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【 1 】特集 「第19回APNICオープンポリシーミーティングレポート」
                                                JPNIC IP事業部  奥谷泉
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今回は、APRICOT 2005のプログラムとして2005年2月21日(月)~2月25日(金)、
京都で開催された第19回APNICオープンポリシーミーティング(APOPM)の様子を
お伝えしたいと思います。

京都という場所柄、特に海外から参加された方々は、議論への参加だけではな
く、お寺巡りや懇親会での舞妓さんの舞踊等、日本の伝統に触れる機会を楽し
んでいってくれたようです。

新たな提案という面においてはミーティング全体を通して2件と若干少なめで
はありましたが、v6.intの廃止等、IETFでの資源管理に関わる活動、インター
ネットガバナンスの動向をはじめとし、注目すべきトピックスが取り扱われて
いました。それら特筆点をご紹介します。

■参加者

  約110名(19地域から参加)

■提案事項の結果

  2点の提案事項とも、参加者によるコンセンサス(賛同)が得られました。こ
  れらのコンセンサスは今後、メーリングリストで最終確認を行い、特に大き
  な問題がなければ定義されたプロセスを経てAPNICのポリシーとして有効と
  なります。

  1)IPv6アドレスの普及に向けたIPv4アドレス実験利用プログラム第2フェー
    ズについて(IPv6普及・高度化推進協議会 伊藤公祐)

    コンセンサス:
     以下の条件のもと、IPv6アドレスの普及に向け、IPv6普及・高度化推進
     協議会により行われてきた歴史的経緯を持つIPv4アドレスを利用した実
     験プログラムの実行期間を、2005年から2008年まで延長する。
     + APコミュニティに対して定期的に状況報告を行う。
     + IPv6アドレスの具体的なサービス計画を提示する。
     + 実験参加者と適切な契約を締結する。
     + プログラム終了後、APNICに43/8を返却する。

    原題   :The second phase of large space IPv4 trial usage program
             for future IPv6 deployment
    SIG種別:ポリシーSIG
             http://www.apnic.net/meetings/19/programme/sigs/policy.html

  2)APNICによるIPアドレス統計情報の提供について
    (社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 穂坂俊之)

    コンセンサス:
     APNIC事務局は、国およびアドレスプリフィクス単位で、APNICデータベー
     スに登録されているIPアドレス割り当て情報の統計を定期的に集計し、
     提供する。

    原題   :APNIC to publish address assignment statistics
    SIG種別:データベースSIG
             http://www.apnic.net/meetings/19/programme/sigs/db.html

■インターネットガバナンスへの取り組み

  2005年チュニジアで開催される世界情報社会サミット(WSIS)(*1)に向けて、
  インターネットガバナンスはここしばらく、この業界の最も大きなトピック
  スのひとつです。インターネットが、その発展に伴い社会基盤と見なされる
  ようになっている今、政府がどの程度関与していくべきなのかが大きな課題
  となっています。例えば資源管理の分野においてはIPv6アドレスを国単位で
  分配することを提案した文書がITU関係者により公開され、波紋を呼びまし
  た。このような動向をアジア太平洋地域(AP地域)のコミュニティと共有する
  べく、今回のミーティングではインターネットガバナンスにフォーカスした
  セッションが設けられていました。

  このセッションではインターネットガバナンスタスクフォース(IGTF)(*2)の
  幹事でもいらっしゃる会津泉氏がモデレーターを務め、政府機関、市民団体、
  RIR等、様々な肩書を持つ複数のパネリストが、インターネットにおける政
  府および民間の役割について議論を行いました。全体としては政府の関わり
  をすべて否定するものではなく、業界の発展をうながす規定、法律の整備は
  政府の必要な役割であるということがパネリストの共通見解であったように
  思います。

  また、APNIC総会でもICANN/NRO(*3)/WSISを取り巻く動向の紹介、というか
  たちでAPNICの事務局長による発表が行われ、ICANN体制の支持、ICANNと米
  国政府の関係の整理の要請、そして民間主導の体制の支持を掲げたNROの声
  明等について説明がありました。

  インターネットガバナンス セッション
    http://www.apnic.net/meetings/19/programme/other-meetings.html#igov

   APNIC総会での動向紹介
    http://www.apnic.net/meetings/19/docs/amm/amm19-pres-geoff-nro-icann-update.ppt

