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JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1757【定期号】2020.3.16 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1757 です
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毎月15日(土日祝の場合はその翌営業日)に発行している定期号では、特集記
事のみならず、業界メンバーのコラムや用語解説、統計などもお届けしてい
ます。

本号の特集では、2月中旬から下旬にかけてオーストラリア・メルボルンで開
催されたAPRICOT 2020/APNIC 49カンファレンスの様子をお伝えする連載の第
1弾として、会合の全体概要およびアドレスポリシー関連の動向についてご
報告します。

News & Views Columnでは、株式会社QTnetの末松慶文さんに、世界と日本の
比較から見えてくるDNSSECの普及についてお書きいただきました。また、イ
ンターネット用語1分解説では、認証局の一つである「Let's Encrypt」につい
て解説しています。

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◆ 目次
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【 1 】特集 「APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンス報告 [第1弾]
              全体概要およびアドレスポリシー関連報告」
【 2 】News & Views Column
       「世界と日本の比較からDNSSECの普及について考える」
         株式会社QTnet  末松慶文氏
【 3 】インターネット用語1分解説
       「Let's Encryptとは」
【 4 】統計資料
         1. JPドメイン名
         2. IPアドレス
         3. 会員数
         4. 指定事業者数
【 5 】イベントカレンダー

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【 1 】特集 「APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンス報告 [第1弾]
              全体概要およびアドレスポリシー関連報告」
                                               JPNIC IP事業部 中川香基
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APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンス(以下、APRICOT 2020/APNIC 49)が2020
年2月12日(水)~2月21日(金)にかけて、オーストラリア・メルボルンにて開
催されました。当初、APRICOT 2020/APNIC 49はフィジーでの開催を予定して
いましたが、会場ホテルの改装のためにメルボルンへ変更となりました。本
稿では、APRICOT 2020/APNIC 49の開催概要とアドレスポリシーに関する議論
の動向についてご紹介します。


■ APRICOT 2020/APNIC 49開催概要

APRICOT 2020/APNIC 49は10日間の会期中、前半の5日間は「ワークショップ」
が開催されました。後半の5日間はポリシーやNIR (National Internet
Registry; 国別インターネットレジストリ)、ソーシャルな課題など特定分野
に関心を持つ人達で議論が行われる「SIG (Special Interest Group)」、参
加者が自由に語り合う「BoF (Birds of a Feather)」、APNIC総会にあたる
「AGM (APNIC Annual General Meeting)」、その他各種技術に関する講演等、
多様なプログラムが用意されたカンファレンスセッションが開催されました。

主催者報告によると、今回のAPRICOT 2020/APNIC 49の現地参加者総数は世界
60の国と地域より563名でした。全世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス
感染症「COVID-19」の影響を受け、オーストラリア政府の方針により、中国
滞在者40人の参加が不可能となるなど、例年は700名を超える現地参加者数に
対し、やや小規模となりました。なお、遠隔参加ツールとして用意されたZoom
では185名の参加があり、YouTubeによるライブ配信は2,313 viewsとのことで
した。

会期中のセッションは動画、資料、発言録がWebで公開されています。もし興
味のある内容がありましたら、ぜひご確認ください。

  APRICOT 2020/APNIC 49プログラム
  https://2020.apricot.net/program/schedule


■ APNIC EC選挙結果報告

APNIC理事会は、会員により選出されたExecutive Council (EC、理事)7名お
よびAPNIC事務局長の計8名で構成されています。APRICOT 2020/APNIC 49では
EC選挙が行われ、最終日のAGMでその結果が公開されました。今回の選挙で
は、改選議席三つに対して、8名(うち現職1)が立候補しました。EC選挙では、
事前にWebサイト上でプロフィールが公開され、投票が実施されます。今回よ
り、投票用紙を用いた現地投票が廃止となり、投票手続きはすべてオンライ
ンとなりました。この制度変更に伴い、これまでは投票用紙を受け取る場所
であったブースは、電子投票のヘルプデスクとなっていました(次回カンファ
レンスからは撤去を予定とのことです)。

今回の選挙では、Policy SIGで議長を務められてきたSumon Ahmed Sabir氏
(Fiber@Home Limited/バングラデシュ)、現職として実績を上げてきたKams
Yeung氏(Akamai Technologies/香港)、フィリピンのPhNOGチェアを務め、コ
ミュニティに貢献してきたAchie Atienza氏(Globe Telecom/フィリピン)の3
名が当選されました。

