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ニュースレターNo20/2002年3月発行

4 活動報告

4-2  イベント報告

4-2-1 IP指定事業者小グループ説明会報告

JPNICでは既存のIPアドレス管理指定事業者を対象としたIPアドレス指定事業者小グループ説明会を2001年8月から実施しています。

これまでIP業務については主に申請上の手続きについての説明を行ってきましたが、円滑に業務を行うためには申請担当者が資源管理の背景知識および概念を理解していることが重要となります。

そこでこの説明会では申請担当者に資源管理の考え方、IPアドレス管理業務の背景知識、申請のポイント等の理解を深めていただくことを主旨とし、従来のような申請手続きの説明のみではなく、世界におけるアドレスの階層構造、ポリシー内容の決定プロセス、審議参考情報などの説明、講師への質疑応答などを行っています。

これからも新規の指定事業者および既存指定事業者の新申請担当者など、これからIPアドレス管理業務を行う担当者を対象に定期的に月1回、説明会を開催していく予定です。今後の開催予定や詳細については以下のページに公開されています。

http://www.nic.ad.jp/ja/ip/event/teirei-train.html

また、審議の事例、IPv6についての情報に関心が高いことが質疑応答やアンケートでの回答結果で示されており、こういったテーマをどう取り扱っていくかが今後の検討課題となりそうです。

4-2-2 ICANN報告会報告

2001年10月23日に日本教育会館にて「ICANN報告会」を開催しました。内容は南米ウルグアイで9月7日から10日に行われたICANNモンテビデオ会議の概要です。ICANNの活動の日本における普及啓発活動は今までも行っておりましたが、今回は初の試みとしてJPNICと財団法人インターネット協会(IAjapan)、インターネットガバナンス研究会の共催という形を取りました。

国際化ドメイン名に関して

JPNIC理事長村井純からの開会の挨拶に続き、ICANN理事の加藤幹之氏による講演「国際化ドメインの動向とICANN」がビデオ上映で行われました。この問題に関する技術的側面や、そもそもドメイン名システムとはIdentifier(識別子)なのか Identity(アイデンティティ)なのかといった哲学的な問題、さらに政策的な問題として、不正目的でドメイン名を登録する、いわゆるサイバースクワッティングとの関連等が述べられ、最後にIDN(国際化ドメイン名)作業部会の活動やIDN委員会の創設などについて報告がありました。

モンテビデオ会議概要報告

続いてJPNIC政策情報部の入交尚子よりICANNモンテビデオ会議の概要について報告が行われました。.museumなど、スポンサーつきの新gTLDとICANNとの契約の承認や、オーストラリアの.au(ccTLD)レジストリとICANNとの契約の承認など、主要な決議について説明がありました。

ccTLDとICANN

JPNIC理事の丸山直昌と(株)日本レジストリサービスの堀田博文氏の両氏により、「各国ccTLDとICANN」と題するプレゼンテーションが行われ、丸山理事からはDNSOのccTLD Constituency(部会)の成り立ちやccSO設立議論の経緯などについての説明がありました。堀田氏からは、「ccTLD契約とは」と題して、ccTLD契約の必要性や、ICANNから提案されている三者間契約とレガシー契約と呼ばれる二つの契約形態などの解説がありました。

その後質問と回答の時間があり、ccSO議論の今後の展開や、ICANNと日本のccTLDの契約の状況について質問が出ました。終わりに、IAjapanの高橋副理事長から閉会の挨拶があり、約2時間半で終了しました。

この報告会の資料はWeb上でもご覧になれます。また、ICANNについての情報を日本語で提供するページも設けましたので、あわせてご覧ください。

ICANN報告会資料
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20011023-ICANN/

モンテビデオ会議報告書(和訳)
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/meeting/montevideo2001/report.html

