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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.508【臨時号】2007.12.25 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.508 です
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本号では、vol.505、vol.506に引き続き、第70回IETFのレポート[第3弾]とし
て、IPv6関連WGの動向についてお届けします。

□第70回IETF報告 特集
○[第1弾] 全体会議報告 (vol.505)
   http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2007/vol505.html
○[第2弾] DNS関連WG報告 (vol.506)
   http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2007/vol506.html

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◆ 第70回IETF報告 [第3弾]  IPv6関連WG報告
                                   JPNIC IPアドレス検討委員会メンバー/
                                     NTT情報流通プラットフォーム研究所
                                                              藤崎智宏
                                     NTT情報流通プラットフォーム研究所
                                                              松本存史
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2007年12月2日(日)から12月7日(金)まで、カナダのバンクーバーにて第70回
IETFミーティングが開催されました。例年は、11月中に開催されることの多
い冬のIETFミーティングですが、12月ということで、会議初日には積雪があ
り、厳しい寒さの中でのIETFとなりました(バンクーバーで積もるほど雪が降
るのは珍しいとのことです)。

本稿では、会期中に議論された、IPv6に関連したトピックスをいくつか紹介し
ます。

◆6man WG (IPv6 Maintenance WG)

IPv6のプロトコル仕様を標準化していた、IPv6 WGのface-to-faceミーティン
グは2年前に終了しており、メーリングリストでの議論のみが続いていまし
た。しかしながら、IPv6の実利用が本格的になるにつれ、その仕様や、IPv6 
WGにて策定された、いくつかのRFCに対する変更が提案されるようになり、新
たに、IPv6のメンテナンスを目的としたWGが設立されました。6man WGの
チャーターでは、IPv6のマイナーな改版のみを実施するということが明記され
ており、現在記載されている議論内容としては、

・RAフラグオプション
・ルーティングヘッダ タイプ0(RH0)の無効化
・IPv6 over PPP圧縮ネゴシエーション
・管理組織割り当てユニークローカルIPv6アドレス(ULA-C)

が挙がっています。このうち、RAフラグオプション、ルーティングヘッダタイ
プ0の無効化については、ほぼ議論は終わっており、IPv6 over PPP圧縮につい
ては、今回は議論が実施されませんでした。

さて、今回初会合となる6man WGは、水曜日の朝一番目のコマで開催されまし
た。

項目としては、

・RFC3177改版ドラフトに関する議論の喚起
・RFC 4294 IPv6 Node Requirementsの改版について
・インタフェース識別子の登録について
・ルータ広告(RA)とDHCPオプションについて
・アドレス選択について
・IPv6のアドレス自動設定機構の変更提案
・管理組織割り当てユニークローカルIPv6アドレス(ULA-C)について

等が議論されています。このうち、IPv6のアドレス自動設定変更提案や、ルー
タ広告とDHCPオプションに関する提案は、IPv6の基本的な仕様に影響するよう
な変更提案であり、今回のミーティングでは否決されています。しかしなが
ら、今後、同様の提案がされる可能性もあり、IPv6を先行して導入している組
織等への影響を考慮し、議論の動向を注視する必要があります。

□6man WG
  http://www.ietf.org/html.charters/6man-charter.html

□第70回IETF 6man WGのアジェンダ
  http://www3.ietf.org/proceedings/07dec/agenda/6man.txt


◆v6ops WG (IPv6 Operations WG) (1/2)

IPv6とIPv4の共存技術、IPv6のディプロイメント関する話題を扱うv6ops WGの
ミーティングは、月曜午後二番目のコマと、木曜日午後一番目のコマにて、2
回開催されました。

一番目のコマでのセッションは、「IPv6 Operations "normal" meeting」と題
され、現在進行中である、v6ops WGにおけるワーキンググループドラフトに関
する進行状況の紹介と、

1. 不正ルータ広告(RA)について
2. 不正ルータ広告(RA)の、L2での防御に関する提案
3. Teredo のセキュリティに関する提案

の議論が実施されました。1.と2.の不正ルータ広告に関しては、前回のIETF
ミーティングでもかなり議論されました。

既にIETFでは標準化済みのSEND(RFC3971)を利用すれば、この問題は解決でき
るが、

・実装が少ない
・設定が手間である

といった意見が出され、また、2.では、L2スイッチを利用して、RAを送出でき
るノードを制限することで解決する、という提案もされました。

しかしながら、

・無線環境などではL2スイッチがいつでもあるわけではない
・不正RAには、a)設定ミス、b)不正アタックが考えられ、どのような手段を用
  いても、a)は防ぐことが困難である

という意見も出されました。

3.のTeredo セキュリティに関しても、継続的に議論されています。Teredoを
利用すると、NATやファイアウォールなどを超えて、ネットワークのセキュリ
ティポリシーを無視した通信が可能になってしまうことへの問題提起や、
Teredoプロトコル自体のセキュリティを強化するため、Teredoが使用するポー
トを乱数化すべきである、ということが議論されました。策定したプロトコル
に対するセキュリティ問題対策が、後手後手になっていることを指摘する声
や、極論として、議論を実施する時間が無駄なので、Teredoのような、危険な
プロトコルは使用禁止としてしまうだけでよい、といった意見もありました
が、既にプロトコルとして広く実装されていることなども鑑み、v6ops WGとし
て取り組みを実施していくことになっています。


◆v6ops WG (IPv6 Operations WG) (2/2)

二番目のコマとなるセッションでは、"IPv6 Transition Discussion"と題し
て、IPv4-IPv6トランスレーション方式である、NAT-PTのRFCが廃止
(Historical)になったことを受けて、代替となる技術についての議論が行われ
ました。

