ・M&A(事業移管や吸収合併など、その事実を書面などで客観的に確認でき
     るケース)による移管の場合についても、同様に禁止する。

  (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-116

  結果:コンセンサス、ただし期間については2年から5年に修正する。

この在庫から分配したIPv4アドレスについて、移転を禁止することに反対を
表明する人は少数でした。一方、2年という期間についての議論に多くの時間
が割かれていた印象です。

APNICからの分配後2年間の維持費用と、2年後の想定売却価格を比較した場
合、想定売却価格の方が高くなり、利益が出てしまうことが想定されるそう
です。そこで、IPv4アドレスの需要がなくなり価格の下がることが想定され
る「5年」に、提案内容を変更してはどうかとのコメントが出されていまし
た。

参加者の多くはこのコメントに賛同しており、期間を5年に変更した内容で賛
否を確認した結果、コンセンサスとなりました。

なお、コンセンサスを受けてAPNIC理事会では、2017年9月14日以降の申請分
を対象として、「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」から分
配済みIPv4アドレスについて、移転申請受付を一時中止とする旨が発表され
ています。JPNICにおいても同様の対応する旨を発表しています。

  最後の/8在庫のIPv4アドレス移転受付一時中止と移転対象レジストリ追加
  のお知らせ
  https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2017/20170920-01.html

(2)APNIC地域のIPv4アドレス移転時における要件緩和についての提案
   (提案番号:prop-118)

  提案者:David Hilario氏

  概要:・APNIC契約組織間のIPv4アドレス移転は、利用計画の提出なしにす
          べて受け入れる。
        ・移転先組織に利用計画の提出を義務付けている地域からのIPv4ア
          ドレス移転は、移転後5年以内に移転を受けたアドレスの50%を利
          用する計画を示すこととする。

  (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-118

  結果:継続議論

現在APNIC地域では移転先組織に対して、移転を受けるアドレスについて今後
2年間での利用計画の提出を求めています。このプロセスを経ることで、北米
とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR)で
ある、ARINからの移転を可能としています。

会場からは、需要確認の基準を簡素化することで、ARINからの移転を受けら
れなくなることを懸念するコメントが出されていました。通常、APNICカン
ファレンスにはすべてのRIRから担当者が出席しています。今回も、ARINの担
当者が出席しており、議論の場で直接確認が行われました。今回変更しよう
としている基準は、ヨーロッパ地域を受け持つRIRであるRIPE NCCと同じ基準
となっています。ARINの担当者から、この基準に変更となっても、ARINと
APNICとの移転は継続して実施されることになるのではないか、とのコメント
が得られています。

一方で、過去1年間にこのプロセスを通過できなかったケースはほとんどな
く、申請者から見た障壁にはなっていない、といったコメントや、このプロ
セスによって虚偽の移転申請を防ぐことができており、変更すべきではない
といったコメントも出されていました。

この提案は、議論が尽くされていないと判断したチェアにより、継続議論と
なっています。

(3)終了時期を定めたIPv4アドレスの一時的な移転提案
   (提案番号:prop-119)

  提案者:David Hilario氏

  概要:・一時的なIPv4アドレス移転を希望する場合には、移転終了日を設
          定する。

        ・移転終了日の延長について移転元および移転先組織の合意がない
          限りは、移転終了日をもって、対象のIPv4アドレスの分配先は移
          転元組織に戻る。

        ・移転終了日時点において移転元組織が合併や買収されていた場合
          には、その後継となる組織に戻すこととする。

        ・移転元組織のアカウントおよび後継となる組織が存在しない場合、
          対象のIPv4アドレスは管理元のRIRプールに戻すこととし、さらな
          る移転はできない。

  (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-119

  結果:継続議論

議論では、この提案が実装された場合に、APNICやJPNICといったインターネッ
トレジストリの担当者の負荷が増大することが懸念されていました。また、
この提案は、(2)の提案(提案番号:prop-118)と同一人物によるものでした。
担当者の負荷軽減を目的とする旨が謳われていた(2)の提案と考え方が全く異
なるものを、同一人物が提案していることに違和感を覚えた参加者も少なく
なかったようでした。

WHOISには、情報が正確に登録されることになりますが、分配先が容易に変
わってしまうことで、法執行機関のような登録情報利用者からすれば、追跡
にかかる負荷が増大するのではないかと言ったコメントも出されていました。

その他、手続き方法や費用や情報の取り扱い方法をはじめとして、多岐にわ
たりコメントが出されていました。この提案についても、さらなる議論が必
要と判断したチェアにより、継続議論となっています。

(4)「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」枯渇後の分配方法
   についての提案(提案番号:prop-120)

  提案者:藤崎智宏氏

  概要:・「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」からの割り
          振り・割り当てを行うことができなくなった場合、この在庫から
          の割り振り・割り当てを終了とする。

