=================================== __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.677【臨時号】2009.9.10 ◆ _/NIC =================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.677 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 7月より隔週でお送りしてきた特別連載「数字で見るIPアドレス・AS番号に関 する最新動向」ですが、最終回となる本号では、「JPIRRサービスの最新動向」 をお届けします。 下記URLより、第1回~第5回(*)の内容もぜひ併せてご覧ください。 (*)数字で見るIPアドレス・AS番号に関する最新動向 <第1回 IPアドレス管理指定事業者の動向> http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol650.html <第2回 IPv4アドレスの割り振りおよび割り当てにおける動向> http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol655.html <第3回 IPv6アドレスの割り振りおよび割り当てにおける動向> http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol660.html <第4回 JPNICが管理するプロバイダ非依存アドレス割り当てにおける動向> http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol663.html <第5回 JPNICが管理するAS番号割り当てにおける動向> http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2009/vol671.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆【特別連載(最終回)】数字で見るIPアドレス・AS番号等に関する最新動向 <第6回 JPIRRサービスの最新動向> JPNIC IP事業部 川端宏生 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ IRR(Internet Routing Registry)(*1)は、インターネット上で自律的に運用さ れているネットワーク同士が、お互いに正しく経路交換を行うために必要な情 報を提供するデータベースです。最終回となる今回は、JPNICが提供するIRRで ある、JPIRR(*2)サービスの最新動向をご紹介します。 ◆IRRとは インターネットレジストリのデータベースであるWHOISには、IPアドレスやAS 番号の割り振り、または割り当て先に関する情報が登録されます。一方、IRR には、経路広告元のAS番号や、経路広告を行うアドレスサイズといった、分配 を受けたIPアドレスやAS番号をインターネット上で利用する際に必要となる情 報が登録されます。 そのため、インターネットのオペレーションを行っている方であれば、実際に 経路広告が行われているアドレスブロックとIRRに登録されている情報との比 較、各ネットワーク間でのフィルタリング、障害時の連絡先確認などの際に、 IRRを利用されたことがあるかと思います。 インターネットが普及し始めた当初、インターネット全域への到達性確保のた めに、RADB(*3)やRIPE NCC(*4)をはじめとするIRRへの登録が不可欠とされて いました。しかし日本では、インターネット接続サービスを提供する一部の 事業者が運用し、自社の顧客への提供を目的としたIRRがありましたが、RADB の代替となるような、広く一般へのサービス提供を目的としたIRRはありま せんでした。 そのため、日本のネットワーク運用組織がIRRを利用しなければならない場合 には、上記のようなケースを除いて、海外の組織が運用するIRRを利用する以 外の方法はありませんでした。海外のIRRを利用した場合には、日本語でのサ ポートは受けられず、利用に際して必要となる費用を外貨により支払う必要が あるなど、利用を躊躇する組織も多くありました。このような状況を鑑みて、 JPNICでは、2000年より「IRR研究会」が、2001年からは「IRR企画策定専門家 チーム」が、日本におけるIRRの必要性について検討を進め、2002年8月より、 JPIRR試験サービスを開始しました。 この試験サービスは、2006年8月1日より正式サービスとして提供を開始(*5) し、日本国内の正確な経路台帳の作成を目標に、IPアドレス管理指定事業者、 AS番号やプロバイダ非依存アドレスの割り当て先組織を対象にサービスを行っ ています。 ◆JPIRRでのオブジェクト登録動向 ここからは、JPIRRサービスにおけるオブジェクトの登録状況をご紹介しま す。以下の表は、JPIRRに登録される代表的な4種類のオブジェクト(*6)につい て、各年度末時点における登録数を示したものです。 【JPIRRサービスにおける登録オブジェクト数の推移(2006年度~2008年度)】 ------------------------------------------------------------- オブジェクトの種類 2006 2007 2008 ------------------------------------------------------------- maintainer 78 126 (+48) 157 (+31) route(route6) 1,540 2,999(+1,459) 3,701(+702) aut-num 63 195 (+132) 240 (+45) as-set 34 52 (+18) 82 (+30) ------------------------------------------------------------- (注)各年度3月末現在の登録オブジェクト数を基に作成。