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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1673【臨時号】2019.4.9 ◆
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◆ News & Views vol.1673 です
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2019年2月下旬に韓国・大田広域市で開催された、APRICOT 2019/APNIC 47カ
ンファレンスのレポートをvol.1667より連載にてお届けしていますが、最終
回となる本号では[第3弾]として、アドレスポリシーに関する議論の動向をご
紹介します。

本カンファレンスの全体概要や技術動向に関するレポートについては、下記
のバックナンバーをご覧ください。

□APRICOT 2019/APNIC 47カンファレンス報告
  [第1弾] 全体概要報告(vol.1667)
  https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2019/vol1667.html
  [第2弾] 技術動向報告(vol.1670)
  https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2019/vol1670.html

また、本カンファレンスの様子は、JPNICブログでも写真を交えてご紹介して
いますので、ぜひ併せてご覧ください。

    APNIC47フォトレポート
    https://blog.nic.ad.jp/blog/apnic47_daejeon/

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◆ APRICOT 2019/APNIC 47カンファレンス報告 [第3弾]
   アドレスポリシー動向報告
                                               JPNIC IP事業部 川端宏生
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■ はじめに

JPNICでは、IPアドレス事業における国際調整・連携業務の一環として、APNIC
をはじめとする各地域インターネットレジストリ(RIR)で行われている、IPア
ドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論へ参加しています。各地域にお
ける議論の動向を把握することで、APNICやJPNICの分配ポリシーが変更とな
る際にも機動的に対応できるように、また、JPNICのIPアドレス事業のサービ
ス向上につながるよう、情報収集に継続して取り組んでいます。

本稿では、APRICOT 2019/APNIC 47カンファレンスのうち、APNIC 47カンファ
レンスで行われた、ポリシー変更提案に関する議論についてご紹介します。
本稿ですべての内容をご紹介することは難しいため、APNIC 47カンファレン
スのWebページに掲載された資料なども併せてご参照いただければ、理解に役
立つかと思います。

  APNIC 47プログラム (Schedule | APNIC 47)
  https://conference.apnic.net/47/program/schedule/#/day/1

IPアドレス・AS番号を管理するレジストリは、IPアドレス・AS番号の分配ルー
ルを定めたポリシー文書に従って管理業務を行っています。同時に、このポ
リシー文書の策定、改定プロセスをPDP (Policy Development Process)とし
てまとめています。PDPでは、ポリシー提案の提出から実装までが、一連の流
れとしてわかるようになっています。APNICおよびJPNICにおいても同様に、
PDPが策定されています。以下のWebページも併せてご覧ください。

  APNICのPolicy Development Process
  https://www.apnic.net/community/policy/process/

  JPNICにおけるIPアドレスポリシーの策定
  https://www.nic.ad.jp/ja/ip/address-policy.html


■ アドレスポリシーSIG (Special Interest Group)での議論

APNIC 47カンファレンスにおいては、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに
ついて議論を行うアドレスポリシーSIGで、5点のポリシー変更提案の議論が
行われました。提案と議論の結果を、以下の通りご紹介します。提案の詳細
は、提案のタイトル部分にあるURLから確認することができます。また、JPOPF
運営チームより、ip-usersメーリングリスト(ML)に紹介されていますので、
併せてご覧ください。

      [結果]      提案番号 : 提案名(日本語訳)および提案の概要
  ---------------------------------------------------------------------
    [継続議論]    prop-124 : Clarification on IPv6 Sub-Assignments
                             (IPv6アドレス割り当ての定義の明確化提案)
                             https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-124/

                  (提案の概要)
                  ホットスポット、P2PのリンクやVPNなど、継続的にIPv6
                  アドレスを付与しないケースは、再割り当てとはみなさ
                  ないこととする。

    [継続議論]    prop-126 : PDP Update
                             (APNICにおけるポリシー策定プロセスの修正
                             提案)
                             https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-126/

