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ニュースレターNo.61/2015年11月発行

第43回ICANN報告会開催報告

2015年7月28日(火)、東京・六本木のシスコシステムズ合同会社 東京本社にて、JPNICと一般財団法人インターネット協会(IAjapan)の共催で、第43回ICANN報告会を開催しました。

報告会では、ブエノスアイレス会議の内容に加え、その後のICANN関連動向も含めご報告しました。今回は、報告会の直後に日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)も開催され、両方の会議を通して参加される方も多く見受けられました。

プログラム: (話者 敬称略)

ICANNブエノスアイレス会議概要報告

一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 奥谷 泉

ICANN国コードドメイン名支持組織(ccNSO)関連報告

株式会社日本レジストリサービス 高松 百合

ICANN政府諮問委員会(GAC)報告

総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課 杉山 哲弘

新gTLDプログラムに関する動向

株式会社日本レジストリサービス 遠藤 淳

ブランドTLDおよび関連グループの動向

株式会社ブライツコンサルティング 村上 嘉隆

ICANNルートサーバー諮問委員会(RSSAC)関連報告

株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文

Root Zone LGRおよび日本語生成パネル(JGP)について

株式会社日本レジストリサービス 堀田 博文

アジア太平洋地域におけるICANNの活動

ICANN Kelvin Wong

ICANN、JPNICおよびJPRSの翻訳協力に関する覚書について

ICANN 大橋 由美

IANA監督権限移管およびICANNの説明責任に関する状況報告

一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 奥谷 泉

ディスカッション

〜IANA監督権限移管およびICANNの説明責任に関する動向〜

※各発表の資料は以下に掲載しています。
https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20150728-ICANN/

写真: 木下剛氏
● 報告会開催に先立ち、共催であるIAjapanの木下剛様にご挨拶いただきました

本稿では、「全体概要」「新gTLD関連」「各組織の動向」「IANA監督権限移管とICANNの説明責任」という四つの観点から、各講演内容を簡単にご報告します。

会議の全体概要

JPNICの奥谷より、会議の全体概要、IANA機能の監督権限移管およびICANNの説明責任強化についての進捗、および新gTLD関連の動向について主に報告しました。内容については、前半の「ICANNブエノスアイレス会議報告」で既にご紹介していますので、ここでは省略します。

新gTLD関連

総務省の杉山氏より、GACにおける新gTLDに関する検討として、新gTLD関連の金融・医療といった規制業種などに関連することから配慮が必要とされた文字列や、国際機関の名称保護などに関するGAC助言の検討状況が報告されました。また、セカンドレベルにおける2文字ラベルの解放についても報告されました。

JPRSの遠藤氏からは新gTLDプログラムの最新状況として、委任されたTLD数が700を超えたこと、新gTLDでセカンドレベル以下に登録されたドメイン名が2015年6月末時点で600万件を超えたこと、次回のgTLD募集に向けた動きなどについて報告されました。

また、ブライツコンサルティングの村上氏からは、新gTLDの一種であるブランドTLD※1の動向、および次回のgTLD申請ラウンドに向けたBrand Registry Groupの動きについて、ご紹介いただきました。

各組織の動向

JPRSの高松氏よりccNSOの動向として、以下についてご紹介いただきました。

  • インシデント解決のためのレジストリ間連携
  • IANA監督権限移管のうち、ドメイン名における提案についてのccTLDでの結論
  • ICANNアカウンタビリティに関する情報共有

杉山氏には、前述の新gTLDに関すること以外に、公共の安全および地理的名称保護などのワーキンググループなどについて、またIANA監督権限移管とICANNの説明責任の向上を含むGACに関する動向について、ご報告いただきました。IANA監督権限移管では、NETmundial声明※2に記載された、ICANNのグローバル化プロセスが十分達成されていないという意見がブラジル政府から出されたとのことです。

RSSACの動向については、ルートサーバのサービス仕様や品質・性能の測定方針の文書化とルートゾーンレコードのTTL(Time to Live)についての見直しの検討状況について、JPRSの堀田氏よりご報告いただきました。

さらに堀田氏からは、新gTLDとして申請されたIDN(国際化ドメイン名) TLDをルートゾーンでどのように扱うかを規定するルールであるRoot Zone LGR(ルートゾーンラベル生成ルール)、およびこれに対応して各国で設立されている各言語のラベル生成ルール(LGR)を作成するチームである生成パネルのうち、日本語のLGRを作成する日本語生成パネル(JGP)について、具体的な方向性も交えてご報告いただきました。