ICANN関連情報のページ
http://www.nic.ad.jp/ja/icann/

ICANNのホームページ
http://www.icann.org/

4-2-3 ドメイン名紛争に関する講演会報告

2001年11月8日に、ドメイン名紛争に関する講演会(中央大学研究開発機構・中央大学知的財産法研究会とJPNICの共催)が代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。今回の講演会では、ドメイン名に関する紛争処理のしくみ、現状および事例が紹介されると共に、6月に公布されました改正不正競争防止法についても紹介がありました。また、実際のドメイン名紛争に関する裁判、JP-DRP(JPドメイン名紛争処理方針)に基づく申立に関わった弁護士をお迎えして、より具体的なお話をうかがうことができました。主な講演内容は以下の通りです。

  1. JPNIC丸山理事より、ドメイン名紛争処理方針の概略について講演がありました。ICANN UDRP(ICANN統一ドメイン名紛争処理方針)および JP-DRPの概略とともに、両者の相違点などの説明がありました。JP-DRPでは、ICANN UDRPを基本にしつつ、申立の根拠を「商標その他表示」に変更するなどローカライズが行われています。

  2. JPNIC DRP検討委員会 久保委員長より、ドメイン名紛争処理方針におけるBad Faith(不正目的)とは何かについて講演がありました。投資会社によるある企業の批評活動目的のドメイン名登録(SAINT-GOBAIN.NET)は、Bad Faithに該当する一方、退職金に不服のある退職者がその会社のドメイン名(BRIDGESTONE-FIRESTONE.NET)を登録し批判を行うことはBad Faithに該当しないなどの事例を交えて、Bad Faithに該当するケースとそうでないケースの説明がありました。

  3. JACCS事件の代理人である北村弁護士およびJ-PHONE事件の代理人である宮川弁護士より、それぞれの裁判事件についての講演がありました。時系列に基づいて対応内容が紹介されるとともに、裁判手続中にホームページの内容が変更や閉鎖された場合に不正目的の証明が困難であった等の苦労された点も紹介されました。また、J-PHONE事件については、2001年11月7日に最高裁に上告及び上告受理の申立がなされたとのことです。

  4. 経済産業省知的財産政策室の大野氏より、不正競争防止法の改正について講演がありました。改正の背景、概要の説明とともに、施行日については12月25日を目標に調整中との報告がありました。今回の改正により、ドメイン名が使用されていない場合も対象になる等JP-DRPとの判断基準がほぼ同一になり、JP-DRPがより確固たるものになったと言えます。

  5. 最後に、JP-DRPに申立てられたMP3.CO.JPの登録者側代理人である小倉弁護士を交えて、パネルディスカッションおよび質疑応答が行われました。中央大学法学部の佐藤教授が司会を務めました。ここでは、主に裁判で差止判決がでた後の当該ドメイン名の扱いについての議論がされました。今後のJPNIC登録規則または不正競争防止法の見直しにおける課題のひとつとなりました。

講演会の資料は下記にて公開しておりますので、是非ご覧下さい。

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/drp/20011108/

4-2-4 Internet Week 2001報告

全体概要

2001年12月3日(月)~7日(金)の5日間にわたり、パシフィコ横浜でJPNIC主催の「Internet Week 2001」が開催されました。ここでは、JPNIC主催プログラムを中心にご報告します。

● 概要

今回のInternet Weekは珍しく雨に見舞われました。そんな状況にもかかわらず参加者はのべ9000人を超え、どのプログラムも熱気にあふれていたのが印象的でした。

プログラムは

ビギナーズチュートリアル(初心者向け) 5
チュートリアル(一般技術者向け) 23
メインプログラム(各参加団体主催) 18
ソリューションセミナー(協賛企業によるセミナー) 9
BOF(好きなテーマについて議論し合うミーティング) 9
懇親会  

という構成で、5日間で60を超える内容と、大変盛りだくさんでした。

今回はJPNICとしても特に大事な年であったので、Internet Week 2001でも皆さまにお伝えしたいこと、議論すべきことが沢山あり、JPNICの主催するプログラムも過去最多の6つとなりました。また、12月5日(水)のIP Meeting内では恒例の「JPNICからの報告」が行われましたが、理事長 村井純が今年の活動報告、ならびにJPドメイン名の移管説明や今後のJPNIC像を語るなど、JPNICの活動を皆さまに知ってもらおうという内容が随所に見受けられました。

