ニュースレターNo.63/2016年7月発行
第45回ICANN報告会開催報告
ICANNマラケシュ会議を受け、恒例となっているICANN報告会をIAjapanとの共催で開催しました。ここからは、この第45回ICANN報告会の各報告内容を、プログラム順に簡単にご報告します。
- 日時:2016年3月30日(水)13:30〜15:20
- 会場:JPNIC会議室
- プログラム※1:
(話者 敬称略)
1. ICANNマラケシュ会議概要報告
一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 奥谷 泉
2. ルートサーバー諮問委員会(RSSAC)関連報告
株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文
3. ICANN国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
株式会社日本レジストリサービス 高松 百合
4. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 菅田 洋一
5. ICANN GNSOレジストリ部会(RySG)の最新動向
株式会社日本レジストリサービス 村上 嘉隆
6. ICANN GNSO知的財産部会(IPC)の動向
GMOブライツコンサルティング株式会社 北川 智久
7. ICANNからの報告
ICANN Kelvin Wong
0. イントロダクション
IAjapanの木下副理事長のご挨拶に引き続き、2016年1月にICANNアジア太平洋地域ハブオフィス(以下、APAC-Hub)総責任者に新たに就任されたJia-Rong Low氏よりご挨拶いただきました。Low氏によれば、日本で開催されているICANN報告会がアジア太平洋地域のみならず、世界におけるモデルになっているそうです。また、ICANNのグローバル化は継続しており、従来米国で行っていたICANNのオペレーションの主要な機能は、すべてアジア太平洋地域ハブで提供できるようになったとのことです。
1. ICANNマラケシュ会議概要報告
JPNICの奥谷より、マラケシュ会議の概要報告がありました。内容については前半の「第55回ICANNマラケシュ会議報告」で既にご紹介している通りです。
2. ルートサーバー諮問委員会(RSSAC)関連報告
株式会社日本レジストリサービス(JPRS)の堀田氏より、RSSACの最新状況についてご報告いただきました。ルートサーバーの分布状況と、第1回RSSACワークショップが2015年9月に開催され、ルートサーバー全体のあり方の議論がなされたことなどが主な内容でした。後者では、信頼性確保の要素、および多様性(運営資金、運用モデル、ガバナンス構造)が重要であることなどが議論され、今後さらに議論されるとのことです。
3. ICANN国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告
JPRSの高松氏より、ccNSO関連の会合での内容をご紹介いただきました。主な内容は、以下の通りでした。
- インシデント解決に向けたレジストリ間連携に関する議論の状況
- マーケティングセッションでの報告内容
- ICANN説明責任の強化に関するccNSOでの検討状況
- ISO 3166-1 alpha-3に載っている3文字の国コードに相当するTLDの利用に関する議論
4. ICANN政府諮問委員会(GAC)報告
総務省の菅田氏より、ハイレベル政府会合、および複数日にわたり開催されたGAC会合についてご報告いただきました。特にハイレベル政府会合に関しては、主な国の代表の意見を分かりやすくまとめていただきました。
GAC会合では、主にICANN説明責任強化に関する提案を策定するCross Community Working Group on Enhancing ICANN Accountability (以下CCWG)の最終提案に対するGACの立場を集中的に議論したとのことです。提案の内容に賛成する日本、英国、オーストラリア、カナダなどと、反対するフランス、ブラジル、アルゼンチンなどとが対立しました。これを収拾するため、中立的な立場とされるスペインが文面案を提出したのに対し、ブラジルが対案を出し、最終的には両提案を統合すると共に、ブラジルが妥協の条件を提示するなどして、「GAC内で意見の相違はあるものの、CCWG提案のICANN理事会への提出に反対しない」ということで8日深夜に妥結したとのことです。
他に、IANA監督権限移管に関して、米国下院エネルギー・商業委員会通信技術小委員会で行われた公聴会についても触れられました。
5. ICANN GNSOレジストリ部会の最新動向
JPRSの村上氏より、ICANN GNSOレジストリ部会(RyCまたはRySG)についてご報告いただきました。具体的には、次の内容について主に触れていただきました。
- ICANN理事選挙のGNSO枠へのレジストリ・レジストラからの立候補状況
- 新gTLDのセカンドレベルドメイン名に2文字コードを使うことについての議論(例:jp.example)
- RySGのメンバーが参加することの多い他のグループの紹介
- 次期新gTLD募集ラウンドに向けたポリシー策定を行うNew gTLDs PDP WG
- レジストリ・レジストラが設立し、SEO (検索エンジン最適化)、Universal Acceptance、ユーザーエクスペリエンス(UX)など新gTLD全体の技術、ビジネスおよびマーケティング課題について扱うDomain Name Association
- 2012年の新gTLDにおいてブランドTLD申請者の意見を取りまとめるため設立されたBrand Registry Group (BRG)
6. ICANN GNSO知的財産部会(IPC)の動向
GMOブライツコンサルティングの北川氏からは、マラケシュ会議におけるIPCの最新動向についてご報告いただきました。主な内容は、新gTLDプログラムの導入に伴う商標所有者向けの権利保護メカニズムの一つであるTrademark Clearinghouse (TMCH)の見直し、ドメイン名の信頼性とセキュリティを構築・拡張・維持するためのプロジェクトであるHealthy Domains Initiative (HDI)についてでした。TMCHの柱の一つである、TM Claimsについては、「保護というよりも単なる通知ではないか」「あまり効果がないという結論になった場合に、強化策を打つことになるのか」という質問が会場からあり、まだどのようなアクションにつながるかは見えない、という回答が北川氏からありました。
7. ICANNからの報告
APAC-HubのKelvin Wong氏より、マラケシュ会議で開催されたAPACスペースとコミュニティ翻訳の二つのセッションについてご報告いただきました。前者では、アジア太平洋地域からICANNやGNSOへの参加を増やすため、APAC-Hubが議論/意見交換の場としてオンラインプラットフォームを提供すること、またより分かりやすい資料を提供するため、契約やポリシーをより多くの言語に翻訳することなどを含む提案が議論されました。後者は、ICANNで翻訳を提供している国連公用語を主体とした言語以外のサポートのため、ICANNとコミュニティ間で協力することについての議論を指し、日本とタイより事例紹介があったとのことです。
会場からは、新gTLD普及に対するICANNの役割について質問がありました。意識を高めることが最も重要で、APAC-Hubとしては幅広い層にプログラムを紹介していくことが必要だ、という回答がありました。
(JPNIC インターネット推進部 山崎信)
- ※1 第45回ICANN報告会資料
- https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20160330-ICANN/