                  (提案の概要)
                  SIGセッションおよびAPNIC総会(AMM)の双方において、コ
                  ンセンサスが必要である点を、SIGセッションおよびSIG
                  ML双方でのコンセンサスを必要とするよう変更を行う。

                  SIGの運営を担うチェアが、適切にSIGを運営できていな
                  いと判断された場合には、第三者がAPNIC理事会に申し立
                  てを行えるプロセスを追加する。

  [コンセンサス]  prop-127 : Change maximum delegation size of 103/8
                             IPv4 address pool to a /23
                             (最後の/8相当のIPv4アドレス未割り振り在
                             庫(103/8)からの最大割り振りサイズを/23へ
                             変更する提案)
                             https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-127/

                  (提案の概要)
                  APNICアカウントを持つ組織が、最後の/8相当のIPv4アド
                  レス未割り振り在庫から割り振り・割り当てを受けるこ
                  とのできるサイズを、/22から/23に変更する。

  [コンセンサス]  prop-128 : Multihoming not required for ASN
                             (AS番号割り当てにおけるマルチホーム要件
                             撤廃提案)
                             https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-128/

                  (提案の概要)
                  すでにマルチホーム接続を行っている場合もしくは、他
                  のASと相互接続を行う必要性があることを証明できる場
                  合、AS番号の割り当てを受ける要件を満たしているもの
                  とする。

  [コンセンサス]  prop-129 : Abolish Waiting list for unmet IPv4
                             requests
                             (IPv4アドレス返却プールからのIPv4アドレ
                             ス割り振り・割り当て待機者リストの廃止提
                             案)
                             https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-129/

                  (提案の概要)
                  IANAからの再割り振りまたは、APNICへ返却されたIPv4ア
                  ドレスからの割り振り・割り当てを希望する組織の待機
                  者リストを廃止する。

                  また、APNICへ今後返却されるIPv4アドレスは、最後の/8
                  相当のIPv4アドレス未割り振り在庫からの割り振りと同
                  じポリシーを適用して、割り振り・割り当てを行う。
  ---------------------------------------------------------------------

APNIC事務局に提出された提案は、カンファレンス期間前に、アドレスポリ
シーSIGのMLで議論が行われます。しかし今回は、MLでの議論がほとんど行わ
れず、提案者と参加者が顔を合わせることとなるカンファレンス期間中に、
集中して議論を行うこととなりました。

[継続議論]となった二つの提案、prop-124 (IPv6アドレス割り当ての定義の
明確化提案)と、prop-126 (APNICにおけるポリシー策定プロセスの修正提案)
はいずれも、ポリシー変更の必要性を問うコメントが多く出されていました。

IPアドレス・AS番号の分配ポリシーは、何か問題があれば、問題だと考える
人が変更を提案すればよい、というボトムアップのプロセスに支えられてい
ます。現行ポリシーの解釈で提案者の問題を解決可能なのではないか、現状
では問題が見受けられないプロセスを変更する必要があるのか、といった根
本をなす問いにも、明確に答えを出す必要があります。今回の議論では、提
案者は会場からのこれらの質問に、誰もが納得する答えを出せなかったこと
もあり、継続議論の結果となっています。

[コンセンサス]となった提案のうち、prop-128 (AS番号割り当てにおけるマ
ルチホーム要件撤廃提案)は、AS番号割り当てに関するポリシー変更の提案で
す。独自の経路制御ポリシーを持つネットワークが、他のネットワークに接
続しようとする際の選択肢の一つとして、グローバルAS番号の割り当てを受
けることが加わることを、高く評価するコメントが出されていました。その
他にも、接続先となるASが限られているなどの地域的な事情により、一つの
ASとしか接続が難しいケースでも、AS番号の割り当てを受けることが可能と
なるなど、ネットワーク運用を実際に担当する立場の参加者から、自身の経
験に基づいたと思われる、提案への賛同のコメントが多く出されていました。

prop-127 (最後の/8相当のIPv4アドレス未割り振り在庫(103/8)からの最大割
り振りサイズを/23へ変更する提案)と、prop-129 (IPv4アドレス返却プール
からの割り振り待機者リストの廃止提案)はいずれも、IPv4アドレス分配に関
するポリシー変更の提案です。特にprop-127に関しては、今回の提案に至る
背景を、JPNICブログにまとめています。こちらも参考にしていただければと
思います。