● Plenary Session

今回はIP Meetingの前半(午前中)を「Plenary Session」にし、村井純氏のキーノートスピーチ「インターネット」に引き続き、「インターネット これまでの10年、これからの10年」と題したパネルディスカッションが行われたのも一つの特徴です。

予想にたがわず充実した内容で、延長しても話は尽きないという状況でした。パネリストには村井 純氏(慶応大学)、和田英一氏(富士通研究所)、香取啓志氏(朝日放送)、近藤邦昭氏(IIJ)、前村昌紀氏(イクアント)というメンバーで、司会進行を後藤滋樹氏(早稲田大学)が担当されました。

和田氏、香取氏、近藤氏、前村氏からは、それぞれの立場からインターネットの過去、未来についてのプレゼンテーションが行われました。1960年代には、電子計算機ネットワークを作ることが夢として語られていたという昔話に始まり、インターネット資源管理の現状と今後の方向性や、高速・複雑化したネットワークのオペレーション上の問題点、更にはブロードバンドの今後の展望まで、多岐に渡る内容が語られました。一度にさまざまな角度からインターネットをとらえることのできる、非常に印象深いセッションとなりました。

● 2002年のお知らせ

2002年は12月16日からパシフィコ横浜 会議センター(2001年と同会場)で開催予定です。さらに内容のあるイベントになるよう、実行委員会では参加者の皆さまにご協力いただいたアンケート結果を元に検討を進めて参ります。

それでは、JPNICが開催したプログラムについて、個別に報告して参りましょう。

なお、各プレゼンテーション資料は、以下URLにて公開しております。

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2001/proceedings/

メインプログラム報告

1. 日本語ドメイン名解説

日時:2001年12月4日(火) 9:30-12:30
参加者数:66名

「日本語ドメイン名解説」は、日本語ドメイン名を実現する技術や、その実装状況について解説することを目的に、JPNICが主催、JDNA(日本語ドメイン名協会)が協力する形で開催しました。

日本語ドメイン名解説は、まず「インターネット・リソース・ネームの概要」と題して、日本語ドメイン名を含む、インターネットにおけるネーミングサービスの動向について産業技術総合研究所の田代秀一さんからご講演をいただきました。次に「IETF IDN WGでの標準化状況」と題して日本語ドメイン名を実現する国際化ドメイン名(Internationalized Domain Name; IDN)の技術標準化動向について、JPNICの米谷嘉朗が解説を行いました。

また、日本語ドメイン名の実装状況について、まず「多言語ドメイン名の実装─mDNkit─」と題してJPNICが提供しているオープンソースの実装であるmDNkitの概要とアプリケーションソフトウェアからの使用法について(株)SRAの石曽根信さんから解説をいただきました。次に「IDN SDK from i-DNS.net(Internationalized Domain Names Software Development Kit)」と題してIDNについての包括的な説明とi-DNS SDKについての解説をi-DNS.net社のJamesSengさん(IETF IDN WGのチェアとしても著名です)からいただきました。最後に「MDNアプリケーション対応─MS-IEの場合─」と題して、Microsoft社のInternet Explorerにおける日本語JPドメイン名対応の状況について(株)日本レジストリサービスの森健太郎さんから解説をいただきました。

スピーカーのみなさんの解説終了後、質疑応答をかねて日本語ドメイン名普及に向けた今後のアクションや、アプリケーションにおける対応をアプリケーションベンダーにより強くアピールするためにはどうすればよいかといった議論が行われました。

2. DOMAIN-TALKオフラインミーティング

日時:2001年12月4日(火) 12:00-17:00
参加者数:35名

2001年12月4日、JPNIC主催のメインプログラムとして、DOMAIN-TALKオフラインミーティングが開催されました。 参加者は35名で、ネットワーク管理をされている方の参加が多かったようです。今回は4名の方からドメイン名に関する講演を行っていただきました。講演の内容は以下のとおりです。

