=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1483【臨時号】2017.3.24 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.1483 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.1480から連載にて、2017年2月下旬から3月上旬にかけてベトナムで開催 された、APRICOT 2017/APNIC 43カンファレンスのレポートをお届けしていま す。本号では連載の[第3弾]として、アドレスポリシー関連の動向をご報告し ます。これまでに発行した本カンファレンスに関するその他の報告について は、下記のURLからバックナンバーをご覧ください。 □APRICOT 2017/APNIC 43カンファレンス報告 [第1弾] APNIC Executive Councilメンバーとしてのご挨拶(vol.1480) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2017/vol1480.html [第2弾] 全体概要報告(vol.1482) https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2017/vol1482.html なお、連載の[第4弾]では、技術関連の動向をご紹介する予定です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ APRICOT 2017/APNIC 43カンファレンス報告 [第3弾] アドレスポリシー関連報告 JPNIC IP事業部 川端宏生 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ はじめに APRICOT 2017/APNIC 43カンファレンスのアドレスポリシーSIGでは、3点のポ リシー提案について議論が行われました。議論の結果、1点の提案について一 部分がコンセンサスとなりましたが、残りはその他2点の提案ともども継続議 論になりました。 本稿では、それぞれの提案内容および議論の状況をご紹介します。提案の詳 細について興味を持たれた方は、提案内容の原文も併せてお読みいただけれ ば、理解が深まると思います。 ■ 「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」の移転禁止提案 (提案番号:prop-116) 提案者:藤崎智宏氏 概要:「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」の移転を禁止 する旨をポリシーに追加する (補足事項) ・割り振り・割り当て後2年を経過しない、上記在庫からの分配済みIPv4ア ドレスの移転を禁止する。 ・上記在庫からの割り振り・割り当てから2年が経過し、このIPv4アドレス が不要となった場合には、分配を受けた組織はAPNICに返却する。 ・M&A(事業移管や吸収合併など、その事実を書面などで客観的に確認でき るケース)による移管で、移管先組織が上記の在庫から/22を超える割り 振り・割り当てを受けることは、異なるASから経路広告を行うなど技術 的な事情がある場合を除き認めない。/22を超えるアドレスについては APNICに返却する。 (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-116 結果:継続議論 (参考) vol.1442 APNIC 42カンファレンス報告 [第2弾] 全体概要およびアドレスポリシー関連報告 https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2016/vol1442.html 本提案は、前回のAPNIC 42カンファレンスから継続議論となっていた提案で す。現在APNIC地域では、1組織あたり「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未 割り振り在庫」から/22(1,024アドレス)、「IANAから再割り振りされたIPv4 返却在庫」から/22(1,024アドレス)の、合計/21(2,048アドレス)の割り振り が行われています。 特に、「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」からの/22の割 り振りは、これから新規参入する組織に対して、必要最小限の割り振りを行 うことを目的として考えられています。 新規の割り振りは堅調に伸びる一方で、M&Aによる移管や、IPv4アドレスの分 配先を変更するIPv4アドレス移転制度を利用して、複数の/22を他の組織から 受け取るといったケースも増えてきています。 APNICとの新規契約時には、申請から2年後までのIPv4アドレスの利用計画を 提出する必要があることから、割り振り・割り当てから2年間が経過するまで はIPv4アドレス移転を禁止するよう、前回から提案内容が一部変更されまし た。 それに加えて、M&Aにより1組織が複数の/22の分配を受けることを一律禁止と していた点についても、APNIC 42カンファレンスでの議論を踏まえて、技術 的な事情がある場合には禁止しないこととしています。当日の議論ではこの 点について、技術的事情がある場合に移管を認めてしまうと、制度の抜け穴 になることを懸念する旨のコメントが出されていました。 また、利用されていないアドレスを移転することで再利用を促すことから提 案に反対する意見も出されていました。 APNICでは、オンラインでも意思表明できるシステムを、CONFER (CONsensus FEedback in Realtime)と名づけ、運用しています。CONFERでは強い反対を示 すものが多く見受けられ、会場とCONFERの状況とを合わせて、Chairと Co-chairによる協議の結果、継続議論となりました。 ■ 返却されたIPv4アドレスの管理方法と「APNICにおける最後の/8相当のIPv4 未割り振り在庫」枯渇後の分配方法についての提案 (提案番号:prop-117) 提案者:藤崎智宏氏 概要:「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」から割り振り・ 割り当てを行ったIPv4アドレスが返却された場合、「/8相当の最後の APNICにおけるIPv4未割り振り在庫」に戻す。 また、「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」の枯渇 後のIPv4アドレスの分配方法について定義する。 (補足事項) ・「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」から割り振り・割 り当てを行ったIPv4アドレスが返却された場合、「/8相当の最後のAPNIC におけるIPv4未割り振り在庫」に戻すこととする。 ・「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」からの割り振り・ 割り当てを行うことができなくなった場合、この在庫からの割り振り・ 割り当てを終了とする。 ・この在庫からの割り振り・割り当て終了後は、「/8相当の最後のAPNICに おけるIPv4未割り振り在庫」を「IANAから再割り振りされたIPv4返却在 庫」に一つにまとめる。 ・一つにまとめられた「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」から、 1組織あたり/21の割り振り・割り当てを行う。 ・プールが一つにまとめられる以前の「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4 未割り振り在庫」から分配を受けている組織は、「IANAから再割り振り されたIPv4返却在庫」から/22の割り振り・割り当てを受けることを可能 とする。 ・「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」から割り振り・割り当てを 行うことができない場合、待機者リストを作成し、そのリストに基づき 割り振り・割り当てを行う。 (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-117 結果:「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」から割り振り・ 割り当てを行ったIPv4アドレスが返却された場合、「/8相当の最後の APNICにおけるIPv4未割り振り在庫」に戻すことについてはコンセン サス。その他の点については継続議論 提案番号:prop-116でもご紹介したように、APNICでは現在、「APNICにおけ る最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」と「IANAから再割り振りされたIPv4 返却在庫」の二つの在庫から、IPv4アドレスの割り振りを行っています。 「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」は、具体的には103/8 の範囲を指します。103/8から割り振り・割り当てを行ったIPv4アドレスが APNICに返却されると、現在は「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」に 戻るよう管理を行っているそうです。 過去に、「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫」から103/8の /22を、「IANAから再割り振りされたIPv4返却在庫」に一度戻った103/8から /22の、合計/21の分配を受けた組織があり、APNICおよび分配を受けた組織で は混乱の元となったそうです。 APNIC 42カンファレンスにおいても、返却されたIPv4アドレスについての議 論が行われており、APNICでの状況やAPNIC 42カンファレンスでの議論を踏ま えて、提案が行われたようです。 この提案は、「返却されたIPv4アドレスの取り扱い」と、「APNICにおける最 後の/8相当のIPv4未割り振り在庫枯渇後のIPv4アドレスの分配方法」に、大 きく分けられます。 当日の議論では、「返却されたIPv4アドレスの取り扱い」について、現時点 での返却されたIPv4アドレスの取り扱い方法の認識を共有することについて 多くの時間が割かれました。 「APNICにおける最後の/8相当のIPv4未割り振り在庫枯渇後のIPv4アドレスの 分配方法」についてのコメントは少なく、「返却されたIPv4アドレスの取り 扱い」ついてのみコンセンサスの確認を行うこととなりました。しかし、前 述した通り一部コンセンサスが成立したにとどまり、残りは継続議論という 結果となりました。 ■ APNIC地域のIPv4アドレス移転時における要件緩和についての提案 (提案番号:prop-118) 提案者:David Hilario氏 概要:APNIC契約組織間のIPv4アドレス移転は、利用計画の提出なしにすべ て受け入れることとする。 また、移転先組織に利用計画の提出を義務付けている地域からのIPv4 アドレス移転は、移転後5年以内に移転を受けたアドレスの50%を利用 する計画を示すこととする。 (提案の詳細) http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-118 結果:継続議論 現在APNICでは、APNICとの契約組織間の移転かどうか、ARINやJPNICなどの APNIC以外のレジストリとの契約組織からAPNICとの契約組織への移転かどう かに関わらず、IPv4アドレスの移転を受ける組織(以下、移転先組織)は、今 後2年間の需要を元にしたIPv4アドレス利用計画を、APNICへ提出し承認を受 ける必要があります。 北米地域を管轄するレジストリであるARINが、移転先組織にIPv4アドレス利 用計画の提出を義務付けるポリシーを実装しているレジストリとのみ、IPv4 アドレス移転を許可していることから、この現在のポリシーが制定されまし た。 ヨーロッパ地域を管轄するレジストリであるRIPE NCCでは、RIPE NCCの契約 組織間で移転する場合には利用計画の提出は不要、ARINまたはAPNIC間の移転 の場合には、移転先組織にIPv4アドレス利用計画の提出を義務付けるポリシー となっています。 今回の提案は、APNICの基準をRIPE NCCに合わせるよう変更するものです。 当日の議論では、利用計画の提出を不要とすることで、割り振り・割り当て を受けた直後に移転してしまうケースが出てくるのではないかという、懸念 を示すコメントが出されていました。また、RIPE NCCの担当者からは、割り 振り後2年間は移転を禁止し、移転を受けたアドレスは2年間再移転を禁止す るポリシーが、別途施行されている旨の補足説明がありました。これらの内 容から、今回提案されている部分の修正だけではなく、関連する部分の整合 を取った上で見直しが必要ではないかという印象を受けました。 会場やメーリングリストでは、賛成と反対それぞれの意見表明がありました が、CONFERでは強い賛成の意見が多く、この状況の違いについてChairと Co-chairによる協議の結果、さらなる議論が必要であるという判断になりま した。 ■ おわりに 今回のアドレスポリシーSIGでは、3点提出されたポリシー提案のうちprop-117 が一部コンセンサスとなったものの、残りはすべて継続議論という結果とな りました。筆者は当初、ほぼすべての提案においてコンセンサスとなること を想定していましたが、それとは異なる結果となったことに非常に驚いてい ます。 継続議論となった提案については、引き続き、アドレスポリシーSIGのメー リングリスト(*1)で議論が行われます。メーリングリストにはどなたでも参 加可能ですので、興味のある方はご自身で議論の動向を追ってみてはいかが でしょうか。メーリングリストでの議論を経て、次回のAPNIC 44カンファレ ンスにおいても議論される予定です。 (*1) http://mailman.apnic.net/mailing-lists/sig-policy/index.shtml ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html 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