ニュースレターNo.48/2011年7月発行
JPNIC第43回・44回 通常総会報告
~2011年度事業計画・収支予算、2010年度事業報告・収支決算~
2011年3月11日(金)に、2011年度の事業計画案と収支予算案を諮る第43回の通常総会を、東京・富士ソフトアキバプラザにて開催していました。しかしながら、報告事項進行中の14時46分、ご承知の通り東北地方太平洋沖地震が発生したため、審議事項に至る前に、議事進行を止めざるを得ない状況となりました。
そのため、第43回総会は震災発生時で終了と扱い、審議されなかった全議案も含めて、2011年6月16日(木)に東京・飯田橋のホテルメトロポリタン エドモントにて開催した第44回総会にて、あらためてご審議いただきました。本稿では、第44回総会での議案ならびに承認された内容を、簡単にご紹介します。なお、2011年度の予算が承認いただけていなかった4月~6月までは、当センター定款第41条の規定に基づき、「暫定予算※1」にて2011年度の事業を開始しています。
第1号議案:2011年度事業計画案承認の件
2011年度の事業計画について、事務局長の林宏信より、以下の全体的な説明を行いました。
- 従来通りのIPアドレス事業、インターネット基盤整備事業の2事業体制を継続しつつ、IPアドレス事業ではIPアドレス等料金体系改定の調整と準備、IPv4アドレス在庫枯渇への対応を行う。インターネット基盤整備事業では、IPアドレス事業と同様に、IPv4アドレス在庫枯渇への対応を促進するとともに、インターネットの歴史に関する調査研究を着手する。
- 法人全体に関わる課題として、新たな公益法人制度に対してJPNICの方向性を明確にすること、および漸減傾向が続く会員数を念頭に置き、会員の満足度向上、会員増につながる事業運営をめざす。
また各事業部から、通常業務に加え、次を事業の重点項目とした事業内容について、説明を行いました。
- 【IPアドレス事業】
-
- IPアドレス等料金体系改定
- 2011年度は、再検討した料金案を、歴史的PIアドレスホルダ、IPアドレス管理指定事業者(以下、IP指定事業者)にご理解いただき、2012年度からの改定実施を目指して取り組みを進める。
- 背景:2010年度に、歴史的PIアドレスへの課金も含む、IPアドレス等料金体系改定について検討を進めてきた。2011年度の改定実施を目指していたが、歴史的PIアドレスホルダからのさらなる意見収集活動と、料金体系案の検討が必要であると判断して、実施を延期することにしたため。
- IPv4アドレス在庫枯渇対応
- APNIC/JPNIC在庫枯渇に至るまで、国内のアドレス分配に大きな混乱が生じないように、関連規則類の改定状況をIP指定事業者等に迅速に伝達し、その適切な対応を促す。
- 分配済みIPv4アドレスの有効活用に関するポリシー検討、実装について取り組む。
- 枯渇期以降のサービスとして、JPIRRの機能強化など、ルーティングセキュリティの維持・向上に関する調査・検討に引き続き取り組む。
- IPアドレス等料金体系改定
- 【インターネット基盤整備事業】
-
- IPv4アドレス在庫枯渇への対応
- さまざまなステークホルダーに向けて、IPv4アドレス枯渇に関する情報を的確に伝え、関係諸団体と連携しながら、枯渇期を乗り切る対応の普及啓発活動に取り組む。
- その中には、IPv6に関する技術を広める活動も含める。
- インターネットの歴史に関する調査研究への着手
- 体系的なインターネットの歴史資料を、公益中立の立場から、関係者・利用者に提供する。
- JNIC発足20周年を迎え、資料散逸の前に歴史を記録する活動が求められているため、資源管理を中心とした資料収集と取りまとめを行い、Webもしくはシンポジウム等の形で公開する。
- IPv4アドレス在庫枯渇への対応
内容を詳しくお知りになりたい方は、文末のURLから「2011年度事業計画(案)」「2011年度事業計画(案)説明資料」をご覧ください。
第2号議案:2011年度収支予算案承認の件
事務局長の林より、第1号議案の事業計画を実行するための予算案について説明を行い、2011年度は、以下の予算規模で事業が展開されることになりました。
- 事業活動収入予算
- 481,830,000円
(前年度比 △ 22,190,000円) - 事業活動支出予算
- 461,830,000円
(前年度比 △ 37,400,000円)
第3号議案 2010年度事業報告案承認の件
全体の説明を事務局長の林が行った後、IPアドレス事業については伊勢IP事業部次長、インターネット基盤整備事業については前村インターネット推進部長が、主な事業に関する報告を実施し、原案の通り承認されました。
IPアドレス事業の2010年度は、通常の業務に加え、IPv4アドレスとIPv6アドレスの併存期に向けた事業運営体制の整備と、IPv4アドレス在庫枯渇に伴うさまざまな環境変化への対応を考慮した取り組みとして、
- IPアドレス事業料金体系の見直し
- IPv4アドレス移転ポリシー
の実装検討を中心に実施したことが述べられました。
またインターネット基盤整備事業は、インターネットを取り巻く環境変化に対応するため、インターネット基盤整備の促進と、インターネット・コミュニティの発展への貢献を目的に実施しています。基盤整備事業では、情報センター業務、普及啓発業務、調査研究業務、JPドメイン名管理支援業務等に取り組んでいますが、2010年度は、インターネットの重要な資源であるIPv4アドレスについて、いよいよIANA(Internet Assigned Numbers Authority)中央在庫で枯渇するという予測から、年度を通じて、各ステークホルダーへのこの問題の周知およびIPv6等の対応策の普及啓発関連活動と、インターネット基盤に対する信頼性要求の高まりに応じた普及啓発、調査研究活動の実施に注力した1年であったことが述べられました。
第4号議案 2010年度収支決算案承認の件
第3号議案で説明した事業に基づく収支決算を示すものです。2010年度の事業活動収入の合計は、573,527,229円、事業活動支出は472,849,906円で決算されました。詳しくは右ページの「2010年度収支決算書」をご覧ください。
第5号議案 IPアドレス等料金体系改定の件
昨年からの継続案件である「IPアドレス等料金体系改定案」について、お諮りしたところ、原案の通り承認されました。IPアドレス事業はIPアドレスの維持料・手数料収入等より賄われていますが、この承認により、2012年度からは、新料金体系での課金となります。新規の課金対象となる番号資源ホルダーは、歴史的PIアドレスホルダーと、AS番号ホルダーになります。詳細については、総会資料をご覧ください。
なお、第43回および第44回総会の資料と議事録は、次のページで公開しておりますので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
- 第43回通常総会
- http://www.nic.ad.jp/ja/materials/general-meeting/20110311/
- 第44回通常総会
- http://www.nic.ad.jp/ja/materials/general-meeting/20110616/
- ※1
-
JPNIC定款(暫定予算)
http://www.nic.ad.jp/doc/jpnic-00491.html
第41条 前条の規定にかかわらず、やむを得ない理由により予算が成立しないときには、理事長は、理事会の議決を経て、予算成立の日まで前年度の予算に準じ収入支出することができる。
2 前項の収入支出は、新たに成立した予算の収入支出とみなす。