APNIC理事会の新体制は、下記の通りになります。

  ★・Achie Atienza氏(Globe Telecom/フィリピン)
    ・Gaurab Raj Upadhaya氏(Amazon Web Services:ネパール)
  ☆・Kam Sze Yeung氏(Akamai Technologies:香港)
    ・Kenny Huang氏(TWNIC:台湾)
    ・松崎吉伸氏(IIJ:日本)
    ・Paul Wilson氏(APNIC事務局長:オーストラリア)
  ★・Sumon Ahmed Sabir氏(Fiber@Home Limited/バングラデシュ)
    ・Yuedong Zhang氏(CNNIC:中国)

    ☆は再選、★は初当選

今回選出された3名は、2年後の2022年2月までECとして任期を務めることにな
ります。


■ 国際会議参加支援プログラムで2名の若手社会人が参加

JPNICでは、APRICOT 2020/APNIC 49の開催に際し、若手人材育成のための国
際会議参加支援プログラムを用意し、今回は、国際カンファレンスに参加し
て、インターネットに関する見聞を広めたい、世界のオペレーター達と話が
してみたいという、地域インターネットに貢献されている方と、普段は異な
るレイヤーの業務をしているが、インターネットやポリシーに強い関心を持っ
ているという方の、2名の若手社会人が参加しました。事前情報交換会を通し
てカンファレンスの雰囲気を知っていただき、現地では外国人とのコミュニ
ケーションもに臆せず挑戦し、興味を持ったプログラムでは知識を得ようと
真剣に耳を傾ける姿が見られました。プログラム採用者による会議参加レポー
トは、後日JPNIC Webで公開される予定です。JPNICでは、今後もインターネッ
ト業界の人材育成に貢献できるような取り組みを続けていきます。

  2019年度国際会議支援プログラム
  https://www.nic.ad.jp/ja/intl/fellowship-program/apricot-2020.html


■ ポリシー実装報告と予定

APRICOT 2020/APNIC 49のポリシーSIGにおいて、次の2件について、それぞれ
報告が行われました。

○prop-125:「abuseメールボックス(IRTオブジェクト)の検証」実装報告

prop-125は、APNIC 46でコンセンサスとなったポリシーです。Abuse連絡先
(IRTオブジェクト)の正確性を確保するために、登録情報の検証を行うという
ものです。

前回のAPNIC 48では、351のIRTオブジェクトに対して、正確性確認のメール
送付を実施したフェーズ1の経過報告がありましたが、2019年12月からは
フェーズ2が始まり、割り当て情報に紐づくIRTオブジェクトも対象となりま
した。直近6ヶ月間のデータによると、調査が行われた9,623件中5,995件、
62.3%が検証に成功したとのことでした。前回フェーズ1の報告では54.7%で
あったことを考えると10ポイントほど上がってはいますが、いまだ4割弱も検
証できていない状況です。また、実装後のメンバーからのフィードバックと
して、ある政府機関では電子メールのリンクをクリックしないように推奨さ
れているので、この方法では難しいとの意見や、大手ISPでは100人以上の参
加者がいるメーリングリスト宛に送付されるが、実際の担当者に行き当たら
ず対応が難しいため、ポータル経由や返信・リンククリックの必要のない形
式に変更してほしいとの声が上がったとのことでした。また、会場からも、
複数のアカウントに紐づくメールアドレスの場合、大量送信を理由に迷惑メー
ル判定してしまい、気づけないといった声も上がっていました。制度として
の課題は多くありますが、引き続き正確性向上に取り組み続けることが重要
となるでしょう。

○prop-132:「APNICの未割り振りアドレスにおけるRPKI ROAの発行につい
  て」実装計画

prop-132は、APNIC 48でコンセンサスとなった提案です。未割り振りのAPNIC
が保有するアドレスに対して、AS0のRPKI ROAを発効し、不正な経路広告を防
ごうというものです。今回はその実装に関する予定が発表されました。

実装開始は2020年中頃を予定しており、4段階に分けて実装することでリスク
の最小化を図るとのことです。最初に試験用アドレスの実装を行い制度運用
の課題を探り、次に文書用アドレス、3番目に未割り振りアドレス、最後に返
却アドレスというように実装を行います。AS0の発効はdelegated-extended
stats fileを使用して行います。このファイルはアドレスの状態が一目でわ
かるようになっており、Web上で公開されているので、誰でも確認をすること
ができます。このポリシーの効果を高めるためには、RPKIの普及率向上が必
要不可欠となります。まだ実装していない方は、検討されてみてはいかがで
しょうか。