● ICANN報告 ~ドメイン名に関連するセキュリティ~

日本レジストリサービス(JPRS)の佐藤新太氏より、2001年11月のマリーナ・デル・レイでのICANN会議で議題となったインターネットにおけるセキュリティに関し、報告が行われました。今回のICANN会議は、2001年9月11日の米国同時多発テロを受けて、ICANN構成メンバーおよび一般の方のDNSセキュリティに関する意識の向上を目的に開催されました。セキュリティに関する議論よりも現状の把握に重点が置かれた会議となりました。

● 新gTLDの動向について

NTTコミュニケーションズの長尾麻美氏より、.biz、.infoなどの新gTLD誕生までの経緯、新gTLDの概要、そして新gTLDの課題についての講演がありました。まず、.comなど既存のgTLDでは、欲しいドメイン名が取れない、またレジストリの独占などの問題があるとの説明がありました。そして、これらの問題を解決する目的で、7つの新gTLDが新設されたとのことです。また、新gTLDの次なる課題として、マーケットの拡大の問題を挙げ、そのためにはエンドユーザーへの啓発活動、付加価値形成が重要であることを強調していました。

● whoisデータベースにおけるドメイン名情報

朝日大学経営学部の奥山徹教授より、JPNICおよびNSIなどとのwhoisデータベースの比較に関する講演がありました。whoisにおけるドメイン名情報は、ICANNの原則ではすべてオープンとなっていますが、各国の個人情報保護問題との関係で、公開しない裁量はあるとのことです。.comなどのgTLDでは、ほとんどのドメイン名情報を公開しているのに対し、ヨーロッパのccTLDは非公開とする傾向にあるとのことです。

● 多言語ドメイン名の国際調整とは

JPRSの堀田博文氏より、多言語ドメイン名の導入による問題点や、その問題に対する国際的な調整に関し講演がありました。まず、現在問題となっているオルタネートルートやゼロレベルドメインの仕組み等の解説が行われました。その後、たとえば、「.企業」などのgTLDが設立された場合、これは中国語か日本語かといった問題や、その管理をどこの国で行うかといった調整の問題が出てくるとの説明がありました。また、ドメイン名に関する紛争が増え、その解決も難しくなるのではとの懸念も示していました。

3. JPドメイン名とDRP

日時:2001年12月5日(水) 14:00-17:00
参加者数:48名

2001年12月5日14:00から17:00まで、日本レジストリサービス(JPRS)の黒川裕文氏、JPNIC 丸山直昌理事、JPNIC DRP検討委員会 久保次三委員長の三名によりメインプログラム「JPドメイン名とDRP」の講演が行われました。参加者の殆んどは20代と30代のネットワーク関連の仕事をしている人だったようです。前半は黒川氏によりJPドメイン名の全般的な説明が、歴史的な側面も含めてなされました。後半ではまず丸山により、ドメイン名を巡る法律的な争いの歴史を概観しながらUDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy, 統一ドメイン名紛争処理方針)、JP-DRP(JPドメイン名紛争処理方針)の形成の歴史を振り返りました。最後に久保氏よりUDRP、JP-DRPの裁定例紹介と分析が述べられました。

JP-DRPはICANNのUDRPを日本の実情に合うように擦り合わせたものであり、両者ともドメイン名と商標権とが対立するような争いに関して「不正の目的」(bad faith)という判断基準で裁定を下すこととされています。この判断基準は、UDRPやJP-DRPの条文の中で例示付きで説明されており、従来の商標法などの枠組での「不正の目的」とはかなり趣が異なったものとなっています。UDRP、JP-DRPの「不正の目的」はある意味で新しい判断基準と言えますが、これを導入した理由は、従来の商標権的な考え方を、そのままではドメイン名を巡る法律的な争いに当てはめることができないという事情によるものです。丸山の話は、この新しい判断基準が形成された歴史を振り返ることにより、UDRP、JP-DRPの「不正の目的」による判断は、商標権をそのままドメイン名の世界に持ち込むこととは違うということを説明するのが目標でした。また久保氏の話は、具体的な裁定例を通してUDRP、JP-DRPの「不正の目的」とは何であるかを説明することに重点を置いていました。出席者から回収したアンケートを見る限り、このような狙いはある程度成功したようです。

