ニュースレターNo.27/2004年7月発行
第17回APNICオープンポリシーミーティング
アジア太平洋地域におけるIPアドレス関連の技術、ポリシー等の議論が行われるAPNICオープンポリシーミーティング。2004年2月23日~27日の日程で、マレーシア・クアラルンプールにてAPRICOT※1のプログラムの一部として開催された、第17回APNICオープンポリシーミーティング(以下、APOPM17)の模様をお届けします。
APOPM17のプログラム構成は従来通り、チュートリアル、SIG※2、BoF※3、およびAPNIC総会からなっています。本稿では、アドレスポリシーSIGの結果を中心にご報告します。
◆アドレスポリシーSIG
今回のアドレスポリシーSIGには、合計5件の提案が提出され、このうち以下の4点について会場でコンセンサスが得られました。
- 1) IPv4アドレス最小割り振りサイズおよび初回割り振り基準の変更
- IPv4アドレスの最小割り振りサイズが、現行の「/20」から、「/21」へと縮小になります。これに伴い、初回割り振り基準も「直後に『/23』(現在は「/22」)を使用し、1年以内に『/22』(現在は「/21」)を使うことを証明できること」へ緩和されます。
- 2) 閉じたネットワークへのIPv6アドレスの割り振り
- グローバルなIPv6インターネットへ接続しないネットワークに対しても、基準を満たしている限りグローバルなIPv6アドレスを割り振ることが明確化されます。
- 3) IPv6アドレスの割り振りにおけるIPv4インフラの考慮について
- IPv6アドレスの割り振りを受ける際に、既存のIPv4ネットワークのインフラストラクチャ、および顧客数が正当化の根拠となることがより明確になります。
- 4) 歴史的経緯を持つIPv4アドレスの扱いについて
- ルーティングされておらず、さらに他のどのような用途にも利用されていない、歴史的経緯を持つアドレス空間については、ある一定の手続きを経た上でAPNICへ返却される、というものです。
これらの提案は、JPNICのウェブサイトに日本語訳が掲載されています。詳細については下記Webページをご参照ください。
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2004/20040209-01.html
また、この他に台湾のADSLプロバイダから、現行の「IPv4割り振り/割り当て申請のためのAPNICガイドライン」のケーブル/DSLサービス部分をアップデートするよう要請するプレゼンテーションが行われ、結果ワーキンググループ(WG)を設立し、本文書をアップデートすることとなりました。
以前よりJPNICが取り組んでいるIPv6アドレスガイドライン文書については、本SIGにてドラフトの報告が行われました。今後は APNIC で文書の編集を行い、正式文書化に向けて作業が行われることとなっています。
- IPv4割り振り/割り当て申請のためのAPNICガイドライン(日本語訳)
- http://www.nic.ad.jp/ja/translation/apnic/apnic-guideline-IPv4-request-j.html
◆データベースSIG
データベースSIGでは、「歴史的経緯のあるアドレスの更新権限をAPNICがもつという提案」が会場のコンセンサスを得ました。現在、該当するアドレスのメンテナーは利用者となっていますが、これをAPNICに書き替え、利用者側から情報の更新ができなくなるようにしたうえで、更新権限を要求する組織に対しては契約を結び、年額US$100を課金するというものです。
提案の背景には、現状では歴史的経緯のあるアドレスの更新権限が利用者側にあるため、該当のアドレス利用組織が存在しない場合、名義の書き替え等によるアドレスのハイジャック(乗っ取り)が起こりやすいということがあります。
◆コンセンサスを得た提案事項について
上記でご説明した、会場でコンセンサスを得た提案事項につきましては、今後APNICのEC※4による承認および一定の周知期間を経てAPNICにて実施されることとなります。日本ではJPNICオープンポリシーミーティングの場などでの議論を経た後、コンセンサスを得て実装していくことになりますので、今後のJPNICからのミーティングのアナウンス等にご注目いただけると幸いです。
◆NIR※5 SIG
今回のNIR SIGでは、JPNIC、TWNIC、KRNIC、VNNICからプレゼンテーションが行われ、各NIRの活動レポートや、各国におけるオープンポリシーミーティング(OPM)の状況などの情報交換が行なわれました。上記アドレスポリシーSIGでご紹介した台湾のADSLプロバイダからの提案は、TWNICのOPMでコンセンサスを得て、今回のAPOPM17で紹介されたものです。
◆APNIC総会
今回は3名のECが改選となりましたが、これに対する立候補者が3名であったため、この3名の立候補者が次期ECとして承認されました。そのうちの2名、前村昌紀(JPNIC IPアドレス事業部門担当理事)とChe-Hoo Cheng氏(香港)は再選、新たにVinh Ngo氏(オーストラリア)がECに加わることとなります。長らくECを務めてきたGeoff Houston氏(オーストラリア)は今回でECを退任することとなりましたが、会場からは今までの功績を称え、拍手が沸き起こっていました。
また、次回2004年9月のAPNICミーティングのホスト国はフィジーに決定しました。あわせて2005年2月に日本・京都、2006年はインド・バンガロールでそれぞれAPRICOTとの併催になったことも報告されました。
(JPNIC IP事業部 穂坂俊之)
参照URL
- 第17回APNICオープンポリシーミーティング詳細
- http://www.apnic.net/meetings/
- ※1 APRICOT:Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational Technologies
- ※2 SIG:Special Interest Group
- ※3 BoF:Birds of a Feather
- ※4 EC:Executive Council
- ※5 NIR:National Internet Registry
- 国別インターネットレジストリ