■ ポリシーSIGでの議論とその結果

APRICOT 2020/APNIC 49のポリシーSIGでは、3件のポリシー提案が行われまし
た。各提案の議論結果についてご紹介します。提案の内容や事前情報に関して
は、JPNICブログにまとめていますので併せてご確認ください。また、
IP-USERSメーリングリストでは、カンファレンス開始前にJPOPF運営チームに
よって、日本語での提案紹介および意見募集が行われています。今後の動向
把握には、IP-USERSメーリングリストの登録をぜひお願いします。

  APNIC 49でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介
  https://blog.nic.ad.jp/2020/4321/

  IP-USERSメーリングリスト
  https://www.nic.ad.jp/ja/profile/ml/mailman.html#join-ip-users

○prop-130:「移管ポリシーの修正」
  提案者:Jordi Palet Martinez氏
  https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-130

  概要:セクション8.4.「合併と買収の記録」、セクション11.0.「IPv6の移
        転」、セクション13.3.「AS番号の移転」について、移管可能なシ
        チュエーションを明記する(合併・部分合併・事業買収・組織の再編
        成・事業拠点の変更)。APNIC地域外を含むケースでも、対応するRIR
        にポリシーが存在する場合は、これを認める。

  結果:コンセンサスに至らず、継続議論

本提案は、前回のAPNIC 48から継続議論となっている提案です。前回の提案
時はIPv6の移管制度実現を中心に主張していましたが、今回はIPv4、IPv6、
AS番号の各文章の定義を明確にしたいということを軸に主張していました。
また、件数は少ないものの、RIR間をまたぐ事業拠点の変更に考慮する文言が
必要だと述べました。参加者からは、「103/8(APNIC地域における最後の/8在
庫)のアドレスは、割り振り後5年の間移転を行うことができない」という現
在のルールに関して、ARINでは同様のポリシーに対してA社からB社へ移管を
行い、B社が移転を行うというような、抜け道的手法を行う組織が見られたこ
とから、移管を利用したグレーなアドレスの移動を考慮して制度の実装を考
えなけばならないとコメントがありました。他の参加者は現行制度で困って
いるという意見はなく、変更の必要性を参加者は感じることができなかった
様子でした。

○prop-133:「再割り当ての定義明確化」
  提案者:Jordi Palet Martinez氏
  https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-133

  概要:2.2.3  割り当ての内容を下記に変更する。
    旧:割り当てはLIRおよびエンドユーザーに行われ、それらの運用するイ
        ンターネットインフラストラクチャの特定の目的で使用される。目
        的は申請時のドキュメントに記載し、再割り当てはしないものとす
        る。

    新:割り当てはLIRおよびエンドユーザーに行われ、それらの運用するイ
        ンフラストラクチャ内で排他的に使用される。

  結果:コンセンサスに至らず、継続議論

本提案は、前回APNIC 48では廃案となったprop-124を再提案したものです。
提案者の主目的は変わらず、現行の文言のままであると、申請時に記載した
目的でしか利用できず、例えば、大学などで当初インフラ用に割り当てられた
IPアドレスをゲストWi-Fiなどに利用することが違反行為になってしまうこと
から、そのような事態を避けるために文言を変更したいと主張しました。一
方で、現行のポリシー文書のままでも運用上は何ら問題が発生していない、
仮に申請時のドキュメントと異なってもAPNICが取り締まるようなことは行っ
ていないので、変更する必要性はないと考えている方が多く、結果的に今回
もコンセンサスには至りませんでした。

○prop-134:「ポリシー策定プロセスの修正」
  提案者:Jordi Palet Martinez氏
  https://www.apnic.net/community/policy/proposals/prop-134

  概要:次の通り、ポリシー文書の内容を変更する。
      - コンセンサスの定義を"general agreement"から"rough consensus"
        (RFC 7282)へ変更
      - メーリングリスト(ML)、電子媒体(CONFER)でのコンセンサスを明記
      - 否決後、次回OPMまでに修正がない提案を廃案とする。