4. IPアドレスポリシー:世界の状況と日本

日時:2001年12月6日(木) 9:30-12:30
参加者数:128名

グローバルIPアドレスの管理は日本独自に行われているものではなく、世界的な方針に基づいているため、グローバルIPアドレスの世界的な状況の説明を目的としたプログラムです。なお、当日は以下の流れでプログラムが進行されました。

  1. 挨拶  JPNIC IPアドレス担当理事 荻野 司

  2. JPNICからの報告(IPアドレス事業について)  JPNIC IPアドレス担当理事 荻野 司
    IPアドレス事業の紹介、IP事業における新規サービスやIPv6ポリシー策定についての紹介がありました。新規サービスとしてはダイレクトメンバーアロケーションの導入やIPv6エージェントサービスの拡張などを検討しています。

  3. APNIC Updates, Structure and Policies  APNIC事務局長 Paul Wilson
    APNICの紹介、世界の資源管理の階層構造、資源管理の考え方、統計資料やIPv6ポリシー策定の紹介が2時間にわたり行われました。こちらの情報によるとアジア太平洋地域におけるIPv6 sub-TLAアドレスの割り振りの約半分は日本に対して行われています。また、APNICではWebの改訂による広報活動の充実や、CAによる申請のセキュリティ強化なども図っているようです。

  4. ICANN ASO Updates  ICANN ASO AC 荒野 高志
    ICANN ASO ACにて最近行われている活動の紹介がありました。現在RFC 2050の改訂が行われています。

  5. APNICについて  APNIC EC/NIR Meeting Chair 前村 昌紀
    APNICの紹介、Open Policy Meeting、NIRの仕組みそれぞれにおける問題点と今後の課題、NIRとAPNICとの連携などについての説明がありました。アジア太平洋地域の国々では英語が母国語として使用されていないにも関わらず、Open Meetingが英語で行われていることが発言を行う上でハードルになっているのではないか、という点が見直されています。

このように世界、アジア太平洋地域、NIRそしてJPNIC、と様々な観点から資源管理にたずさわる組織に関しての紹介が行われました。

本プログラムは状況の紹介を目的としており、また、時間の関係もあり、質疑応答は1、2問にとどまりましたが、別途ご紹介する関連イベントである「IPアドレスポリシー:JPNIC Open Policy Meeting(IP-USERS)」にて参加者も交えた積極的な議論が行われました。

5. IPアドレスポリシー:JPNIC Open Policy Meeting(IP-USERS)

日時:2001年12月6日(木) 14:00-20:30
参加者数:119名

JPNIC Open Policy MeetingとはIPアドレスのポリシーをテーマとして公募されたプレゼンテーションに基づき、参加者による意見交換を行うミーティングです。

この中で全体のコンセンサスが得られた内容については、必要に応じてアジア太平洋地域のIPアドレスポリシーを検討する場であるAPNICミーティングで報告・提案を行います。なお、「コンセンサス」とは参加者による合意を意味します。

今回はJPNIC IP-WG主査である前村 昌紀氏の議事進行のもと、以下8つのプレゼンテーションが行われ、長時間にもかかわらず参加者による積極的な議論や質疑応答が見受けられました。

コンセンサスが得られたプレゼンテーションに関してはその内容を記載しています。

  1. JPNICにおけるAS番号割り当て正式サービス化について
    橘 俊男 (JPNIC AS番号割り当て正式サービス化チーム)
    AS番号の正式サービス化を行うことで会場のコンセンサスが得られました。

  2. プライベートIPv4アドレスとストリーミングメディア
    渡辺 淳 (関西医科大学)

  3. JPNICにおけるIPv4アドレスの初回割り振り基準の変更について
    鈴木 由佳 (JPNIC IPアドレス課)
    マルチホームおよび主要なIXへの接続以外の要件についてはコンセンサスが得られました。

  4. マルチホームのためのIPアドレス割り当てについて
    鈴木 由佳 (JPNIC IPアドレス課)