   なお、APNICはNGOとして国連のECOSOC(経済社会理事会)で特殊協議資格
   (Special Consultative Status)が認められ、今後会議への公式参加が可能
   となります。

■IETFの動向紹介

  資源管理に関わる以下のIETFでの活動が紹介されていました。特にip6.int
  の廃止は現在この形式で逆引きの設定を行っている組織に影響のある話題で
  すので、JPNICも動向を把握し適宜お知らせいたします。

  ip6.intによる逆引きの提供 完全廃止(2005年6月を予定)
     既存のip6.intの登録も無効となるため、登録者は廃止前にip6.arpa
     への移行が必要
     http://www.apnic.net/meetings/19/docs/sigs/dns/ipv6-int.pdf

  IPv4アドレスにおけるプライベードアドレス空間の拡張
     現在指定されているIPv4のプライベートアドレスに、さらにもうひとつ
     の/8アドレスブロックが追加される
     http://www.apnic.net/meetings/19/docs/sigs/policy/pol-txt-hain-1918bis-01.txt

  閉じたネットワークのためのIPv6アドレスにおけるユニークローカルアドレス
     グローバルインターネットに接続を行っていないが、一意のIPv6アドレ
     スの割り当てを必要とするネットワーク向けのアドレス
     http://www.apnic.net/meetings/19/docs/sigs/policy/pol-rep-ipv6-unique-local-addr.txt

■SIG Chairの交代

  ポリシーSIG、NIR SIGでは現職のSIG Chairの辞任に伴い、Chairの交代が行
  われました。また、IPv6テクニカルSIGではCo-Chairだった村井純の辞任に
  伴い、新たに2名がCo-Chairに就任しました。

  ポリシーSIG  
   [Chair] 荒野高志 --> Kenny Huang(旧ポリシーSIG Co-Chair)
     ※ Kenny Huangに代わるCo-chairを今後募集

  NIR SIG     
   [Chair] 前村昌紀 --> 奥谷泉

  IPv6テクニカルSIG
   [Co-Chair] 村井純 --> 藤崎智宏、Tao Chen
     ※ Chairは引き続き山本和彦
                                                        (敬称略)

■APNIC EC(APNIC理事)選挙
  Yong Wan Ju(KRNIC)の任期満了に伴い、Moo-Ho Billy Cheon(KRNIC)が当選
  しました。その他3名は現職ECが引き続き当選という結果です。

  + Hualin Qian(CN)
  + Kuo-Wei Wu(TW)
  + Moo-Ho Billy Cheon(KR)
  + Yan Ma(CN)
                                                        (敬称略)

■その他特筆点

 ・IPv4アドレスにおけるHD ratio適用の必要性についての調査をAPNICで準備
   中。調査項目が確定次第、AP地域内で実施予定
 ・AP地域におけるERXプロジェクト(*4)は2004年12月をもち完了
 ・利用していない歴史的経緯を持つIPアドレスの回収を2005年3月末に実施予
   定

今回のミーティングでは、ルーティングSIG、IX SIG等、技術者やオペレーター
を対象としたSIGがいつも以上に活発であったことが印象的でした。また、例
えばルーティングSIGではBoeing社の方による上空でのインターネットアクセ
ス提供や、Russ Housley氏によるBGPセキュリティについての発表等、内容も
非常に充実していました。このようなセッションを通して、AP地域におけるオ
ペレーターコミュニティがより発達していくことはAPコミュニティにとっても
非常に望ましいことではないかと思います。

最後に、次回のミーティングは2005年9月にベトナム、ハノイで開催されます。
VNNICの方により、緑と河の多い美しい町並みが紹介されていました。機会が
ありましたら是非ご参加ください。


□APNIC Open Policy Meetings(英文)
  http://www.apnic.net/meetings/

(*1) WSIS : http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-wsis
            http://www.itu.int/wsis/
(*2) IGTF : http://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/igtf.html
(*3) NRO  : http://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/nro.html
(*4) ERXプロジェクト(Early Resource Transferプロジェクト)
      旧InterNICの管理下にありARINに引き継がれた歴史的経緯を持つPIアド
      レスの管理を、適切な地域の地域インターネットレジストリ(RIR)の管
      理下へ移管するプロジェクト。アジア太平洋地域に所在する組織へ割り
      当てが行われたアドレスは、APNIC管理下へ移管された。

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