  結果:コンセンサスに至らず、廃案

本提案は、prop-133と同じく、前回のAPNIC 48で廃案となったprop-126を再
提案したものです。前回提案時に含んでいた、チェアの裁量によるラストコー
ル延長制度の廃止や、ラストコール後のチェアによるコンセンサス宣言の期
限、アピールプロセスの設置などを排除し、変更項目を絞って再提案しまし
た。既に行っているCONFERや電子的手段を公式なものとして取り込むことで、
電子媒体での遠隔参加者を受け入れ、コミュニティの意見をより広く取り入
れること、そしてコンセンサスの定義をすべてのRIRで統一し、IETFと同じく
ラフコンセンサスとしたいということを目的として挙げました。また、現在
のPDP (Policy Development Process; ポリシー策定プロセス)は10年以上大
きな見直しが行われていないことから、APNIC事務局はPDPの見直しを行って
いるとの報告がありました。この見直しに関して、SIGガイドラインとPDPの
関係性、すべてのSIGで統一的に作成されたガイドラインの見直しについて議
論となりましたが、提案に関する具体的なコメントは挙がりませんでした。
結果、本提案はコンセンサスを得られませんでした。最後に、提案者は一方
的に提案する形ではなく、コミュニティから参加者を募りタスクフォースを
組織し、新しいPDPを考えたいと述べました。一方で、APNIC事務局による見
直しが進められていることを踏まえ、その結果を受けてから次のアクション
を行うということで提案者は合意し、本提案は廃案とすることを決めました。


■ 次回以降のAPNICカンファレンスについて
   ~APNICカンファレンスが6年ぶりの日本開催決定~

次回のAPNIC 50は、バングラデシュ・ダッカにて、2020年9月3日(木)~10日
(木)に開催を予定しています。バングラデシュでの開催は2016年に予定され
ていましたが、国内情勢の悪化を理由にコロンボ(スリランカ)に変更となっ
た経緯がありました。今回が初の開催となります。また、次回のAPRICOT
2021/APNIC 51は、2021年2月16日~26日にフィリピン・マニラでの開催を予
定しています。フィリピンでの開催は2009年のAPRICOT 2009/APNIC 27以来で
す。

そして、2021年9月9日~16日に開催されるAPNIC 52は日本での開催が決定し
ました。場所は北海道・札幌市です。日本でのAPNICカンファレンス開催は
2015年のAPRICOT 2015/APNIC 39(福岡)以来6年ぶりになります。本カンファ
レンスにおいて、JPNICはローカルホストを務めさせていただきます。関係者
のみなさまにはお願いをすることもあるかと思いますが、ご支援・ご協力の
ほどなにとぞよろしくお願いいたします。国際カンファレンスに日本で参加
できる貴重な機会ですので、この機会にぜひお越しください。

APNICカンファレンスは、APNICメンバー以外の方にも広く門戸を開いていま
す。ポリシー動向はもちろん、インターネットに関心をお持ちの方はぜひ一
度参加されてみてはいかがでしょうか。現地参加以外にも、YouTube Live等
での中継で遠隔参加することもできます。英語でのカンファレンスですが、
同時英語字幕等、初心者や非ネイティブスピーカーへの配慮もなされている
ので、英語を得意としない人も参加しやすいカンファレンスとなっています。
みなさまと、APNICカンファレンスの場でお会いできることを楽しみにしてい
ます。


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃     ◆◇◆◇◆  本特集のご感想をお聞かせください  ◆◇◆◇◆     ┃
 ┃良かった                                                          ┃
 ┃ https://feedback.nic.ad.jp/1757/ba7a2458abf39d98bae5495dc1459cf3 ┃
 ┃                                                                  ┃
 ┃悪かった                                                          ┃
 ┃ https://feedback.nic.ad.jp/1757/aa20e687f29cbb7139e57f949105a0fc ┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

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【 2 】News & Views Column
       「世界と日本の比較からDNSSECの普及について考える」
                                                株式会社QTnet 末松慶文
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

DNSSECは普及が進んでいないと言われていますが、果たして本当にそうでしょ
うか。

フルリゾルバでのDNSSEC検証の普及率に関するAPNICの調査結果(*1)による
と、2020年現在、全世界では24.6%の普及率となっています。特に、2018年か
ら2020年にかけては10ポイント以上伸びていることから、近年は順調に普及
が進んでいることが見て取れます。全世界の普及率を押し上げている要因の
一つとして、北欧の国々やサウジアラビアの普及率が高いことが挙げられま
す。一方、日本の状況に目を移してみると、2014年で約5%、2020年の現時点
で約9%の普及率となっています。全世界と比較した場合に、普及率とその伸
び率で大きく後れを取っている状況です。

