━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 1 】特集 「ICANNモントリオール会議を終えて」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ …………………………………………………………………………………………… 1. ICANN新体制スタート JPNIC ドメイン名事業部 入交尚子 …………………………………………………………………………………………… ◆「新理事会」の成立 News & Views vol.92の「ICANNモントリオール会議速報」でお伝えしたとおり、 2003年6月下旬のモントリオール会議を区切りに「移行期の理事会」が解散し、 新体制下における組織構造の要となる「新理事会」が成立しました。 これにより、2002年12月から続いてきた改革のための移行期間が終了し、これ からは改革の議論の結果規定された新体制のもとで、新生ICANNとしての活動 がスタートすることになります。 ◆改革の経緯と今後の取り組み ICANN改革の議論の発端は、2002年2月に当時のICANN事務総長であったStuart Lynn氏が発表した改革に向けての提言書でした。Lynn氏はその中で、ICANNは さまざまな問題のために岐路に立たされていると指摘し、ICANNがその本来の 使命を達成するためには、組織構造およびプロセスを建設的に改革する必要が あると訴えました。 このLynn氏の提言をきっかけに、グローバルなインターネットコミュニティに おいて活発な議論が繰り広げられてきたわけですが、2002年12月、新たな付属 定款の発効をもって、長期間にわたる検討結果が以下のような具体的な形に規 定されました。 ・構造改革 - 理事会メンバーの選出方法の変更(指名委員会の創設) - ポリシー策定組織の再編成(国コードドメイン名支持組織(ccNSO)の新 設) - 官民の適切な協力関係の構築(政府諮問委員会(GAC)と他の構成組織と の連携強化) - 一般ユーザーの適切な参加(At-Large諮問委員会を中心とする新たな At-Large構造の実現) ・プロセス改革 - ポリシー策定プロセスの迅速化(具体的プロセスの規定) - 説明責任および透明性の強化(独立審査パネル・オンブズマン等の設置) 今回スタートした「新理事会」も、こうした改革の主要項目の一つとして挙げ られるものです。理事会改革のポイントは、公益のために奉仕する優れた資質 を持つメンバーによって迅速な意思決定を行うことにより、実効的なICANNを 目指すというものでした。この目的を実現するために、広範囲の組織・分野の 代表によって構成される指名委員会が創設され、理事会メンバーの過半数を選 出する役割を負うことになったわけです。 この指名委員会による選出プロセスが6月中旬に終了したことを受けて、今回 の新理事会成立となったのですが、これはあくまで改革に向けてのスタートラ インにすぎません。真の改革の成果は、新理事会を中心とする新生ICANNによっ て、これから一つ一つ築き上げていくことになります。ICANN改革を成功させ るためには、上記の各項目を着実に実現させるべく取り組んでいくことが重要 な課題であると言えるでしょう。 □新理事会メンバーの詳細情報 http://www.nic.ad.jp/ja/icann/about/organization.html#3 □ICANN改革の経緯 http://www.nic.ad.jp/ja/icann/reform/overview.html ◇ ◇ ◇ なお、ICANNモントリオール会議につきましては、7月22日(火)に日本教育会館 にて開催される「第7回ICANN報告会」にて詳細を報告いたします。現在参加申 込受付中ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください! □詳細・お申込はこちら http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2003/20030708-01.html …………………………………………………………………………………………… 2. ICANN理事としての今後の抱負 ICANN理事 加藤幹之 …………………………………………………………………………………………… 「1. ICANN新体制スタート」でご紹介した「新理事会」のメンバーに、これま でもICANN理事を務めてこられた、加藤幹之氏が再選されました。加藤氏に今 後の抱負を語っていただきました。 ◇ ◇ ◇ 2000年秋、歴史的な世界同時電子投票により、私は、ICANNのアジア代表理事 に選任いただきました。それから2年半経って、ICANNは理事の大半を交代させ ましたが、私は継続の指名を受けました。 ICANNの組織改革により、理事は19人から15人に減少、電子投票も無くなりま した。15人の内8人は指名委員会が選任、6人は3つの支援組織が指名、それに 事務総長兼CEOが加わることとなっています。今回任期満了となった理事の内 11人が退任、Vinton Cerf氏と私を含む3人だけが理事を継続することとなりま した。 私の継続期間は、今年の年末までに予定される年次総会までと極めて短期であ り、継続は新しい理事への引継ぎの意味を持ちますが、多くの理事の中から選 ばれたことは大変光栄なことであります。短い期間ではありますが、任期満了 まで最善を尽くしたいと思います。 3年前理事に立候補した時、私は、(1)ICANNの組織・活動の強化、(2)非英語圏 の参加支援、(3)ICANNの活動について、情報交換・意見交流の支援、(4)国際 化ドメイン名の促進、(5)選挙制度の改善の5つを公約としました。いくつかは 実現しましたが、まだ道半ばのものも多く、新しい理事やICANNを支える多く の人々と共に、これらをさらに推進したいと考えます。 最後になりますが、今回の改選でICANN設立当初から理事として活躍して来ら れた村井先生も退任されました。私の理事としての任期が満了すると、日本か らの理事がいなくなることになります。日本から理事が出ること自体が目的で はないにせよ、今後さらに多くの人々がICANNの活動に参加し、インターネッ トの未来を支えていただくことに期待したいと思います。