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ニュースレターNo.64/2016年11月発行

ICANNヘルシンキ会議報告

2016年6月27日(月)から30日(木)にフィンランドの首都ヘルシンキで第56回ICANN会議が開催され、本会議の報告会を8月4日(木)にJPNICと一般財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催にて開催しました。本稿では、ヘルシンキ会議の概要を中心に、報告会の様子も併せてご紹介します。

直前での開催地変更と、新しい会議戦略での初のICANN会議

今回のICANN会議は、当初パナマの首都パナマシティとなる予定でしたが、ジカウイルスの影響で開催地がヘルシンキに変更となりました。また、新たに設定された会議戦略に従って開催された、小規模構成の会議として初めてのものでしたので、進行中の議論や、IANA監督権限移管の移管後体制に関する覚書の署名という大きな出来事もあった中、この新たな会議構成もとても印象的でした。

会議構成

2015年10月に発表された新たな会議戦略では、年3回のICANN会議をA、B、Cの3種類に分けて、構成や目的に以下のような違いを付けています。

会議A 3月開催、ほぼ従来通りの6日間構成
会議B 6月開催、ポリシー検討とコミュニティ間交流を重視する小規模な4日間構成
会議C 10月〜11月頃開催、ICANNの活動を他のコミュニティに紹介することを重視した、大規模な7日間構成
What's The New ICANN Meeting Strategy?
https://meetings.icann.org/sites/default/files/meeting_strategy_onepager.pdf

新たな会議戦略に沿ってはいたものの、会議Aということで特段の違いがなかった前回マラケシュ会議と違い、今回は初めて従来と異なる構成での開催です。今回の会議Bは「ポリシーフォーラム」と銘打たれた小規模構成で、従来定例的に行われていた、月曜日のオープニングセレモニー、木曜日のパブリックフォーラムと公開理事会会合がない形でした。今回はオープニングセレモニーに替わって簡単な歓迎セッションが持たれ、その場で、2014年に創設された、ICANNのマルチステークホルダーモデルに対して卓越した貢献を行った人に贈られるマルチステークホルダー・エートス賞授与のセレモニーが行われました。これが、会期中のセレモニーらしい唯一のセッションでした。

これまで、木曜のパブリックフォーラムは、ICANN会議参加者が誰でも、ICANNの活動に関することであれば何でも発言できる場として特徴的で、その後に続く公開理事会会合も含めて、ICANN会議が閉幕に向かう恒例の流れという感じが定着していた感じがありました。新たな会議構成における会議Bでは、オープニングも含めセレモニー的なものを廃したことは、実践的でコンパクトな構成という性質を際立たせるものだったと思います。

写真: FINLANDIA HALL
● 今回の会場となったFINLANDIA HALL(ICANNのFlickrページより引用)

クロスコミュニティセッション

会議Bで重視していることの一つにコミュニティ間交流がありますが、これを体現するように、「クロスコミュニティセッション」と銘打たれたセッションが六つ開催されました。ここで取り上げられるテーマを見ると、現在ICANNが扱う主要テーマが分かる、ということにもなりそうです。以下に、6セッションのテーマと内容のあらましを示します。

次世代登録ディレクトリサービス(RDS)

次世代RDSとは、アクセスプロトコルにRDAP(Registration Data Access Protocol)※1を採用し、データ閲覧者の認証と用途・資格に応じた提供を可能にするなど、現在のWHOISを全面的に見直すもので、現在ポリシー策定プロセス(PDP)の初期段階にあります。そのPDPの概要を説明し、コミュニティに意見提示が要請されました。

全gTLDの権利保護メカニズム(RPM)のレビュー

UDRPや、2012年の新gTLDプログラムで導入された新たなRPMをレビューし、必要に応じて改善を行うPDPの概要が説明されました。

オークション収益に関するCCWG(クロスコミュニティ作業部会)の趣意書

2012年の新gTLDプログラムでは、競合解消の手段としてオークションが定義され、結果として現時点で1億米ドルを超える収益が上がっています。この取り扱いを検討するCCWGに関して、現在趣意書起草の段階にあり、現段階の起草チームからドラフトが提示され、意見が求められました。

