ニュースレターNo.37/2007年11月発行
ICANNサンファン会議報告
2007年6月23日から29日まで、サンファン(プエルトリコ)にて開催されたICANN会議に出席しました。
ドメイン名登録者保護に関する議論
リスボン会議報告※1でお伝えしたように、米国のRegisterFly社がRAA(Registrar Accreditation Agreement:レジストラ認定契約)を解約された一件を受けて、コミュニティからは登録者保護に向けて契約の見直しをすべきとのコメントが多く寄せられました。そのため、ICANNではRAAの内容見直しやレジストラが所有するデータのエスクロー(第三者への預託)強化などについて議論されるようになりました。
本会期中には、登録者保護に関するワークショップが開催され、ICANNにおける登録者保護の取り組み状況が報告されるとともに、参加者からはフィードバックが寄せられました。
ICANNでは、既にエスクローエージェントの募集を行っており、7組織の応募があったこと、また7月初旬に選考を行うことが報告されました。登録者のデータを第三者に預託することについては、WHOISと同様にプライバシーの問題を指摘する人もいましたが、レジストラが機能しなくなった場合にタイムリーに登録者を救済する必要があるといった現実的な問題を考慮すると、現時点においてはエスクローが最も有効な方策と言えるのではないか、といったコメントがありました。
ICANNは引き続きコミュニティからのフィードバックを検討しつつ、レジストラ部会と協調してRAA改正案を作成し、パブリックコメントに付すこととなります。
ドメイン名テイスティング
ドメイン名テイスティングに関する課題レポート※2がICANNスタッフより提出され、本会議で議論されました。
GNSO内の課題解決にあたっては、多くの場合PDP(Policy Development Process:ポリシー策定プロセス)が実施されますが、本課題レポートではドメイン名テイスティングに関して、以下のような提案がなされています。
- PDPを開始する前には、さらなる事実調査を行うこと
- PDPがICANNやGNSOのスコープ内であるかどうかを確認すること
- PDP以外にも解決方法がないか検討すること
GNSO評議会では、GNSOメンバーとICANNスタッフでアドホックグループを結成して、ドメイン名テイスティングについてさらなる情報収集を行うこととし、その結果によってPDPを開始すべきかを判断することになりました。
IPv6の実装に向けて
ASO(Address Supporting Organization:アドレス支持組織)より、最新のIPv4アドレスの割り振り予測が報告され、インターネットを継続して安定的に運営し、また今後も発展させていくためには、IPv6の実装を促進していく必要があるとの見解が述べられました。今後は、IPv4だけではなくIPv6でも到達できるシステムを構築する必要があると考えており、RIRは注意を喚起するとともに実装も促進していく意向にあることが伝えられました。
ASOはIPv6実装の必要性について啓発するようICANNに対して要請し、ICANNはRIRと協力してIPv6に関する教育活動やアウトリーチ活動を行っていくことを決議しました。
ICANN 2007年-2008年度予算案を承認
2007年-2008年度の予算案が、最終日の理事会で承認されました※3。翻訳費用を27万ドルから47万ドルに増額するなど、コミュニティからのフィードバックも反映された内容となっています。収入は4,937万3,000ドルを見込んでおり、昨年度に引き続き前年度比で45%増となります。
(JPNIC インターネット推進部 高山由香利)
- ※1 JPNIC News & Views vol.445 「ICANNリスボン会議報告」
- http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2007/vol445.html
- ※2 GNSO Issues Report on Domain Tasting - English
- http://gnso.icann.org/issues/domain-tasting/gnso-domain-tasting-report-14jun07.pdf
- ※3 ICANN Posts Approved Version of the Proposed Fiscal Year 2008 Budget
- http://www.icann.org/financials/adopted-budget-29jun07.pdf