セッションの概況としては、まずはじめにJordi Palet氏より、IPv6における
現在のトラフィックボリュームに関する報告があり、あるサイトではTeredoや
6to4などのトンネルトラフィックを含めると、IPv4よりもIPv6の方がトラ
フィック量が多いという驚くべき調査結果が提示されました。

続いて、新たなIPv4ホストとIPv6ホスト間の相互通信を実現する技術を検討し
ていくにあたって、どのような問題があるかという問題をまとめた発表や、問
題を解くにあたってどのような要求条件があるか、例えばIPv4ホストに対する
変更を許容するのかどうかをまとめた発表や、そしてIPv6への以降シナリオは
どのようになるのか、といった移行シナリオに関する検討などが発表されまし
た。

トランスレータの代替となる技術もいくつか提案が行われましたが、基本的に
はNAT-PTのように、通信路中の装置によってIPv4-IPv6変換を行うというアプ
ローチではなく、端末自体を含む通信路中で2回IPv4-IPv6変換を行うことに
よって、結果的にアプリケーションには途中でのプロトコル変換による影響は
発生しないというアプローチでした。というのも、NAT-PTが廃止された理由の
一つには、IPv6インターネットにIP層のアドレス変換を行う装置(つまりNAT)
を導入することになるという点があり、NATによるアプリケーションへの影響
が問題視されているからです。

また、これまでも、このワーキンググループでは移行シナリオ・移行技術につ
いての検討が行われてきましたが、今回のセッションでは、IPv4の在庫枯渇が
目前に迫っているという事実を反映した議論が行われ、IPv4-IPv6デュアルス
タック環境による移行シナリオでも、グローバルIPv4アドレスが不足している
ために、ISPでNATを行い、ユーザーにはプライベートアドレスを割り振るとい
うモデルについての議論が行われました。

IPv4アドレスの在庫枯渇まで2年などと言われている昨今ですが、トランス
レータを必要としている事業者に対してIETFが魅力的な解を提示できない限
り、IPv6への移行は各事業者が手探りで進めることとなり、混迷を極めること
になるかもしれません。

□v6ops WG
  http://www.ietf.org/html.charters/v6ops-charter.html
  http://www.6bone.net/v6ops/

□第70回 IETF v6ops WGのアジェンダ
  http://www3.ietf.org/proceedings/07dec/agenda/v6ops.txt


◆rrg (Routing Research Group)

以前よりこのメールマガジンでもご紹介している、rrgでのID/Loc分離に基づ
く新しいルーティングアーキテクチャに関する議論ですが、今回も前回に引き
続き本WGにて行われました。以前もお伝えしましたが、この議論はインター
ネットのデフォルトフリーゾーンにおける、経路爆発の問題を解決することを
目的としています。この問題は、現在はIPv4の経路に関して非常に深刻な状態
になりつつありますが、将来的にIPv6が普及した場合には、IPv6においてもよ
り重大な問題となる可能性があり、今後のインターネットを占う重要なトピッ
クであると言えます。

セッションの冒頭で、rrgのチェアであるTony Li氏から今後の方向性が示さ
れ、ラフコンセンサスによって一つの提案に絞り込み、新たなワーキンググ
ループを立ち上げて、実際のエンジニアリング作業を行っていくという議論
収束についての目標が掲げられました。スケジュールとしては、2008年の3月
より議論収束をめざし、2009年の3月までには完了するという予定になってい
ます。

以前より提案が行われ、また今回も活発に議論が行われたのは、Six/One、
LISP、そしてAPTという三つの方式です。これらは全てLoc/ID分離に基づく方
式ですが、Six/Oneは経路中のルータにおいてパケットのアドレスフィールド
を書き換えることによって、またLISPとAPTは同じく経路中のルータにおいて
トンネリングを行うことによって、IDとLocの切り替えや、Locの変更による冗
長化を実現する方式です。両者の本質的な違いは、アドレス変換かもしくはト
ンネルかという点だけで、その他の必要な機能である、IDとLocをマッピング
するデータベースを、どこでどのように持つかといった部分は共通の課題です。

LISPとAPTは非常に類似した方式ですが、マッピングデータベースを全てのこ
の方式に対応したルータで持つのか、もしくは各ルータは自分のサイトにおけ
るデータベースだけを持つのかという点、通信障害発生時の対応、またルータ
をPEに設置するのか、CEに設置するのかという点が異なるようです。これらの
違いはあるものの、本質的には非常に類似しているため、LISPの沢山ある亜種
の一つとして提案し直すことも検討されています。

今回の議論では、Six/OneやLISPとその亜種を含め、方式としての成熟度が高
まってきており、最初は新しい方式に対応したサイト間での、通信の冗長化に
関する検討のみでしたが、現在は非対応サイトとの通信の信頼性を高めるため
の、ProxyやNATといった方式が検討されています。またSix/Oneの提案者から
は、IPv4からIPv6への移行を実現する手段としての用途も提案され、ルーティ
ングスケーラビリティの問題と、IPv6への移行の問題という、インターネット
が抱える二つの大きな問題を同時に解決するといった議論も、今後活発になっ
てくるかもしれません。

□第70回IETF rrgのアジェンダ
  http://www3.ietf.org/proceedings/07dec/agenda/RRG.html

□第70回IETF rrgの発表資料
  https://datatracker.ietf.org/meeting/70/materials.html


第70回IETFミーティングの各種情報は、以下のURLより参照可能です(いくつか
のWGでは、議事録も掲載されています)。

□全体プログラム、WGアジェンダ、発表資料
  https://datatracker.ietf.org/meeting/70/materials.html

□録音
  http://videolab.uoregon.edu/events/ietf/


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
            http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.508 【臨時号】

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