新gTLD次回ラウンドの手続き

2012年新gTLDプログラムの振り返りを元に、次回ラウンドの手続きを定めるPDPが2015年12月に開始され、作業部会(WG)による検討作業が計六つのトラックで並行に進んでいます。WGの検討作業の概要といくつかの論点が提示されました。

今後のCCWGの統一原則に関する枠組み案

IANA監督権限移管をはじめとして多様なテーマに関して設置されているCCWGに関して、統一原則を適用するべく作業が進み、次回ICANN会議の前に枠組みを採択するべく、コミュニティに意見提示が要請されました。

ワークロード管理

ICANNで議論されていることは多岐にわたり大量となっており、あらゆるステークホルダーがすべてに十分に関与することが難しくなってきています。そこで、有効な関与を確保するための優先順位付け、スケジューリングなどの方策の可能性を探るセッションが、政府諮問委員会(GAC)議長のThomas Schneider氏がチェアとなって開催されました。

IANA監督権限移管に関する取り決めの成立

IANA監督権限移管に関しては、前回マラケシュ会議で提案が採択され、米国商務省電気通信情報局(NTIA)に提出されました。以降、米国政府・議会での確認作業と並行して、移管後体制実施に向けた準備も進められてきました。ヘルシンキ会議での大きな出来事は、番号資源に関するIANA機能のサービス内容やサービスレベルを定めた、新規のサービスレベル合意書と、IETFとICANNの間の既存覚書に対する追補の二つが合意に至り、会期中に署名されたことでした。この時点ではまだ、ドメイン名に関してIANA機能を担当する新たな子会社、いわゆるPTI(Post Transition IANA(本稿執筆時の呼称、現在はPublic Technical Identifiers))をはじめとする機構の準備が作業として残ってはいましたが、移管後体制の準備が着々と進んでいるという印象でした(IANA監督権限移管に関する詳細については、特集2をご覧ください)。

振り返り:新たな会議構成を体験してみて

新たな小規模フォーマット・会議Bということで目新しさがありましたが、各支持組織(SO)、諮問委員会(AC)では通常通りの会合も進みました。分野別ドメイン名支持組織(GNSO)では会期短縮に従って、従来火曜日に開催される部会会合が月曜日に変更されるなど若干の変更もあり、少し戸惑うこともありました。木曜日の午後最後の時間帯に開催されたラップアップセッションでは、新たな会議Bフォーマットに関する意見が参加者に求められるとともに、Webを通じて即時的にアンケートも行われました。Webアンケートにおける新フォーマットに対する評価点は、好意的な声が多い結果となりました。参加者からの意見でも好意的な意見が多かったものの、ポリシーフォーラムとしてプログラムを削ぎ落とした結果、新規参加者に対する配慮が足らなかったのではという声も複数聞かれました。フォーマット変更に関しては、今しばらくの間、適応のための調整が必要だと思われます。

終わりに

所定の選定プロセスを経て、2016年6月にアドレス支持組織(ASO)選出の理事としてICANN理事会へ指名された私にとっては、初めての会議となりました。任期前ではありますが、早速理事会の活動に加わることができ、あらためてこのポジションの責の重さを実感しました。

今回のICANN会議に関する資料や記録は、下記のWebサイトからご覧になれます。

ICANN56 | Helsinki
https://meetings.icann.org/en/helsinki56

次回のICANN会議は、2016年11月3日(木)から9日(水)まで、インドのハイデラバードで開催されます。次回は会議Cの年次総会と位置づけられ、会合終了時点から、私の理事としての3年の任期が始まります。

写真: サービスレベル合意書に署名をするICANNと各RIRの関係者
● サービスレベル合意書に署名をするICANNと各RIRの関係者(ICANNのFlickrページより引用)

(JPNIC インターネット推進部 前村昌紀)


※1 RDAP(Registration Data Access Protocol)
IPアドレス等のレジストリに登録したデータにアクセスするためのプロトコルで、WHOISプロトコルの後継としてRFC7480〜7485において標準化されています

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