そこで、DNSSEC検証の普及が進んでいるスウェーデン、アイスランド、サウ
ジアラビアの関係組織に「なぜ普及が進んでいるか」について、その背景な
どを取材しました。

スウェーデンはDNSSECの署名・検証のどちらも普及が進んでおり、特に検証
については85%を超える非常に高い普及率となっています。取材によると、ス
ウェーデンのDNSSECに関連するコミュニティーは、".SE"が署名されたときか
ら技術的な情報を集めていたため、早い段階でフルリゾルバ側でのDNSSEC検
証が有効にできたそうです。またその普及率を上げるため、まず複数の大手
の通信キャリアがDNSSEC検証に対応し、続いて中小のキャリアをMeetup(技術
的な交流会・勉強会)などでフォローすることによってDNSSEC検証を導入して
います。

次に、スウェーデンにおけるDNSSECの署名の普及状況を見てみると、全ドメ
イン名の約半数が署名されており、非常に普及が進んでいることがわかりま
す。この署名側の高い普及率には、充実したトレーニングコース、DNSSEC署
名に対応したレジストラに対する補助金/助成金があり、加えてDNSSEC検証と
同様にMeetupでのフォローや、メーリングリストでの交流を積極的に行って
いることが理由として挙げられます。

次にアイスランドですが、人口が36万人程度と比較的コンパクトな国です。
DNSSEC署名はあまり進んでいませんが、大手3社がDNSSEC検証に対応すること
で、検証は約95%と普及が進んでいます。また、ICANNの方と協力してトレー
ニングなどを行い、DNSSECの普及に取り組んでいるそうです。

最後にサウジアラビアですが、DNSSEC検証の普及率は約96%となっており、世
界で最も高くなっています。サウジアラビアでは、2018年半ばまではDNSSEC
検証の普及率は約5%でしたが、2018年末には約60%、そして2019年半ばには
約96%と、1年半程度で急激に普及が進んだことがAPNICの資料から読み取れま
す。これは、規制機関である通信情報技術委員会(CITC)がDNSSEC検証の普及
率にKPI(重要業績評価指標)を設定し、ISPに対してDNSSEC検証をenforceした
結果であることが、サウジアラビアの関係組織への取材でわかりました。

今回、DNSSECの普及状況と対応が進んでいる国々について取材したことで、
私が普段感じていたよりも、世界ではDNSSECの対応が進んでいることがわか
りました。一方で、普段感じていたよりも、日本の対応が進んでいないこと
がわかりました。取材の中で特に印象深かったのは、スウェーデンのDNS技術
者と、権威側の署名に問題があり検証に失敗した際の対応についてのディス
カッションの中で「権威側の署名に問題があった時は、ISPの検証側は(一時
的に問題のあるドメイン名のDNSSSEC検証を無効化せず)直るのを待てばいい
よ」と言っていたことです。確かにそうだなぁと思う反面、お客さまが名前
解決できないのであれば、なんとかしたい気持ちもあり想いは複雑です。

本稿をお読みの皆様は、どう思われるでしょうか。私はDNS Summer DAYや
JANOGなどに参加しておりますので、皆様と本稿の内容をはじめDNSのさまざ
まな課題についてディスカッションができれば幸いです。

(*1) DNSSEC World Map - APNIC labs
     https://stats.labs.apnic.net/dnssec


■筆者略歴

末松 慶文(すえまつ よしぶみ)

2008年、九州通信ネットワーク株式会社(現 株式会社QTnet)入社。主にDNSや
メール、認証などのサーバに関する構築・運用・保守に従事し、産学問わず、
さまざまな共同研究にも参画。また、2017年よりDNSOPS.jpの幹事としても活
動。
QTnet RECRUITING SITE 社員インタビュー
https://www.qtnet.co.jp/recruit/people/p01.html


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 3 】インターネット用語1分解説
         「Let's Encryptとは」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Let's Encrypt (https://letsencrypt.org/)は、無料でWebサーバ向けの
SSL/TLS証明書を発行している認証局(*1)で、2016年4月に正式運用を開始し
ました。運営しているのはISRG (Internet Security Research Group)で、
HTTPSの普及を目的とした団体です。Mozilla Foundation、電子フロンティア
財団(Electronic Frontier Foundation; EFF)、ミシガン大学、Cisco社、
Akamai社の出資により2013年5月に設立されました。