ICANNのKelvin Wong氏より、ICANNのコンテンツを現地語化するためのICANNランゲージサービス、ブエノスアイレス会議中に開催されたAPACスペース、などについて紹介がありました。続いてICANNの大橋由美氏からは、ICANN、JPNICおよびJPRSの翻訳協力に関する覚書について説明があり、覚書締結※3の背景、翻訳対象の考え方などについてお話しいただきました。

写真: Kelvin Wong氏
● Kelvin Wong氏からは、ICANNのアジア太平洋地域における活動についてご報告いただきました

IANA監督権限移管およびICANNの説明責任に関するディスカッション

JPNICの奥谷より、IANA監督権限移管およびICANNの説明責任に関する詳細な状況を報告した後、ディスカッションに移りました。今回はパネルディスカッション形式ではなく、参加者からの質問に発表者が答えるというスタイルとなりました。

国連やITU(国際電気通信連合)によるこれらのプロセスへの関与についての質問に対しては、NTIA(米国商務省電気通信情報局)が移管の条件として政府間組織からの提案は受け入れないと事前に宣言しているものの、各国政府はプロセス上、GACを通じて意見を言えるようになっていると回答がありました。プロセスに代表を送ることができない途上国はどうなるのかという質問に対しては、途上国政府もGACを通じて各検討WGに参加できるという意味では、参加できるとは言えるものの、実際にはプロセスに参加しやすく、また声の大きい欧米先進国の意見が反映されがちではないかという回答がありました。ICANNから参加しているWong氏は、途上国からの参加を増やすべく、さまざまな国に出かけて行って説明に努めているとのことでした。

杉山氏のGAC報告で紹介のあった、ブラジル政府の意見の真意を問う質問に対しては、ICANNのグローバル化の解釈が、機能を果たせばよいというものと、法的拘束力がありしっかりしたものでなければならないという解釈の2通りがあり、ブラジル政府は後者の立場を取っているようだという回答がありました。この点については、ブラジル政府以外にも市民社会から懸念が表明されていたとのことです。

これらの議論と身近な運用との接点があまり見いだせないのではないか、という意見に対しては、確かに日常の運用との接点はそれほどあるわけではなく、むしろ国際情勢などのメタなコンセプトに関わることをどう重視するか、という点に帰着するのではないかという回答がありました。

また、インターネットガバンスの議論に対する日本からの参加が増えない理由として、日本のインターネットは米国の傘下にあるとも言え、IANA監督権限の移管は米国から離れるプロセスであるため活動に参加する動機に乏しいことと、一方で実質的に現状が維持されるのであれば、あえて費用や労力をかけてプロセスに参加しなくても済むからではないか、という参加者の意見がありました。

終わりに

ここしばらく、ICANN報告会の中心話題となっていたIANA監督権限移管・ICANN説明責任強化に関しては、この報告会直後に提案がまとまり、意見募集が行われました※4※5。この意見募集に対しては、JPNICから意見提出※6※7を行ったほか、日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)からも意見が提出※8されています。

この後の流れとしては、IANA監督権限移管提案策定の調整を行うICGおよびICANNの説明責任強化についての提案策定を検討するCCWGは、それぞれの検討結果を反映させた最終提案をICANNに提出し、理事会での承認決議を経て2015年10月頃にNTIAへの提出をめざしているということです。次回のICANN報告会では、その辺りもご報告できるのではないかと思います。

(JPNIC インターネット推進部 山崎信)


※1 ブランドTLD
新gTLDの中で、企業などにより組織名やサービス名(いわゆるブランド)をラベルとして申請されたgTLDを指します。
※2 サンパウロNETmundialマルチステークホルダー声明(日本語訳)
https://www.nic.ad.jp/ja/translation/governance/20140424.html
※3 JPNICがICANNおよびJPRSとICANN文書翻訳に関する協力覚書を締結
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150623-01.html
※4 IANA Stewardship Transition Proposal: Call for Public Comment
https://www.ianacg.org/calls-for-input/combined-proposal-public-comment-period/
※5 Cross Community Working Group on Enhancing ICANN Accountability 2nd Draft Report (Work Stream 1)
https://www.icann.org/news/announcement-2015-08-03-en
※6 IANA機能の監督権限移管に向けた統合提案に対するJPNICからのコメント
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150909-01.html
※7 ICANNの説明責任強化に向けた提案(第二版)に対するJPNICからのコメント
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150914-01.html
※8 IANA機能の監督権限移管に向けた統合提案に対するIGCJからのコメント
http://igcj.jp/news/2015/0909.html

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