ニュースレターNo.58/2014年11月発行
第26回JPNICオープンポリシーミーティング報告
2014年7月8日(火)に、東京都千代田区のエッサム神田ホールにて、第26回JPNICオープンポリシーミーティング(JPOPM)を開催いたしました。JPOPMは、日本においてIPアドレス、AS番号等、インターネット資源の管理ポリシーを検討・調整し、コミュニティにおけるコンセンサスを形成するための議論の場です。年2回の開催で、JPNICとは独立した組織であるポリシーワーキンググループ(ポリシーWG)が主催しています。ご応募いただいたポリシー提案や情報提供プレゼンテーションから、ミーティングのプログラムを構成しています。
今回は、ポリシー提案の応募は無く、情報提供の応募が数件ありました。ミーティングには、オンサイトで約20名(関係者含まず)の皆様にご参加いただきました。今回も、JPNICの協力により、映像ストリーミング、Jabberチャット、Twitterによるリモート参加環境を構築しました。ストリーミングにおいては、ユニークなアクセスは51人(セッション)、最大同時アクセスは19人、平均で15人前後のアクセスがありました。以降に、ミーティングの内容をご報告します。
ポリシーの施行について(報告)
JPNICから、2014年7月1日に施行された2件のポリシーについて、報告がありました。これらは、2013年11月のJPOPM25※1で提案されコンセンサスを得たものです。その後、JPNICの「JPNICにおけるIPアドレスポリシー策定プロセス」にのっとりポリシーWGがJPNICに実装勧告を行い、JPNICがポリシー実装を行いました。
- 025-01「AS番号移転提案」(prop-107 in APNIC)
- 025-02「返却IPv4アドレスの配布について」(prop-105 in APNIC)
(1)の施行により、IPv4アドレスと同様に、AS番号の移転が可能となりました。対象となるAS番号は、JPNIC管理下のAS番号および他のレジストリとのAS番号の移転を認めるポリシーを施行しているレジストリ管理下のAS番号となります。この新しいポリシーにより、APNICに加えJPNIC管理下のAS番号が対象となりました。
(2)の施行により、各組織は、JPNICに返却されたIPv4アドレスの在庫から、最大/22(1,024個)のアドレス割り振りを受けることが可能となりました。これは、各組織がAPNICの最後の/8(103.0.0/8)※2の在庫から、最大/22のアドレスの割り振りを受けることのできるポリシーとは異なります。この新しいポリシーにより、各組織は、割り振りを受ける基準を満たしていれば、最大二つの/22(計2,048個)の割り振りを受けることが可能となりました。
APNIC 37カンファレンスについて(報告)
JPNICから、2014年2月にマレーシアで開催された、APNIC 37カンファレンスの報告がありました。3件のアドレスポリシー提案があり、内1件がコンセンサスを得ました。コンセンサスを得た提案は以下の通りです。
prop-109v001:
APNICのIPv4アドレス在庫のうち、プライベートアドレスのように使われていることが多いため割り振りを止めていた「1.0.0.0/24」および「1.1.1.0/24」を、研究目的でAPNIC Labsに割り振る提案
IANA機能監督権限の移管について(情報提供)
JPNICから、IANA機能を監督する権限を、米国政府から移管しようとする現在の動きに関して情報提供がありました。1998年のICANN設立以来、アメリカ商務省配下の電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration; NTIA)とICANNとの間で締結されているいわゆるIANA契約に基づき、NTIAが暫定的に「世話役」としてIANA機能を監督してきました。このIANA契約が失効する2015年9月に向けて、IANA機能監督権限をNTIAから「グローバルなマルチステークホルダーコミュニティ」に移管する議論がグローバルで行われています。
また、このIANA機能の監督に関する話題提供にとどまらず、日本における取り組みの紹介もありました。JPNICが事務局となり、インターネットガバナンス全般について議論する場である「日本インターネットガバナンス会議(英語名:Internet Governance Conference Japan、略称:IGCJ)」を2014年6月に発足させたとのことです。
その他
日本におけるポリシー策定プロセス(PDP)の解説や、各RIRの動向のレポートがありました。
ミーティングを振り返って
今回は提案が無く、ポリシーの実装報告や情報提供が中心となるJPOPMでした。情報提供において特筆すべきことは、インターネットガバナンスに関する内容が増えてきていることです。JPOPMは、インターネットの番号資源に関するポリシーについて議論することを主たる目的にしていますが、番号資源のみを話題にするのではなく、インターネットの維持に関する各種情報を提供することも重要な役割だと考えています。今後も、各種情報の提供を通じて、このフォーラムの機能を強化したいと考えています。
第26回JPNICオープンポリシーミーティング(今回)の資料について
当日の発表資料と議事メモを、次のURLに掲載しています。
第26回JPNICオープンポリシーミーティングプログラム
http://www.jpopf.net/JPOPM26Program
第27回JPNICオープンポリシーミーティング(次回)について
Internet Week 2014期間中の、2014年11月18日(火)に開催を予定しております。詳細が確定し次第、IP-USERSメーリングリストにてお知らせいたします。
最後になりますが、オンサイト、リモートともに議論にご参加いただいた皆様、ご発表いただいた皆様、ありがとうございました。
次回のミーティングでも、アドレスポリシーに関してご意見をお持ちの方の提案や、プレゼンテーションのご応募をお待ちしています。今回ご参加いただけなかった方も、ぜひともご参加ください。
(ポリシーワーキンググループ/ 日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE) 中川あきら)
- ※1 JPNIC News & Views vol.1149「第25回JPNICオープンポリシーミーティング報告」
- https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2013/vol1149.html
- ※2 インターネット用語1分解説:最後の/8ブロックとは
- https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/final-slash8.html