  5. Joint Session
    1. 現在のアドレス割り振りポリシーにおける問題点とアドレス有効活用に対する提案
      江口 則地((株)富士通青森システムエンジニアリング)

    2. 初期割り振り条件の変更に伴う最小割り振りサイズの統一について
      大堀 暢哉 (JPNIC IPアドレス課)
      /20の単位での割り振りサイズの統一まではコンセンサスが得られましたが、/20以下の割り振りが行われている/19のリザーブブロックの扱いは継続して検討していくことになりました。

  6. APNIC CATV/xDSL WGレポート
    荒野 高志 (アジア・グローバル・クロッシング)

  7. IPv6アドレスポリシに関するAPNIC Meetingでの決定事項
    藤崎 智宏 (日本電信電話株式会社)

  8. IPv6の新アドレスポリシー
    荒野 高志 (アジア・グローバル・クロッシング)

いただいた意見を参考としながらv6アドレスポリシー策定を検討していきます。

また、APNICの事務局長であるPaul Wilsonも同席し、IPv6アドレスポリシー等についていくつかコメントした場面も見受けられました。

6. DNSミーティング

日時:2001年12月7日(金) 9:30-12:30
参加者数:128名

2000年に引き続き、DNSミーティングが開催されました。今回のDNSミーティングはJPRSとの共催プログラムとして開催され、12月7日の午前中の早い時間にもかかわらず、約200名以上という大変多くの方にご参加いただきました。

当日のプログラムは3部構成で、第1部「DNS technical current topics」では、DNSに関する各種の最新技術動向についてお話をいただきました。

  • Part1: DNS technical current topics
    • BIND9(神明 達哉氏(東芝))
    • djbdns(森下 泰宏氏(JPRS))
    • Dynamic DNS Service(浅野 新一氏(ZION))

第2部「DNS operation information exchange」では、実際にDNSを管理されているオペレータの方々から、重要なDNSサーバ、IPv6 DNS、大規模DNSサーバの管理・運用に関するノウハウ等についてのお話をいだだきました。

  • Part2: DNS operation information exchange
    • Mルートサーバの現状(加藤 朗氏(WIDE Project/東京大学))
    • jp serverの現状(佐藤 新太(JPRS))
    • IPv6 DNSの現状(神明 達哉氏(東芝))
    • DNS on IPv6の現状(松崎 吉伸氏(IIJ))
    • ISPにおける大規模DNSサーバの管理TIPS(山崎 徳之氏(オン・ザ・エッヂ))

第3部では「DNSの現状と将来」と題して、各スピーカの方々にパネルディスカッション形式でさまざまなお話をいただきました。パネルディスカッションでは、

  • DNSはなぜ成功したのか
    • DNSの仕組みが確立して既に15年近くが経過しているが、現在のインターネットでも広く利用されている。
      ⇒シンプルなしくみがインターネットのモデルにマッチしたのではないか。

  • 今後の名前のフラット化の要求にどう対応していくか
    • .comドメインの登録が既に1000万を超え、汎用JPドメインの出現により今後JPドメインにおいても名前のフラット化が起こってくると考えられる。このままのDNSで対応可能なのか。
      ⇒当面現在のテクノロジーで対応可能。

  • 設定ミスによる無用なトラフィック増加の防止のお願い
    • 設定ミスによってDNSのトラフィックが増え、重要なサーバ(root/JPなど)に無用な負荷がかかることが問題となることがある。DNSサーバの設定の際には聴衆のみなさんのところでも注意深く設定してほしい(お願い)。

  • 他の実装への期待
    • BIND、djbdns以外のより優れた実装が出ることに期待したい。

等が話題となりました。

今回のDNSミーティングでは、実際にDNSに関する研究を行っている研究者の方々や、DNSの管理運用にたずさわっているプロフェッショナルの方々から貴重なお話をいただき、有用な情報交換ができました。今後もこのような機会を生かし、積極的な情報交換を行っていきたいと考えております。