  JPNICブログ:APNIC 47でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案
  ご紹介
  https://blog.nic.ad.jp/blog/apnic47-policy-proposal/

本提案に関しては、IPv4とIPv6が共存する現在のインターネットが今後も継
続するのか、あるいは、IPv6のみの世界になっていくのか、長期的な視点で
これからのインターネットがどうなっていくかを考えた上で、IPv4アドレス
の分配方法を検討するのがよいのでは、というコメントが出されていました。
また、地域の発展のためにも、スタートアップ企業がIPv4アドレスの分配を
受けることができる体制を整えておくべきだといったコメントもありました。
今回の議論では、1組織当たりの分配サイズを減らすことに賛同する姿勢が強
く見られました。


■ コンセンサスとなった提案への対応

アドレスポリシーSIGにおいてコンセンサスとなった、prop-127および
prop-129の提案について、 翌日開催されたAPNIC総会においてもコンセンサ
スとなりました。これを受け、APNICではこれらの提案が実装されるまでの
間、以下の対応を取ることが発表されました。

  APNICからのアナウンス:[Apnic-announce] Changes to APNIC IPv4
  maximum delegation size and IPv4 Recovered Pool waiting list

  (メーリングリスト掲載記事のアーカイブ)
  https://mailman.apnic.net/mailing-lists/apnic-announce/archive/2019/02/msg00004.html

  (prop-127について)
  ・2019年2月28日12:00(日本時間)以降に受け付けたIPv4アドレス割り振り
    申請は、最大割り振りサイズを/22(1,024アドレス)から/23へ変更しま
    す。ただし、現在有効なポリシーに合わせて、/23を別途予約しておくこ
    ととします。また、4週間のコメント募集期間を経て、APNIC理事会にお
    いて、ポリシー提案を実装するかどうかの判断が行われます。その判断
    により、以下の通りの対応を行います。

    * 提案の実装が却下された場合には、予約されていた/23を、申請者に割
      り振ることとします。

    * 提案の実装を承認した場合には、予約を解除し、その/23は他の申請者
      に割り振ることとします。

  (prop-129について)
  ・APNICでは在庫が0のため、返却再分配IPv4アドレス在庫からの割り振り
    希望者は引き続き、待機者リストへ掲載します。提案の実装を承認した
    場合には、待機者リストへの掲載および公開を中止します。

APNICでの対応に合わせ、JPNICにおいても同様の対応をすることを、2019年2
月28日にご案内しています。

  IPv4アドレス新規割り振りサイズ変更のお知らせ
  https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2019/20190228-02.html


■ おわりに

提案に関する議論は、IPアドレス・AS番号の分配を受けている方や、これか
ら分配を受けようとする方を中心に、インターネットを利用される方であれ
ば密接に関係がある内容が多く含まれています。とはいえ、英語での議論と
なりますので、参加へのハードルを感じられている方もいらっしゃるのでは
ないでしょうか。日本では、JPOPF運営チームが中心となって、提案の日本語
訳での紹介、日本語での意見収集ミーティングの開催など、参加へのハード
ルを低くするための取り組みが行われています。JPOPF運営チームの取り組み
は、APNIC管轄地域でのモデルケースの一つとして、アドレスポリシーSIGの
チェアからも高く評価されています。

次回APNIC 48カンファレンスは、2019年9月に開催予定となっています。それ
に先立ち、第36回JPNICオープンポリシーミーティングが、2019年6月中旬頃
に開催される予定です。また、2019年8月頃には「APNIC 48に向けた意見交換
ミーティング」の開催が予定されています。APNICでの提案に、日本語で気軽
にコメントできるよい機会ですので、ぜひともご参加いただければと思いま
す。時期が近づきましたら、JPOPF運営チームからip-users MLなどで案内が
行われる予定です。


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