カッコ内 は前年度に対する増減数 JPIRR試験サービスは、「試験」という名の通り、年度単位でサービス継続の 有無を決定していたため、継続したサービス提供が約束されないJPIRRは利用 できない、と言った声もあり、利用を躊躇する組織も多くありました。正式 サービスとなったことで、この懸念を払拭できた組織からの登録申し込みが相 次いだことが、登録オブジェクト数の増加につながりました。また、AS番号割 り当て先組織への個別訪問や、IPアドレス管理指定事業者連絡会やJPNICオー プンポリシーミーティングをはじめとする、IPアドレス・AS番号に関連した ミーティングの際に、JPIRRを利用したオペレーションの紹介を積極的に行 い、JPIRRサービスの認知度向上を図りました。 これらの活動の結果、JPIRRやIRRを利用したネットワーク運用に関心を持つ組 織も増えたことが、オブジェクト登録数の増加からも読み取れます。 maintainerオブジェクトは、JPIRRサービスを利用する場合に、一番初めに登 録が必要となるオブジェクトですが、2006年8月の正式サービス開始時には74 個であったものが、2008年度末(2009年3月)現在で157個、この原稿執筆時点の 2009年8月末には、170個登録されるまでになりました。 JPIRRの利用者は、maintainerオブジェクトの登録後に、割り振り/割り当てを 受けたアドレスブロックに関する情報(route(route6)オブジェクト)やAS番号 に関する情報(aut-numオブジェクト)を登録します。JPIRRに登録されたこれら のオブジェクトは、インターネットのオペレーターから広く参照されることと なります。 実際のネットワーク運用では、一つのネットワークから複数の割り振りアドレ スブロックが経路広告されている場合や、割り振りを受けた一つのアドレスブ ロックを、複数に分割して経路広告を行う場合もあると思います。こういった 運用方法では、一つのmaintainerオブジェクトに対して複数のroute(route6) オブジェクトが登録される場合もあります。また、割り振り/割り当てを受け た組織が直接オブジェクトを登録せずに、上流の接続事業者が、接続事業者自 身のmaintainerオブジェクトを利用して、顧客のroute(route6)オブジェクト やaut-numオブジェクトを代わりに登録するケースもあります。IRRは、こうい う利用のされ方もするため、maintainerオブジェクト数以上に、 route(route6)オブジェクトやaut-numオブジェクト登録数が増えることとなり ました。 as-setオブジェクトは、インターネット接続サービスを提供する事業者が、 フィルタリングなどの際に、顧客や相手方のAS番号を識別するために利用され ることが多いようです。このオブジェクトを利用したオペレーションはまだ普 及途上にあるため、他のオブジェクトに比べて、登録数はまだ多くありま せん。 ◇ ◇ ◇ ここからは、どのような組織がmaintainerオブジェクトを登録しているかにつ いて、ご紹介します。以下の表は、上流の接続事業者に依頼せずに、自ら JPIRRにオブジェクトを登録している組織やネットワークについて、 maintainerオブジェクトに登録されたAS番号と割り当て先組織名を手がかりに して、各組織で行っているサービスや事業等で分類したものです。各分類にお いて、およそ2割から4割のAS番号割り当て先組織が、maintainerオブジェクト の登録を行っています。 【サービス別に見た割り当てmaintainerオブジェクト数(2009年3月末時点)】 ------------------------------------------------------------ maintainer 分 類 AS番号数 登録数 構成比 ------------------------------------------------------------ 一般ISP(CATVインターネット以外) 132 55(41.67%) 35.03% CATVインターネット 104 25(24.04%) 15.92% インターネットデータセンター 79 20(25.32%) 12.74% ホスティングサービス 43 21(48.84%) 13.38% ASP/コンテンツプロバイダ 23 7(30.43%) 4.46% 学術機関・公共団体など 93 7 (7.53%) 4.46% 移動体通信事業者・IXPなど 24 5(20.83%) 3.18% 企業ネットワーク等への割り当て 71 14(19.72%) 8.92% その他(分類不能の組織等) 14 3(21.43%) 1.91% ------------------------------------------------------------ 合 計 583 157(26.92%) 100.00% ------------------------------------------------------------ (注1)カッコ内は、各分類のAS番号数に対するmaintainer登録数の割合 (注2)構成比は、maintainer合計数に対する、各分類毎のmaintainer登録 数を基に算出 JPIRRに登録されたメンテナーオブジェクト157個のうち、一般ISP、CATVイン ターネット、インターネットデータセンター、ホスティングサービスの分類に 属するものは、全体の77%を占めています。これらの分類のサービスでは、 ユーザーや顧客のネットワークに対して、インターネットへの接続性を提供す るケースが多く、インターネット全域への到達性をより確実なものにする必要 があります。上流の接続事業者に依存する形ではなく、自ら積極的に経路制御 に関わるオペレーションを行うため、RADBへの登録以外にもJPIRRに登録し て、登録情報の冗長化や、より安定したネットワークの運用をめざしているも のと考えられます。 残りの約23%は、提供されたインターネットへの接続性を利用してサービスを 行うケースが大半を占めています。