        ・この在庫からの割り振り・割り当て終了後は、「/8相当の最後の
          APNICにおけるIPv4未割り振り在庫」と「IANAから再割り振りされ
          たIPv4返却在庫」を一つにまとめる。

        ・一つにまとめられた「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」
          から、1組織あたり/21の割り振り・割り当てを行う。

        ・プールが一つにまとめられる以前に/21まで分配を受けていない組
          織は、「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」から/21になる
          まで割り振り・割り当てを受けることを可能とする。

        ・「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」から割り振り・割り
          当てを行うことができない場合、待機者リストを作成し、そのリ
          ストに基づき割り振り・割り当てを行う。新規契約者は優先的に
          リストに登録される。

  (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-120

  結果:継続議論

「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」が枯渇した後は、1組
織あたり最大/21を分配するのではなく、最大/22に変更した方がよいとのコ
メントが出されていました。提案者からも、その点については議論のポイン
トであるとの回答がありました。

また、新規参入する組織に対して、必要最小限の割り振りを行うことを目的
とする「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」の考え方を尊重
して、これまで通りの運用を行った方が良いとのコメントもされていました。
今後のIPv4アドレスの分配方針については、議論が始まったところです。本
提案に限らず、今後も議論が行われる内容かと思いますが、どのような方向
に議論が進むのかは気になるところです。

もう1点、APNICでは現在、「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在
庫」とは別の「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」から、最大/22の割
り振りを行っています。在庫がなく、割り振りを受けられない場合には、待
機者リストに掲載されることになっています。APNIC事務局から紹介された議
論当日の情報では、300組織ほどがこの待機者リストに掲載済みとのことでし
た。

提案内容にある、リストの最上位に新規参入者を追加していく方式ではなく、
在庫枯渇時点でリストを新たに作成しなおす方が良いのではないかというコ
メントが出されていました。

この提案についても、まだまだ検討すべき点は多いことから、継続議論となっ
ています。

(5)IPv6アドレス初期割り振り基準の変更提案(提案番号:prop-121)

  提案者:Jordi Palet Martinez氏

  概要:APNIC地域におけるIPv6アドレスの初期割り振り基準を変更する。

  (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-121

  結果:コンセンサス

(6)IPv6アドレス追加割り振り基準の変更提案(提案番号:prop-122)

  提案者:Jordi Palet Martinez氏

  概要:APNIC地域におけるIPv6アドレスの追加割り振り基準を変更する。

  (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-122

  結果:コンセンサス

これら二つの提案は内容がほぼ同じのため、まとめて議論が行われました。

APNIC地域では現在、IPv6アドレスの最小割り振りサイズは/32(/48のサブネッ
ト65,536個分)と定められています。最小割り振りサイズが/32よりも大きい
場合には、HD-Ratioと呼ばれる数値を参照して、割り振りを行うサイズを決
定することとなっています。

  HD-ratioとは
  https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/HD-ratio.html

このHD-Ratioと呼ばれる数値を参照せずとも、ユーザー数、インフラストラ
クチャの構造、組織の階層や地理的構造、セキュリティのためのセグメンテー
ション、長期的な割り当て計画などを考慮に入れて割り振りサイズを決定で
きる、という内容に基準を変更するものです。ただし、HD-Ratioを利用した
方法もこれまで同様に、割り振りアドレスサイズの決定の際に選択を可能と
しています。

このように基準を変更することで、希望する数のIPv6アドレスの分配を受け
ることができるようになり、IPv6の導入促進につながると提案者からは説明
が行われていました。

今回提案された内容は、既にRIPE NCCでは実装済みとなっています。出席し
ていたRIPE NCCの担当者からは、IPv6アドレスの分配業務を行う上で、特段
の問題は起きていない旨のコメントが出されていました。

提案に反対する意見もなく、議論の結果、両提案ともコンセンサスになって
います。

                      ◇                      ◇

コンセンサスとなった3件の提案は、2017年9月18日~10月18日の予定で、
Policy SIGメーリングリストにおいて、コンセンサスの確認が行われていま
す。もし、お気づきの点があれば、この期間中にコメントをお送りいただけ
ればと思います。

コンセンサスの確認期間を経て、APNIC理事会の承認後、提案内容がポリシー
として実装されることになります。

                      ◇                      ◇

JPNICおよびポリシーワーキンググループでは、これまで同様に、IP-USERS
メーリングリストの参加者に対して、提案内容を紹介しています。今回はそ
れに加えて、「APNIC 44に向けた事前の意見交換ミーティング」を開催し、
APNIC 44にて議論される予定の各ポリシー提案について意見交換を行いまし
た。ここでいただいたご意見は、ポリシーワーキンググループからAPNICの
メーリングリストに紹介されています。

今後も提出された提案についてコメントがあれば、ぜひお寄せいただければ
と思います。日本からの意見として、議論の参考となるようAPNICコミュニ
ティにインプットしていきたいと思います。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.1539 【臨時号】

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