特徴として、前述のように無料で証明書を発行しますが、発行できるのはド
メイン名の登録者または管理者であることを証明するDV (Domain Validation)
証明書だけという点が挙げられます。組織の実在を確認するOV (Organization
Validation)証明書、さらに厳密な実在確認を行うEV (Extended Validation)
証明書は発行していません(*2)。また、RFC8555に基づくACME (Automatic
Certificate Management Environment)プロトコルによって、半ば自動的に証
明書を取得できます。

発行する証明書の有効期限は90日と、短くなっています。これは証明書の誤
発行などの影響期間を短くするためです。ACMEプロトコルによる自動的な更
新が可能なので、Let's Encryptは60日ごとの自動更新を推奨しています
(*3)。

(*1) 認証局
     https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-na.html#15-CA

(*2) よくある質問
     https://letsencrypt.org/ja/docs/faq/

(*3) Why ninety-day lifetimes for certificates?
     https://letsencrypt.org/2015/11/09/why-90-days.html


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 4 】統計資料
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1. JPドメイン名

o 登録ドメイン数(2019年10月~2020年3月)
--------------------------------------------------------------------------------------------
日付|  AD  AC    CO    GO   OR    NE   GR   ED   LG   GEO   GA     GJ     PA   PJ   TOTAL
--------------------------------------------------------------------------------------------
 10/1|253 3649 426223 581 37088 13154 5896 5402 1890 2202 972685  96461  9972 1941 1577397
 11/1|254 3649 427262 583 37141 13124 5877 5393 1890 2192 975000  95938  9930 1930 1580163
 12/1|254 3652 428144 586 37202 13094 5873 5396 1891 2191 972298  95603  9767 1906 1577857
  1/1|255 3655 429226 583 37252 13048 5863 5406 1891 2187 970438  95123  9651 1829 1576407
  2/1|254 3664 429950 585 37325 13011 5850 5412 1892 2178 972621  94664  9692 1767 1578865
  3/1|254 3664 430755 588 37391 12996 5835 5419 1892 2177 974404  94199  9660 1763 1580997
--------------------------------------------------------------------------------------------

 GA:汎用ドメイン名 ASCII(英数字)
 GJ:汎用ドメイン名 日本語
 PA:都道府県型ドメイン名 ASCII(英数字)
 PJ:都道府県型ドメイン名 日本語


2. IPアドレス

o JPNICからのIPv4アドレス割り振りとJPNICへのIPv4アドレス返却ホスト数
  (2019年9月~2020年2月)
------------------------------------------
  月 |   割振   |   返却   | 現在の総量
------------------------------------------
   9 |      512 |        0 |   93297096
  10 |     1512 |        0 |   93298608
  11 |        0 |        0 |   93298608
  12 |     8192 |     7168 |   93299632
   1 |     2048 |        0 |   93301680
   2 |        0 |        0 |   93301680
------------------------------------------

□統計情報に関する詳細は → https://www.nic.ad.jp/ja/stat/


3. 会員数  ※2020年3月10日 現在

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  会員分類  | 会員数 |
 ---------------------
  S会員     |      3 |
  A会員     |      1 |
  B会員     |      2 |
  C会員     |      2 |
  D会員     |     93 |
  非営利会員|     10 |
  個人推薦  |     33 |
  賛助会員  |     45 |
 ---------------------
  合計      |    189 |
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□会員についての詳細は → https://www.nic.ad.jp/ja/member/list/


4. 指定事業者数  ※2020年3月10日 現在

   IPアドレス管理指定事業者数           456


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【 5 】イベントカレンダー
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  2020.3.19(木)                 第66回臨時総会 (東京、アーバンネット
                                神田カンファレンス)
                                第135回臨時理事会 (東京、JPNIC会議室)
  2020.3.21(土)~27(金)         IETF 107 (Vancouver, Canada)
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  2020.4.26(日)~29(水)         ARIN 45 (Louisville, U.S.A.)
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  2020.5.4(月)~8(金)           LACNIC33 (Cali, Colombia)
  2020.5.11(月)~15(金)         RIPE 80 (Berlin, Federal Republic of
                                Germany)
  2020.5.31(日)~6.14(日)       Africa Internet Summit (Kinshasa,
                                Democratic Republic of the Congo)


     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
      わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
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 JPNIC News & Views vol.1757 【定期号】

 @ 発行  一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター
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