ネットワークの規模や利用数などの事情に より、自らメンテナーオブジェクトを登録する形ではなく、上流の接続事業者 により、route(route6)オブジェクトやaut-numオブジェクトの登録が行われて いるようです。maintainerオブジェクトの登録数はわずかですが、これらの分 類においても、JPIRRへの登録目的は上記の分類と変わりはなく、安定した インターネット環境の提供をめざすために、JPIRRを利用していると考えられ ます。 ◆最後に JPIRRサービスでは、一定期間更新のない登録オブジェクトの通知と登録オブ ジェクトの自動削除機能や、経路情報の登録認可機構(*7)や経路ハイジャック 通知実験(*8)など、他のIRRでは見られない取り組みを数多く行っています。 また、JPIRRにのみオブジェクト登録を行った場合の、インターネット全域へ の到達性の検証など、現在問題とされている点を解決し、より多くの方に JPIRRサービスをご利用いただけるよう、JPNICでも検討を行っています。 今回のご紹介で、JPIRRに興味を持たれた方は、ぜひとも登録をご検討いただ けますと幸いです。 JPNIC Web「JPIRR」 http://www.nic.ad.jp/ja/irr/ ◇ ◇ ◇ これまで6回にわたって、JPNICが管理する番号資源や関連するサービスの動向 をご紹介してきました。現在のインターネットの展開を把握するために、これ らの内容が少しでもお役に立てば幸いです。 JPNICのWebページでは、IPアドレスやAS番号、JPIRRに関する最新の統計デー タを公開しています。これらのデータは毎月更新していますので、ご興味のあ る方はぜひご覧ください。 □IPアドレスに関する統計・各種リスト http://www.nic.ad.jp/ja/stat/ip/ (*1) インターネット用語1分解説「IRRとは」 http://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/irr.html (*2) JPNIC Web「JPIRR」 http://www.nic.ad.jp/ja/irr/ (*3) RADB(Routing Assets Database) http://www.radb.net/ (*4) RIPE NCC(Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre) http://www.ripe.net/ (*5) JPIRR正式サービス開始のお知らせ http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2006/20060801-01.html (*6) 各オブジェクトの用途などは、以下をご覧ください。 (1) maintenerオブジェクト(メンテナーオブジェクト) オブジェクトの新規登録、削除、更新を行う際に必要な認証情報を 記述したオブジェクトです。JPIRRにオブジェクトを登録する際に は、このオブジェクトが必ず必要となります。 (2) route(route6)オブジェクト(ルートオブジェクト) アドレスのプリフィクス情報と、ASの起源情報を表すorigin ASの情 報を記述したオブジェクトです。 (3) aut-numオブジェクト ASに割り当てられた番号(AS番号)や、そのASにおけるルーティング ポリシーを記述したオブジェクトです。 (4) as-setオブジェクト 複数のASを、一つの共通したポリシーにまとめて記述する際に主に 利用されるオブジェクトです。 *参考情報* 「JPIRR データベースに登録される情報一覧」 http://www.nic.ad.jp/doc/irr-objects.html (*7) 経路情報の登録認可機構 http://www.nic.ad.jp/ja/research/ca/routereg-outline/ (*8) 経路ハイジャック通知実験 (Telecom-ISAC Japan経路奉行とJPIRR間の連携実験について) http://www.nic.ad.jp/ja/ip/irr/jpirr_exp.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ___________________________________ ■■■■■ JPNICの活動はJPNIC会員によって支えられています ■■■■■ ::::: 会員リスト ::::: http://www.nic.ad.jp/ja/member/list/ :::: 会員専用サイト :::: http://www.nic.ad.jp/member/ (PASSWORD有) □┓ ━━━ N e w s & V i e w s への会員広告無料掲載実施中 ━━━┏□ ┗┛ お問い合わせは jpnic-news@nic.ad.jp まで ┗┛  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ =================================== JPNIC News & Views vol.677 【臨時号】 @ 発行 社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター 101-0047 東京都千代田区内神田2-3-4 国際興業神田ビル6F @ 問い合わせ先 jpnic-news@nic.ad.jp =================================== ___________________________________ 本メールを転載・複製・再配布・引用される際には http://www.nic.ad.jp/ja/copyright.html をご確認ください  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 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