4-2-5 ICANN報告会・JPccTLDを議論する会報告

2001年11月に開催されたICANNマリーナ・デル・レイ会議を受けて、2001年12月17日に日本教育会館にてICANN報告会が行われました。今回はJPccTLDの今後を考えるための公開討論会も、JPNIC主催で合わせて開催されました。

まず、前半のICANN報告会の概要について報告します。最初に「ICANN雑感」と題してICANN理事の加藤幹之氏の講演がありました。ICANNは欧米人の参加が今まで多かったが、もっと欧米人以外にも積極的に参加してほしいこと、ICANNへの参加には会議への直接出席という方法もあるが、メーリングリストやWeb上の意見募集を利用して発言をしたり、このICANN報告会のようなイベントに参加したりするだけでも"ICANNプロセスへの参加"ということになると思う、などの説明が行われました。

続いて、JPNICの丸山直昌よりマリーナ・デル・レイ会議の全体的な報告があった後、総務省の伊東香織氏よりGAC(政府諮問委員会)の活動について説明がありました。さらに、JPRSの佐藤新太氏が今回の会議の概要について、技術的な側面から説明を行いました。今回のICANN会議では、インターネットのセキュリティが重要なテーマとして取り上げられていましたので、佐藤氏の話もDNSのセキュリティに焦点を合わせた内容でした。

前半の最後は、加藤氏の一時帰国の機会を利用して、「At-Large (一般会員制度)に関する問題提起とパネルディスカッション」が行われました。このAt-Largeの問題は、マリーナ・デル・レイで集中的に議論された訳ではありませんが、設立以来のICANNの懸案事項ですので、今回の報告会で取り上げました。パネリストとして、株式会社アジアネットワーク研究所の会津泉氏、アジアグローバルクロッシング株式会社の荒野高志氏、JPRSの堀田博文氏、JPNICの丸山が加わりました。

会津氏はプレゼンテーションの中で、「一般会員制度研究委員会最終報告書」が、一般会員となる資格を「ドメイン名保有者」と限定しているのは、At-Largeの趣旨に反しているとの指摘をしました。

また、加藤氏からは一般会員制度の運営費用が莫大で、ICANNでは負担しきれないとの説明がありました。会場からは、前回のAt-Large選挙では、ドイツや中国など非英語圏からの参加が多かったことを評価する声、ICANN側からAt-Largeメンバーに対して何ら情報提供がなかったことに対する疑問の声などがあげられました。

次に後半の「JPccTLDを議論する会」について説明します。この会は、JPccTLDの今後のあり方、特に登録管理業務の株式会社日本レジストリサービス(JPRS)への移管について、意見を交換するために開催されました。

まず、TV会議システムを通じて参加したJPNIC理事長の村井純が、ccTLDの歴史について解説を行った後、ccTLD運営に関して公共性の担保を民間の力で行うことが望ましく、その場合JPNIC会員の役割は重要であること、レジストリ業務は移管しながらも、公共性の担保ではJPNICが今後も重要な役割を演じるのが望ましい、などの意見を述べました。

また、加藤氏からは、公共性の担保の具体的方法を考えなければならないこと、価格設定やドメイン名政策、チェックアンドバランス機能などは外部組織が行うべきであり、その権限を法的に明確に規定しなければらならい、などの意見が出されました。

会津氏も、外部組織の必要性を指摘した上で、一般利用者の意見を反映させるにはパブリックコメントだけでは不十分とし、アウトリーチやインフォームドコンセントの必要性を強調しました。

JPccTLDの今後を考えるというテーマの割には、時間が短かったことを惜しむ声も寄せられました。

「ICANN報告会」および「JPccTLDを議論する会」開催資料他
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20011217-ICANN/

ALSC最終報告書和訳
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/doc/20011105-ALSCFinal.html

ICANNマリーナ・デル・レイ会議報告和訳
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/meeting/MdR2001/report.html

ISO-3166-1国別コード
http://www.din.de/gremien/nas/nabd/iso3166ma/codlstp1/en_listp1.html

JPNICウェブ内ICANN関連情報のページ
http://www.nic.ad.jp/ja/icann/

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