━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1761【臨時号】2020.4.8 ◆ _/NIC ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ---------- PR -------------------------------------------------------- =====勤怠アラート付きグループウェア「TimeBiz」(1ユーザー65円~)======= 勤怠アラート機能で 有給休暇や残業時間の管理をしましょう。 詳しくはこちら→https://www.timebiz.jp/ =================================================【株式会社ASJ】====== ---------------------------------------------------------------------- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1761 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2020年2月中旬~下旬にかけてオーストラリア・メルボルンで開催された、 APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンスのレポートを、vol.1757より連載にて お届けしています。本号では連載[第2弾]として、JPNICが開催に関わった、 RPKIの導入に関する複数のセッションをご紹介します。 本カンファレンス全体の概要と、アドレスポリシーに関する議論については vol.1757で取り上げていますので、下記のバックナンバーをご覧ください。 なお、連載の[第3弾]では、RPKI以外の技術関連の動向をご紹介する予定で す。 □APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンス報告 [第1弾] 全体概要およびアドレスポリシー関連報告 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2020/vol1757.html また、本カンファレンスの様子は、JPNICブログでも写真を交えてご紹介して いますので、ぜひご覧ください。 APNIC49フォトレポート https://blog.nic.ad.jp/2020/4365/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンス報告 [第2弾] RPKIの導入/検討・ワークショップ JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ APRICOT 2020/APNIC 49カンファレンス(以下、APRICOT 2020/APNIC 49)では、 JPNICが関わるRPKIに関するセッションが複数行われました。RPKIの導入に関 するもので、前回のAPNIC 48の時からAPNICやAPRICOTプログラム委員の方々 と協力して準備が進められました。APRICOTカンファレンス全体としても、今 回は特にRPKIの話題が多い会合だったのではないかと思います。本稿では、 これらのセッションの様子をお伝えします。 ■ アジア太平洋地域におけるRPKIの導入/検討のための企画 五つのRIRでRPKIの提供が始まったのが2010年頃で、それから10年ほどが経ち ました。しかし、国際的にROA (Route Origin Authorization)でカバーされ ている経路の割合は18%程度で、広く普及したとはまだ言えない状況です (*1)。特にアジア太平洋地域では、NIRがRPKIのCA (Certification Authority; 認証局)を構築し、APNICと接続してアドレスホルダー向けにサー ビスを提供する必要があるために、APNICとNIRの連携が普及の鍵になると言 えます。 (*1) NIST(米国国立標準技術研究所)で観測されるBGPのフルルートにおけ る、ASとIPアドレス・プレフィックスのペアに対してROAがカバーし ている割合(2020年3月現在) RPKI Deployment Monitor - NIST https://rpki-monitor.antd.nist.gov/ 普及の上で、もう一つ重要なのは、実際のBGP運用に即したROAの作成/更新で す。というのも、第78回RIPEミーティングで情報共有したように(*2)、ROAを 作成した後、運用上の理由でBGP経路を変更すると、経路の検証結果が無効 (invalid)となってしまい、一部のISPやIXのネットワークに到達できなくなっ てしまいます。一般的には原因を特定しにくい問題であるため、例えば単純 にROAの数を増やすためだけのキャンペーンによって適切に更新されないROA が増えてしまうと「原因が分からないが、多くのサービスにつながらない」 「メールが送られない」といった事態を招きかねません。 (*2) Long Chopsticks in Heaven: the Importance of Cooperating when it comes to ROA https://labs.ripe.net/Members/taiji_kimura/long-chopsticks-in-heaven-the-importance-of-cooperating-when-it-comes-to-roa 従来のROAの作成をお願いする企画と異なる、適切な導入/検討をいただく企 画のために、Chiang Maiで行われたAPNIC 48の時に関係者との相談を始めま した。今回はRPKIを利用する立場と、RPKIを提供する立場の両方の立場の方々 を対象として、ワークショップを開くことになりました。 RPKIを使って経路情報の検証を行う側であるIXやISPを対象にしたものは 「RPKIディプロイアソン」と「RPKIディプロイメント」で、RPKIのCAを運用 する側であるNIRを対象にしたものは「NIRテクニカル・ワークショップ」で す。これらのワークショップを、総務省のサポートの下、開催しました。 ■ RPKIディプロイアソン ディプロイアソンとは、ディプロイ+マラソンの造語で、参加者同士でチー ムを作り情報交換をしながら進める、ハンズオン形式のワークショップです。 2020年2月17日(月)の9:30~18:00に行われ、参加者は49名でした。NSRC (Network Startup Resource Center)のフィリップ・スミス(Philip Smith)氏 をはじめとした講師による、5日間のルーティングセキュリティ・ワーク ショップに続くプログラムでもあります。 報告者の木村は、スミス氏やAPNICのタシ・プンツォ(Tashi Phuntsho)氏らの 企画チームに入り、プログラムの内容を決めていくプロセスに関わりました。 (RPKIディプロイアソン 内容) - ルーティング・セキュリティ座学 - ROAの作成(APNICのトレーニング環境使用) - ROAキャッシュの構築 - BGPルータの設定 - 相互接続、相反するROAの検証結果、検証状態を伝える、RTBH (Remotely Triggered Black Hole) - ROAキャッシュの導入モデル/冗長性 - グループ・ディスカッション https://www.nsrc.org/workshops/2020/apricot/rpki-deployathon/agenda.htmlより 最終的に、すべてのチームがROAキャッシュサーバとルータの設定を終えるこ とができました。異なる機種の相互接続や、BGPの拡張コミュニティ属性を 使ったROV (Route Origin Validation)結果の伝達といった、ハードルの高め な事柄についてもトライしました。RPKI、ROAと、これを使うROAキャッシュ サーバ、BGPルータの構成や挙動を把握する内容でしたので、自社における導 入を検討する材料になったのではないでしょうか。最新の実装状況や、ルー タが実装している範囲などの情報が集まった場でもありました。 技術的な振り返りの内容は、スミス氏が以下の資料にまとめています。 RPKI Deployathon, Summary & Findings, https://2020.apricot.net/assets/files/APAE432/deployathon-summary-and-general-discussion.pdf ■ RPKIディプロイメント RPKIディプロイメントは、RPKIディプロイアソンの各チームでの振り返りと、 普及に関する講演が行われるセッションです。RPKIディプロイアソンの翌日 の2月18日(火) 9:30~13:00に行われ、90名ほどが参加しました。振り返りの 時間には各チームの担当になった方が、設定で引っかかったところやソフト ウェアの中で使いやすかったのは何か、といった発表をされていました。 (セッションの内容) - アフリカにおける導入/SEACOMアップデート、マーク・ティンカ(Mark Thinka)氏(SEACOM社) ルータの動作について専門的に指摘。アフリカ大手3社は導入済み。 - バングラディッシュにおける導入事例、アブダル・アワル(Md Abdul Awal)氏(Mozilla、Fellowship) 本来と異なるISPによる、経路広告のインシデントを具体的に紹介。 - JPNIC roamonプロジェクト、木村泰司(JPNIC) ROAの状態をモニタリングしBGP経路と異なるときにアラートするツー ルを紹介。 - 無効なROAについて、タシ・プンツォ氏(APNIC) ROA数の増加に伴なって無効なROAも増加。 - IRRの修正できない登録について、ジョン・アレキサンダー(Jhon Alexander)氏(Aussie Broadband社) Schedule | APRICOT 2020 https://2020.apricot.net/program/schedule/#/day/7/rpki-deployment-1 - 発表資料をご覧になれます。 APIXと共同の「RPKIコミュニティ・スポンサー」として、これらのワーク ショップ開催を支えることができたほか、APIX参加企業の皆様への情報共有 や、現地参加いただくなどの協力をすることができました。 また各NIRとAPNIC Foundationの協力により、各国でRPKIの普及に関わる技術 者を紹介していただいたり、招待していただいたりしました。グループワー クのお陰もあって、参加者同士のつながりもできたようです。 ■ NIRテクニカル・ワークショップ 前述のように、RPKIのCAを提供する側の立場であるNIRを対象として、NIRテ クニカル・ワークショップを開催しました。APNICカンファレンスで毎回開か れているNIRワークショップの時間を分割し、前半にポリシーやレジストリ業 務に関わる話題の「NIRワークショップ」を、後半にRPKIのような技術的な テーマを扱う「NIRテクニカル・ワークショップ」を行う形になりました。 2020年2月18日16:30~18:00に行われ、七つのNIRすべてが参加しました。議 論が盛り上がった時のために用意しておいた枠、2月19日(15:30~17:00)の時 間も使うことになりました。 (NIRにおけるRPKIの状況) - CNNIC(中国) RPKIサービスを提供中。システムは安定運用しており特に変化なし。調査 研究に力を入れており、IETF sidrops WGで発表するなどしている。証明 書発行数186、ROAは89。 - IDNIC(インドネシア) RPKIサービスを立ち上げたばかりで、まだユーザーによるROA作成は行わ れていない。 - IRINN(インド) RPKIシステムを試そうとしている。RPKIサービスの検討に積極的で、技術 と運用の両面について準備している様子がうかがわれる。 - JPNIC(日本) RPKIサービスを提供中。試験提供を続けておりBGP運用とROA作成の関係や システムの構成を検討し改善を図っている。リソース証明書の数は131、 ROA数は485。 - KRNIC(韓国) RPKI導入のメリットを確認しようとしている。KRNIC内ではまだRPKIサー ビス提供に向けた活動は行われておらず、様子を見ている。 - TWNIC(台湾) RPKIサービスを提供中。台湾におけるISPに一斉に導入したため、証明書 発行数は314、ROAは2,168とNIR中でも最多となっている。 - VNNIC(ベトナム) 現在はAPNICへのROA発行の取り次ぎを行っている。VNNICによるRPKIサー ビス開始に向けて準備を進めている。 ◇ ◇ ◇ APRICOT 2020/APNIC 49では、この他にもRPKIに関するセッションがありまし た。「ルーティング セキュリティ/RPKI SIG」です。ルーティング・セキュ リティ/RPKI SIGはアフタブ・シディーク(Aftab Siddiqui)氏が中心となって 提案しており、趣意書の作成が行われています。このSIGができるとAPNICカ ンファレンスで、RPKIを中心としたルーティング・セキュリティについての 議論の場ができることになります。 APNICでは、ポリシーSIGにおけるprop-132の提案に関連し、未割り振りのア ドレスについてAS0(指定されたIPアドレスプリフィクスについては経路広告 されないことを示すROA)を提供する実験が開始されました。このAPNIC提供の TAL (Trust Anchor Locator)を利用したROAキャッシュサーバを立ち上げる と、未割り振りのアドレスを使ったBGP経路を無効(invalid)として判定する ような、オリジン検証ができることになります。今後も、RPKIに関わる話題 の続きそうな状況です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ◇ ◇ ◇ メールマガジン以外でも、情報を発信しています! 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